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かみさまの落とし子 ~女神様は喪女撲滅活動をはじめました~  作者: 高梨
第一章 異世界で女子力について悩む
16/21

黒髪の貴公子

やっとフローラと同世代の異性登場!

 


 軽やかな足音は、花々のクッションであまり響かなかった。



「うわっ、なんだそれ」


 宙に浮かぶステータス画面に驚いた人物が声を上げてはじめて、ふたりは第三者に気付いたものの、もうどうしようもなかった。


 だって、ステータス画面どうやったら消せるのかわからなかったんだもんと、後にフローラは言った。



 ーー実はステータス画面なんてものは、この世界にはなかった。


 これはテンプレを守るため、ヘラ様がフローラ仕様に作ってくれたもので、この世界では普通鑑定で調べるのみで、職業とスキルなどしか見られない。

 まあ、鑑定能力の高いものはもっとたくさんの情報を得られるし、スキルを付加した道具などもあるので、それで調べられはするが。


 鑑定のない人は、ぼんやり自分のスキルを把握して、適当に使っていた。

 当然、己の体力値なども知らない。ていうか、能力値ってナニ?である。



 フローラ、最初は鑑定で自分を見てみるべきであった。

 鑑定はステータス画面のように、虚空に現れたりしない。


 ちなみに鑑定1でフローラが自分を見ると、名前と年齢、職業とヘラ様と孔雀さまの加護しか見えない。



「えっと……フローラ、4歳、女神の落とし子

 ……たいりょく、まりょく……おんみつ……」


 読み進めて、青ざめるどころか紙のように白い顔色で、フローラを見る闖入者。

 彼はフローラの美少女面に気がつく余裕などなく、フローラも彼の美少年ぶりに気をやる余裕がない。


 フローラとハイネは混乱のきわみ。

 まだ硬直していた。


 お互い、滝汗が止まらない。

 ヤバいものを見られた方と見た方で、同じことを考えていた。


(まずいまずいまずい)


 しかし、慌てたってどうにもならない。


 先に冷静になった神鳥にちょいちょいつつかれて、やっと二人は現実に気がついた。



 本来ならば秘匿されるべき情報を見てしまった闖入者は、幼い少年であった。


 黒髪にはちみつ色の目。六、七歳くらいの美少年であるが、意思の強そうなきりりとした眉の、よい仕立ての服を着た彼ーーどう考えても貴族の子息である。

 どこかの村の子ではない。


 勝手に覗き見てしまったと、彼は素直に謝った。


「すまない。見たことのない、めずらしいものが見えたので、思わず……誰にも言わない。約束する」


 小学校の低学年あたりの少年が言うには、大人びた言葉遣いである。

 彼に賢さと誠実さを感じられたため、フローラは少し笑顔を見せることができた。


「こちらこそ。こんなところで見てた、わたしも悪いの……」


 自分より小さな女の子にそんなふうに言われて、幼いながら紳士たれと育てられている少年は、ますます罪悪感で謝罪に力を込めた。


「いいや。声もかけずに見た、僕が無礼だった。

 僕はオプシディアン・フレミア。

 フレミア家の名に懸けて、秘密は守る」


 騎士の所作を真似たのか、少年は胸の前に拳を握り、まっすぐにフローラを見つめて誓いをたてる。


 フローラも、今度こそ笑顔で名を名乗った。


「ありがとう。私はフローラ」


 オプシディアンは、花畑に座るフローラに手を差し出した。

 その手に掴まって、立ち上がる彼女。


 花畑にやさしい風が吹き、白い花弁が舞う。


 完璧な男女の出会いである。



 ーーしかし、フローラは呪われた喪女(女神お墨付き)。



「オプシディアン……わたし、さっき見たようにいろんなスキルがあるの♪」

(約・おまえわかってるよな? じゃないとやっべースキルでどうにかすんぜ)


 だから黙ってろ、というのは、意訳がわかりきらなかったオプシディアンでも理解できた。


「うん。だから秘密だね?」



 オプシディアンのファインプレーで、二人の出会いはさわかか(そう)に終わった。



 実はまだフローラのステータス画面が出たままで、二人の間を阻むように浮かんでいたのは、未来の暗示ではない、と思いたい……。






次回、


能力を把握しよう!


予定です。

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