第六章 入学
〜〜翌朝〜〜
『う〜ん、六時か』
亮が床で伸びながら言った。
それから、亮はクローゼットに向かい、黒いローブに着替え始めた。
〔今日から学校だな。〕
魔法学校には制服はないのだが、ルルの話によると基本的に皆ローブを着ているらしい。
亮はそれからクローゼットの中の衣服や必要な物をトランクに詰めていった。と、言っても必要なものはほとんどないのだが…
荷物の詰め込みが終わった頃にはちょうど、七時になっていた。
亮が食堂に朝食を取りに向かっていると、ルルが浴場から出てきた。朝の散歩から帰ってシャワーを浴びていたらしい。
「あら、リョウ。今から朝食?」
『ああ。』
亮は頷きながら言った。
「じゃあ、一緒に行きましょ。学校生活について色々言わないといけないことがあるから…」
それから、校則やクラスの雰囲気などをルルに教えてもらいながら食堂へと向かった。
それから朝食を食べ、たくさんの冥土や執事に見送られて学園へと向かった。
登校時間中二人は無言のまま学園へと向かった。
学園に着くとルルが口を開いた。
「職員室まで案内するわ。
ついて来て。」
校舎内に入ると既に多くの生徒が行き交っていた。
亮は五分程歩いた。
「あそこが一年の職員室よ。
あっ、今職員室の前に立っている先生が私たちの担任の先生よ。
あの先生に話し掛ければいいと思うわ。」
ルルは職員室の前に立っている30歳前後の男を指差しながら言った。
『あの先生か、一見どこにでもいそうな先生だな。』
「まぁね。
じゃあ、私は先に教室に行っているから。」
ルルはそう言って近くの階段を登って行ってしまった。
ルルが行ってしまうのを見ると、亮は職員室の前に立っている担任に少しずつ歩み寄っていった。
『あの〜、
今日編入する亮ですが…』
亮は近くまで寄り、少し小声で先生に言った。
「おっ、君がリョウか…
話は学長から聞いている。人間界から来たんだってなぁ。」
『はい、今後宜しくお願いします。』
亮は先程よりも大きな声で言った。
「ああ、宜しく。
さあ、ついて来なさい。教室まで案内するから。」
そう言って、担任はルルが登っていった階段を上がって行った。
亮はその担任について行った。周りはもう着席の時間に近いからかほとんど人がいない。
暫く歩いて行くと、一年S組と書かれた教室に着いた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
教室にたどり着くと同時に学校の予鈴が鳴った。この学校の予鈴は実際に鐘を鳴らしているようだ。
「では、私が合図したら教室に入って自己紹介をしなさい。」
鐘が鳴り終えると担任は言った。
『はい』
亮は素直に返事をし、担任は教室へと入っていった。
〜〜教室〜〜
「おはよう、ルル」
ルルが教室に入ると挨拶をかけられた。
ルルが声の主の方へ振り向くとルルの親友ミリーがいた。
「おはよう。」
ルルは挨拶を返した。ミリーの側にはスヒルがいる。先程までミリーはスヒルと話していたようだ。
ルルは大きなバッグを机に置きミリーの側に歩み寄った。
「リョウも今日から学校だろ?」
ルルが近づくとスヒルが聞いた。
「ええ、先生と一緒に来ると思うわ。」
ルルはスヒルの質問に答えた。
「リョウ?誰それ?」
そう言えば、ミリーはまだリョウのことを知らない。
「今日、編入する子よ。」
「ウソー。どんな子?」
ミリーは、はしゃいでいる。
「それは来てからのお楽しみ。」
「もったいぶらないで教えてよ〜。」
「じゃあ、これだけは言っておくわ。
リョウは強いよ。」
「えっ?ルル、その子と闘ったことあるの?」
ミリーは驚きながら言った。
「ううん、でも身体能力抜群だし、魔力も凄い。なんだか、彼には潜在的な力を感じるわ。」
「ああ、ルルの言う通りだ。あいつはただ者ではない。俺も手を握った時、あいつの中にある異質的な力を感じた。」
ルルが言うとスヒルもそれに賛同するように言った。
「そう…」
ミリーは落ち着いて言った。
「あっ、そろそろ鳴るわよ。」
ルルは時計を見て言った。
時計の針は八時三十分前を指していた。
三人は時計の針を見て自らの席に着いた。
周りで話している生徒も着席した。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
最後の一人が着席すると同時に予鈴が鳴り、少し間をおいて担任が入ってきた。
「みんな、おはよう。早速、今日の連絡事項を伝えたいところだが、今日からこのクラスに入る編入生を紹介しようと思う。」
