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黒き竜  作者: copan
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第五章 魔界

薄暗い森の中に突然一頭の黒い竜が現われた。

 

 

 

その黒い竜は姿を現すと同時に一人の少年…亮に身を変えた。

 

 

 

『さてと、戻って来た。

 

 

 

この暗い森……魔鬼山……じゃないね……

 

 

 

…………此所どこぉ〜!?』

 

 

 

確かに周りの暗さや雰囲気は魔鬼山に似ているのだが、明らかに人間界には生えていない様な奇形の草木が周りにあちこちに生えている。

 

 

 

すると突然、

 

 

 

「キャーーーーー!」

 

 

 

女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

声の聞こえた方向をみると亮と同い年くらいの少女がウルフに追いかけられている。

 

 

 

「誰か助けて〜!」

 

 

 

少女は走りながら叫んでいる。

 

 

 

亮は竜化して助けようと思ったが、流石に人前に竜の姿をさらけ出すのは不味いので思いとどまった。

 

 

 

亮は一瞬考えた。

 

 

 

〔竜を見せるのは不味いか、だからと言って武器は持ってないし…基本魔法で良いのあったかな〜

 

 

 

そうだ!この手でいこう。これなら魔法も何とか誤魔化せるだろ。〕


亮は近くにあった大きな岩を魔法で持ち上げ、その岩をウルフに投げ付けた。

 

 

 

その岩はかなり速いスピードでウルフに真直ぐ飛んでいった。

 

 

 

その時、少女が何かにつまずいたようで前に転んだ。

 

 

 

〔不味い。間に合え!〕

 

 

 

ウルフは少女に飛掛かった。

 

 

 

「キャァァァァァァ」

 

 

 

少女が叫んだ。

 

 

 

 

ドス、、、バコーン!

 

 

 

 

 

 

〔間に合った〜。〕

 

 

亮は溜め息を吐きながら言った。

 

 

 

少女に飛び付こうと大きくジャンプしたウルフは少女に噛み付く寸前に巨大な岩が激突。

ウルフは石に飛され近くの木に衝突し、しかもそこに巨大な岩が襲ってきたからにはひとたまりもない。

 

 

 

ウルフは木と岩に挟まれ潰れた。

 

 

 

その周りには青い血とウルフの肉が散乱しているだけだった。

 

 

 

少女は目を丸くさせながら岩が飛んで来た方向、つまり亮を見た。


『大丈夫か?』

 

 

 

亮は少女に近付きながら聞いた。

 

 

 

「え!?あ、大丈夫です。」

 

 

 

少女は見た事のない少年に不意に声を掛けられたせいか、ぎこちなく答えた。

 

 

 

『そうか良かった。』

 

 

亮は安心し一息吐いた。

 

 

 

「物体浮游魔法ですか?」

 

 

 

『え!?魔法知ってんの?』

 

 

 

亮は相当驚いた。

何故なら、人間界では魔法は架空のものだとされているのに自分と同い年くらいの少女が物体浮游魔法を知っていたからだ。

 

 

 

「馬鹿にしないで下さいよ。私は17ですよ。その様な質問は幼児に言って下さい。」

 

 

 

〔ん?17歳で知ってて当たり前?

 

 

あれ?もしかして……〕 

 

 

 

『ねぇ、ここって何処?』

 

 

 

亮は不審に思い聞いてみた。


「さっきから何を聞いているんですか?

ここはミース国の首都ラウスの外れの森です。」

 

 

 

〔ラウス?どっかで見た事ある言葉だなぁ。

 

 

 

そうだ!母さんの魔導書だ!魔導書の裏表紙にラウス魔法学校って書いてあった!

 

 

 

ん?待てよ…と、いうことは此処は魔界?〕

 

 

 

『ねぇ、変な事聞くけど、此処って魔界?』

 

 

 

「そうだけど…」

 

 

 

少女は呆れながら言った。

 

 

 

亮〔なんてこった。人間界かと思ったら魔界かよ。もう一回唱えれば戻れるかなぁ?

