執着、苦痛、不安
とある世界の、とある国。国王のいない、自由で、ぶっちゃけ無法国家で、でも平和な国、多分。
それはどうでも良く、ここでは最近、突発的な竜巻が多発していた。たまたま遠くで竜巻を見かけた時、その中心にいた直立不動の人影を、確かに私はこの目で見た。
「で、なんでここなんですか。ここ観光案内所ですよ。」
「でも、外のチラシに『やれることはやる屋もやってます。』てのがありますよ。」
「それもそうなんですけどね、もう少し頼るところありませんでしたか?」
修学所からの帰り道にあった観光案内所。たくさんのチラシ広告が貼られている中で一つ気になっていたものがあった。竜巻の人影を友達とか親に話すのも馬鹿みたいで、私はそのチラシに賭けてみることにした。こういう判断が馬鹿なのだが。
「とにかく、あの竜巻について調べて欲しいんです。やれるんですか?」
「やれます。」
「最初の会話いりました?」
「このニュースに映ってる竜巻の中心の黒いヤツが気になるんですね。」
「はい、でも、あんま話題じゃない感じで…。」
「皆気にして無いんですよ。誰が竜巻を起こそうたって、この無法地帯は心配ないくらい平和ですし、多少の被害も無問題。」
「竜巻はやばく無いんですか…?」
思えば、どうして私はこの竜巻に執着しているんだ?人影が何か分かったところで、その後どうなるというんだ。分からないが、後で済む話だ、多分。
「明日から取り掛かかれます。依頼料は今回の出費から後ほど確定します。」
え、まぁ、いいか…
先日の依頼に対応するため、車に荷物を積む。どうせ例のヤツ案件だから、アレとソレと、あとコレも必要。どっかの『書艦』が処理してくれると思ってたけどな…仕事が遅い。とりあえず、あの竜巻を見つけなくては。
「ぜんっぜん見つからん。」
いや、案内所の周辺を回っているだけなのだが。あんまり遠くに行きたくないんだよね。
「あ、案内所の人。竜巻の人影、どうですか。」
「あ、依頼人さん。イヤーゼンゼンデス。」
まずい、いや、何がまずい。自分は真面目だ、例のヤツがずっとどっかで彷徨かれたって鬱陶しいだけだ。本当に。けど面倒…麺が腐る。
「もしかして、ここら辺以外探してないんじゃ…」
図星で熱くなる。いや、ん、少し涼しい。あ、うん?
「アラ、風が強くなってきたな。」
「そういえば…あっ、あれ!」
依頼人が指した先はT字路があった。そこで確かに見た。道路に沿って竜巻が横切っていくのを。ただ進んで行く竜巻に向かって、風もまた向かう。自分は風に背中を押されて走って向かって行った。
「例のヤツだ…」多分。
てか、よく今まで気づかなかったな。
竜巻の中心には確かに人影、いや、ヤツがいた。
「例のヤ「あー!絶対この竜巻ですよ!人影も…というか人ですよ。」
「ん?いや、来ないでくださいよ、危険です。あとあれは人じゃないです。」
「もっと早く言ってください。それより、あれが何か知ってたんですか?」
「あれはいわゆる『風吸』で、風を取り込んで生きているヤツです。」
『風吸』は今付けた名前だが。ヤツらに共通しているのは『何かを取り込む事』で、今回は風だった。いや、合ってるのか?わかんねー。
「なんか、色んなことを無視したようなヤツですね。」
「今からヤツを殺します。」
「殺す!?どうやって!?」
「コレを使います。玄能。」
「げんのう。」
ベルトの玄能差しから取り出した物を見て、依頼人は困惑しているようだった。
「いやほら、頭のはみ出しも含めて全体を見ると良い形で「意味あるんですか?」意味あったことはないですね。」
「というか、あれに突っ込んで行ったって吹き飛ばされるだけですよ。」
あっそうか…そりゃそうか。
「じゃあ、本命のソレでコレ「本命早っ」コレを使います。」
「この本は?」
「『苦痛の魔法書』」
「マジですか。」
魔法書って、ふざけて言っているのか。竜巻が進んで行っているこの状況で。それもおかしいのか?