担任が愛想なく言うと教室内がざわめき始めた。
「入って来なさい。」
担任が廊下に向かって言った。
〜〜廊下〜〜
担任が教室に入った後、亮はどんな自己紹介をするか考えていた。
「入って来なさい。」
ある程度構想をたてたところで担任の合図があった。亮がドキドキしながら教室に入ろうとすると…
「遅刻だーーーーー!!」
亮は不意に後ろから叫び声が聞こえ、足が止まり後ろを振り向いた。
すると、髪を金髪に染めたオールバックで長身の少年が走って来た。
その少年は固まっている亮には目もくれずに教室に飛び込んだ。
その直後、亮はハッとして教室に首だけ出して中の様子を伺った。
〜〜再び教室〜〜
先生の声の後に入って来たのはノベスだった。
先生や編入生を期待していた生徒は目を点にさせ時間が止まったかのように見えた。
止まった時間を動かしたのはある一人の生徒だった。
「センセー、編入生とはノベスのことですか?」
「ん?俺が編入生?それじゃあ、まずは自己紹介か」
ノベスは調子に乗って勝ってに自己紹介をし始めた。
「え〜、今日編入してきたノベスです。属性は火。趣味は遅刻と授業中の昼寝。長身で学園一カッコいい俺ですが、どうぞよろしブー!?」
自己紹介があと少しと言うところで我に返った担任がノベスの顔に右ストレートパンチを喰らわしノベスを吹っ飛ばした。
「お前、何回遅刻したら気が済むんだ!?
しかも、学園一カッコいいだと?
学園一カッコいいのは俺に決まっているだろうがぁー!」
〔わ〜、担任が初日早々キレたー。それに怒るところなんか間違ってる〜。〕
亮が扉の端で顔だけ出しながら思った。
「センセー、早く編入生を紹介して下さ〜い。」
いつものパターンっていう風に、ある女子生徒が呆れながら言った。
「おっ。そうだった、そうだった。」
ここで担任がくだらない口論を切り止めて言った。
「リョウ、入って来い。」
そう言われて、顔だけ出していた亮は慌てて教室内に入った。
亮が教室内に入った瞬間、教室は一気にうるさくなった。ルルを除く女子は「キャーキャー」叫びまくり、男子は羨ましい目で(特にノベス&担任)騒ぎ始めるのだった。
亮は正直驚いた。亮は人間界で昔からカッコいいとか言われたことがあったが、ここまで言われるのは初めてだった。
魔界は人間界とかっこよさの基準が違うらしい。
騒ぎの途中で担任は止めに入り、クラス内を静めた。
「これから彼に自己紹介をしてもらう。」
担任はそういい、亮に目で合図をした。亮はそれに合わせて自己紹介を始めた。
『えぇっと…
今日からこのクラスにお世話になるリョウです。属性は無。以後よろしく。』
短い自己紹介だったが教室を盛り上げるには十分だった。
属性が無だと言うことが皆を盛り上げたのだ。
とても稀少な魔界での八人目の無属性を操る者が自分たちのクラスに入ったという興奮が教室内に満たしたのだった。
「リョウ、一番後ろの席が空いてるからそこに座りなさい。」
ある程度騒いだところで担任が興奮を静め、亮に指示した。
「あ!そこ俺の席」
亮はそれを聞いて足を止めたが、
「俺の席だぁ〜?遅刻&授業居眠りするような奴にはその席でいいだろう。」
担任は指を指しながら言った。その指の先には一番前の席に置いてある、足が一本足りないボロボロの机に背もたれがなく、座ったら板が割れそうな椅子があった。
「マジっすか?」
「ああ、残念ながらマジだ。これから遅刻、授業居眠りを一切しないと誓うなら元の席にしてやろう。」
「……これからは遅刻、授業居眠りは一切しないことを誓います…」
担任が偉そうに言うとノベスは泣きそうになりながら低い声で言った。
「今後からその誓いを破るなよ。」
「……はい」
ノベスが低い声で返事をした。
「よし、元の席に戻って良いぞ。
さあ、今日の連絡事項は…」
『先生、俺はどこに座れば…〔忘れられた…〕』
「お〜、そうだった、そうだった。リョウはルルの隣に座れ。」
亮は俯き[ウツムキ]溜め息を吐きながら自分の席に向かった。
それから連絡事項を聞き、その後の長い始業式を何とかやり過ごし、1日の学校生活を終わらせた。
帰りのHRが終わるとみんな一斉に荷物を持って教室を出て行った。
ルル「さあ、リョウも行くわよ。」
『行くってどこに?』
ミリー「寮に決まっているじゃない。荷物を置かないといけないでしょ。」
ルルの側にいたミリーが答えた。
『…誰?』
亮はクラスメートの名前はルルとスヒルとノベスくらいしか知らない。