 



いや、また変な世界に飛んだら厄介だ。




しょうがない。ここ、魔界で時空移転魔法の事をよく調べてから帰るか…〕




「あの〜。」




少女が声を掛けてきた。『なんだ?』

 

 

 

「さっきはありがとう。

 

 

 

私の名前はルル。

あなたは?」

 

 

 

『亮だ』

 

 

 

「リョウか、それにしても変わった服装ね。」

 

 

 

この時亮は人間界の服を着ていたが、ルルは紺色のローブを身に纏って[マトッテ]いた。

 

 

「まぁ、いいわ。

お礼がしたいから私の家に来る?」

 

 

 

『いいのか?』

 

 

 

「うん、別に構わないわよ。家でご馳走したいから。」

 

 

 

亮は“ご馳走”という単語を聞いて今、自分が今までにないくらいものすごく空腹だということに気付いた。

 

 

 

それもその筈、竜化していたからできたものの亮は35、6日間ずっと飲まず食わずだった。

 

 

 

その状態で竜化を解いたのだから、人間では有り得ない程腹が減る。

 

 

 

『じぁあ、お言葉に甘えて…』

 

 

 

亮は悪いと思いながらもその提案を受け入れた。

「じゃあ、ついて来て。」

 

亮は少女の後に空腹を我慢しながらついて行った。

 

『何でルルはあそこにいたんだ?』

 

「朝の散歩。朝の散歩は私の日課だからね。

 

リョウこそ何であそこにいたの?」

 

ルルは逆に聞き返してきた。

 

〔ギクッ!聞くんじゃなかったな〜。

 

どう誤魔化すか、〕

 

『お、俺も散歩だ。』

 

「そう…」

 

ルルは疑いの目を向けながら言った。

 

そうこう話している内に亮達は森を抜けていた。

 

森を抜けると目の前に大きな城門があった。

 

『スゲェ〜』

 

亮は不意に声に出してしまった。

 

「あなたは本当に此処の住民?

此処の住民であれば驚く事はないでしょう?」

 

ルルは疑いの目を向け立ち止まった。

 

〔チッ、鋭いな。〕

 

『…仕方ない。本当の事を言うよ。

 

俺は人間界から来たんだ。』

 

「そんな訳ないでしょう。

 

異世界に行くには時空移転魔法しかないし…

 

それに人間界には魔法が発展していないでしょう?」


〔くっ、どうするか。

 

 

 

待てよ、そう言えばジョゾが魔界と人間界では…〕

 

 

 

『アリステル現象って言うのを知ってるか?』

 

 

 

「え?ええ、知っているけど……

もしかして、それに巻き込まれたの?」

 

 

 

『そういう事。

だから、今までこの森でさまよっていた。』

 

 

 

「そうなんだ…

じぁあ、何で魔法が使えるの?

向こうの世界は魔法が発展していないんでしょ?」

 

 

 

『母がこっちの人間だったからな。』

 

 

 

「じゃあ、お母様はどこに?」

 

 

 

『母は死んだ。』

 

 

 

「ご、ごめんなさい。」

 

 

 

すると、ルルの疑いの目がなくなった。

 

 

 

『いいんだ。それより早く行こうぜ。』

 

 

 

〔半分嘘だけど、半分本当だからこれでいいんだよな。〕

 

 

 

「あっ、うん。」

 

 

 

二人は大きな城門をくぐり、城下町へと入って行った。


城下町に入ると、市場が催されており飯屋や雑貨屋、武器屋に服屋などの出店がずらりと並んでいた。辺りにはまだ朝だと言うのに人でにぎわっていた。

 

 

 

そんな中ルルは人込みの中を突き進んでいく。

 

 

 

亮は人込みを掻き分けながらルルのあとについて行くだけで精一杯だった。

 

 

 

暫く歩いていくと、市場と違って閑静な住宅街に出た。

 

 

 

周りには、何処かの古い山小屋の様な小さく汚れた木造の家もあれば、

綺麗な緑色の整備された芝生の周りに植物園のように多彩な花が植えられている広大な庭のある、漫画やアニメでしか見た事のない様な巨大な豪邸もある。

 

 

 

ルルは亮が眺めていた豪邸に入って行った。

 

 

 

『ちょっと、ルル。何勝ってに入っているんだよ!

怒られるぞ。』

 

 

 

亮は慌てて言ったが、

ルルは一時キョトンとした顔をしたあと笑いながら言った。

 

 

 

「何言っているのよ。

此処が私の家よ。」


『はい!?』

 

 

 

亮は驚いた。

 

 

 

「私の家は貴族なの。

貴族ならばこんな豪邸は当たり前よ。」

 

 

 

ルルは自慢気に言った。

 

 

 

そんなルルをよそに亮は口をぽかんと開けたまま固まっている。

 

 

 

「早く来ないと置いて行くわよ。」

 

 

 

『お、おう。』

 

 

 

亮は慌ててルルについて行った。

 

 

 

亮は門をくぐり50mくらい先にある玄関を目指した。

 

 

 

ルルの後に続いて玄関の扉をくぐると、

 

 

 

