第二十八話
「マイ、この硬い糸を、寝床に敷いて、上に毛布を敷いてみよう。ちょっとは、楽になるはずだよ。
明日は、この糸を垂らして目印にする。担げる分だけ担いで、無くなったら、一度は取りに戻るよ。その後は、材料は沢山あるから、無くなったら、そこで作って進んで行こうと思う。先にマイの寝床つくってみようか。量が足りなかったら、トイレの壁を糸に変えるから。そっちの塊、持ってもらえる?」
「これですね。」
「昨日寝てたところでいいかな?」
「大丈夫です。」
マイの寝床に移動する。二本分で足りるかな?
糸をほぐして、厚みが均一になるようにしてみる。
「マイ、こんな感じでどう?毛布敷いて、寝てみて。厚みが足りなかったら、もう一塊、持ってくるよ。」
「すぐに準備しますね。」
マイが毛布を出して、糸の上に敷いていく。
「マイ、昨日みたいに、枕の部分を二重にしてみて。首の下に当たる部分は、ちょっと折り込んで三重にしてみて。」
「そうですね。やってみます。」
これで、昨日より寝やすくなったはずだ。
「試してみます。」
マイが横になる。
「昨日より、楽です。首も三重にしたほうがいいですね。」
「じゃ、今日はそれで、寝てみてね。」
「アルさん、ありがとうございます。」
「他の説明をするから、戻ろう。」
「はい。」
次に説明するのは、ショルダーバックと袋にするか。
「マイ、これショルダーバックと袋。袋には三日分のマカロニを入れて。もう一つあるから、他にも使ってみて。ショルダーバックの長さは大丈夫かな?」
「ジーンズの生地よりしっかりしてますね。・・・長さは大丈夫です。」
「後は、テーブルで説明しようか。これを運んでもらえるかな?」
マイに、布と糸を渡す。
リュックの中から、巾着を出し、銀貨を一枚用意する。
針と待ち針、鋏を集めて、袋に入れ、指貫は手に持ってテーブルに向かう。
「マイ、指貫もサイズ違いで作ったから、選んでくれる?どれかは合うと思うんだけど。」
「指貫・・・これが、ぴったりです。」
「じゃ、それ使って。針と待ち針に鋏も木製だから。鋏で糸は切れるよ。生地はちょっと厳しいかも。こっちの袋に、そのまま入れてあるから注意してね。収納ケースは後で作るから。それとこの生地で肌着の上に巻きつけて、お金を保管できるようにしよう。着物の帯みたいな感じで考えてるけど、どうかな?」
「帯・・・お金は縫い付けますか?」
「いや、背中側になる部分に入り口が布で重なる収納部分を作って取り出しやすくしようかと。これなら、飛び出すこともないし、洗濯もしやすい。縫い付けちゃうと、洗濯の時、困るよね。他にアイデアある?」
「ベルトみたいにしてしまってはどうですか?」
「留めるのは、どうする?」
「紐を作って、結んではどうでしょうか?二箇所作っておけば、大丈夫だと思うんです。」
「前に二箇所・・・上下に付けようか。それだと、生地が長いから鋏で切れるか試してみよう。マイ、ちょっと立ってもらえる?」
「はい。」
袋から鋏と待ち針を取り出し、テーブルに並べる。生地を1枚手に取り、マイに声をかける。
「ちょっと、手をあげてね。」
生地をマイの腰にまわす。
「マイ、ウエストに、付ける?それとも腰・・・骨盤の上にする?」
「ウエストのほうがいいです。」
ウエストの位置で長さを調節する。待ち針を打ち、目印にする。
「マイ、長さはここまでで、いいと思うよ。ここで生地を折って、入り口になるところを重ねる。そうすると、飛び出したりしない。後は、銀貨が一つずつ、入れれるように縦に縫ってしまえば、いいんじゃないかな。どう?」
「やってみます。」
「生地を切るよ。」
鋏を手に取り、生地をテーブルに置く。
縫い代を足して、切る場所を決める。一気に鋏を動かす。何とか切れるが、やはり切れ味は悪い。
残った部分から、紐を4本分切り離す。
「マイ、これで作ってみて。鋏は糸を切るには使えるけど、生地を切るにはちょっと向いてないね。切れなかったら言ってね。私が切るよ。」