ミリー「あっ、そう言えば自己紹介まだだったわね。
私の名前はミリー。属性は水よ。よろしくね」
ミリーは最後にウィンクをして言った。
『よろしく。
そう言えばルルの属性まだ聞いてなかったな〜』
ルル「そういえばそうね。
私は風よ。」
『風か〜、』
スヒル「おい、行くぞ。」
スヒルは待ちくたびれたような感じで言った。どうやら四人で行くつもりらしい。
亮達は荷物を持って教室を出ようとした。
「待って〜」
教室を出ようとするとなんとなく耳障りな声がした。
亮達が振り向くとそこにはノベスがいた。
亮達は無視して行こうとしたら、ノベスが走って来たので一緒に行くことになった。
「俺様を置いていくなよ〜」
ノベスがグチグチ言っていたがみんなそれを無視し、ミリーが口を開いた。
「リョウはどこから来たの?ラウスから?それとも他の所から?」
『いや〜、なんて言うか〜俺、実を言うとこの世界の人間じゃないんだ。』
「「「え!?」」」
ルル以外の三人が驚いた。
「それって、どういうこと?」
ミリーが不思議そうに尋ねた。
『俺は人間界の人間なんだ。』
それから亮はラウス郊外で話したことを五人にもう一度聞かせ、これまでの経緯も話した。勿論自分が竜人だと言うことは言っていない。
話の途中でミリーとノベスが「アリステル現象って何?」とうるさかったので、ルルが説明した。アリステル現象という言葉は専門的用語らしく知っている人はそういないらしい。
そう言うことからすると、それを理解していたルルやスヒルはそれなりに物知りだと言うことが分かる。
亮の話が終わる頃にちょうど学生寮に着いた。
学生寮も最近建て替えたらしくきれいで外見は高級ホテルを思わせる建物だった。
その様な建物が亮の周りに5棟建っている。
中に入るとロビーがあり高級感を沸かせるシャンデリアや絵画やオブジェなどもあった。
何人か生徒はロビーで鍵の受け渡しをしている。
そこでノベス、ミリー、スヒルは亮、ルルに別れを告げ自分の部屋の鍵を貰いにロビーに行き鍵を貰って各々の部屋へと帰って行った。
『で、俺の部屋は?』
亮はルルに聞いた。
「ええ、これから部屋の手続きをするわよ。
ついてきて。」
亮はルルに言われるままルルのあとについていきロビーに向かった。
「あのー、今日から学園に編入したリョウですけど寮の手続きをお願いします。」
ルルがカウンターの受付の人に言った。
「かしこまりました。それではこの必要書類に書き込みをお願いします。」
「はい。じゃあ、亮。これ書いて。」
ルルは書類を受け取りそれを亮に渡した。
亮はその書類を受け取り、添えつけられた羽ペンで魔界の字で記入欄に必要事項を記入した。
書類には名前、性別、クラスなど基本情報を書き、後の方には部屋はどのくらいの広さがいいかとか、何色が好きか、家具についてなど部屋の事についていろいろ問われていた。
亮が魔界の字が分かるのは亮自身も分からない。
『お願いします。』
亮は書類を受付に渡した。
「かしこまりました。では、準備が整うまで暫くお待ち下さい。」
亮とルルはその後ロビーで話しながら呼ばれるのを待っていた。
「リョウ様、お部屋の準備が整いました。お部屋は1229号室になります。」
『どうも。』
亮はお礼を言って、ルルの元に向かった。
「何号室だった?」
『1229号室かな。』
「え?奇遇ね私は1228号室よ。亮の向かいの部屋。多分、学長の配慮だと思うけど。
じゃあ行きましょ。」
ルルが座っていたソファーから腰を上げて言った。
『どこから上の階に行くんだ?』
亮が辺りを見渡しながら言った。どこにも階段やエレベーターは見当たらない。
「あれよ。」
ルルは指差しながら言った。その先には四つの空間移転魔法の魔法陣があった。
「あの魔法陣に乗って行くの右から二階、三階、四階、五階に通じているのよ。
1001号室から1500号室までは三階にあるわ。
さっ、行きましょ」
亮はルルに手を引かれて右から三つ目の魔法陣に乗った。
魔法陣に乗ると目の前が写真を撮られた時のように、一瞬光り光が消えると亮達は長いレッドカーペットの敷いてある廊下に立っていた。廊下には左右対照にノブのないドアが三メートルおきに並んでいた。ノブのないドアの事を除けばまるでホテルの廊下だ。
「ここが三階。右側が2001号室からの奇数番号の部屋、左側が2002号室からの偶数番号の部屋。だから亮の部屋は右側のドアから114番目のドアね。」
『114番目ってなが!
