続・ヘラ様の結婚相談所(条件付き)
まだ続く序章……
序章ってなんだっけ?
「あとはわたくしが思う女子に必要な能力を、適当に授けておきます。これで困ることはありません。
では美香、よい来世を」
「いやいや待って、待ってヘラ様!」
唐突に来世に送り込まれそうになった美香は泣きながら頼んだ。
半泣きでも涙目でもない。
ガチ泣きである。
だってこのかみさま、テンプレだと言いながらテンプレガン無視である。
説明が圧倒的に足りない!
「もう必要なことは全て伝えたと思いますが」
不思議そうなかみさまは、首をかしげるだけでもため息の出る美しさだ。
きれいなものが好きな美香は、見とれて現実逃避したくなる。
しかし、ライトノベル好きな喪女として譲れないものがある。
「まあ、あなたがそこまで拘るならよろしいわ。言ってごらんなさい」
「えぇと、まず……」
私は死んじゃったと。
「そうです。あなたもわかっているでしょう」
「そうですね」
ヘラ様に会うまで、私はしっかり死に際を苦しんだ。記憶は鮮明だ。
目の前にいきなりバイクが突っ込んできたのだ。トラックでなく。
いやここはトラックだろう、普通。で、即死でミンチ。
「女性がミンチとかやめなさい」
いえ、ヘラ様。日本の流行はトラック転生です。そして即死。
私はおそらく恥ずかしい体勢で、路上でしばらく虫の息だった。で、サイレン聞こえたし救急車には乗ったな。
そしてそれを会社の同僚に見られた。
だって女子三人でランチに出ていたのだ。
「あっ、私ランチ食べてない」
「気になるところはそこですか」
いや、食べなくて正解か。
食べていたら事故の衝撃で諸々出てしまったことだろう。
ただでさえ美しい死に際でなかったのに、さらにリバースは……いかん。さすがに喪女でもいただけない。
「ランチを惜しむのなら来世で楽しみなさい。幸い、あなたの女子力なら現世の食事も再現できます」
おぉ、そうだ。女子力カンストのおかげで、今まで手の届かなかった料理まで食べれる⁉
「食べられますよ。好きにお作りなさい」
食に不安がないのは有り難いです。
あとは……私はあれが寿命だったと。
「そうです。てんぷれの神のミスではありません。
日本の死後のシステムは優秀です。他の国にないほど作り込まれています」
あれ? なら何故私はヘラ様にお会いしているのでしょうか。
日本なら地獄で裁判……。
「もう済んでいます。その間の記憶が残るシステムではないのでしょう。
気になるのなら掛け合って、記憶を戻してもらいますか?」
いえ、いいです。
裁判待つまで四十九日?
思い出してもなぁ……。
「あなたは可もなく不可もない、との沙汰を受け、転生の流れに乗りました。
そこから先は、特別に選別された魂以外が世界に割り振られ、様々な世界、様々な命に生まれ変わります。
わたくしがあなたをそこから選んだのです。
それともてんぷれどおりに、この話が嘘だとか、わたくしを悪や偽神と思いますか?」
かみさまは楽しそうに笑って言った。
ここでは全て筒抜けで、私が微塵も疑ってないことを知っている上で、テンプレに付き合ってくれているのだ。
だって、目の前のかみさまは圧倒的な存在なのがまじまじとわかるのだ。疑うなどできない。
これも魂だけだからなのかな。
アニメで言う念話とか心が繋がるとか、とにかく、相手が嘘をついていないのがわかるのだ。
それにしてもヘラ様、ほんといいかみさまだな。こんな喪女に付き合ってくれるなんて。
いったい旦那様はどこが不満なんだ。
いや、アレは病気か。
不満なんかなくてもついしてしまうんだ。
だって不治の病だって、母が言ってた。
「まあ、あの方がそうあるのも神性なのです。世に神威を振りまき、世界と神、ひとと英雄をお創りになる。そしてあまねく男どもの象徴でもある。
そしてわたくしがそれを許さないのも、また神性であり、あまねく女の象徴なのです」
世界中の浮気を許さない女の象徴なのですね、ヘラ様。
「そうです。そして、あまねく貞淑な女の味方。ですから、あなたの味方なのです。ただ、貞淑であるのなら、ね」
「はい、もちもんです!」
つまり浮気女死すべし、ってことですね。
しませんよそんな恐ろしいこと。ヘラ様の地雷じゃないですか。
「では、もうよろしい?」
「……では、最後にひとつだけ。わがままをお聞きください」
次回、
続々・ヘラ様の結婚相談所(条件すり合わせ)
予定です。