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かみさまの落とし子 ~女神様は喪女撲滅活動をはじめました~  作者: 高梨
第一章 異世界で女子力について悩む
13/21

天才児フローラ

(多分)次回、恋愛あるから!

 


 品のある豪勢な部屋に、ドレスの美少女。


 当たり前のように見えるが、まだ洋服屋が出来ていないのに彼女がこうなっているのは、領主さまを連れ戻しに来た猛女に貢がれているからである。


 一応馬車でやってきた彼女(当然馬に(じか)乗りできる)が領主さまを取っ捕まえた際、フローラはまだ領主さまのお膝の上にいたのだ。


 フローラを発見した彼女は即領主さまから取り上げて、居住性の高い自分の馬車に連れ込んだ。

 そして出てくるきらきらしい衣装。


 即興のファッションショーの成果はすぐさま村人に披露され、盛り上がる女たち。

 そして女目線の荷が馬車から引き出され、あっという間に繰り広げられるショップ番組ばりの商品紹介ショー。


 猛女は即座に村の女を掌握した!



 彼女はカーネリアといい、男ばかりの領主一行が要請してくる備品の偏りを見抜いていた。


 領主さまの仕事関係以外では小麦、塩、芋やジャガイモ、塩漬け肉などの保存のきく食糧と、作業着・農耕用の道具。

 あとはガス抜きのための酒。


 食うに困らなくするためだけの食糧と、食糧の量産のための道具。


 生活の質を上げるものが一切ない。


 ここに彼女は活路を見出だした。

 村の生活を支えている女を味方にしてしまえば、男どもも従わざるを得ない。

 ここに漬け込んで領主さまの村での権力を削ぐのだ。


 領主館を放置するなどありえぬ。

 目にもの見せてくれる!と、彼女は意気揚々としていた。



 そして策は成り、領主さまの絶対権力制はカーネリアと二分された。


 がんがん最低限の仕事をねじ込み片付けていくカーネリアに、ディールさまも強く口出しできない。


 ほんとはできるだけ仕事を長引かせて村にいたかった領主一行は、泣く泣く仕事を消費していった。


 その間、当然のように猛女に溺愛され、領主さまと共に彼女が立ち去るまで、今度は彼女のお膝の上に乗るのがフローラの日課になった。

 そして別れを惜しんだ彼女から、定期的に可愛いお洋服が届くようになったのである。


 それから幾度か領主さまの一族が現状把握にやって来ては、ついでにフローラを愛でるというのが繰り返された。

 ……実は可愛い落とし子を愛でるのがメインで、視察は建前である。


 そんなわけなので、全員フローラに何かを貢いでいく。


 脳筋は幼女を見たら貢ぐ呪いにでもかかっているのかというぐらい、とんでもない額の贈り物である。


 しかしフローラ、現代日本人の記憶があるせいか、与えられる贅沢にあまり気付いていない。


 実は彼女、一歳くらいまで美香の意識がなかった。

 一歳を過ぎて前世の記憶をしっかり思い出すまで、美香(享年二十八)の認識力を発揮していないため、自分の村はちょっと田舎なのかな、くらいの感覚だった。


 これ、日本でライトノベルを調べたヘラ様の気遣いだった。

 まともに動けない乳幼児に意識のある大人が転生すると気が狂うほど退屈で、だいたいみんな魔法の練習をはじめる。


 しかしフローラ、生まれながらにハイスペック。練習の必要などない。

 乳幼児がいきなり普通に魔法使いだしたら大騒ぎである。


 そこら辺を考慮して、一歳ころから意識が目覚めるようにしてくれたのだ。

 だが、これがフローラの勘違いを深くさせた。


 田舎の生活はかっつかつである。余裕などない。

 働いて作物を育てなきゃ食うものはない。金のやりとりは村外でしかしない。


 だから農村の人間は、生まれたてじゃなきゃ幼児を背負って仕事する。

 大人から子供まで、全員働き手なのだ。一児の母も子供の面倒ばかり見ていられない。


 あと、この村の作物が日本仕様になったのはフローラが生まれてから。それまでは生きていくのに精一杯の収穫だった。

 フローラが生まれて数ヶ月作物がなるまでは、みんなそれまでどおりかつかつの生活をしていた。


 でもフローラ、そんな現状のときは無邪気な幼児。



 気がついたらみんなボロいが、暮らしはおだやか。食生活もいい。

 田舎なんだな、という認識しか持てなかった。


 そして二歳ごろには領主さま来襲。

 生活レベルが激変した。


 領主さまは当たり前に紙とペンをくれ、絵を描けば「天才か!」ともてはやされ。

 しばらくしたら届く絵画セット(メッチャ高い)。

 貢がれるドレス。可愛らしい小物。便利な生活用品。


 本来諌める両親も、フローラが落とし子であるからとそれを受け入れた。


 またフローラ、調子に乗る転生もののお約束を知っていて、そこは謙虚に受け止めた。


 ヘラ様の加護があるんだからと傲慢に振る舞ったりせず、享年二十八歳の大人の対応を心がけた幼女。

 調子に乗らず、もらった物にはきちんと感謝し、過ぎたる物は受け取らなかった。


 村人も、領主さまの臣下も一族も、彼女を配慮のできる天才児だと納得した。


 本人はただ、生前の常識ある対応をしただけなのに。



 こうして少しズレて育ったフローラ。

 このとき四歳。


 彼女の運命が動き出すのは、もう少し先。



次回、


黒髪の貴公子


予定です。

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