ドアの間隔的に考えて計算したらここから350メートルくらいあるじゃん。
この寮って外見こんなに大きかったっけ?』
確かに外で寮を見たとき寮の長さは100メートル前後だった。
「多分魔法で内部を大きくしているんだと思うわ。確かに長いけど寮の中は部屋を除いて空間移転使えるから空間移転魔法を習ったら、一瞬で行けるわよ。」
『もう習ったのか?』
「ううん。でも、空間移転魔法は日常生活でよく使う魔法だから既に知っている人は多いわ。
歩くの面倒くさいなら空間移転で連れて行ってあげよっか?部屋は向かいなんだから大丈夫だよ。」
『ああ、頼むよ。』
亮がそう言うとルルが手を繋いで空間移転を使った。
再び一瞬明るくなり視界が戻ると目の前に先ほどと同じようにノブのないドアがあった。
「ここが私の部屋。でその向かいの部屋がリョウの部屋。」
『このドアどうやって開けるんだ?』
それは亮にとってこの寮に来た時からの疑問だった。
「ドアに魔力を流すのよ。魔力が鍵の代わりになっているの。魔力を流すって言ってもほんの少しでいいからドアを触る程度でいいのよ。」
ルルはそう言って自分の部屋のドアに触れた。すると、ドアは勝手に開いた。
「ね?閉めるときは勝手に閉まるから。」
亮はルルがやったように自分のドアを触ってみた。するとドアは、ルルの時のように開いた。
「じゃあ、またね。」
『おう、また明日な。』
そう言って、二人は各々の部屋へと入っていった。
『ここが俺の部屋か…』
部屋は亮が書類で書いた通り、明るい色で統一されており、部屋は1LDKだが面積は思った以上に広く一人暮らしにしては少し広すぎる位だ。しかも、人間界のようにテレビやAV機器はなくさっぱりとしていた。リビングにはと本の入った本棚、リビングテーブルと椅子、それとソファーがあるくらいだ。
キッチンを覗いてみると食器棚、水道の他、コンロと冷蔵庫しかなかった。コンロや冷蔵庫には電気は使われておらず魔法の力で動いているようだ。
亮が冷蔵庫の中を見てみると中には見たことのない食材が沢山詰まっており、腐敗のことを考えなければ1ヶ月分はありそうである。亮は早速冷蔵庫の中からいくつか食材を取り出し調理を始めた。
一時間後
亮は親子丼らしきものとコンソメスープらしきものを作った。親子丼なので亮は本当は味噌汁がよかったのだが、この世界にはあいにく味噌やそれに代わる食材がなく、このようなコンソメスープらしきものになったのである。
コンコン
亮がいざ食べようとするとドアがノックされた。
「私、ルルよ。」
亮がドアを開けるとルルが立っていた。
『なに?』
「すっかりご飯のことを忘れてたわ。学食に行きましょ。」
ルルが微笑みながら言った。
『え!?夕ご飯ならもう作っちゃったけど』
「うそ、リョウって料理できるの?」
ルルは驚きながら言った。
『まあ、向こうでは誰もいなかったから、よく自炊してたし』
「そうなんだ〜。ん、確かにいい匂いがするわね。」
ルルは匂いの元を辿るようにして亮の部屋に入って行き親子丼とコンソメスープの所へ辿り着いた。
「ちょっと味見。」
そこでルルは親子丼を一口、また一口、遂にはコンソメスープにも手を出し始めた。
『あっ、俺の晩飯!』
ルルは味見と言いながら亮の言葉には耳にもせず
「ごちそうさまでした。」
『おそまつ…さまでした。』
最終的には全部食べられてしまった。
「リョウの料理美味しかったわよ。じゃあ、また明日ね。」
ルルは手を振りながら何も悪気のなさそうに部屋を出て行った。恐らく亮の晩飯だったことをすっかり忘れているのだろう。
『じゃあ』
亮は無理やり笑顔を作り手を振った。
ルルが部屋を出ていくと亮は溜め息を吐いて晩飯を諦め、寝ることにした。
〔明日は魔器生成と召還術があるのか〜〕
勿論そのあと、錬金術と魔法歴、基本魔術の授業が入っている。ルルの話によると授業は一日90分X5時間あり、大学の授業のやり方である




