ハナコさんが おしえてくれたこと
ほくは いま ハナコさんのおうちに おじゃましているの
つばさの おなおし きちんと するためだって
おうちについたら ハナコさんは ぼくにたずねた
「お兄ちゃんのおねがいのほうを、先にとりかかって良いかしら?」
もちろんだよ!
おにいちゃん しゅやく!
おにいちゃんの おねがい かなえて あげて!
ぼくは うんうんって いっしょうけんめい うなずいたよ
ハナコさん わかってくれたかな
「ドラドラいい子ね。では、お兄ちゃんの新しいお友達を作りましょう」
よかった!
ぼくは あたま いっぱいナデナデされて
とくとうせきに あんないされたよ
おはなをかざる だいのうえに おざぶとんしいてくれて そのうえに おすわり
ハナコさんの おしごとが よおく みえるの
まず ハナコさんは すごーく おおきな かみを テーブルに ひろげた
マリちゃんの おえかきより ずっとすっど おおきな かみ
そこに ハナコさんは ぐんぐんと えんぴつで せんを かいた
おおきいなあ
すごいなあ
「なにしろ、百二十七センチだからねえ」
おにいちゃんの りくえすと
シロナガスクジラさんはね
おうちに はいりきれないくらい とっても とっても おおきいんだって
だから
ママと ハナコさんが はなしあって
おにいちゃんと おなじ おおきさの くじらさんにしようって
きめたそうなの
おたんじょうびの きねん なんだって
それから おにいちゃんは はしらのまえに
ぴんと せなかを のばして たったよ
そうしたらね
ママと ハナコさんが
あたまの てっぺんから じめんまでの ながさを はかったの
おにいちゃんは ひゃくにじゅうななせんち
マリちゃんは ひゃくじゅっせんち
ぼくも はかってくれたの
だいたい にじゅっせんち かな? だって
ぼくも はやく おおきく なりたいなあ
それから ハナコさんは
かみを はさみで ちょきちょき
ぬののうえに かみをならべて
はりで とめて
また せんを ひいて
はさみで ちょきちょき
こんどは ぬのと ぬのを あわせて ぬいぬい
ぬいぬい……
ぬいぬい……
くじらさん ほんとうに おおきいんだね
ときどき ハナコさんは きゅうけい
ぼくと ティータイム したよ
「これで、おばあちゃんたちに恩返し出来て、うれしいわ。ほんのちょっとのお返しだけどね」
うん?
どういうこと?
「あのね。私がまだおとなになっていないころ……。おにいちゃんの二倍の歳の誕生日にね。私のお家は空中分解しちゃった」
くうちゅうぶんかい?
「私のパパとママはねえ、ずうっとケンカばかりでね。とうとう、パンってはじけちゃって、二人ともお家からいなくなっちゃった」
えええ?
たいへん いちだいじ!
「そうしたらね。おばあちゃん──私にとってはママのお姉さんなんだけどね。とにかく、おばあちゃんが迎えに来てくれたの。ドラドラをマリちゃんのお家に連れてきたようにね」
ハナコさんは ハナコさんのパパとママと おわかれして
いまは どこにいるのか わからないんだって
さびしいね
かなしいね
「おばあちゃんと、おじいちゃんと、お姉ちゃん──マリちゃんたちのママね? 三人がいつもそばにいたから、寂しくなかったの。むしろ、もっと早くに迎えに来てくれたら、もっともっと楽しかったのになあって思ったくらい」
うんうん
おばあちゃん ママ すごく すてきなひと
「おばあちゃんはね。おじいちゃんが大好きだったの。だから、おじいちゃんが病気になってから、地図を広げてたくさんお話したの」
こんなところに 素敵な野原があるんですって
この山で朝陽が昇るのを待って 世界が茜色に染まるのを見たいわね
あの海は どこまでもどこまでも浅く遠く それはそれは美しいとか……
二人でどんどん 地図に印をつけた
いつか いきたいね
病気がなおったら 行こうね
おじいちゃんと おばあちゃんは 夢を見た
二人 手をつないで
海の向こうの
空の果て
この世の美しいもの
一緒に 楽しむ日が くることを
奇跡はきっと起きると 信じてた
旅に行こうって 言い続けていたら
神様は きっと かなえてくれるって
「おばあちゃんはね。おじいちゃんとつけたしるしを、一つ一つ、たどっている最中だったの」
おじいちゃんが お空に行ってしまってから
おばあちゃんは 地図をたどった
たくさんの山、川、海、そして遠い国……
がむしゃらに 旅をした
まだまだ 足りない
まだまだ……
だって おじいちゃんと 約束したもの
行こうって 約束したんだもの
「きっと、もういいよ。こっちにおいでよって、おじいちゃんが呼んだのね」
おばあちゃんは おじいちゃんを さがしていたのかな
あちらのくに
こちらのくに
おじいちゃん かくれてないかな? って
そうか
いま
とおいおそらのむこうで おばあちゃんは
だいすきな おじいちゃんと いっしょなんだ
いっしょ ずっと いっしょ
うれしいね
おばあちゃん いま たのしい?
わくわく どきどき してるかな?
おばあちゃん
ぼく
おばあちゃんの ナデナデ なくて
おばあちゃんの おはなし なくて
がっかり
さびしいよう
でもね
おばあちゃん たのしいなら
がまんするよ
だって おばあちゃん
ぼくのこと
すてきな ドラゴン って だっこしてくれた
そしたら
おなかのなか ぽわぽわ あったかくなった
だから ぼく
しょうしんしょうめいのドラゴンに なるため
がんばるね




