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『異世界職能レビュアー』 ~元・管理職のおっさん、鑑定スキルで有望株を「青田買い」して、最強の快適生活をプロデュースする~  作者: レイフォン


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19/19

18話。 脅威と再会の話。

「・・・だからさ、俺は、新人受付嬢のエマさんにデーモンの解体の仕方を親切に教えてただけなんだよ。

そしたらミランダに

「私にはそんなこと教えてくれなかった!」

ってブチ切れられて、それを見てたウチのリーダーにも

「ミランダさんを泣かせんじゃねぇ!」

ってブチ切れられて、胸ぐら掴まれたと思ったら、

「解散だ、もう、我慢できねぇ」

ってそれで何で解散になるんだ!?

俺はただ、解体を教えてただけだろ?

他のメンバーにも、お前、最近調子乗り過ぎとか言われるし意味わかんねえべっ!?」


深い森の入り口。

ビッグボアを求めて歩く俺の隣で、ラベル君が愛用の短槍を担ぎながら心底疲れた顔で愚痴をこぼしていた。

この二年、ラベル君の実力は防具靴の恩恵もあって飛躍的に伸びた。

だが、比例するように周囲の女性関係のトラブルも激化。

そりゃそうだ、下手な○流アイドルも顔負けのルックスの持ち主のラベル君を世の女性達が黙って放置するわけが無い。

しかもラベル君、無自覚なんだよな・・・。

天然の女ったらしって、タチが・・

ミランダさんの胃の痛さ、お察しします。


結局、彼は


「しばらく女はいい・・・。」


と悟りを開き、ソロでの修行を選んで今に至っている。

ラベル君が暇そうにしてたのは、きっと、あの頃からパーティメンバーに疎まれ始めてたんだろうな・・。

誤解してたかも、ごめんよラベル君。


「ラベルさん。」


ポンポンとラベル君の肩を叩く。

2年でやっと背伸びしなくても俺の手がラベル君の肩に手が届くまでに背が伸びた。


「俺の事をわかってくれるのはお前だけだぜ、リオ」


半泣きしそうなラベル君の顔を見ながら俺はニコッと笑みを見せる。

そしてそっと鑑定を走らせた。


【対象:ラベル(18)】

★・職能:【短槍使い】

・スキル:

【身体強化 3】

【俊足 2】

【空間把握能力 1】

【自己治癒 1】

・称号:

【女難の相】

【(new)天然の受付嬢クラッシャー】

・備考:ソロで修行中。

女性絡みのトラブルによるパーティ解散歴あり。

現在、精神的に女性忌避気味。★


・・・身体強化に俊足、空間把握に自己治癒・・。

もう立派に人間辞めてないか?

18歳にしてこのスキルの多さ、出会った頃の鉄剣を振っていた彼とは雲泥の差。

それに、ギルドにたむろしている有象無象の自称冒険者のステータスとも大違いだ。

やっぱりこいつなんか持ってるぞ、きっと。


・・・でも、称号が悲惨すぎる。

天然の受付嬢クラッシャーって何だよ・・・。

・・・ミランダ嬢の胃の話か?


そんな事を考えていると、俺の進行方向にラベル君の短槍がすっと現れ俺の動きを制止した。

彼は口の前に人差し指を置き、俺に音を立てないように忠告する。


「なんか来るぞ、複数だ、人じゃ無い。」


そう言うと彼は短槍を構え、視線を鋭く前に向ける。


現れたのはビッグボアではなかった。

草むらから姿を現したのは、三体の異形。


「・・・なんだ、こいつら。

鑑定。」


・対象:【ゴブリン・スカウト】

★・スキル:【統率】【静寂】【連携】【悪知恵】

・備考:意思ある何者かの支配下。

人語は話さないが、高度な戦術的思考を持つ。

独自の言語で話すが、人間がそれを理解するのは困難。★


「こいつらが、ゴブリン。」


俺の知るゴブリンとは明らかに外見も纏ってい雰囲気も違う、この世界のゴブリン。

肌の緑色と顔面の醜悪さ以外、殆ど人間と言ってもいい位だ。

動物かデーモンの皮かはわからないが、服もちゃんと着ているし、各々、武器を持っている。

棍棒や、石で出来た刃物やら斧だったらある意味安心できたかもしれないが、あれは間違いなく、鞘に収められた剣だ。

俺達を見つけたゴブリンは汚らしい叫び声を上げることもなく、三体共、冷徹な瞳で俺たちを観察する。

その動きは動物型デーモンの野生ではなく、訓練された兵士のそれだ。


「おいリオ、下がってろ。

こいつら、人型だ今までと違うぞ・・・。」


ラベルが地を蹴る。


身体強化と俊足が発動し、トール特製の防具靴が土を掴んで爆発的な加速を生み出す。

ラベルの短槍が、先頭のゴブリンの喉元へ電光石火の突きを放つ・・・・が。


「なっ!?」


ゴブリンは、ありえない角度で上半身を逸らし、突きを回避。


ぬおっ!!


同時に、残りの二匹が左右に散り、俺達の退路を断つようにジリジリと背後へ回り込み始めた。

その動きは完璧に連動しており、一匹が仕掛け、残りが狩るという、高度な連携だった。


俺も姿勢を落とし、腰の短剣を鞘から引き抜き構えをとり高鳴る鼓動を抑えるように息を整える。


「ふ〜。」


「クソッ、ちょこまかと!」


大人の人間位の大きさの割に奴らは俊敏で、おかしい位に柔軟だ。

少し苛立ちつつもラベルは冷静に短槍を風車のように振り回し、背後から迫る二匹の攻撃を弾く。

だが、ゴブリンたちは決して無理に突っ込まず、ラベルの死角を突いて確実にこちらの体力を削ろうとしていた。

三匹の無言の連携に、ソロで場数を踏んできたラベルさえも少し手こずっている。

俺は離れた場所から、解析と推奨スキルを頼りにラベルに戦術を叫ぶ。


「ラベルさん!

