第7話 勇者と魔王がいない世界
魔王失踪から3年。当然のように魔族の国は荒れた。
基本的に魔王の後継は、現魔王による指名制である。
そこから議会による承認はあるものの、大概は通る。
だが、今回は魔王は後継を指名せずに失踪した。
だからそれぞれが主張する。俺が、私が、エルフが、ドワーフが、竜人が、
「一番強い」
と。
故に始まる戦国時代。
そんなに我の強い魔族たちを魔王は纏めていたわけだから、そりゃストレスもたまるのだ。
魔大陸の統治は、一々各種族とネゴシエーションして調整していた魔王の能力におんぶに抱っこだったことで、築かれていたものだった。
そんな混乱極める魔大陸にこれ幸いと介入するかに見えた人類国家はしかし、自衛に徹した。
何しろ、人類の最終兵器・勇者が次々と行方をくらましたのだ。
勇者というものは、各国で扱いが異なるものの、基本的には理不尽に悪い。
やれ人質をとったり、あるいは社会的権力で脅したり。
もちろん、福利厚生をしっかり考えているホワイトな国も少ないが存在したが、外面と実情の乖離は少なからず存在している。
それでも勇者の偶像は、魔族、ひいては魔王という共通の敵がいたことから、それを中心とした教育政策が敷かれていたこともあってうまく機能した。
そして魔大陸の混乱という絶好の侵略の機会が巡ってきた……というのに。
「どうしてうちには勇者が居ないの!?」
という次第だ。
切り札の人質はこちらも忽然と姿を消している。
国という社会的単位を絶対のものとして考えている為政者にとっては、それを捨てるという選択をした勇者の行為は、痛恨の極みだった。
よって勇者という軍事力を失った各国は自然と軍備の拡張に取り掛かる。
だが、余所へ侵略する余裕は無いから、あくまで防衛力強化が目的だ。
もっとも、そんな風に軍備を拡張したところで、勇者という超越者が牙を向けたら簡単瓦解する程度のものでしかなかったのだが。
***
さて、前置きが長くなったが、魔王失踪はともかく、勇者失踪については、ある人物の介入があった。
無論、無知万能の魔法使い、センゴクである。
彼は、一番最初にヘブンズバレーにやってきた勇者から、勇者という存在の実情を聞き出すと、すぐさま調査を開始する。
世界中の聖霊も彼には協力するのだから、彼にこの世界で集められない情報は無い。
そうして情報が集まると、
「うわ、俺の世界の行政腐りすぎ……」
まるで年収が低すぎることに悲嘆するOLのようにセンゴクは嘆いた。
まあ、事故で意図したものではなかったとはいえ、自分が生み出した世界のことだ。
やはり悲しいものは悲しいのである。
だが、やはりセンゴク、そこからの行動は早かった。
といっても、
「コード・アクセス」
この一言で大体済むのだから、こいつに限っては決して敵に回してはいけない。
世界中の汚職に関わる連中の脳天(65536)を、因果律操作と空間跳躍を組み合わせて、全世界で一斉にチョップしたり。
差し押さえられている土地を空間転移させたり。
人質を保護したり。
それはもう、こいつはヒデエ、と勇者と魔王に思わせるくらいにやった。
聖霊や真竜は目を輝かせていたが、それはそれ。
そして出来上がったのは、
「おはようございます、村長」
「村長おはよー!」
「村長、これこのまえ出来た新しい野菜です、味見してください」
「村長、この事業計画の決裁をお願いします」
魔法使いを村長とする、勇者とその家族による村の誕生であった。
ついでに魔王も居ます。勇者が有能で物分りもいいからすっかりトラウマも無くなって、今では役場の公共事業部長である。
特異点にヘブンズバレーに、またしても、触れてはならない強大な存在が出来上がったのである。
エルフ「ひゃっはー」
ドワーフ「調子こいてんじゃねーぞこらー」
竜人「悪・即・断」
その他大勢の魔族「魔王様帰ってきてあの連中どうにかして」
王様「なんか勇者の人質も消えとる」
宰相「国力減衰まったなし」
国民「しょっとshrになってないでしょこれ……」※意図的な誤字




