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魔王  作者: 秋雨
33/38

出来れば再会したくなかった

「早く見つけて帰りましょ」

「さんせ~」

ガネルがだるそうに手を上げる。

「なかなか見つかりませんけど」

「リル、それ言わないの」

そういったレナの表情もどことなく面倒そうだった。

「すみません」

「口より手を動かしたほうがいいと思うけどぉ」

「そうよね。・・・・・・え?」

リル、レナ、ガネル以外の声にレナがいち早く気づいた。

「誰っ!?」

「知ってると思うけどぉ?」

声の主を探すが、誰もいない。

「どこ探してるのぉ?ここよ、ここぉ」

ガネルの後ろに声の主がいた。

「ぬおっ!!」

いきなりの声に驚いたガネルは前に飛び退き、石につまずいてこけた。

「あははっ、マヌケぇ」

そのガネルを指さして笑う人物を見てレナが警戒する。

「あんた、ナノ!?」

「あったりぃ。でもぉ、アタシの本当の名前はアーネスよぉ。覚えてねぇ」

ナノ、(もとい)アーネスのウインクが炸裂。

「ナノって偽名だったのか・・・・・」

「どうしてここにいるんですか!?」

ウインクは見事にスルーされた。

それを気にもせず、アーネスは笑顔で答えた。

「それはぁ、ひ・み・つぅ」

「教えろよ!」

「い~やっ」

「なら力づくで!」

ガネルがアーネスに飛びかかる。

「あぶなぁい」

口ではそう言っているが、軽々と避けている。

「ガネル、不用意に突っ込まないの!」

「そうですよ!ここは作戦を立てましょう!」

「「え・・・・・?」」

リルの発言にレナとガネルは思わずリルをガン見してしまった。

「・・・・・なんですか?」

2人の視線に耐え切れなくなったリルは、少々2人を睨みながら聞いてみる。

「いや、作戦を立てるって・・・・・・。敵が目の前にいるのよ?」

「立ててもいいけど、相手は待ってくれないだろ」

「む・・・・・・。そうですね」

やっとそれに気づいたリル。

「お話終わったぁ?」

3人の話がまとまるまでずっと待ってていたアーネス。

「待ってたのかよ!」

思わず突っ込んでしまうガネル。

「だってぇ、不意打ちは嫌いだしぃ」

「(礼儀正しいな・・・・)」

敵だと分かっていてもガネルはそう思ってしまった。

もしかしたら作戦を立てるのも待っていてくれたのでは・・・・?

「いっくよぉ!」

次の瞬間、アーネスの姿が消えた。

「なっ・・・・・がっ!」

アーネスを見失い、目を見開いていたガネルが吹っ飛んで木にぶつかった。

「あ、当たったぁ」

ガネルがいたところには嬉しそうに笑っているアーネスが立っていた。

「ガネル!」

「ガネル君!」

リルとレナがガネルに近づく。

「大丈夫!?」

「う゛・・・げほっ。なんとか・・・・・」

頭をさすりながら立ち上がるガネル。

「わあぁ、頑丈な人ぉ。・・・・・・潰しがいがあるぅ」

それを聞いたリルたちはゾッとした。

逃げないと殺られる。本能がそう訴えていた。

でも逃げられない。こいつはそれを許さないだろう。

――――絶体絶命だ。

「そんなに固まってどうしたのぉ?」

アーネスが楽しそうな顔をして近づいてくる。

「っくそぉ!!」

ガネルが拳を振りかざして突っ込む。

「ふふっ。弱ぁい」

ガネルの拳をあっさりと止めたアーネスは、そのままがネルのみぞおちに拳を叩き込み、回し蹴りを繰り出した。

「っは・・・・・・」

吹っ飛ばされたガネルは地面を転がり、木に激突して止まった。

「っ、―光の槍よ。我が敵を貫け―《ライトスピアー》」

レナが光の初級魔法を放つ。

「くすっ」

が、それもあっさりと避けられる。

「―風の刃よ。我が敵を切り刻め―《ウィンドカット》」

リルも続けて風の初級魔法を放つ。

「あなた風属性ぃ?」

初級魔法が迫ってくるのを見て、アーネスが右手に風を纏い、

「アタシも風属性なのぉ」

リルの魔法をあっさりと弾いた。

「くっ(一か八か、賭けてみましょうか・・・・・・)レナちゃん、()()をしますよ」

()()ってまさか・・・・!」

レナの目が見開かれる。

「そのまさかです」

「無理よ!だってあれ、まだ成功したことが・・・・!」

「やってみないとわからないでしょう?」

慌てて反対しているレナにリルが微笑みかける。

「!・・・・そうね、やってみないとわかんないね」

「俺もやる!」

いつの間にか復活したガネルもまざった。

「いいですか?」

「もちろん!」

「いつでもいいぞ!」

リルは全員に確認したあと詠唱を始め、そのあとに2人が続く。

「―風の嵐よ。我が往く道を塞ぎ立ちふさがる者を吹き飛ばせ―」

「―光の豪雨よ。我が往く道を塞ぎ立ちふさがる者を消し飛ばせ―」

「―紅蓮の炎よ。我が往く道を塞ぎ立ちふさがる者を燃やし尽くせ―」

3人の詠唱が完成した。

「「「合成魔法《風光炎舞フウコウエンブ》」」」

そして魔法が放たれる。

炎と光が荒れ狂う竜巻がアーネスに向かって飛んでいった。

「ん~、これはちょっと危ないかなぁ」

少し考えたあと、アーネスは行動に移った。

「―大地に吹く風たちよ。我が下に集まり渦と成せ―《竜巻》」

アーネスが放ったのは風の中級魔法。

()っちゃえ」

アーネスの中級魔法と3人の合成魔法がぶつかった。

2つの魔法はせめぎあい、そして――――――相殺された。

「な・・・んで・・・・」

消えた魔法に、リルは力が抜けたように座り込んだ。

普通に考えれば、合成魔法のほうが威力は上。それが、中級魔法に打ち負けた。

「驚いたぁ?」

呆然と座っているレナにアーネスが問いかける。

「どうして中級魔法でぇ、最上級並みの威力があった合成魔法を相殺できたか、わかるぅ?」

先生のように説明を始める。

返事がなくてもお構いなしで続けられた。

「それはねぇ、アタシが放った中級魔法がぁ、最上級並みの力を持ってたからだよぉ」

「そんな・・・・・っ!」

「嘘じゃあないよぉ?魔力の込め方1つで初級魔法が最上級魔法にもなるしぃ」

「っ・・・・!くそぉっ!!」

絶望的だった。今の3人では絶対にかなわない。

魔力も、もうない。

「さあて、とどめよぉ。《ダークボール》」

アーネスが闇の初級魔法(威力は上級魔法並)を3つ作り、3人に放つ。

ああ、終わった。

そう思い、3人は目を閉じた。


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