第四章 鍛錬
〜〜朝〜〜
『グルルルルルルル』
亮は喉を鳴らしながら目覚めた。
〔朝か、今日から本格的な稽古かぁ…〕
周りを見るとまだ親父はでかい鼾[イビキ]をかいて眠っていた。本当にこんな奴が竜王なのかと思えるようなだらしない体制である。
洞窟の外に出ると洞窟を守る護衛の竜は起きていた。
『おはよう。』
「おはようございます、リョウ様。今日からジョゾ様と稽古ですか?」
今日から地獄の稽古が始まることをもう皆知っているらしい、
『あぁ、そうだ。行ってくるよ。』
「行ってらっしゃいませ。頑張って下さいね。」
『あぁ、ありがとう。』
亮はそう言って昨日の場所に飛んで行った。
昨日の所に行くともう既にジョゾがいた。
「遅いぞリョウ!」
昨日、ジョゾは早朝から始めることを言ったので亮としてはかなり早く来たつもりだったがそれが遅いと言われたのが亮にとって驚きだった。
『どのくらい待った?』
「かれこれ一時間。」
『それはお前が早すぎるんだろ!』
言っておくが辺りはまだ暗く東の空が少し白けてきたぐらいだ。時間で言うとまだ四時にもなっていないだろう。
「何を言っている?この時間だと早朝ではなくもう朝ではないか。王族なら早寝早起きは必須、今ごろギガ様も竜王として必死に働いているじか『あぁ、親父なら俺が寝床を出る時まだでかい鼾をかいて寝てたぞ。』」
ジョゾが話している途中で亮が口を挟んだ。
「…………稽古始めよっか。」
ジョゾは悔しそうに大きな溜め息をついて言った。
「全ての竜は火属性の技が使える。それに加え水、雷、風、土、闇、光の六属性の魔法の内いずれかが使える。俺みたいなファイアドラゴンは例外だがな。」
〔魔法と同じだな〕
『どういう風に例外なんだ?』
「後で分かる。話を続けるぞ。
竜は火属性の技は生きている限り無制限に使用できるが、もう一つの属性には魔力が必要だ。魔力というのは…」
『魔法を使うのに必要な力だろ?』
亮が口を挟む。
「何故知っている?」
ジョゾは驚いた顔をして亮を睨み付けた。
『昨日、母さんが残した“初めての魔導書”っていう本に書いてあった。』
「そうか、じゃあそこら辺の所は大まか分かるな。」
『あぁ。』
「よし、分かった。じゃあ、それなりに手間が省けたという事だ。
それじゃあ、実践に移るぞ。
まずリョウのもう一つの属性何だが…
ついて来い。」
そういうとジョゾは西の空に飛んだ。亮はそれについて行く。
その時の亮はもう飛ぶ事に慣れておりかなり速い飛行速度で飛べる(600?/hぐらい)。だが、ジョゾがいうには鍛え方によってはその倍以上の速さで飛べるらしい。
飛行すること20分。
『おい、何処に行くんだ?』
亮が飛びながら聞いた。
「昔、ソウ様が残した種[シュ]の水晶と力の水晶の所だ。」
『種の水晶?』
「着けば教える。ほら、あそこだ。」
亮はジョゾの視線の先を見た。まだ10km位先にあるが巨大な神殿が見えた。
〜〜一分後〜〜
亮達はもう神殿に着いていた。
〔飛んで行けば10kmなんてあっと言う間なんだな〜〕
亮は竜の凄さに感心していた。
亮達がいる神殿は石造りになっておりかなり大きい。東京ドーム2、30個ぐらい入りそうである。神殿の門には神殿を警備する竜がいた。
『凄い神殿だなぁ、この神殿は竜達が造ったのか?』
「いや、この神殿は70万年前、竜戦争終結時に前にも言った竜王ソウ様が造った…いや、正しくは創ったらしい。」
『どういう事だ?』
「詳しくは分からない。言伝えによると、
ソウ様は“創造の魔法”によってこの神殿を創った。
という事になっている。」
『創造の魔法?それって何属性?』
「それが最大の謎なんだ。
“創造の魔法”については全く言伝えとして残っていないんだ。」
『ふ〜ん。』
「ある知のある竜によれば、
彼が竜人だった事から100万年の歴史を持つ竜族でも分からない“未知の魔法”を使った。
とのことだ。」
『ふ〜ん。そうなんだ。じゃあ、俺も竜人だからその“未知の魔法”使えるかなぁ。』
亮は目を輝かせながら言った。
「さあな、もし使えるとしてもその使い方が分からないんじゃあ意味がない。」
『そうだよなぁ。』
亮は少し落ち込んだ様子で言った。
「ほら、落ち込んでないで神殿に入るぞ。」
『あぁ。』
亮達は神殿の中に入っていった。
神殿の内部への入口は一つしかなくこの入口も竜か2、3頭並んでも余裕がある程のスペースがあった。
亮達は入口から入りトンネルを進んでいった。
進んでいると亮はトンネルの内壁に昔描いたと思われる絵が沢山描いてある事に気が付いた。
亮はその絵を見ていたので当然のことながら歩くペースが遅くなっていった。
「リョウ、歩くペースが落ちてるぞ。しっかり着いて来ないと迷子になるぞ。」
亮の歩くペースが落ちてる事に気付いたジョゾが言った。
『お!わりぃ、わりぃ。
迷子って言ってもここ一本道だから迷子になる訳ないだろ。』
亮が謝りながら後半つっこみをいれた。
「そういえば、そうだな。」
ジョゾは微笑みながら言った。
そんな事を言っていると間にも亮達は広い部屋に辿り着いていた。
『ここが目的地?』
「あぁ、そうだ。ここでリョウは属性と魔量いわゆる、魔力の量を調べる。」
この広い部屋にもいろいろ絵が描いてある。
部屋の奥にはぽつんと2つの石の台が置いてあり右側に青い水晶、左側に赤い水晶があった。
「右側にあるのが属性を調べる“種の水晶”、左側にあるのが魔力を測る“力の水晶”だ。
まず、“種の水晶”に触れてみろ。水属性なら青に、雷属性なら黄色に、土属性なら茶色に、風属性なら灰色になる。」
亮はジョゾに促されるままに“種の水晶”に触れてみた。
だが、何も起こらない。
『何も起こらないぞ。』
「まぁ、待て。」
ジョゾは表情を変えずに言った。
〜〜10分後〜〜
『いつまで待つの?』
「…まだまだ」
ジョゾは微妙に焦っている。
〜〜30分後〜〜
『あまりにも遅くないか?』
「……ま、まだだ」
ジョゾが普通に焦っているのが見受けられる。
〜〜一時間後〜〜
『おいジョゾ、これいつまでやっていいんだ?正直立っているのが辛い…』
と言いかけ振り向いてみると
誰もいない。
ふと視線を下に傾けると…
『って寝てるし…』
ジョゾは亮の足元で丸くなって音もなく寝ていた。
それを見た亮は無性に腹が立ち…
ドカドカ、ボコボコ、バキバキ、ボキボキ、ドッカーン。
手が塞がっていたので足で思いっ切り蹴ったり、踏んづけたりした。
(最後の方の擬音語は少しおかしかったが)
「ぐは!