「「おかえりなさいませ。」」

 

 

 

数十名の冥土[メイド]や執事がルルの帰りを出迎えた。

 

 

 

すると一人の執事がルルに近付いた。

 

 

 

「おかえりなさいませ、ルル様。




そちらの方はどちら様で?」

 

 

 

「私の命の恩人のリョウよ。

 

 

 

彼にお礼としてご馳走をしたいから連れてきたの。

 

 

 

だから、食事の用意お願いね。」

 

 

 

「かしこまりました。

それではすぐにでも用意させて頂きます。

 

 

 

それではリョウ様、食事の用意が整うまで十分お寛ぎ[オクツロギ]下さい。」

 

 

 

「じゃあ、食事が出来るまで部屋で寛いでいればいいわ。

 

 

 

ついて来て!」


それから亮は屋敷中を案内され最後に亮の部屋を案内された。

 

 

 

「此処がリョウの部屋。」

 

 

 

『うぉ〜。凄い。』

 

 

 

部屋の中はテレビで紹介されているような超高級ホテルのよう…いや、それ以上にゴージャス感があり、広さも民家一軒分以上あった。

 

 

 

「ごめんね。こんな粗末な部屋で…」

 

 

 

『どこが粗末なんだよ!

 

 

 

全然良いじゃないか、俺なんかがこんな部屋を使っても構わないのかよ!』

 

 

 

「別に構わないわよ。

 

 

 

どうせなら今日、此処に泊まっていく?

泊まる場所決ってないんでしょ?

 

 

 

父様も母様も暫く戻ってこないから。」

 

 

 

『いいのか?』

 

 

 

「うん。ついでに私と同じ魔法学校に入らない?」

 

 

 

『え……』

 

 

 

〔そう言えば、基本魔法は覚えたけど、属性魔法はまだだったなぁ〜。

 

 

 

時空移転魔法を知るにもちょうどいいし…〕

 

 

 

『いいのか?』

 

 

 

「良いわよ。

 

 

 

どうせ人間界へは戻れないんでしょ?

 

 

 

これからこっちの世界で生きていくのであれば魔法は必要不可欠だし…」


『学費とかはいいのか?

 

俺、金持っていないんだけど…』

 

「学費?魔法学校は学費はタダよ。

 

寮生活での生活費はいるけど、ギルドに入るまで私が負担してあげるわ。」

 

『ギルド?』

 

「ええ、ギルドはまぁ、簡単に言えば何でも屋ってところね。そこでなら生活費ぐらい十分賄える[マカナエル]わ。」

 

『そうか、ありがとう。

 

それじぁ、お言葉に甘えてそうするよ。』

 

「分かったわ。それじぁ、編入の手続きはこっちでしておくわ。

 

三日後から学校だからそれまで此所に泊まっていけばいいわ。」

 

『分かった。ありがとう。』

 

「それじぁあ、またね。

 

食事の用意が整ったら冥土が呼びに来ると思うから、ゆっくり寛いでね。」

 

ルルはそう言って部屋を出ていった。


亮は呼ばれるまでベッドで一眠りしようとした。

 

だが、なかなか寝付けなかった。

 

別に眠くない訳ではなく、つい昨日までゴツゴツした石の上で寝ていたので、いきなり超ふかふかのベットでは眠れないのだ。

 

仕方ないので亮は床に寝る事にした。

 

どちらかと言うと亮にとっては床の方が寝やすく、すぐに丸くなって寝た。

 

〜〜一時間後〜〜

 

 

「…様、…ウ様、リョウ様。」

 

〔誰だ?俺の眠りを妨げる奴は?〕

 

亮がゆっくり目を開けると心配そうな顔をして亮を揺すっている冥土がいる。

 

「リョウ様、良かった。

大丈夫ですか?」

 

冥土は心配そうに尋ねた。

 

『へ?大丈夫って何が?』

 

亮がさりげなく言うと、冥土はほっぺたを膨らませて言った。

 

「何がって、床に倒れていたではありませんか。

心配したんですよ。」

 

この時になって亮は冥土が何を心配していたか分かった。

 

『あ、大丈夫だ。ただ単に寝てただけだから。』

 

「寝るんだったらベットで寝て下さいよ。

余計に心配するじゃないですか!」

 

冥土は少し怒った口調で言った。

 

『あぁ、悪い悪い。』

 

「はぁ、食事の用意が整いました。食堂にご案内しますのでついて来て下さい。」


亮は冥土の後について行くと大きな部屋に辿り着いた。

 

室内には真ん中に金でできた大きな長机があり、その上には見た事のない様なとても美味しそうな料理が並んでいた。

 

