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『異世界職能レビュアー』 ~元・管理職のおっさん、鑑定スキルで有望株を「青田買い」して、最強の快適生活をプロデュースする~  作者: レイフォン


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0話 俺が異世界に転生するほんの数分前の話。

「お前、趣味、何?」

職場で不意に投げかけられた言葉だった。


「……別に。これといって無いけど」

「そんなわけないじゃん。その歳で無趣味とか、人生損してない?」


損?


一瞬吹き出しそうになるが我慢する。

そんな必要も無いように思えたがまあ念の為だ。

軽薄そうなこいつに、俺の「本当の趣味」を話して何になる。

言いふらされるのが関の山、御免被りたい。

何より理解されるはずもない。

嫌、逆に、、、、。

嫌、無いな。


「アニメくらいは見ることあるけど、グッズを買うほどじゃないしな」

「マジか、その歳でアニメ? やっぱネ○フリっしょ。後、○マプラとか?

大人なら金かかったコンテンツ見て満足しねーと」


勝手なことを。

サブスクなら複数社契約しているし、視聴番組もお前よりきっと多い。

はぁ、どうでもいい事でどうでもいいお前と張り合っている事自体が馬鹿馬鹿しい気分だ。

お前が求めているのはそんな答えじゃないんだろう?


「あー、めんど。ちょっと外行ってくるわ。

あと、これ任せていい?」

男はタバコを吸うジェスチャーをしながら、始業早々だというのにオフィスを抜け出していった。

空になったデスクを眺め、俺はディスプレイに目を戻す。


趣味。

ないわけではない。むしろ、俺の収入のほとんどは「それ」に消えている。


「風俗」

その中でもデリヘル。

四十代になるまで、俺の趣味はアニメやヒーロー映画、怪獣といった、いわゆる「子供の延長」だった。


だが離婚して一人になったとき、すべてがどうでもよくなった。


離婚後の通帳に残っていたのは、わずか七万円。

十数年の結婚生活、家族への献身、サービス残業の対価が、たったこれだけか。

自分の人生に突きつけられた「評価額」の低さに、吐き気がしたのを覚えている。

「こんな金、ゼロにしてやる」

自暴自棄になって手を出したのが、始まりだった。

真面目に生きてきた反動か、あるいは元嫁に拒まれ続けた虚しさの埋め合わせか。

金さえ払えば、俺のような男でも、若く美しい女性に「肯定」してもらえる。

沼にはまるのに、時間はかからなかった。


そして、俺は「口コミ」に出会った。

最初はただの備忘録だった。だが、文章を書くことは嫌いじゃなかった。


俺が書いた批評が、誰かの参考になる。

俺の言葉で、風俗嬢の指名が増える。

養育費を払い、安月給で細々と生きる俺にとって、それは唯一「自分が誰かを動かしている」と実感できる瞬間だった。


『不健全な趣味だよ』と諭してくる嬢もいた。

だが、俺にとっては健全かどうかなんてどうでもいい。

「参考になった」という評価の数字が伸びるたび、俺の卑小な自己顕示欲が満たされていく。


ただの口コミ。されど、俺がこの世界と繋がっている唯一の証明。

いつしか目的は「利用」から「執筆」へと変わっていった。


ーー


「……っ!?」


視界が歪み、脳を直接掴まれるような激しい頭痛が襲った。

喉の奥からせり上がる吐き気。

オフィスに備え付けられた、アメリカンとは名ばかりの薄汚いコーヒー。

それを注いだ紙コップが、指の間から滑り落ちた。

床に広がる茶色の液体が、なぜかひどく遠くに見える。

一歩が重い。スーツが、ネクタイが、俺の肉体を縛り付ける枷のように重い。


「はぁ、はぁ……っ」


耐えきれず、俺はその場に崩れ落ちた。


石畳のような、冷たい感触――。

いや、ここはオフィスのタイルカーペットのはずだ。

意識が薄れ、視界が急速に暗転していく。

遠ざかる意識の向こうで、誰かの声がした。


「リオ!」


……リオ?


名前?

誰だ、それは。

俺の最後の記憶は、ぶち撒けられたコーヒーの香りと、

頭の中に響く、心配そうにかけられる優しい女性の声だった。

手直しして投稿してみました。

新しいのを書こうと思いましたが、捨てるには惜しい設定なので不定期ですが書いていきます。

どうぞ見守ってあげて下さい。

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