な、何をするんだ。リョウ!」
ジョゾは蹴られながら叫んだ。
『それを知りたければさっきまで自分が何をしていたか考えてみろ!』
「さっきまで…?
あ!あぁ、悪かったリョウ謝るから暴力は止めてくれ。」
『うむ。よろしい。』
そう言って亮はジョゾへの暴行(調教?)を止めた。
『で、これいつまでやってればいいんだ?』
亮はジョゾへの暴行を止めた途端、ジョゾが大きな欠伸をしたので少しイラっとしたが亮はその気持ちを押さえて尋ねた。
「う〜ん。あれから何時間経った?」
『一時間くらい…。』
「う〜ん。」
ジョゾは深く考え込んでいる。
『もしかして、俺って半竜だから属性持っていないのかな…』
亮は自嘲気味に言った。
「いや、そんな事はない。
あっ、もう水晶から手を外してもいいぞ。」
亮は水晶から手を離した。
「しょうがない、属性の事は後で考えよう。気を取り直して次は魔量を測ろう。」
『どうすればいいんだ?』
亮は気を取り直して聞いた。
「まず、さっきと同じ様に水晶に手を翳す[カザス]」
亮はジョゾの言う通り赤い“力の水晶”に手を翳した。
「そして、全力で水晶に魔力を流せ。
魔力の流し方は分かるだろう。」
『あぁ。』
魔力の流し方は亮が昨日読んだ本に書いてあった。
『ハァァァァァ!』
亮は水晶に全力で魔力を流した。本では読んだが実際に魔力を流すのは初めてである。
亮が魔力を流すとさっきまで赤かった水晶は一気に青くなった。
ピキ…
「ん、」
ジョゾは水晶の異常にいち早く気が付いた。
ジョゾが亮に魔力を流すのを中止させようと声を掛けようとした瞬間……
ピキピキ……パリーン
水晶が割れた…というより内部から爆発した。
亮はその衝撃で後ろに吹っ飛んだ。
幸い堅牢な鱗が亮の体を水晶の破片から守った。
ジョゾは言いかけた口を開けたまま目の前で起こった衝撃的な出来事に固まっている。
「リョウ、大丈夫か?」
我に返ったジョゾは亮な駆け寄った。
『あぁ、大丈夫だ。怪我もしてない。』
亮は立ち上がって言った。
「ところで、お前さっき何をした?」
『ジョゾに言われた通り水晶に全力で魔力を流しただけだけど…』
「そんな馬鹿な!
今まで何万という竜が水晶に魔力を流してきたがあの水晶を魔力で割った竜なんか一頭もいなかったぞ!