亮はその料理を見た瞬間涎[ヨダレ]が垂れそうになった。

 

机の端っこにはルルが黒いドレスを着て座っている。

 

「さあ、亮。これ全部食べても良いわよ。」

 

ルルは冗談混じりで微笑みながら言った。

 

『本当に全部食べても良いのか?』

 

亮は真剣な顔をして言った。

 

「た、食べられるのであれば…」

 

ルルは余りに亮が真剣な顔をして言うので少し引きずって言った。

 

ルルがそう言った瞬間亮はパッと椅子に座り料理を貪り[ムサボリ]喰い始めた。

 

亮は次から次へと皿を綺麗にしてゆき、人間とは思えないような早さで食べていった。(実際、人間ではないのだが…)


ルルや亮の周りを取り囲んでいる執事や冥土はその光景を見て目を丸くしている。

 

一時間と経たない内に山の様にあった机の上の料理は今は綺麗な皿だけになっている。

 

「リョウ、あなた食べ過ぎよ!

さっきの料理は20人前くらいあったのよ!」

 

『え、やっぱ全部食べるのは不味かったのか?

 

それなら謝るが…』

 

「いや、別に良かったんだけど、あなたいつもそんな大食いなの?」

 

『いや、いつもはほとんど食べないのだが、今回は重度に腹が減っててなぁ〜。

 

なんせ35、6日間、飲ま………』

 

〔しまった。

“35、6日間、飲まず食わずだった”

なんて言ったらまた怪しまれるなぁ〜〕

 

「35、6日間、のま?」

 

『この世界に来てから35、6日間の魔物に警戒しながらさまよっていたから、ろくなもの食ってなかったんだ。』

 

「ふ〜ん、そうだったんだ。大変だったわね。」

 

〔ふぅ〜、何とか誤魔化せた。〕

 

『あぁ、大変だったぞ。

 

それよりラウス魔法学校について聞かせてくれないか?』

 

亮は注意を逸らすために話題を変えた。


「良いわよ。

ラウス魔法学校はミース国の三年制男女共学の魔法学校の五校の内の一校で全校生徒約一万人前後。場所は此所から歩いて15分程度の所にあるわ。

 

今は夏休み中で三日後からまた学校なの。あと、全寮制だから学校がまた始まると寮生活になるわ。」

 

『どんな事を学ぶんだ?』

 

「魔法学校って言うくらいなんだから、まず魔法ね。

他にも剣術、錬金術、魔法歴や調合術とかかな。」

 

『ふ〜ん。』

 

「他に何か聞きたい事とかある?」

 

『いや、特にない。』

 

「そう、じゃあ、ちょと出かけない?

 

亮の服とか買わないといけないしね。」

 

『え?服も買ってくれるのか?』

 

「仕方ないでしょ。リョウはお金持ってないんだから。それに、この世界じゃあその服装はまずいしね。」

 

『悪いなぁ〜。ありがとう。』

 

「良いのよ別に、こっちだって恩返しのつもりでやってるんだから…

 

さあ、行きましょ。」

 

ルルと亮は屋敷を出て街に向かった。


〜〜ラウス城下町〜〜  

 

「此所はミース国の首都ラウスの城下町よ。

 

ここに来れば必要な物は何でも揃うわ。」

 

ルルは周りを歩きながら亮に説明した。

 

まず、亮達は衣服屋に行った。

亮の服を買うためだ。

 

そこで亮は日が頭の上に登るまでルルに着せ替え人形にされていた。

 

結局買った物は、黒いロープに黒いマント、黒いズボンに黒い…

買った物の7、8割が黒い衣服だった。

 

「リョウって黒が似合うのね、買った物ほとんど黒になっちゃった。」

 

『あぁ、だがこれは………

 

 

買い過ぎだー!』

 

亮は左右両方の手に大きな袋を三袋ずつ持っている。

 

だが、亮が竜人のせいかまたは約30日間のジョゾの特訓のせいか亮は少しも両腕に重さを感じなかった。

 

だからといって、両腕に三袋ずつ人込みの中を歩くのは邪魔である。

 

「そう?でも、こんなの序の口よ。」

 

ルルは微笑みながら言うと少し喫茶店で昼食を取り、今度は高級ブランド店に連れて来られ日が沈むまで買い物に付き合わされた。(午後に買った物は全てルル用)


帰る頃には亮の両手には10袋ずつ吊り下げられていた。

 

常人ならそれを持ち上げられないだろう。

 

だが、亮はそれらを難なく持ち上げ歩き回っている。

 