「ありがとうございます。アルさんはどうするんですか?」
「私も作るよ。腰で留めるタイプにしようかな。少しの場合でも分散して持つようにしてね。」
「わかりました。」
生地を取り、腰にあてて、長さを決める。銀貨3枚・・・多くなったときのことを考えて端まで入るようにしておくか。
本体部分と紐の部分を切り、待ち針でとめていく。本体の中心部に銀貨を置いて、サイズ調整をする。待ち針でとめたところに、銀貨を出し入れしてみる。問題ないな。
「マイ、こんな感じになるけど。どうかな?」
「わぁ、これなら数の増減にも対応できるし、洗濯もしやすいですね。汗をかくでしょうから、洗濯しやすいほうがいいです。同じようにしてみます。」
「先に前中心にくる端側を中表で縫ってから、ひっくり返してね。その後、1個分ずつ銀貨が動かないように、縦に縫っていけばいいから。緊急事態で、荷物を捨てることがあっても、肌着の上に持っておけば、急場はしのげると思う。」
「分散するための、小さな袋はこの残りの生地を使っていいですか?」
「かまわないよ。足りなければ、魔力が回復したら作るから。」
「たぶん大丈夫です。足りると思います。」
「こんな感じで、必要な物を作ってみて。わたしも作るから、何かあれば、聞いてね」
「ありがとうございます。」
椅子に座り、一息つく。
これで、マイも移動の準備ができる。三日分の荷造りをさせて、残りの荷物を小分けさせておこう。
んん?首筋がピリッときたぞ?
辺りを見渡すが、異常はない。おかしいな?もう一度、見渡す。やはり異常は見つからない。
「アルさん、どうかしたんですか?」
「うん、わからないんだけど・・・うおっ、なっ!なんだっ!?」
立ち上がって、周りを慎重に観察する。鳥肌がとまらない。全身に悪寒が走る。・・・やはり、ここに異常はない。
「あっあの、アルさん?」
「あぁ、急にごめんね。ちょっと悪寒が走ってね。ここに異常はないみたい。・・・びっくりさせちゃったね。あー、少しずつ鳥肌も治まってきてるから大丈夫だよ。」
「アルさん!顔が真っ青になってますよ!さっきまでなんともなかったのに!」
「この場所に異常は無いよ。・・・私個人・・・でもないな・・・マイ、落ち着いて。・・・ふう、すぐに何かが起こるという警告ではないよ。」
「警告ですか?」
「なんか、誰かに・・・見つかったらヤバイ。なんかヤバイことに確実に巻き込まれる!!私の勘がそういってる。・・・もしかしたら、転生者の誰かが、こちらの人間に言ってしまったのかも。・・・マイ、絶対に転生してきたことを、知られてはいけないよ。いいね?」
「あのっ、えっと、・・・わかりました。絶対言いません!」
「マジでヤバイ。こんな全身鳥肌、そうそうないよ。個人を特定されたわけじゃないようだから、接触しなければ、大丈夫だろう。昔から、虫の知らせみたいな・・・勘がよく当たるんだ。バスにも乗りたくなかったんだけどね、仕事で仕方なく乗ったんだよ。・・・二日目でこれって・・・はぁ。」
ほんの少し前までは、なんともなかったのに・・・はぁ、いつでも逃げれるように、万全にしておかなくては。
全身鳥肌に悪寒なんて、どんだけ凶事なんだ。バス以上だぞ!悪意が感じ取れないだけに、余計にたちが悪い!!世界の成長も促さなくてはならないのに。一体何なんだ!!!
マジで勘弁してほしい。・・・仕事をしても、名前があまり広まらないようにしたい。
「ごめん、マイ。ちょっと休ませてもらっていいかな?」
「さっきよりは、マシになってますけど、まだ顔色悪いです。眠ったほうがいいです。」
「何かあったら、起こしてね。」
「はい、ゆっくり休んでください。」
一気に疲労が押し寄せてきた・・・寝よう。寝てしまおう!
残りの糸で寝床を作り、横になる。
そうだ、会わなければいいんだ!出会わないように、それしかない!!
出会ってしまったら、私の人生が詰む!絶対に会わないぞ!!
対応策もできたし、ちょっと休もう。




