第19話 センゴク、異文化交流する 二回戦~六回戦
決勝二日目。
2回戦はスサノオさんとのスポーツチャンバラ。一振りが神殺しの御技のスサノオに対し、スポンジのブレードを無限増殖させたセンゴクの飽和攻撃によるポイント先行逃げ切りで、なんとかセンゴクは辛勝をもぎ取った。もし増殖のスピードがあと少し遅ければ、スサノオの一撃を受けてセンゴクは絶命していただろう(スポンジだろうと神殺しなので人間には耐えられない)
決勝六日目。
センゴクの3回戦の相手は、なんと破壊の神として名高いシヴァ神さんである。さしものセンゴクも分が悪いかに見えたが、種目がまさかのもぐらたたきゲーム。それはスポーツなのかという突っ込みはあろうが、神がスポーツといえばスポーツなのだろう。
センゴクのスコアは可もなく不可もなくといったところ。流石に敗退するだろうなあと思っていたところ、シヴァ神はもぐらたたきゲームの筐体を壊してしまい失格負け。
ギガトン級の攻撃でも大丈夫な天界製の筐体も、破壊神には敵わなかったということだ。
第一、破壊神でも破壊できないものなど、それはそれで戦争の原因になりかねない。
神は本音の部分ではわりと自分の神話が一番と思っている輩が多いのである。
そしてトーナメント方式というのは、甲子園よろしく、毎回死力を尽くさねばならず、勝ちあがっていくほど強敵と当たるのに、試合間隔は短くなっていく厄介な形式だ。
激戦明けの決勝八日目。
四回戦の相手は魔王ルシファーさん。ちなみに天使ルシフェルとしての顔を持っており、いわば仕事を兼務している状態なのだそうだ。 内実は堕天ではなく栄転であり出向という、なんとも知りたくない裏事情である。
種目は卓球だった。人間大のサイズまでルシファーは小さくなったので、卓球台は標準サイズ。
ルシファーの時を止める魔球『ザ・ワールド』に対し、センゴクは同じく時の止まった世界に入門することで対抗し、最終的には時間の加減速をランダムで行う魔球『アイムジャグラー』を決めてセンゴクが勝利を決めた。
余談ではあるがこの間に行われたカーニバルくじで、アイリスは、センゴクの試合を毎回有り金全額賭けて見事億万長者になっていた。
なにもアイリスは私欲のためにクジを購入したのではなく、これといった贅沢をしないセンゴクに日頃の感謝を込めて色々プレゼントをしようとしたゆえの行動であると、ここに付け加えておく。
もっとも、『俺の方こそ、普段君に世話になっているし、それはアイリスのお金だから自分のために使うのが一番だよ』と言って決して受け取ろうとしなかったので、結局自分の身の回りの物( 未来の産物である量子コンピュータとサーバー一式 )をそろえてしまう、というオチだったのだが。
決勝九日目
五回戦の相手は、
「いやあ、センゴクさんの相手とは正直光栄ッす」
妙にちゃらい短い青髪の青年、ロキ神であった。
以前センゴクにケンカを売って返り討ちにあい、その後はセンゴクの舎弟のような感じになり良好な関係を気付いていた。
なにより神喰らい、世界喰らいと二つ名を持つ神狼フェンリルが、飼い主であるロキ以上にセンゴクに懐いているので、下手をすれば食われかねないという明確な力関係も存在するのだが。
「俺、センゴクさんにのされてから、自分を見つめなおして鍛えなおしたっす!」
実際に伸したわけではなく、フェンリルがセンゴクに懐いた様子を見て、勝手に降参しただけだが、その言葉に偽りはないだろう。何しろ決勝に進み、今は5回戦。神々を四柱、予選も含めればそれ以上を跳ね除けて、この場にいるのだから。
種目を決めるスロットが回転する。
盛り上がる実況を余所に、固唾を呑んで見守るセンゴクとロキ。
――JUDO。
なぜアルファベット表記……!?
世界の柔道だからとでも言うつもりか。
ロキはニヤニヤとしている。余程自信があるのか。
「ふっふっふ、センゴクさん。俺、実は、柔道五段なんすよ」
聞いてない。日本よりも諸外国の方が熱心だったりするというらしいが。
会場がまた都合よく変化し、地面には最高級の畳が敷かれ、センゴク達の格好も真新しい胴着に変化した。センゴクが青色に白帯。ロキが白色に黒帯だった
「リベンジ果たさせてもらいます」
ロキの目に剣呑な光が宿った。
ちなみにセンゴクは白帯というだけあって柔道についてはまるで初心者であった。
ぎこちなく構えるセンゴクの袖と襟を掴んだロキは一気呵成に背負い投げを仕掛けた。
神の膂力に柔道五段の技術による仕掛けだ。素人のセンゴクが逃げられようはずもない。
――ダンッ!!
背中をついて仰向けになっていたのは、
「あ、あれ、なんで?」
ロキのほうだった。
投げられたロキも信じられない。一体何がどうしたというのだ。
「一本!!」
主審、副審ともに、一本判定。センゴクの勝ちが決まった。
「セ、センゴクさん……? 俺に何したんすか!?」
ロキにとっては納得は行かないが、既に出ている結果を覆すことは出来ない。
だからせめて、理由を知りたかった。
「ああ、空気投げって技を試してみた」
「は、はぁ!?」
センゴクが魔法を得るよりも前、リーマン狩りに襲われていたセンゴクはとある老人に窮地を救ってもらったことがあった。
センゴクは、ささやかなながらお礼にと夕飯にその老人を誘った。
曰く老人は合気道をベースにした古武術の使い手だったそうな。
センゴクは現代を生きる達人の話に感銘を受け、いわゆる極意というものをたずねた。
老人は答える。『力には流れがある。相手にも、己にも。それらの流れを感じ取り合一すれば、どんな相手でも投げ飛ばすことぐらい容易いことなのです』と。
「んで、魔法でその流れって奴を視覚化して、流れが重なるところを見極めて、そこを掴んでやったら……うまく投げられた」
「は、ははっ、さ、さすがセンゴクさんっす。御見それしました」
魔法が使えるとはいえ、流れが見えたとはいえ。そんな行きずりの老人の言うことを信じて実戦で使用するその胆力は、おかしい。
やはりこの魔人センゴクは、魔法など関係なく、なにか一線を画した存在なのだと、ロキは改めて思った。
ほら、今もフェンリルが、センゴクに飛び掛ってじゃれているし。
***
ついに準々決勝。
相手はゾロアスターの神、アンリ・マンユ。
あまねく存在に試練として立ちふさがる絶対悪。同時にその存在は、遍く存在に結束を促す。
その本人の人格は、いたって陽気で、愛に満ちていた。
まさにありがた迷惑の愛。困ったちゃんである。
そんな相手に臨む勝負は……フードファイトである。
品目は中華三昧。時間無制限。神の御技で料理は無限にあふれ出てくる。
結果は、胃袋を宇宙と変じたセンゴクの勝利だった。
但し、しばらく中華は嫌というぐらいのトラウマは植えつけられてしまったが。
そして準決勝。
「やあ、また会ったね、センゴクくん」
準決勝の相手は、予選見物のときにあった青年、ヨシュアだった。
世界で最も読者の多いライトノベルの主人公である。