しかし、

 

「おい、いってなー!邪魔なんだよ!」

 

『すみません、すみません。』

 

亮が動く度に荷物が通行人にぶつかり、その都度に亮に暴言が吐かれる。

そして、その都度に亮が謝る。

 

そんな中、ルルはスキップで次の場所へと向かう。

 

これが日没まで続いたので亮は身体的な疲労ではなく、精神的な疲労でボロボロだった。

 

しかもルルが帰り道、屋敷の門の前で亮に決定的な精神的ダメージを与える一言が吐かれた。

 

 

 

 

「物体浮游魔法を使えば良かったのに…」

 

それを聞いた瞬間、亮の目は点になり石の様に固まった。

 

ルルはそれに構わず屋敷の中へと帰って行った。

 

「リョウ、何してんの?早く帰るわよ。」

 

ルルが家に入る間際に亮にそう言った。

 

『お、おう。』

 

亮はハッとして最後まで意地で魔法を使わず、泣きそうになりながら屋敷に帰っていった。

 

そして亮は決意した

 

 

 

もう、ルルとは一緒に買い物に行かないと…


〜〜翌朝、亮の部屋〜〜

 

 

『う〜ん、良く寝られた〜。』

 

亮は床で伸びながら言った。

 

昨晩は昨日と同じ様に床で寝た。

 

やはり、亮にとってはふかふかのベットは合わないようだ。

 

コンコン

 

その時、ドアのノックの音が聞こえた。

 

『どうぞ。』

 

ガチャ、

 

亮の声と同時にドアが開きルルが部屋に入ってきた。

 

〔まさか…〕

 

亮はルルの服装を見て嫌な予感がした。

 

「リョ〜ウ。お買い物に行きましょ。」

 

亮の嫌な予感は的中した。

 

だが、亮はこんな時のために今日の用事を作っておいた。

 

『朝っぱらから買い物かよ!

 

だが、残念だな。今日は図書館に行く用事がある。』

 

「何で図書館なんかに行くの?」

 

ルルは不思議そうに聞いた。

 

『まだ、この世界の事が良く分からないからだ。

あと二日で学校も始まることだしな。』

 

「え〜。しょうがないなぁ。

 

仕方ないからミリーと行こっか。」

 

ルルは残念そうに言って、亮の部屋を立ち去った。

 

〔ミリー?まぁ、誰だか分かんないけど、きっとルルの友達だろう。〕

 

亮はそれから朝食を取り、図書館へ向かった。(図書館の場所は昨日、ルルに教えてもらった。)


〜〜ラウス王立図書館〜〜

 

 

 

〔お〜、やっぱ王立ってだけあってでかいなぁ。〕

 

ラウス王立図書館は外見からすると城だ。

 

ルルの話によると昔の古城を改装してそのまま図書館にしたらしい。

 

中は地下一階から地上八階のフロアまで全て本が置いてあり(しかし、地下一階は閲覧禁止図書)、蔵書数は10万冊を超えるミース国最大の図書館だ。

 

亮は魔界での常識を身に着けるために児童図書のフロアで本を読み耽っていた。

 

だが、17歳の少年が児童図書のフロアにいることはかなり恥ずかしい。

 

更に、亮は時々来る子どもに「お兄ちゃんこれ読んで〜」や「お兄ちゃん隠れんぼしよ〜」など子どもに遊ばれていた。

 

亮は日が暮れる前に何とかして児童書を何冊か読み魔界の常識を身に着ける事が出来た。

 

そして、図書館の閉館までまだ時間があったので今度は時空移転魔法について調べる事にした。

 

だが、専門書などで探してみたが一冊しか見つからず、その本にも時空移転魔法については、

 

“魔界、竜界、人間界を移動するための魔法”

 

としか書いていなかった。

 

仕方がないのでこの日はこれで帰る事にした。

遅れましたがここで亮が図書館で学んだ魔界の常識の一部を書きます。

 

魔界は現在、ナルニス大陸を支配するミース国、ガストロ大陸を支配するゲブクロス帝国、サード大陸を支配するアウステル共和国、キヤング大陸を支配するホルニース国の四ヵ国があり、その四ヵ国の平和条約によって世界の均衡は保たれている。

 

また、魔界は魔法が発達している代わりに科学が進歩しておらず電気と言うものは存在しない。

 

そして、各大陸ごとに“秘境”と呼ばれる場所が存在し、そこは自然が多く魔物のすみかであり人を寄せ付けない。

 

以上です。


〜〜翌日〜〜

 

