第62話 ▶ランク対抗戦
あらすじ:メインサブ制度と桃栗祭
オンバお手製の和食が二人分運ばれてきた。ご飯、味噌汁、シャケに小松菜と隙がない。さっそく「いただきます」をして月尊ちゃんに説明を仰ぐ。
「一旦整理させてくれ。まず、明日から『決闘』で使用できるからくりが二つに制限されると」
「そうですね。メインサブ制度と言いまして、毎年この時期から施行されることになっています。……まあ、メインサブとは言いますが、別にどっちをメインにしろみたいな縛りはありません」
からくりを一つも持っていない俺からすれば、これは結構な追い風である。ゴシップみたいに何個も所持しているやつと闘うのはちとリスキーだったからな。
ふうむ、と真津璃はぱくぱく箸を進める。
「難しいところだ。数が制限される設計上、今まで以上に読み合いが肝要となってくる。出し惜しみしない戦法もありと言えばありだが、常にサブを隠し続けることで相手にプレッシャーをかけられるのが大きい。迂闊に攻められなくなるぞ、これは」
「俺みたいなノーからくりマンが相手だとブラフにもなるよな。『こいつ、全然からくりを使ってこねぇ……! 何を狙ってやがるっ?』的な誤解を生んでもらいたい」
「最後に願望が漏れたな」
ともあれ、この制度自体はそこまで気にならなかった。問題なのは……。
「もも……くりさい、だっけ?」
「そうです!」
さっきとは一転。月尊ちゃんはぱぁっと表情を明るくさせた。手にしたお盆をシェイクして、かなり興奮気味に話し始める。
「毎年9月中旬……今から二週間後ですね、桃神郷では桃栗祭というビッグなお祭りが開催されます。キビダンゴで買える露店なんかもありますが、目玉はなんと言ってもランク対抗戦ですっ!」
学園祭みたいなものか。しかし、孤島ゆえ他校の女子とイチャコラする展開がないのは残念極まりない。
月尊ちゃんは目をキラキラさせながら饒舌に語る。先に来てた連中にも同様のテンションで説明してたのだろうか。
「桃栗祭は別名バトルフェスティバルと呼ばれており、各ランクの代表三名が『力』で闘う勝ち抜き戦です」
「へえ、『力』オンリーの大会か。だったらうちは強いぞ。なんてったって刀一本で人間を薙ぎ払ったゴリラが……」
「あ?」
本気で睨まれました。超怖い。
「でもさ、月尊ちゃん。ランク対抗ってことは当然Aランクとも闘うわけだよな?」
「もちろんです! 対抗戦はトーナメント形式で進行します。要は勝てばいいんですよ」
さらっと凄いパワフルな言葉を吐いたなこの子。団四姉妹のちびっこお姉ちゃん……鳥子だったか。あいつもかなりの脳筋だったと記憶している。やっぱりその辺りは姉妹なのかもしれない。
「皆さんだけに辛い思いはさせません。監督として、私も精一杯プロデュースしますからっ!」
「……か、監督? 月尊ちゃんが?」
「ええ! これはランク対抗戦であると同時に、私たち四姉妹対抗戦でもあるのです。誰を選手として送り出すか。どのからくりを持たせるか。チームに関する権限は、すべて私たち姉妹が握っているんですよ」
なんと。では、今回のランク対抗戦、あらゆる采配を月尊ちゃんに委ねるわけだ。そうと聞いちゃ絶対に優勝するっきゃねえ。まだ誰が選ばれるかわかんないけど。
真津璃はシャケの皮を剥がしながら言う。
「そうなると、ますますメンバーが気になるところだ。新生Dランクということで、まだ顔合わせもできていないからな。どんな人がいるのかも、早いうちから把握しておきたい」
「私も同感です。なので、今日の夕飯後、皆さんにお時間を頂いて、簡単にですがミーティングをさせてもらおうかと考えています」
いいじゃねえか、楽しみだ。そこで強そうなやつがいたらスカウトだってされるかもしれない。月尊ちゃんにスカウト……。
俺もされたい。
「……どうした、唯人。いきなりご飯をかき込みだして」
「もぐもぐ真津璃、闘いはもぐ始まっている。強くなるのに、モゴッ、一秒の無駄さえ許されないんだよっ」
「ああ、そう」
こちらの方など見向きもせず、ひたすら箸を動かし続ける真津璃。可愛げのないやつだな。
月尊ちゃんはお盆を横に置くと、ナチュラルに俺と真津璃の手を取った。変な声が出そうになるのを唇を噛むことで抑え、そのままなされるがままにバンザイのポーズ。
「一度しかないお祭りです! みんなで一緒に頑張りましょうね。私も全面的に協力します。目指せ一番っ、そして優勝賞品!」
えいえいおー、の要領で掴んだ手を上げ下げする月尊ちゃん。その屈託のない笑みとか、口を真一文字に結んで照れを隠す真津璃とか、色々触れたい部分はあるのだが、なによりも。
「──なに、優勝したらなんか貰えるの?」
月尊ちゃんは意味深に頷くと、いたずら好きの小悪魔みたいな表情を作ってみせた。
「ふふふ……。優勝したランクには……なんと、弩級からくりが贈与されちゃいます」
よくしゃべる。