右のやつが囮だ!

本命は左の、足を狙ってるやつ! 右のは無視して左にぶっ放せ!」

「応ッ!!」


俺の指示を信じ、ラベルは右のゴブリンの攻撃を紙一重でかわすと、そのまま左のゴブリンへ向かって、アーツの反動を恐れぬ全力の「突進」を放つ。

俺の「推奨」のバフが載った短槍の一撃がゴブリンの胸板を貫き、異形の体が崩れ落ちる。

連携が崩れれば、残りの二匹はもはや敵ではない。

ラベルは流れるような槍捌きで、残りの首を瞬く間に跳ね飛ばした。


「・・・ふぅ。

何だったんだ、今のゴブリン。」


ラベル君が短槍の血を払いながら、眉をひそめる。

俺も胸騒ぎが止まらない。

平穏な日常を守るためのリスク管理だ。


と、その前に。


「ラベルさん、ゴブリンって魔石とか取れないんですか?」

「え、この状況で、、。

ホントがめついなお前。」

「ええ、それが取り柄なもので。」

「ったく、しゃーねーな。」


暫く、丁寧なゴブリンの解体作業をラベル君にレクチャーして貰うと俺たちは顔を見合わせ、慎重に森の深部へと足を踏み入れた。

数十分後、俺たちが目にしたのは、森の異変を決定づける光景だった。

そこには木々を切り出し、不格好ながらも柵を巡らせた集落が存在していた。


「・・・デーモンが、村を作ってやがるのか?」


ラベルの声が戦慄に震える。


その時、集落の中心から鋭い女の気合と、魔物の断末魔が響いた。


「っ!」


俺達の体が同時に動いた。

集落の広場に飛び込むと、そこにはフードを深く被った小柄な人物が、銀色の閃光を撒き散らしながらゴブリンの群れを蹂躙していた。

その剣捌きは、マンガやアニメで育ってきた俺にとってまさに「カッコいい」の一言。

無駄のない足運びは、まるで踊っているかのようで、剣筋は視認することさえ難しいほど速い。

だが、その背後から、二メートル近い巨体を持つゴブリンが咆哮とともに現れ、巨大な棍棒を振り上げる。


「巨体と武器の大きさ、まさに脳筋だな、デッカイと知性もひったくれも無くなるのか?」


フードの人物が巨大ゴブと正面から対峙し、一瞬の膠着状態が生まれた、その時だった。


・・・待て、解析!


俺の視界に巨体ゴブの醜悪な表情がニヤリと歪んだのが見えた。


【解析結果:戦術的伏線】

• 対象: 1. 前方:ホブゴブリン

2. 右後方:ゴブリン・アーチャー

• 連携状態

• 戦術解析:

• ホブゴブリンが単独で対峙し、その威圧感と巨体で「視線」と「注意」を完全に釘付けにしている。

• 相手がホブゴブリンの攻撃に集中し、回避または防御の動作に入った不可避の瞬間を狙い、死角の岩陰からアーチャーが必殺の一矢を放つ二段構え。

• 特記事項:

• 魔性の知恵:単なる本能ではなく、相手の心理的盲点を突く軍事戦術に基づいた配置。

• 意思の統一:本来なら功を競うはずのデーモンが、自身の獲物をアーチャーに譲るかのような組織的規律が見られる。


あの巨体が、世に言うホブゴブリンなのか!

しかも、演技派、嫌々、そんな事考えてる場合じゃ無い!

こいつら、自分の巨体を壁にして後ろの弓兵を隠してやがる。

連携の精度が、そこらの新米冒険者パーティより遥かに高い。

・・・これはもう、ただの狩りじゃない。

戦争のやり方だ。


・・・だが!


解析結果通り集落の影に隠れたゴブリンアーチャーが、フードの人物の死角から矢を番えるのが見えた。


「させるかッ!」


俺は短剣を全力でアーチャーの手元へ投げつけた。

「推奨」による補正か、短剣は正確にアーチャーの脳天に突き刺さった。

その時放たれた矢の軌道は大きく逸れて空を斬る。


「っ!?」


フードの人物が、微かな風切り音に反応して一瞬だけ視線を動かす。


同時に、背後のホブゴブリンが矢が当たったと確信して、さらにニヤリと醜悪な笑みを浮かべて隙を晒した。

その一瞬を、彼女は見逃さなかった。

鋭い一閃。

銀の刃がホブの分厚い腹を深々と切り裂き、臓物が噴き出てその巨体が地面に沈んだ。


その圧により激しい風が吹き抜け、フードがふわりと脱げた。

露わになったのは、月光のような銀髪と、凛とした美しさの中に幼さを残した少女の顔。


「シル・・ヴィア・・・?」


ラベルが呆然と声を漏らす。

剣を構えたまま肩で息をしていた彼女が、ゆっくりとこちらを振り向いた。

鋭く研ぎ澄まされていた剣聖の瞳が、ラベルの姿を捉えた瞬間。


「・・・ラベルにい?」


その瞳は、嘘のようにふにゃりと揺れ、かつて平民の子供として一緒に泥だらけになって遊んでいた、あの頃の、憧れのお兄ちゃんを見つめる少女の瞳に戻っていた。

剣聖の顔が消え、領主の養女という鎧が脱げた、ただのシルヴィアとしての、心の底からの呟きだった。


え?

なんこれ?


俺の構築した効率的な日常の裏側で、論理や効率では測れない影が、ついにその実体を現し始めていた。


ちょと待てーい!

何だこの恋愛フラグは!!!!!!


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