今日は亮が明日、編入すると言う事もあって挨拶をするためにルルと学校へ向かった。

 

魔法学校は前にも述べたように屋敷から徒歩15分程の所の城下町の中にある。

 

魔法学校の場所はまだルルに案内されていなかったので亮は楽しみだった。

 

亮はルルと喋りながら学園へ向かった。

 

亮は校門の前に立つと亮はその大きさに唖然した。

 

亮の目の前にはラウス城よりは小さいものの王立図書館よりは遥かに大きい城が建っていたのである。

 

『ここがラウス王立魔法学校……』

 

「そうよ。

さあ、中に入りましょう。」 

 

 

ルルが校門を通るのをみると亮もそれに続いて校門をくぐった。

 

校舎の中に入って行くと、校舎の中は大理石で出来た廊下に金箔の少し混じった石の柱。

また、所々に高価そうな絵画やオブジェが飾ってある。まるで学校と言うよりどこかの美術館か高級ホテルのようだった。だが、亮が一番気になった事は…

 

『何で夏休み中なのにこんなに生徒がいるんだ?』

 

「この前にも言ったようにここ寮があるでしょ。だから、学校から家までがあまりにも遠い人とかは夏休み中にも寮生活をしているの。と言うわけで、学校も開放しているのよ。」

 

『ふ〜ん。』

 

亮達が話しているうちに、亮達はいつの間にか学長室の前に着いていた。

「じゃあ、入るわよ。」

 

ルルが学長室のドアをノックしようとしたその時

 

『待って!』

 

「何なのよ?」

 

『学長ってどんな感じの人?』

 

「何?いきなり。」

 

『いや、なんかいつも偉そうに威張っている爺さんみたいな学長は嫌だな〜。

って思って…』

 

「それなら大丈夫だと思うわよ。

 

学長は確かにお爺さんだけど、あまり威張らず生徒に尽くしてくれるタイプよ。」

 

『そうか、それなら良かった。』

 

亮が安心してそう言うとルルはドアをノックした。

 

「どうぞ」

 

部屋からしわがれた声が聞こえ、ルルはドアを静かに開けた。

 

亮達が部屋に入ると学長と思われるお爺さんが机に座り書類らしきものを片付けている。

 

亮がドアを閉めると、お爺さんは手を止め前を向いた。そして亮達を確認すると、しわしわの顔に更にしわをよせながら微笑んだ。

 

「良く来たね。君がリョウ君だね。」

 

そのお爺さんはしわがれた優しい声で言った。

『はい、あなたがここの学長ですね。』

 

「さよう、儂がここ、ラウス魔法学校の学長じゃ。

 

ルルから話を聞いておる。確か竜界から来たんじゃったな。」

 

〔!!〕

 

「学長、違います。

彼は人間界からです。」

 

「お、そうじゃった、そうじゃった。

 

すまんのぅ。最近、歳のせいか物忘れが酷くてのぅ。」

 

〔いや、物忘れも何もどう見ても今の俺って竜には見えないだろう。

 

それにしてもビビった〜〕

 

『い、いえ。』

 

「まぁ、気を取り直して、

我がラウス魔法学校へようこそ。

儂らは主を歓迎するぞ。」

 

『ありがとうございます。』

 

「では、早速じゃがまず身体能力検査をするぞ。」

 

『身体能力検査?』

 

「魔量、属性、筋力、持久力、それに身長、体重、視力、聴力などを測るってことよ。」

 

ルルが亮に耳打ちした。

 

『おい、そんなこと聞いてないぞ。』

 

「あ、そういえば言い忘れてた。」

 

『はぁ〜。』

 

亮は溜め息を吐いた。

 

「おい、そんな所でコソコソしてないで早く来るんじゃ。」

 

学長はいつの間にか席を離れ、ドアを開けて廊下で待っていた。亮達は慌てて学長の後について行った。


亮達は暫く歩いた。

 

『なぁ、何で空間移転魔法を使わないんだ?』

 

亮は不思議に思いルルに聞いてみた。

 

「え…

リョウって空間移転も使えるの?

