第13話 フツゴーなシンジツ
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扉絵です
ここはニシナリ。
純喫茶スワンでは、
光の難題にぶち当たり、
サトーは途方にくれ、
ハナちゃんはお腹が空いている。
「シンちゃーん、プリアラ、なくなってしもたわ。
光の速さで、おかわりくれへん?」
ハナちゃんが、カウンターの奥に声をかける。
「で、師匠・・・」
サトーが沈黙を、破る。
「困った揚げ句、どうしたんですか?」
ハナちゃんの前に、新しいプリンアラモードが届く。
「AIでもググール先生もええわ、
どうなったか聞いてみい?」
サトーがスマホを起動する。
「えっと・・・???」
「アインシュタインガーとか、
ソータイセーリロンガーとか、
わけわからんやろ。」
サトーがスマホに表示された説明を読む。
「・・・」
「わかるか?」
「・・・いいえ、まったく。」
「せやろ。」
「・・・はい」
ハナちゃんがプリンのどてっぱらにスプーンを突っ込む。
「でや、ここからが本題や。」
「本題、ですか・・・」
「サトーなら、どうする?」
「・・・どうする、って・・・」
「どうやって、ごまかす?」
「ごまかす!?」
「そうやん、これ、完全に不都合な真実やろ。」
ハナちゃんがプリンを丸のみする。
「物理法則で、説明できひんやん。」
「うん、確かに、そうですね・・・」
「せやから、何とかして、ごまかさなあかんやん。」
「・・・」
「そのための、設定や。」
「設定・・・」
「そうや、設定ちゅうのはな、つまり、ごまかすことやねん。」
「はあ・・・?」
「チキューには、あるいはウチューには、
光より早いものはないし、
光は常に一定の速さなんですよ、って設定に、してまうねん。」
「してまう、って・・・」
「いや、でも、こんな場合もあんな場合もありますやん、
とか言うてきくさるやつらがおっても、
じゃかあしい、そういう設定なんやから、四の五のぬかすな、
ちゅうて、しばくねん。」
「強引すぎません?」
「せやから、それが設定やねんて。」
ハナちゃんがチェリーを種ごと嚙み砕く。
「いや、でも設定って、もっと論理的なものじゃないんですか?」
「逆や。」
ハナちゃんがメロンを皮ごと飲み込む。
「設定ちゅうのはな、理論の向こう側にあるもんなんや。」
「いやいや、それはいくらなんでも無茶苦茶でしょう。」
ハナちゃんが口の傍に付着したクリームを親指で拭き取る。
その親指を結構しつこく吸う。
「例えばやど、スワンでは、予約席に日本人形を配置するのも、
月に1度だけディナーナイトフィーバーを開催するんも、
その日しかハイパー・エキセントリック・プリアラを食べることができひんのも、
全部そういう設定なんや。
そこに理屈なんか、ないやろ。」
「まあ、そうですね、
全部ミスター・シンさんが決めることですもんね。」
「理由なんか、ないやん。」
「まあ、でもそれはスワンの話であって、
光の話ではないと思いますけど・・・」
ハナちゃんの瞳が再びきらりと光る。
「それがな、一緒なんや。」
「んな訳ないでしょうよ!」
「一緒なんやて。」
「ああ、まさか、世界はカミサマが造ったとか、そんな話ですか?
だからカミサマが決めたとか、そんなんですか!?」
「おー、するどいやんけ。」
ハナちゃんがニヤリと笑う。
「えー、まさか師匠、なんか宗教やってるんですか?
ひょっとして、勧誘ですか?」
「ふふふ。」
「っきゃー、それはいやよー。アーメソとかソーカソーカとか、いやよー!」
「こらこらサトー、あんまりギリギリを攻めるな、banされるど。」
「でも、でも師匠・・・」
「だんないがな、心配すな、シューキョーちゃうど。」
「・・・そうなんですか、ほんとですか?
それならいいんですけど、でも、カミサマなんですよね・・・」
「よっしゃほんなら、カミサマの話を、しようじゃないか。」
ハナちゃんが、姿勢を正す。
「さすがにカミサマの話やからな、
カミサマに悪いさかい、背筋伸ばすわ。
その前に、シンちゃーん、プリアラおかわりや。
神速で、よろしゅうに。」
「なんか、師匠って、変なところで、
信心深そうですよね、大丈夫ですかね・・・」
サトーがおびえる。
サトーの不安をよそに、ハナちゃんが深く息を吸う。
しばらく、止める。
やがてゆっくり、鼻から息をはく。
右の鼻孔からのみ、空気が出ているような気がする。
「でやサトー、お前、社畜やろ。」
「えー、カミサマじゃないのー?」
「カミサマの話するんやったら、
その前には当然、社畜の話になるやんけ。」
「どういう脈絡なんですか、それ!」
「で、社畜なんやろ、お前。」
「はいはいそうですよ、
って答えていいのだろうか・・・」
「お前的な言い方をすれば、ビジネスパースンってやつや、ぷ!」
「そうですそうです、ビジネスパースンですよう!
そう言ってくださいよう。」
「で、どんな会社やねん。」
「お、それ聞きます?気になります?
それがですねえ、師匠、聞いてくれます?
結構ナイスな会社なんですよー!」
こうしてサトーの社畜自慢が始まるのである。
カミサマはどこへ行ったのだろうか。
<次回予告!>
粛々とIPOを進めるサトー。
TOBを仕掛けるハナちゃん。
ハナちゃんファンドはみごと、
サトーの会社を買収できるのか!?
目指せ、東証プライム上場企業!




