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かみさまの落とし子 ~女神様は喪女撲滅活動をはじめました~  作者: 高梨
第一章 異世界で女子力について悩む
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魔女の条件

 フローラと同年代の異性、さらに登場!

 


「それにしても、フローラは物知りね~。私が 魔女だって気がつくなんて」


 再会の抱っこからの回転が済み、がっつりフローラを抱きなおしたカーネリアの言葉に、フローラは固まった。


 今フローラがカーネリアを「美魔女」と言ったのは、前世の「年齢不詳の美人」の意味合いだ。しかし、今世でその概念はなかったらしい。


 ズバっとそのまま、「美しい魔女」として捉えられると思ってもみなかった。


 マズイやらかした、と青ざめるフローラだったが、ディアンを片手で抱きかかえたままのディールさまの突っ込みで助かることになる。


「フローラほど賢ければ気付くだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「まあ、そうね」


 にっこりと笑うカーネリアは、フローラを見つめて改めて名乗った。


「フローラ。私はフレミア家の得意な身体強化に優れた魔法使い、いわゆる魔女よ。あなたにも無関係ではないから教えておくわね」


 そう言うカーネリアに抱かれた手から暖かい力を感じたフローラは、目の前の美女を見つめた。


 これは初心者に魔力の存在を教えるため、教師がよくやる触れた相手に魔力を流すという行為であったと、フローラは後に知るのだが。

 笑顔のカーネリアの瞳の奥にゆらめく赤い光を見たフローラは、唐突に理解する。


(これが魔力)


 赤い赤い、力の奔流が、カーネリアを薄く覆っている。


「見えているわね? あなたには魔力があるのよ。そのまま、自分の手を見て」


 自身に白く強い光が見えたフローラは、そのまま周囲を見る。


 ディールとディアン、カーネリアも赤い。一行の人は赤と紫、虹色が多い。

 ハイネは自分と同じように光っているが、頭部に光輪があり、そこは玉虫色である。


ぐるりと周囲を見回して確認していたフローラは、カーネリアの来たあとをゆっくり歩いてくる、黒い渦のような力を感じた。


 透明の、黒い渦。

 引き込まれるように見つめると、視線に気付いたカーネリアが教えてくれた。


「ああ、あの子は私の子。アイアゲートよ」


 渦の中にはただ黒い、真っ黒な子どもーー自分と同じくらいなのに、どこか老成した、穏やかな笑顔の少年。

 全身真っ黒な服装だが、仕立てのいいそれは、不吉な印象はなく、前世の学生服のようだった。


 ディアンやカーネリアほど美形でもないのに、フローラは彼から目が離せなかった。


 前世で見慣れていた黒髪だからだろうか。すごく懐かしい感じかした。

 吸い込まれそうなほど澄んだ瞳は漆黒。

 真っ黒な瞳の中に白い星が散っているみたいだ。


 ーー日本人は黒い瞳と思われがちだが、暗い茶が多い。

 懐かしいはずなどない、その色彩。

 でもどこかで会ったことがあるような、奇妙な感覚。


「はじめまして。フローラ」


 彼はそう言って、母に抱かれるフローラの手をとった。

 握手である。


「これからよろしくね?」

 

 握った手の感触を確かめるように、上下に軽く振る彼がそう言った意味を知るのは、別宅に戻ってからだった。



 * * *



 大人たちと別宅へ戻ったフローラたちは、二階の家族用のリビングスペースで、座って話を始める。


 まず、ディールさまもカーネリアも、最初に会ったときからフローラが強い魔力を持つ子どもだとわかっていたと言われた。


 魔法とスキルを使うには、学ばねばならない。


 天然で使いこなす者もいるが、加減を間違えれば自分を傷つけかねないし、知識があった方が使いこなせる。


 魔法を使うには知識と想像力、スキルを使うには心の強さと体の器用さ。

 堪え性のない、知識のない、手足の短いバランスの悪い子どもには、本来五歳くらいから心構えと体力作りから指導を始めるのが普通だ。


 しかし、フローラは賢い。

 ……賢く見えていた。


 そして稀な強大な魔力の持ち主。


 早く指導をしたほうがいい、と判断された。


 そこでフローラと面識のあるカーネリアが指導者として村に住むことになった。

 

 猛女と名高いカーネリア、ディールさまの妹になる。

 フレミア家の実子で、現在は一族臣下の家に嫁入りしている。


 他家に嫁に出すことができなかったからではない。あまりに強力なフレミア家の得意魔法に長けていたため、他所に出すのが惜しまれる才能の持ち主だったからである。

 ……まあ、彼女の猛女ぶりは有名で、積極的に嫁に欲しいと名乗り出る家もなかったのだが。


「私は身体能力を上げる魔法に特化しているけど、息子が天才なの。だから、魔法の制御なら、大まかな範囲はカバーできるはずよ」


 漢らしくどんと胸を叩いて安心をアピールする彼女に天才と呼ばれた息子は、顔色を変えずに相変わらず乾いた笑顔である。


(どんだけ面の皮厚いの)


 実の親に天才呼ばわりされて表情一つ変えないアイアゲートに、底知れないものを感じてしまうフローラだった。


 そのアイアゲートは、ちょっと怯えの入ったフローラに構わず、言った。


「今母が言った通り、僕は天才らしくて。

 僕は吸い取るっていうか、打ち消すっていうかーー無くすのが得意だから。フローラが力を暴走させても、僕が無くすことができる。だから、安心だよ?」


 まるでなんでもないことのように、当然だと言い切る少年に、フローラはドン引きしている。


(自分で天才言うんかい)


 得体の知れない自称天才少年が、自分より一つ上なだけだと教わって、フローラは戦慄した。貴族こえーと。


 後に判明するのだが、貴族でもこんなに怪しく、自分を天才と当たり前に言うやつはいなかった……。






 次回、


 秘密の花園


 予定です。

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