凄いわね。

 

でも、学園内は空間移転魔法は禁止なの。

それに検査する場所リョウは知らないでしょ?」

 

『あ、そっか。』

 

亮は納得したように言った。

 

空間移転魔法は目的地のイメージをしながら使わないといけないので、目的地を知らない場所には行けない。

 

それから暫く沈黙が訪れ、出発してから20分くらいしてやっと目的地に着いた。

 

「着いたぞ。

 

ここは新入生や編入生の身体能力を検査するためにだけに造られた棟じゃ。」

 

学長が自慢気に言った。

その棟はまだ完成してあまり経っていないのか、まだ綺麗だった。

 

まず、その棟の一階のある部屋に入った。その部屋の真ん中には亮が見た事のある赤い水晶が置いてあった。

 

「まず、その“力の水晶”に全力で魔力を送るのじゃ。」

 

〔俺が思いっきり魔力を送ったら割れちゃうんだよな〜。〕

 

亮は竜界での事を思い出し、水晶が割れないように少し魔力を抑えて送った。


『ハァァァァァッ』

 

すると、赤い“力の水晶”は青くなった。

 

亮の魔力はルル達の所に漏れていた。

 

〔す、凄い魔力じゃ。こんな奴に会ったのは何年ぶりじゃろう?

 

魔力の質も何だか人間のものではないようじゃ。〕

 

〔何?この魔力…何だか押し倒されそう…〕

 

ルル達は亮の威圧的な魔力に耐えていた。

 

その時、

 

 

 

ピシッ

 

 

 

水晶に罅[ヒビ]が入った。

 

「今すぐ魔力を送るのを止めるんじゃ!」

 

咄嗟に学長が叫んだ。

 

だが、学長の声より亮の反応の方が早かった。

 

この事を予期していた亮は、水晶に罅が入るのと同時に魔力を送るのを止めた。

 

亮は竜人とは言えど今は竜程の堅牢な鱗を持たないので、今水晶が爆発しては負傷は免れない。それよりか、生身の人間であるルルや学長では死に至る可能性だってある。

 

何とか亮の反応が早かったお陰で水晶は罅が入る程度で収まった。


「『ふ〜う』」

 

学長と亮は安心し一息吐いた。ルルは水晶が爆発したらどうなるのか分からないのか、水晶に罅が入ったことに驚いている。

 

「リョウ、凄い魔力じゃない。」

 

ルルは興奮のせいか声を裏返っていた。

 

「うむ。確かに凄い魔力じゃった。〔危うく死ぬところじゃったわい。〕」

 

『そうか?〔いや〜、危なかった、危なかった。〕』

 

「さあ、次の部屋に行くかのぉ。」

 

『おう。』

 

亮達は次の部屋へと向かった。

 

〔“力の水晶”と来たら次は…〕

 

亮は次の部屋が何なのが何となく推測できた。


“力の水晶”の部屋から次の部屋に移った。

 

その部屋は先程の部屋に似ており、違う所は真ん中の台に置いてある水晶の色が違うだけだ。

 

「あれは“種の水晶”と言うものじゃ。」

 

その水晶は竜界で見た赤い“種の水晶”とは違い、透明な水晶だった。

 

「今度はその水晶に魔力を送るのじゃ。

さすれば、主の属性が分かる。

 

今度はほんの少しの魔力でいいんじゃぞ。」

 

学長は念を押すように言った。

 

亮は“種の水晶”に微量の魔力を流し始めた。

 

だが、

 

 

 

 

「色、変わりませんね。」

 

ルルが無表情でボソッと言った。


〔こ、これは驚いた。

 

 

 

こやつ、無属性なのか。

 

 

 

この学校で無属性の魔導師とは何年ぶりかのぉ〜。

 

 

 

確か40年くらい前かな。

あの少女の名は……

 

 

 

 

 

マリア…

 

 

 

ん?そういえば最近、無属性の生徒が入学したって聞いたような〜。

名はス…

 

 

 

何じゃったかのぉ?〕

 

『学長、これどうするんですか?』

 

 

 

亮は独りで思い耽っている学長に聞いた。

 

〔こんな展開前にもあったなぁ〜〕

 

 

 

学長「お、おお。

すまん、すまん。

もう離しても良いぞ。」

 

「学長、リョウは何属性なんでしょう?

 

普通なら水晶の色が変わるはずですが…」

 

ルルが学長に聞いた。

 

学長「うむ。

リョウは無属性じゃな。」

 

学長があっさりと答えた。

ルルはそれを聞いて固まった。


〔やっぱり〕

 

「す、凄いじゃないリョウ。

 

あなたには驚かされるわ。

 

無属性の魔導師なんて今、この世界にリョウを除いて7人しかいないのよ。」

 

『え?そんなに珍しいのか?』

 

「うん。

この学校にはスヒルとリョウだけよ。」

 

〔お、そうじゃった、そうじゃった。

名はスヒルか…〕

 

『スヒル?』

 

「そう、私と同じ一年S組よ。

 

一年とは言えど実力はギルドSSS(ギルドでの最高クラス)よ。

 

