8話 飯で名前が決まる世界
地下探索を終えた俺たちは地上に戻った。
「ほいよ兄ちゃん。報酬だ。」
大将が金貨袋と紙を渡してきた。
「どうも。」
俺はその二つをスキャンする。俺の視界のログ(?)に980gと証券と入力された。
「手慣れたもんだねぇ……」
「これしかできませんけど。」
「それにしても、オズがまだ生きていたとはねぇ。旧城の警備員をやっていた頃が懐かしいなぁ。」
「……ずっと気になっているんですけど、ここの人……大将って何歳ですか?」
「女性にそんなことを聞くのはどうかと思いますが。」
「てめぇ女性じゃねえだろ! ってかその台詞さっき聞いたぞ!」
「すまんすまん。まぁ、兄ちゃんが想像してる年齢よりは遥かに上だと答えておこう。」
「……具体的には?」
「ざっと3桁強。」
「わーお。」
「そんなことより兄ちゃん、晩飯の和風セットだ。」
「あ、どうも。ありがとうございます。」
移動しようと和風セットがのったトレーを持ち上げた。
「関係ないけど兄ちゃん、体に重さは感じないか?」
「? いえ。強いて言うなら風で吹き飛びそうなくらい軽いですが。」
「いやな、さっきの金貨袋が1キロ弱あるはずなのに軽そうだなと思ってな。」
「gってグラムかよ! ……因みに、価値はどれくらいですか?」
「日本円で30円くらいかな?」
「安っ! いや、物価が安いだけかも……」
「ああ、物価は日本円換算で大根1本800円くらいだ。」
「結構なインフレ!」
「おかえりなさいマスター。やけに疲れた顔をしてますが……」
席に戻るとシアンが椅子に座って待っていた。
「ツッコミ疲れた。お前が椅子に座っていてツッコむ要因が減ったことを内心喜んでいる。」
「そうですか。じゃあ左を見ない方がいいですよ。」
「……絶対見させる気で言ってるだろ。まぁもう見てるんだけどさ。」
俺から見て机の左側には、さっき拾ってきた機械少女と魔方陣とスライムが戯れている。
「とりあえず、なにが起きてるか説明して。」
「機械の子とマスターの魔方陣とマスターのスライムが戯れています。」
「それは見たら分かる。どうしてこうなったかを知りたいのよ。」
「なんか仲良くなってました。としか。」
「……すまん。俺が悪かった。」
スライムは丸い液状のままピョンピョン跳びはね、魔方陣はクルクルと回り、機械少女は喋りはしないが楽しそうにしている。
「……飯食うわ。いただきます。」
因みに今日の晩飯はゆかりご飯と秋刀魚の塩焼きと味噌汁だ。
「ところでマスター、この子の名前の件はどうしますか?」
「俺に言われても。」
「決めてください。マスターはこの子のマスターでもあるんですから。」
「まーた覚えもないのに増えてるよ……」
「すぐに起きなかったマスターが悪いです。それで、どうするんですか?」
「適当でいい? 俺センスないよ?」
「別にいいのでは? 私はあまり関係ありませんし。あ、けどキラキラネームだけはやめてください。この子がかわいそう。」
「それはわかってる。」
……パッと思い付く名前ねぇ。
「『ゆかり』はどうだ?」
「まさかそれは今ゆかりご飯を食べてるからという理由で?」
「……半分は。」
「……まぁ、許容範囲でしょう。」
というわけで、機械少女の名前は(少々DQNネームっぽい決め方だが)ゆかりで決定した。
「大将がわかめご飯を出していたらわかめって名前になってましたね。」
「ま、まぁゆかりって名前って結構あるから……」
次の日
朝のモーニング(頭痛が痛い感)を昨日の席で食べてたら横に女の人が座ってきた。
「隣空いてるかしら?」
「座ってから言わないでくれ。空いてるけど。」
「ありがと。」
……この世界にでは断る前に座ったり机に座って飯を食うのが普通なのか?
それはともかく、この女の人……小柄で白衣を着た茶髪の人は無言でトーストを食べている。
「……」
「……」
横に人がいるのに無言が続くことに耐えられず、俺は勇気を出して話しかけた。
「あのー、お名前は?」
「人に名前を聞く前に自ら名乗るのが礼儀ってもの……」
「流行ってるのかそれ? それともこの世界のしきたりか?」
「?」
やべえ引かれてる。まぁ、いきなり知らない男の人にこんな意味不明なこと言われて……って、もしかしてこれナンパじゃね? ヤバ、そういうつもりでは……
「あのー、なんか、ごめんなさい。」
「? あははっ、変な人。」
そういって女の人は俺の膝に乗ってきた。感覚は軽いが、何故か押し潰された痛みが生じた。
「君、面白いね。名前は?」
「吉田悠斗です。」
「そっかー、ハルト君かー。ちょっとこの薬飲んでみて。」
そういって白衣からなにか禍々しい色の液体が入った試験管を出してきた。
「……なんですかこれ?」
「ん? ちょっとした栄養剤。」
「なんでこれを俺に飲まそうとしてるんだ?」
「面白そう。」
「面白そうって……んぐっ!?」
無理やり飲まされた。
案の定死んだ。
[心頭滅却すればなんとやら]
「無理だろ! じゃああれ飲めるか?」
[物理的に無理です]
「なんかごめん。」
一日の体感って長かったり短かったりしますよね。
嫌なことをやっているときはやけに長く感じるのは何ででしょうか……
まぁ、向こうの世界は一日の定義が24時間とは限りませんが。
次回 [死因 試飲]




