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魔王  作者: 秋雨
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二手に分かれて

 翌日、死んだような雰囲気を醸し出すカナタの姿が学校で目撃された。

「カナタ、大丈夫か?」

「うう、お前らのせいだ・・・・・」

ガネルたちが何を言ってもカナタから帰ってくるのはこの言葉だけ。

「ダメね、これ」

「少しフォローを入れておけばよかったですね」

「ほら、お菓子だぞ~」

「・・・・・・ギオウ」

『がぶっ』

カナタに呼び出されたギオウが、ガネルの手ごとお菓子を食べた。

「俺の手まで食うなああああ!!」

必死にギオウを離そうとしているが、ギオウは微動だにしない。

むしろ離そうとするほど痛みが増した。

「放っておいていいでしょうか・・・・」

「いいんじゃない?もうそろそろ先生来ると思うし」

被害が拡大しないよりはいい、ということで、リルとレナは放置することにした。

リルとレナが自分の席に着いた時、ドアが開いてノウが入ってきた。

「皆さん席についてー・・・・って、もうついてますね。授業はじめますよ~」

素晴らしい連帯感を見せた生徒たちに苦笑しながら、ノウは授業内容の説明に入った。

「今日は一日かけてギルドの依頼をしてもらいます。と言っても、あらかじめ学園側が受け取った依頼なんですけどね。危険はさほどありませんので安心してください」

手に持っていた紙の束を振り、生徒に見せる。

「4人チームを組んで、決まったところから依頼書を受け取りに来てください。質問は?」

「はーい。依頼が終わった後はどうすればいいんですか?」

「そうですねぇ。特にすることもありませんし、帰ってもいいですよ」

「「「「よっしゃあ!!!」」」」

生徒のテンションが上がった。

「ではチームを決めてくださいね」

わらわらと生徒がチームを作っていく。

「4人、ってことはいつものメンバーでいいわよね」

「そうですね。不安なところもありますが・・・・」

リルが視線を向けた先にいるのはカナタ。

「(あれで魔王なんですから、詐欺ですよね)」

思い描いていた魔王像を打ち消し、レナとともにカナタに近づいた。

「カナタ君、先生のところに行きますよ」

「お前らの~・・・・・」

「(ダメですね、これ)」

早々に諦めたリル。

「ガネル君、すみませんが先生から依頼書をもらってきてください」

「あいよ~」

ガネルは左手に黒い物体ギオウを付けたまま先生のところに向かった。

「ギオウ、いつまで噛み付いてるつもりなのかしら」

「カナタ君が正気に戻るまででしょうか・・・・」

あと何時間かかることやら。

「貰ってきたぜ~。てかいい加減離れろ!」

『ほほわう』

「何て!?」

じゃれてる奴らは無視して、リルとレナは依頼書の確認を行う。

「えーっと、“ひだまり草を4本採取”ね」

「ひだまり草ってそよぎの丘に生えてるんでしたよね」

「そうよ。少し遠いわね」

「往復2時間ですしね」

正直めんどくさい。二人の頭によぎった言葉だった。

「授業ですし仕方ないですね。早く行きましょう」

「そうね。ほら、行くわよ」

未だ机に突っ伏しているカナタを引っ張り、無理矢理立たせる。

「ガネル君も行きますよ」

「おう。離れろこの野郎!」

『ほほわるほいっへいうらろう!』

「だから何て!?」

漫才コンビを引き連れ、カナタを引っ張り、リルとレナは教室を出ながら不安に駆られていた。

「「(この依頼、無事に終わるかしら(終わりますかね)・・・・)」」


「マルク様、あいつらが学園から出たようです」

「そうか」

「ついに行くのねぇ。楽しみだわぁ」

「失敗するなよ、2人とも」

「「勿論です(わぁ)」」


学園から出て1時間、特に何事もなくそよぎの丘に到着した。

「ひだまり草はどこに生えてるのかしら」

「一塊で生えてるらしいですけど、それらしいものは見えませんね」

きょろきょろとリルが見回す。

「分かれて探すか?」

くあっと欠伸をしながらカナタが提案する。

「そうね」

「その方が効率いいでしょうし」

ということで、男子組、女子組で分かれることになった。

カナタの使い魔であるギオウが、ガネルの手に噛み付いたままなのが主な決め手である。

「では、カナタ君をお願いしますね」

「ちゃんと連れて行きなさいよ」

あとカナタの面倒を見るのが面倒だというのもあったかもしれない。

「任せとけ!で、お前はいつまで噛み付いてるつもりなんだ?」

プランプランしているギオウを目の前に持ってくる。

『いふまれれも』

「何て言っているのかわかりません」

右手にカナタ、左手にギオウで、ガネルは手を塞がれながらも歩き出した。

「あれ、大丈夫でしょうか?」

「さあ?まあ、なんとかなるわよ。あたしたちも探しに行きましょう」

リルとレナは、ガネルが向かった方向とは逆に向かって歩き出した。

「木の下、とか、生えてる場所が決まってたら探すの楽よね」

「そうですね。でも、結構何処にでも生えるみたいですよ」

リルの手には植物図鑑があった。

いったいどこから出したのか。

「一番面倒なのじゃない、それ」

「ええ、そうですよ。気合入れていきましょうね」

すでに諦め気味のレナと、やる気満々のリル。

なんとも対照的な二人である。

「その本にはなんて書いてあるの?」

「“ひだまり草は日当たりが良いところに咲いていることが多かったりそうでなかったり”だそうです」

「・・・・・・その本返品したほうがいいわよ」

いろいろツッコミたいところだが、とりあえずそれだけは言っておいた。

「日当たりのいいところを探せばいいんですね!行きましょう、レナちゃん」

当のリルは聞いていなかったが。

「はあ、はいはい」

リルに手を引かれながら、レナは進んだ。


「みーつけたぁ」


木の陰に潜んでいた存在にも気づかずに――――――。

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