この前なんか喧嘩を売って来た三人組の三年生を一人で、しかも無傷で相手をボコボコにしちゃったんだから…

 

多分、学園の生徒の中で一番強いわ。」

 

『ふ〜ん。〔一度闘ってみたいな〕』

 

「さあ、次の部屋に行くぞ。」

 

それから三時間、亮は学校でやるような健康診断や体力テストでやるようなことをやらされた。

 

健康診断の結果は全く問題なく、むしろ視力検査や聴力検査では人間外れの結果で、体力テストではスヒルと同等か、またはそれ以上だった。

 

結果が出る度にルルと学長は目を丸くして驚くばかりであった。


学長「身体能力検査はこれで終わりじゃ。

 

明日は八時半に一年職員室に来なさい。場所はルルに案内してもらいなさい。くれぐれも初日から遅刻しないように。」

 

身体能力検査が終わり学長が言った。

 

「あの〜、リョウのクラスはどうするのですか??」

 

ルルが学長に聞いた。

 

「うむ、ルルと同じS組でいいじゃろう。

 

能力的に申し分ないし、ルルが近くにいた方がリョウも安心するじゃろうからな。」

 

「そうですか、分かりました。」

 

ルルは嬉しそうに言った。

 

「じぁあ、帰ろっか?」

 

『ああ、そうだな。』

 

亮達はその後学長に挨拶をして学長室を後にした。

〜〜帰り道〜〜



亮とルルは歩きながら話していた。


「それにしてもリョウは凄いね〜。


基本魔法は完璧だし、魔力も凄いし、それに加えて無属性なんて羨ましいなぁ〜。」


『いやいや、そんなことないよ。


俺はまだこの世界に来てまだ間もないし、それに剣術とか錬金術は全く分からないしな。』


亮は照れながら言った。


「いや、リョウは剣術も錬金術も魔術と同じ様に才能があると思うなぁ〜。


そう言えば学長はリョウはSクラスって言ってたよね。良かったね一緒のクラスで。」


ルルが話を変えて言ってきた。

 

『あぁ、分からないところは教えてくれよ。』


「うん。」


ルルが大きく頷いた。

 

『ところでSクラスって言うけどどんなクラスなんだ?』

「そう言えばリョウにクラスの事を言っていなかったわね。

 

ラウス魔法学校は一学年S、A、B、C、D、E、Fの6クラスに別れているのそれで才能、実力がある人がSやAクラスというふうに才能と実力でクラス分けしているの、リョウと私はSクラスだから一番上ってことね。」

 

『俺みたいのがSクラスなんかにいていいのか?』

 

亮が不安気味に言った。

 

「大丈夫よ。

リョウならついていくどころか上位に入るんじゃないかしら。」

 

「そうか、それは楽しみだな。」

 

亮の口調に似た声が後ろから聞こえた。だが、声の主は亮ではない。

 

『「え…?」』

 

亮とルルは驚いてバッと同時に後ろを振り向いた。

亮達が振り向くと亮と同い年くらいの少年が微笑みながら立っていた。

 

「あら…スヒルじゃない。

いつからいたの?」

 

〔こいつがスヒルか…〕

 

「ついさっきお前たちが歩いているのを見かけてなぁ〜

 

それはそうとしてそっちの人は話からして編入生?」

 

「そうよ。名前はリョウ。明日から私たちと同じ一年Sクラスよ。本人曰わく、人間界から来たらしいわ。

 

リョウったら凄いのよ。基本魔法は完璧だし、運動能力も魔量も凄いわよ。」

 

ルルは胸を張って言う一方、亮は照れている。

 

「ふ〜ん。属性は?」

 

「属性もあなたと同じ無属性よ。」

 

「!!!」

 

ここでスヒルが亮の前で初めて驚きを顔に表した。

 

「お〜、凄いじゃないか。

 

これからよろしくな。期待してるぞ。」

 

スヒルはそう言って、亮に握手の手を差し伸べた。

 

『ああ、よろしく。』

 

そう言って亮はスヒルの手を握り握手をした。

〔!!!〕

 

スヒルが亮と握手をするとスヒルは亮から何かを感じ取った。

 

「じゃあ、私たちは帰るからまた明日ね。」

 

ルルがスヒルに言った。

 

「お、おう。また明日な。」

 

『じゃあ。』

 

亮も右手を挙げて挨拶をした。

 

そして、亮とルルはその場を立ち去った。

 

〔あの感じ…

何だろう、あの異質的な感じは。

 

リョウか…楽しみだな。〕

 

スヒルは一瞬微笑み自分の家へと帰っていった。


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