「これは自分の経験した痛み苦しみを相手に与える魔法を使うための書物。でも、ただ使うだけじゃ静電気程度の痛みしか与えられません。」
ピリッ 痛っ
「私に使わないでください!」
「これを最大出力で使うにはちょっと面倒というか…今は竜巻を車で追います。」
最大出力とは?気になる。とてもね。
「あっちょっと助手席乗らないでください危険です。」
「もう最後まで何が起こるか見させてもらいます。どうなっても構いません。」
「あなたが良くても、自分が責任取れないんですけど…。」
車で竜巻を追う。竜巻は物を巻き込み、飛ばして、進む。外に人は出ていない。建物の中なら安全だろう、この国の建物はすんごいから。それよりも…
「すんげぇ、こっちに物飛んできやがる…」
「あの、最大出力の魔法ってどうなるんですか?」
「え、あぁ、本当に経験した痛み苦しみを与えるんですよ、自分の解釈ですけど。痛覚とか無くても無視して、多分、こむら返り?とか、突き指、骨折、頭痛に嘔吐、腹痛に長めの下痢、痔、他にもあると思います。でそれらを一つの痛み苦しみにして与える。自分よりもこれを使える人はいると思います。でも、自分でも十分苦痛は与えられます。」
苦痛…苦痛か、なんか何でも含まれそうだな。
「最大出力には『魔力』と『被害』が必要。『魔力』は魔法書に溜められていて、何もせず使う分にはすぐ勝手に溜まりますが、最大出力は再使用に1日かかる魔力を消費します。」
それなら、たくさん魔法書持ってた方がいいんじゃないかな。
「それで、『被害』は――ゴ°ン!
突然の音に、何かが当たったのかと外を見る。確かに当たっていたのだろう。当たった所は無くっていたが。それは左側の
「ドアミラーガアァァァァァァァーーーーーーーー!!!!!!!!」
うるさ。少し察したが、『被害』は自分が被った損害が必要なのだろう。というか、もうそんな雰囲気を感じた。いつの間にか、風吸にある程度車で近づけていた。
『魔改法越!!「魔改法越?」苦痛放術!!』
なんかダサいな。てか、ちょ、腕腕腕腕!裂けてる裂けちゃってるって!コレが魔法!?
「紅く光って…」
裂けて中から見えた骨が紅く光り、光は手の平?に集まる。そして光が放たれた。ちゃんと狙ったようには見えなかったが、光は風吸に当たった。
風吸は言葉に表せない叫び声を上げた。てか、叫ぶんだ。だいぶ応えたのか、竜巻は止まり、風吸が落ちて来る。
「こいつどうするんですか?」
「玄能で頭をミンチ!にする。」
「身体は残るじゃないですか。」
「買い取ってくれるところに出します。」
その後、竜巻は発生しなくなって、何となく気持ちもスッキリした。竜巻に執着してたのは、ただスッキリする為だった?
「そういえば」
「 、来てたんですか。」
「ヤツらって言ってましたし、他にも似たようなのがいるんでしょうけど、大分敵視している感じですよね。何でですか。」
「それは、ヤツらは人じゃない癖に人の姿をしやがるからです。人の姿をして、人の害と成して。何で人の姿なのか、ここにはヤツらの居場所はない。何処かにいるかもしれないって考えるだけで不安になるんですよ、自分が被る訳でもないのに。放っておこうともしますけどね、相手にするのが嫌だったり、今回みたいに依頼で行ける事もあるので。」
不安。不安の解消か。でも、どれだけいるかも分からない事に対して気にし続けるのも疲れないのだろうか。疲れるから放っておくのか。あとあのキャラ変は本性?私は今回スッキリしたからいいが。ちなみに、依頼料は意外とリーズナブルだった。ドアミラーの分、入ってたのかな。