ましてやソウ様でもだ。」
ジョゾは興奮しながら大声で叫んだ。
『ご、ごめん。』
亮はジョゾの口調から怒っていると判断した為か、罪悪感を感じ取り敢えず謝った。
「いや、謝ることはない。」
ジョゾは少し冷静になり言った。
「よし、帰るぞ。ここはもう用済みだ。」
亮とジョゾは神殿をあとにした。
ジョゾ:〔リョウ、属性は分からないものの凄い魔力だった。これは将来が楽しみだな。
ところで“力の水晶”どうするか、担当者にバレたらまた叱られるな。〕
亮達は神殿を出て朝の集合場所に戻った。
今はちょうど正午ぐらいである。
人間だったら今頃昼食を取る時間だが、ジョゾが言うには竜は一生飲まず食わずでも生きていけるだから基本的に食事をする習慣がないらしい。
だから亮は、この世界に来てから(竜化してから)何も口にしていない。しかも、食欲が湧かなかった。
『これからどうする?』
朝の場所に戻ってから亮が言った。
「う〜ん、リョウのもう一つの属性が分からないけど、火属性の技は使えるだろうからそっちをやろう。
まずは火属性の基本的な技、ブレスだ。」
ジョゾはそう言って大きく息を吸い込み近くの岩に思いっ切り吐き出した。
すると、吐き出したのは空気ではなく蒼い炎だった。
ジョゾの前にあった岩は見事に完全に溶けていた。
「こんなもんだな。」
ジョゾは誇らしげに言った。
『スゲェ〜』
亮も何となくどんな技か予想していたが、まさかここまで迫力のあるものだとは思ってもみなかった。
「次はリョウ、やってみろ。」
『いきなりやれって言われても…』
「簡単だ。さっき俺がやったみたいに空気を大きく吸い込む、そしてそれを腹の奥から一気に吐き出す。」
亮は言われた通りにやってみた。
すると、ジョゾの炎よりは少し赤く小さいものの口から炎を吐き出すことが出来た。
『おぉ!』
亮は興奮気味に言った。
「うむ。そんなものだ。
だがまだ少し炎が赤いなぁ、もう少し酸素を足す必要がある。
もう少し大きく息を吸ってみろ。」
亮は言われた通りにさっきよりも大きく息を吸い込み吐き出した。
今回は威力はジョゾに劣るものの炎の色はジョゾと同じだった。
「よし、完璧だ。〔たった2回でここまで上達するとは…〕」
ジョゾは表情には出さなかったものの内心驚いていた。
『だが、ジョゾのは俺の2倍くらい威力が違うぞ。』
亮は納得いかないようだ。
「それはしょうがないんだ。」
「ファイアドラゴンは他のドラゴンと違って火属性以外の属性が使えない代わりに火属性の技に特化しているんだ。
だから、威力が違うって訳だ。」
『ふ〜ん。』
「でもリョウのブレスは平均…いや、それ以上だから練習すればファイアドラゴンのブレスと並ぶかもしれない。
だから、もっと自分に自信を持っていいぞ。」
『本当か!?じゃあ、頑張るか。』
亮は張り切って言った。
だが、ジョゾは別にお世辞を言った訳ではない。
実際に亮のブレスの威力はファイアドラゴンには劣るが平均を遥かに凌いでいた。
ジョゾは確信した。
亮はソウ様以来の天性の素晴らしい才能を持った竜だと…
亮はその日、一日中ブレスの練習をした。
そして、練習を重ねるごとにブレスの威力を増していった。
更に、日が暮れる頃にはブレスの炎の温度調節をこなすようになっていた。
ブレスの温度調節については酸素の量や、腹に入れる力などの沢山の要素を微妙に調節することによってできる。
この技術は非常に困難なため、一部のファイアドラゴンにしか出来ず、普通のドラゴンとしては亮が初めてだ。
ジョゾでも100年間の激しい練習の末やっと身に着けた技である。
それを亮はたった数時間でこなした。
亮が温度調節のブレスを成功させた時、ジョゾは自分でも100年掛かった技をたった数時間でマスターされたという悔しさのせいか、
「アハハ、アハハハハハハ、アハハ…」
壊れて、ずっと不気味に笑っていた。
そんな感じで一日の稽古が終わった。
だが、亮は寝床に帰ってからも竜化を解き。母の魔導書を2時間程読み耽って[フケッテ]いた。
亮は昨日のような症状を心配したが、幸い2時間では問題ないようだった。
亮はその日、基本魔法を覚えていた。(実践はしなかったが)
基本魔法とは属性を問わず全属性で扱える魔法である。
亮はその日の二時間のうちに十個の基本魔法を覚えて寝た。
〜〜稽古二日目〜〜
今日は亮は昨日より遅く起きた。
昨日、ジョゾと稽古の時間について話し合った結果、流石に昨日は早過ぎたのでこの時間(7時くらい)になった。
亮が昨日の所に行くとやはりジョゾはもう着いていた。
「よし、来たか。じゃあ、始めるぞ。
昨日、ブレスをやったから、今日はファイアボールだ。
上空から見ていろ。」
ジョゾは翼をばたつかせて地面から足を離した。
亮もそれに続いて上空に上がった。
そして、空中でジョゾはブレスと同じ要領で息を吸い込んだ。
だが、吐き出したものはブレスではなく、丸い炎の球体だった。
その球体はジョゾの口元で一気に大きくなり、直径3m程になるとジョゾは炎の球体を地面に向かって吐き出した。
火球が地面に着弾した瞬間、火球が爆発し着弾地点から約半径50mくらいが炎に包まれた。
この中にいたら例え竜でもひとたまりもないだろう。
亮はあまりの迫力に絶句した。
亮が地上に降りてみると着弾地点から半径50m以内にあった大きな岩石は全て溶けていた。
「ちょと、失敗したな。」
ジョゾは地面に降りたちながら言った。
『これで失敗かよ!』
「いつもはもっといく。風がなければそれよりもいくぞ。
今日は、リョウにはこれをやってもらう。」
『いや、無理だから…』
亮は自信がないのか最初から諦めている。
「大丈夫だ。確かにブレスよりは難しいがコツを掴めば簡単に出来る。
まずはブレスと同じ要領で息を吸い込む。これを吐き出す訳だが一気には吐き出さず必ず炎を口元で止めておくんだ。すると口元に火球ができる。そして、火球の中に空気を入れる、そして最後に火球を地面に叩き付ける。」
