表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
PR
92/186

第92話 ▶宣戦布告

 唯人が意識を手放すと同時に、その場にいる全員が理解した。突如フィールドに降り立ち、決勝戦に水を差した何某の正体に。


「鬼だ」「鬼?」「なんで鬼が」

「演出?」「馬鹿な」「でもそれじゃあ……」


 観客席を中心にざわめきが広がる。ざわめきは次第にどよめきへと変わり、怪訝な視線がフィールドに集中する。


「お、おっ……と? これはいったい何事ですかな。唯人氏のダウンで決着かと思われた決勝戦、見慣れぬ三人組が闖入してきましたぞ……?」


 イレギュラーが発生してなお実況を続けるゴシップ。そんな彼の方に顔を向ける者がいた。三人組の一人、白い髪を肩まで伸ばした細目の青年。

 (トロア)だった。


「な、なんですかなっ? なにゆえ小生を睨むのでしょうかっ」

「マイクを寄越せ」


 眉目秀麗な青年は、ゴシップのマイクを奪い取ると流れるように口を開いた。


「催事気分の愚か者どもよ、心して聞け。我々は遠き地、"鬼ヶ島"より参った……王の使い、三連星である」


 ピタリ、とそれまで騒がしかった空間に沈黙が降りる。要良(かなめりょう)を初めとした教員や、運営に扮した忍者も相手を刺激させまいと唇を噛んだ。


 その様を見て機嫌をよくしたらしい、トロアの語気が心なしか強まる。


「私たちの目的はただ一つ。新入りの桃太郎を狩り尽くし、桃神郷の戦力を凋落させること。これは我らが繁栄のための──殲滅だ」


 その言葉を合図に二人の鬼が動きだす。

 命を賭けた戦いが、前触れもなく始まった。


 ▶▶▶


 鬼の襲来に慄いたのは上層部もまた同様だった。桃神郷を攻め込んでくる者は少なからずいるが、その多くは監視員である忍者によって未然に撃退される。問題視されることなく鎮圧されるのだ。


 しかし、桃栗祭(きょう)だけは事情が違った。


「なぜ、よりにもよって今日なんじゃ!」


 フィールドを一望できる崖に二人。からくりマスターは顔をくしゃっと丸めた。


 年に一度の祭典、桃栗祭。

 開催目的は学生のガス抜きやモチベーションの向上など様々だが、重要なことはただ一つ。普段はセキュリティに徹している忍者が、露天商や裏方に回されるということ。


 すなわち。

 この一日だけは、必然的に防御体制が手薄になるのだ。


 激情するマスターの隣で気難しい顔をしている老人、語り手は静かに顎を引く。

「……偶然とは思えませんね。桃栗祭自体は毎年行われている行事ですが、日程に規則性はありません」


「情報漏洩じゃな。幹部級を揃えてきたことから見て間違いまるまい。しかし、乗船前には持ち物検査をしていたはずじゃろう。いったいどうやって……」


「ともかく、起きてしまったことは仕方ありません。事態の収拾に向かいましょう」

「簡単に言ってくれるわい」

「あるではないですか、こういう時のためのからくりが」


 マスターは渋そうな顔で髭を掻いた。


「……超弩級からくり、『王ノ主玉(おうのおもだま)』じゃな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