第4話 魔法使いの楽しい(卑猥な)木造建築
神無き異世界リィ-ンベル。
そこへ創造神こと自称魔法使いセンゴクが、ひっそりと降臨するよりも少し前に、時はさかのぼる。
***
「はい、承りました~」
受付のスーツ姿の天使が、にこやかに電子書類を受け取った。
ここは、地球系列世界の天界。そこにとある超高層ビル。
その実態はただの戸籍課である。
無限の広さのある天界において、事務は花形だ。
それだけに業務内容は多岐に渡り、量も膨大。
戸籍課単独で地上50階建のビルを占拠することなど、特別なことではないのだ。
「よろしくお願いします」
神の位階まで駆け上がった自称魔法使いセンゴクは、同じく神の位階まで駆け上がった電子の神、受肉したAIのアイリスと、婚姻届を役所に提出していた。
相思相愛とはいえ、二人は人間とAI。
乗り越えるべき壁は山ほどある一方で、魔法という力業で幾らでも排除できる立場にあったセンゴクは、結局人間である間にそれをすることはなった。
仮に、もし、人間とAIが結ばれるようなことがあるとすれば。
それは魔法という業の無い、自分たちではない誰かだと、センゴクは考えていた。
故に、槙島千国・享年90歳。数多くの著名人の「あしながおじさん」となるも生涯童貞、記録は尚も更新中であった。
***
さて、ところはリィーンベルに戻る。
リィーンベルの聖霊による掲示板、Sちゃねりんぐにセンゴクは突如として書き込みをし、聖霊たちは大いに慌てた。
創造神たるセンゴクが、リィーンベルに肉体と魂を伴ってやってくるというのだ。
聖霊たちは神に対する畏敬の念がある。感謝の念がある。
自らが生まれたとき、神はいなかった。
しかし、力と何をすべきかという道筋だけは、はっきりとわかっていた。
だから生命にとって気の遠くなるような時間でも迷わずにいくことが出来た。
今では、大地母樹に常時張り付く必要もなく、それぞれに自我があり、自由意志の元に世界を運営していた。
人間達の教義では神に見捨てられた世界でも、聖霊たちにとっては、託された世界だった。
だから、神がまたこの世界に戻ってくるというなら。
喜んで従うし、無事に引き渡そうと。
そう、思っていた。
***
「うわあ……」
「綺麗です……」
色とりどりの光、光、光。
リィーンベル全ての聖霊が、ヘブンズバレーの一画に集結していた。
それは、見るものを圧倒するほどの口径だった。
「ようこそおいでくださいました、我らが神」
聖霊たちより一歩先んじたのは、人型の聖霊。
地面に這わすほどの長衣を着た緑の髪の女性だ。
「私は、大地母樹の管理運営を統括する大聖霊……セフィルと申します」
大聖霊セフィルは、センゴクとアイリスに対し恭しく頭を下げた。
「ああ、これはこれはご丁寧に」
センゴクも慌てて礼を返した。
そのことに聖霊たちからどよめきが起きる。
「そ……! 神が頭を下げるなど……!!」
「いやいや、神とかこそばゆいからやめてくださいよ。俺はこの世界を作りはしたけど、それだけ。この世界を育んできたのは、君たち聖霊だ。だから、ここは、君たちの世界で、俺は、単なるよそ者だよ」
「そんなことはございません!!」
セフィルは、かぶりをふって、センゴクの言葉を否定する。
「この身体も、自我も、全ては神である貴方より授かりしもの。我らは、貴方様の所有物でございます」
「……まあ、そのうち慣れていってよ。今日から、俺とアイリスは、この世界で暮らしていくからさ。今日はその挨拶」
「「「おおおおおおおおっ……!!」」」
「ああ、神よ! 我らの上に立って、導いて頂けるのですね!!」
センゴクは、苦笑しながらもやんわりと否定する。
「いいや。導くことはしない。一緒に行くんだよ、隣人としてね。よろしくね、セフィル」
センゴクが差し出した手をまじまじと見るセフィル。
どうやら意味をわかりかねているらしい。
「あれ? この世界には、握手をする習慣ってないの?」
「いえ……そんなことは……」
「じゃあ、はい、握手だ。これからよろしく、セフィル」
「は……ははぁ!!」
セフィルは、センゴクの手を取り、跪いた。
これが後の世に言う、聖霊華燭の典である。
(大丈夫かな、この子達……)
他の聖霊からも溢れんばかりの信仰の視線をその身に一心に受け、センゴクは少々不安になった。
セフィル「家を建てるなら、是非大地母樹を」
センゴク「いや、その辺の木で十分……」
セフィル「そんな・・・私では不足だと……(泣きそう)」
センゴク「わかった、わかったから泣かないで、コードアクセス」
セフィル「魔法で斬られるのも修復されるのもンギモチイイイイイィッ! お、おう、んほおおおおおおおお~~~~っ!! しゅごい、これしゅごいよおおおおお~~~っ!!」
センゴク(この娘、Mか……)