「一番注意すべき点は中に入れる空気の圧力だ。
空気は火球を爆発させるのに必要だ。もし、空気圧が低ければ爆発力が小さい。反対に空気圧が高ければ途中で大爆発を起こす。下手すれば死ぬな。」
『死ぬのだけは勘弁だな。』
「安心しろ、今までの統計上この練習で死んだ奴は10人中1人だ。」
『いや、その数値は十分安心できる数値じゃないから…』
「そうか?まぁ、リョウなら大丈夫さ。
それに最初は空気圧を低くすればいい。それで成功したらベストな空気圧になるまで徐々に上げていけばいいんだから。」
『う〜ん。まぁ、やってみるか』
そう言って亮は空高く舞い上がった。
ジョゾもそれに付いて行く。
そして、亮はブレスの時のように深く息を吸い、口から少しずつ火を吐き出していった。
そして、火球の中に圧力の低い空気を流し込んだ。火球が直径2mくらいになると亮は火球を吐き出した。
だが、吐き出した火球はジョゾのように上手くいかず空中で火が消えてしまう始末だった。
それを見た亮とジョゾは同時に深く溜め息を吐いた。
「やっぱり、最初から成功はしないか。」
ジョゾは溜め息を吐きながら言った。
亮は完全に気を落としている。
「そう落ち込むなリョウ。
これは竜の最上級の火属性の技なんだから…」
『はぁ!?』
亮は驚いた。
『稽古を始めてからたった二日で俺に最上級の技を教えようとしたのか?』
「その通りだ。
だって、普通十年は掛かるブレスもお前たった数時間でマスターしたんだぞ。
しかも、温度調節だって出来たし…」
『ブレスってそんなに難しい技だったのか?』
「あぁ、因みにファイアボールはマスターするまで四、五千年は掛かる。火球に空気を混ぜる技術にも千年くらい掛かる。」
『俺って凄くねぇ?』
「あぁ、確かにリョウの才能は有り得ない。」
『よし!もう一回やってみよ。』
亮は急に元気を取り戻した。
そして、日が暮れるまで何度も何度もファイアボールの練習に励んだ。流石に成功はしなかったものの最初の頃より格段に良くなった。
日が暮れて寝床に着くと竜化を解いて残りの基本魔法50個をたった2時間で暗記した。
その時亮は自分の記憶力に驚いた。
[俺ってこんなに記憶力良かったんだ〜。もっと早く気付いていれば学校のテストも…orz]
つくづく後悔する亮であった。
〜〜稽古三日目〜〜
亮は昨日と同じ時間に起きいつもの場所に向かった。
だが、今日はジョゾはいなかった。
今日は午前中ジョゾは用事があるらしい。
という訳で今日は昼時まで自主練だ。
なので亮は午前中ファイアボールの練習に励んだ。
午後になるとジョゾが来た。
「おい、リョウ!分かったぞ」
ジョゾがいきなり興奮した口調で言ってきた。
『分かったってなにが?』
「お前の属性についてだよ。」
『マジで!?』
「あぁ、マジだ。
ルーマン様の話から考えるとお前は火、雷、風、土、水属性の五大属性全て使う事ができる。」
『それって無属性っていうこと?』
「無属性の竜なんて聞いた事ないがそういう事になるな。」
『そうか、ところでルーマンって誰?』
「ルーマン様は我々竜族の長老の事だ。竜族の中で最も物知りの竜だ。今年でちょうど15000歳になられる。」
『15000歳?どんだけ長生きなんだよ〜。』
「確かにな。本人は
20000歳まで生きてやる。
っていているがな。
そういえばリョウ、お前、魔導書を読んでると言っていたな?」
ジョゾが亮に確認するように聞いた。
『あぁ。基本魔法までは全部覚えたが…』
「基本魔法って60個全部覚えたのか?」
ジョゾは疑い深く尋ねた。
『あぁ、結構簡単に覚えられた。』
「普通、基本魔法は人間が半年くらい掛けて覚えるものだぞ。
お前、竜としての才能だけでなく、魔導師としつの才能もあるんじゃないか。」
『う〜ん、そうなのかな。』
亮は少し照れながら言った。
「俺が言いたいのは人間が使う魔法と竜族が使う魔法は同じだっていうことだ。」
『ということは竜化した状態で魔導書に書いてある魔法を使えるってことか?』
「そうゆう事だ。
試してみたらどうだ?」
『ああ。』
亮はその後物体浮游魔法や、空間移転魔法などの基本魔法を実践してみた。やり方は頭に入っていたので難なくこなす事ができた。
基本魔法60個を全てやり終わる頃には日が暮れていた。
一日の稽古が終り寝床に帰ると亮はいつものように竜化を解いてそして、魔導書の残りを読み切った。
実は亮が読んでいた“初めての魔導書”というのは、魔界の魔法学校が一年生の時に一年間を通して使う教科書なのだが、亮はそれを知る由もなかった。
亮はそのまま眠りに就いた。
〜〜稽古四日目〜〜
朝起きて亮がいつもの場所に行くと今日はジョゾだけでなく、ジョゾ以外に他の竜がいた。数は十頭ぐらいだ。
亮が地面に降り立つとジョゾ以外の竜は慌てて亮に頭を下げた。
『今日は竜が集まっているけど何をするんだ?』
亮がジョゾに聞いてみた。
ジョゾが少し微笑して叫んだ。
「今日はリョウとお前達でサバイバル戦をやってもらう。」
『えっ…』
亮は驚いた。
ここに集まっていた竜も何の為にここに召集されたのか知らなかったらしく驚いていた。
『ちょっと待て!俺は訓練を受けてから4日ぐらいしか経っていないんだぞ。
まだブレスぐらいしかできないし…』
「ブレスができれば十分だ。
ここにいる奴等もそれぐらいしか覚えてないからな。」
『接近戦は?』
そういえば亮は接近戦、格闘戦の訓練は受けていない。
「接近戦は…
まぁ、そこは才能でカバー出来るんじゃない?」
ジョゾは無責任に言った。
『いや、いくらなんでもそれは無理!』
「じゃあ、ルールを説明するぞ。
サバイバルはこから半径10?以内でやれ。
あとは殺しさえしなければ何したっていい。」
[半径10?以内って言われても分かんね〜よ。
しかも、殺しさえしなければって……]
亮はただ一人疑問を持っていたが、他の竜を見る限りサバイバル戦というものに慣れているらしく平然とした顔だった。
「では、俺のファイアボールと伴に開始するその次のファイアボールで終わりだ。散れ!」
その言葉と同時に周りの竜は飛び立った。
亮もそれにつられて空高く飛んだ。
だが、行くあてもなくただ飛んでいるだけだった。
暫く飛んでいると下の方が微かに光った。
〔始まったな。〕
サバイバル戦が開始されたが付近には誰もいない。
いくら竜が巨大でも上空を含む半径10?に約10頭の竜は少なく開始と同時に会敵することはどの竜荷もなかった。
だが、範囲が広い分、また今日は所々雲があるので奇襲を受けやすい。亮もそれぐらいの事は心得ており、常に周囲を警戒していた。
サバイバル開始から約10分
亮は雲の中を警戒を続けながら飛行していると雲の上に何かがいることに気が付いた。
何かと言ってもこの世界には竜しかいないのでそれが竜、いわゆる“敵”だということが分かった。
敵だということは攻撃しなければならない。
そして、亮はその竜に“奇襲”をすることを決意した。
亮は高度を少しずつ上げ敵の姿を確認した。
敵は竜としては少し小さく青い竜だった。
亮はその竜の真下に行きそこから急上昇をして温度のあまり高くないブレス攻撃を与え気絶させるつもりだ。
亮はその竜の真下にいき奇襲を掛けようとした瞬間、
「ギシャァァァァァ」
上から竜の悲鳴声が聞こえると同時に亮の真横を亮が目標としていた竜が墜ちていった。このぐらいの高さから落下しても死にはしないだろう。
亮がはっ、と上を見るとさっきとはまた別の赤い竜が飛んでいた。
〔恐らくさっきの竜はあの竜に上からやられたのだろう。背中に傷があったし…
よし、やるか。〕
亮は敵を倒した直後の竜は油断していると判断し、直角に近い角度で猛スピードで上昇し雲を飛び出し赤い竜にブレス攻撃をした(勿論、温度調節をしてある)。
亮のブレスは見事に赤い竜に直撃した。
赤い竜は突然のブレス攻撃に驚いたのかそのまま気絶し、青い竜のように墜ちていった。
[やった!]
亮は心の中でそう叫び、また雲の中へ急降下した。赤い竜の二の舞を避ける為だ。
亮は再び雲の中に入り下を見た。
地上は所々木が焼けていた。恐らく他の竜のブレス攻撃の跡だろう。
そんな中、二頭の竜が激しい格闘戦を繰り広げていた。その二頭の戦いは激しく、亮はその戦いに参戦しようとは思わなかった。
だが、亮がその戦いを傍観していると後ろから何かが迫って来るのを感じた。
亮は咄嗟に右旋回をした。
そして、次の瞬間…
[っく!]
亮の左腰辺りに弱い痛みが走った。
亮が竜の戦いを傍観している間に他の竜が奇襲を仕掛けてきたのだ。
亮は間一髪でそれを避け左腰を少し擦っただけで済んだ。
もし、攻撃が直撃していたら飛んではいられなかっただろう。
亮に攻撃を仕掛けたのは灰色の竜だった。
「チッ、外してしまいましたか。
あの攻撃を回避するとはリョウ様もなかなかやりますね。」
『危なかったがな。
俺があと少しでも気付くのに遅れていたら今頃地面に叩き付けられてたよ。』
「ハハハハ、確かにそれは残念です。」
その竜は笑いながら言った。
「さて、そろそろ行かせてもらいます。そろそろサバイバルも終わるみたいなので。」
そういって、灰色の竜は突進してきた。
素人の亮にはこんな時、どのように動けばいいのか分からない。
ただ、相手が突進してきたので亮も突撃した。
そして、両者がすれ違った瞬間、
カキィーン
両者の爪が接触し音が甲高く響いた。
亮は反動で一瞬体制を崩した。
だが、灰色の竜はその一瞬の間にターンし、亮の背に接近した。
接近に気がついた亮は体制を立て直し敵の追撃を振り切ろうとした。
そして、亮と灰色の竜との格闘戦の幕が開かれた。
灰色の竜は亮にピッタリついて来ており、時々灼熱のブレスを吐いてくる。
亮はそれを回避するだけで精一杯だった。
亮が上昇すれば相手も上昇するし、亮が宙返りをすれば相手も宙返りをする。
亮は振り切れないと判断し絶望した。
〔くっ、終わるまでずっと逃げる事しか出来ないのか。
それどころか、終わるまで生きていられるかなぁ。〕
「そろそろ終わらせてもらいますよ。」
灰色の竜は楽しそうに言うとグングンとスピードを上げていき亮との距離を縮めていった。
そして、
『ぐぁ、』
灰色の竜の爪が亮の背中を引掻いた[ヒッカイタ]。
その攻撃は、この前のウルフのような生温い攻撃とは威力が断然と違い、亮の堅牢な鱗を突き破り青い血と伴に亮の背中の肉を引き裂いた。
それでも何とか飛行を維持することが出来た。
「ほ〜う、まだ飛んでいられますか。
それではこれで最後です。」
灰色の竜はにやつきながら再び亮に襲いかかった。
その時、亮はある事を思い付いた。
亮は突然地面に向かい急降下した。
灰色の竜は亮の後を追う。
亮が高度50mくらいを切った時、
亮は地面に向かって一か八かで温度調節をしたファイアボールを放った。
そして、地面への直撃を避けるため急上昇に転じた。
亮の放った直径2mのファイアボールは地面に垂直に落下し、地面に着弾した瞬間、パッと炎が半円状に広がった。
この時、亮は初めてファイアボールを完成させた。
「なっ!」
亮の真後ろにいた灰色の竜はいきなり周りが炎に包まれ視界が真っ赤なった。
だが、その炎は熱くなかった。
灰色の竜は高度10mほどのところで視界が戻り目の前に地面があるのを見て慌てて上昇に転じたがそれは遅過ぎた。
「まずい…」
灰色の竜は垂直直撃を避けたものの地面に滑り込んだ。
灰色の竜は再び飛び立とうとしたがそこに亮が鋭い爪で襲いかかった。
亮は灰色の竜の首筋に爪を当てた。
「くっ、」
『降参したらどうだ?』
「こ、降参します。」
灰色の竜は悔しそうに降参した。
亮はそれを聞いて爪を引っ込めた。
それと同時にサバイバル戦の終わりを告げるジョゾのファイアボールが炸裂した。
『さてと戻るか。
立てるか?』
亮は灰色の竜を心配し言った。
「はい大丈夫です。リョウ様は大丈夫ですか?
結構傷が深そうですが…」
『あぁ、すっげー痛い。だけど歩けるし飛べるから大丈夫だ。』
亮は痩せ我慢せず正直に言った。
「す、すみません。僕が本気で引掻いたばかりに…」
『いやいや、いいんだよ。
それよりお前の名前は?』
「僕の名前はテトです。」
『そうかテトか、よろしくな。
あと敬語は止めてくれよ。』
「いいのですか?」
『あぁ、俺はそっちの方がいい。』
「分かった。」
『じゃあ戻ろっか?』
「あぁ、そうだね。」
その後、亮とテトは元の地点に話をしながら戻った。
「それにしてもリョウは凄いなぁ。まだこっちに来てから五日だろ?
たった五日で1000年もジョゾ様に仕えている僕に勝つなんてなんか悔しいな〜。しかも最上級の技を使うとは…」
テトは飛びながら言った。
「それに加えまだ格闘戦の訓練を受けてなかったんだろ?
それなのに絶体絶命の状態であんな思い付きが出来るなんて凄いよ。」
『ありがとう。ってかお前、あいつに1000年も仕えているのか。』
「まぁね、中には4000年、5000年と仕えている先輩も結構いるけどファイアボールを使える竜なんて3、4頭ぐらいしかいないよ。」
『そうなのか。まぁ俺も二日間練習したし、』
「単位と桁が違うよ本来なら4、5000年だよ。」
『そういえばジョゾもそんなこと言ってたな〜』
「ジョゾ様から聞いてたけどやっぱりリョウは凄い才能の持ち主だねぇ〜。羨ましい。」
そんなこんな話している内に集合場所に着いた。下には何頭かの竜が集まっている。
『ほら、着いたぞ降りよう。』
亮とテトはそこに降り立った。
周りを見渡すと無傷の竜もいれば全身傷だらけの竜もいた。
「テト〜。」
突然、人込み…じゃなくて竜込みの中から大声を上げながら一頭の雌竜が出てきた。
そして、テトに近付いて来た。
「どうだった?勿論生き残ったよね?」
その雌竜はテトに近付きながら聞いてきた。
「残念ながら、やられた。」
テトは微笑みながら答えた。
「ウッソー!誰に?」
雌竜はかなり驚いている。
「彼に…」
テトは亮を指差しながら言った。
「え?あ!リョ、リョウ様…」
〔今頃俺の存在に気付いたんかい!
俺ってそんなに存在感ない?〕
亮はそんなこと思いながらも雌竜に尋ねた。
『誰?』
「あっ、すみません。私はマナと申します。」
マナは慌てて言った。
『あっ、敬語省いていいから。』
「え、いいんですか?」
『あぁ、正直言って敬語は止めて欲しいくらいだ。』
「分かった。じゃあ、普通に話すね。」
「で、本当にリョウはテトに勝ったの?」
『おう、勝ったぞ。背中を負傷したがな。』
「凄い!テトは今回のサバイバル戦に参加した竜の中で一番強かったのよ!」
マナは声を張り上げて言った。
『そうなのか?』
亮はテトに確認した。
「まぁな、だが今回のサバイバル戦で一番強いはリョウになったな。」
「よし、全員集まったな。」
全ての竜が戻って来たのを確認したジョゾは言った。
「生き残った者は右へ、やられた者は左に寄れ。」
ジョゾがそう言うと右側に4頭のグループと左側に6頭のグループに分かれた。亮とマナは右へ、テトは左へ移った。
テトが左へ移ったのを見て亮とマナを除いてみんな驚いている。
「テト。お前、やられたのか?」
ジョゾはまさかと思いながらもテトに聞いた。
「はい、やられました。
…リョウに…」
「「はぁ〜!?」」
周りの竜が一斉に驚きの声を上げた。
「まさかお前が…嘘だよな?」
ジョゾがテトに確認する。
ジョゾはまだ驚きを隠せないようだ。
「いいえ、本当です。」
テトは微笑しながら言った。
「はぁ〜、リョウ。お前どんだけ俺を驚かせたら気が済むんだ?」
ジョゾは溜め息を吐きながら言った。
『今日はあと一回くらいかな〜』
亮は笑顔で答えた。
「まぁ、いい今日はここまで。後は各自で自主練しとけ。リョウは残れ。」
そういうと周りの竜はゾロゾロとその場を離れていった。
「じゃあなリョウ」
「じゃあね〜。」
テトとマナが帰り際に挨拶をした。
『おう!じゃあな〜』
亮は挨拶を返す。
「さて、稽古を始めるぞ。」
『ちょと、待った!』
「なんだ?」
『今日はあと一回くらい驚かせるって言ったろ?
ジョゾに見せたいものがある。』
亮はそう言って高く飛び上がった。
「何をする気だ?」
ジョゾは小さい呟いた。
『いくぞ、ジョゾ。空中退避しとけよ。』
〔空中退避だと?…まさかな…〕
ジョゾはそう思いながらも空高く舞い上がった。
亮はジョゾが空中退避するのを確認すると先程の格闘戦でやったように大きく息を吸い口元に直径2m程の火球を作り放った。
放たれた火球は一直線に重力に引かれながら地面に着弾した。
火球が着弾した瞬間ジョゾよりは小さいが着弾地点から半径30mが炎に包まれた。
それを見たジョゾは驚愕した。
〔まさか!たった二日でリョウはファイアボールを完成させたというのか!?〕
『どうだった?今の俺のファイアボール』
亮がジョゾに近付いて聞いた。
「あぁ、完璧だ。」
ジョゾは唖然とした顔をしながら言った。
『これはさっきのサバイバル戦で初めて成功したんだ。』
「どういう事だ?」
そして亮はテトとの対戦のことをジョゾに話した。
〔凄い。リョウの格闘戦での力量はイマイチだが、戦術的な面では完璧だ。いや、常識を超えている。相手の視界を奪う為にファイアボールなんて…
まだ、格闘戦について何も言ってないのに…〕
亮とテトの戦いのことを聞いてジョゾは唖然としていた。
『ジョゾ、聞いてるか?』
「え?あぁ、聞いてたとも。
お前の戦術的な面では完璧だ。」
『本当か?』
「あぁ。だが、まだまだ力量的な面では欠けている。」
亮はテトと爪が噛み合った時、体制が崩れたのを思い出した。
『そうだよな〜。』
「と、言う訳で今日から格闘戦の訓練をしてもらう。」
その時ジョゾが不気味ににやついていた。
『魔法は教えてくれないのか?』
亮はジョゾの表情に気が引いたがジョゾに質問してみた。
「それは接近戦が完璧になってからだ。
それに俺はファイアドラゴンだぞ。前にも言った通り俺は火属性しか扱えない。
リョウは無属性だから各属性のプロフェッショナルを連れて来ないといけないしな。」
『そうゆう事か。』
亮が納得したように言った。
「そういう事だ。
じぁあ、始めようか。」
ジョゾは再び不気味ににやついた。
その後亮は、飛行訓練、筋トレ(?)、ジョゾとの練習試合(勿論、力量と経験のあるジョゾが一方的に亮をボコボコにしていただけだが…)など日が暮れるまでやらされた。
日が暮れる頃には亮は荒息を掻き、全身傷だらけの状態だった。
「今日はこのくらいでいいだろう。」
その言葉と同時に亮は倒れた。
『おい、お前は俺を殺す気か?』
亮は荒息を掻きながら言った。
「殺したら、稽古の意味がなくなるだろ?
だから、殺す手前までやる。」
『次期竜王の俺にそんなことをしていいのか?』
この時、初めて自分の地位を使ってみた。
が…
「その件に関しては問題ない。
ギガ様が死なない程度に鍛えてもいいとおっしゃっていたからな。」
『そういえば、そんなこといってたな〜。
クソ、あの糞親父。調子に乗りやがって…』
亮は後半キレ気味に言った。
「ドンマイだ。
それと今日からこれをずっと続けていくから覚悟しとけよ。」
『はぁ!?
おい、俺はまだ死にたくないぞ。』
「だから、殺しはしないって。そのうち稽古に慣れるだろ。」
『はぁ〜、これは帰ったら親父をボコボコにするしかないか。』
そういって、亮は寝床に帰っていった。
その後、洞窟の守衛の竜によると一晩中ギガの悲鳴が聞こえたらしい…
その次の朝から亮の地獄の毎日が始まった。
だが、ジョゾの言う通り稽古にはなれてきた。
そして、たまに行われるサバイバル戦でも亮だけで他の竜を全滅させる程の実力が身についていた。
また、他の火属性の技もジョゾから伝授した。
そしてある日
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ』
空中で両者は荒息を掻く。
〔僅か二十日間でここまで成長するとは…あと十日もすれば越されるな〕
〔やっぱり、ジョゾは強い。あんなに特訓しても勝てない。〕
今は亮とジョゾの練習試合の最中である。十日前までは亮はジョゾに一方的にボコボコにされていたのだが今は両者共にボロボロである。
「今日のところはこれで終わりだ。」
『あぁ、おつかれ〜』
「おう、お疲れさん。」
『なぁ、ソウって何故死んだんだ?』
亮が突然ジョゾに尋ねた。
「何故いきなりそんなことを聞く?」
『いや、何となく。ふと疑問に思っただけ。
で、どうなんだ?』
ジョゾは暫く考え込んで答えた。
「……忘れた。
ルーマン様に聞けば分かるかもしれない。」
『そっか、ルーマンって何処にいるの?』
亮は呆れながら言った。
「知らなかったのか?
いつも“安らぎの間”(亮とギガが再会した場所)にいるぞ。」
『そうか、ありがとう。
じゃあ今日会って聞いてみるか。
じゃあなジョゾ。』
亮はそう言って安らぎの場の方向へ体を向けた。
「あぁ、また明日。」
ジョゾが挨拶を返すと同時に亮は飛び立った。
〜〜安らぎの場〜〜
ここ安らぎの場は前にも述べたようにかなり広く、真ん中に大きな樹が生えている。
この樹の下は昔から竜王の特等席だ。
だが、今日は安らぎの場にはギガはいないようだ。
他の竜にとっては日中の居場所となっていて常に多くの竜がここで昼寝をしたりしている。
その安らぎの場に亮が入ってきた。
竜達が亮の姿を確認すると丁寧にお辞儀をした。
亮はルーマンを探した。
探すと言っても今まで彼に会った事がないのでどれが彼なのか分からない。
〔どいつがルーマンなんだ?
確かルーマンって長老だったよな。
だから一番年上の竜に聞けばいいんだな。〕
亮は周りを見渡すと、年老いてよれよれの竜がまだ若い竜に何かを語っているのを見つけた。
〔あの竜かな?〕
しかし、現在お取込み中のようだったので亮は二頭の対話が終わるまで待つ事にした。
〜〜10分後〜〜
若い竜が年老いた竜に深く頭を下げその場を退いた。
〔やっと終わったか。〕
亮は年老いた竜に近付いた。
近付くと年老いた竜は深く頭を下げた。
それに対し亮も頭を下げた。
『あなたがルーマン様ですか?』
亮は相手が年寄りなので、敬語を使った。
「さよう、儂[ワシ]がルーマンじゃ。
だが、王子であられるあなたがこのような老いぼれに敬語を使うべきでない。」
『分かった。』
亮はすぐに普通の言葉に切り換えたが、多少そのことに抵抗感があった。
「何か御用かな?王子殿。」
『元竜王ソウの死因について聞きたいのだが…』
「ほう、ソウ様の死因ですか、リョウ様も珍しい事をお聞きになりますな。
それは今から50万年前ちょうど竜戦争が終結した頃…」
ルーマンが亮に語り始めた。
「竜戦争が終結した頃、ソウ様は神殿を創ったりして竜界の和平に努められた。
じゃが、数百年か経つとソウ様は魔界に行ってしまわれた。理由は魔界に平和をもたらす為だと……
その当時、魔界は邪悪な力によって支配されておった。
ソウ様は魔界の善良な心を持つ人間たちと手を組み、その邪悪な力を打ち砕く為に魔界に行かれたのじゃ。
そして、ソウ様は命を掛けて見事邪悪な力を打ち砕かれた。
だが、ソウ様はそれと引き換えに命を落とされた。
と、言う訳じゃ。
これ以上の事は儂は知らん。」
『そうか、ソウはそこまでして竜界、魔界の平和を願っていたんだぁ〜。
俺もソウが造り上げてきた竜界の平和を守り続けないとなぁ〜。』
「リョウ様、その意気じゃ。
その気持ちを大切にするのじゃぞ!」
『あぁ。
今日はありがとな。』
「うぬ、儂も主に会えて嬉しかったですぞ。」
亮はそれからルーマンに深く挨拶を交わして自分の寝床に飛び立った。
亮が飛び去った後ルーマンは声を漏らした。
「あの方がリョウ様か…
あの感じ、いずれ三界(人間界、竜界、魔界)に大きなものをもたらすかも知れん…」
〜〜夜、亮とギガの寝床〜〜
『そうだ!』
亮は突然何かを思い付いたように寝床で叫んだ。
「どうした?」
寝る直前だったのかギガは不機嫌そうに聞いた。
『俺、明日帰る。』
「はぁ!?」
ギガはいきなり何の事かと声を上げた。
『だから、人間界に帰る。
そういえば、そろそろ夏休み明けるんだった。』
実は今日で亮がこの世界にきて34、5日が経つ。だから、そろそろ人間界では夏休みが明けてしまうのだ。
「本当に帰るのか?」
『あぁ、俺は向こうの人間でもあるからな。』
「そうか。別に俺は止めない。だが、また帰って来いよ。」
『あぁ、明日発つから』
「おう、分かった。自分の恋しい息子がまたいなくなるとは寂しくなるなぁ。」
『寂しい気持ちは分かるが“恋しい”は止めろ。キモい。』
「………」
『って、もう寝てるじゃん。はや!』
そう言って、亮も眠りに就いた。
実はこの時、ギガは寝ていたのではなく声を殺して泣いていたのだった。
〜〜翌朝〜〜
安らぎの場には沢山の竜であふれていた。
「本当に行くのか?」
『あぁ。』
「また帰って来いよ。
まだ、属性魔法を教えていないんだから。」
『分かっている。』
「リョウ!」
亮がその声に反応し振り返るとテトとマナがいた。
この二頭とは、初めてのサバイバル戦以来初めてできた竜の友達だ。
「帰って来たらまた相手してよ。僕、それまでに強くなっているから…」
「私も頑張る!」
マナもテトの後に続いて張り切って言った。
『そうか。じゃあ、期待してるよ。』
「リョウ様、人間界に戻っても元気にするんじゃぞ。」
『それはこっちの台詞だ。
俺が戻って来るまでにくたばるなよ。』
「何を言う。儂は20000年まで生きてやるわい。」
ルーマンはカッカと笑いながら言った。
亮はそれに笑顔で答えた。
亮が辺りを見渡す。
周りには亮を送る為に来てくれた竜が沢山いる。
『今日は俺のために皆集まってくれてありがとう。
俺は人間界に帰る。
だが、一年もしない内に(冬休みに)またここに戻るつもりだ。
その時は、また宜しく頼む。
それでは皆、また会おう。』
亮の挨拶の言葉が終わると周りの竜は雄叫びを上げた。
そして亮がギガ、ジョゾ、テト、マナ、ルーマンに順々に顔を向け、
『じゃあな。』
と、一言いい、この世界に来た時に唱えたように、
『ムーヴ』
と、唱えた。
そして、亮は安らぎの場から消えた。
亮が消えた後ルーマンは誰にも聞こえないように呟いた。
「あやつ、時空移転魔法を使えこなせるのか?…」
と……。