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才能に縛られた世界の『無能』でも、『運』が良ければ成り上がれるはずだ  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
3章 凸凹コンビと黒い人

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黒き英雄と無能の少年 1

 ゆっくりと僕達を目指して進むエラー。


 僕達はそれに対して出来る限りの妨害をして時間を稼ぐ。


「オラァッ!!」


 グンセさんがミョルニルで瓦礫をばら撒き足場を悪くし、僕はそこに足を乗せたタイミングで聖剣を投げてエラーのバランスを崩す。


 それだけで流石に倒れるまでは行かないが一歩後退させる程度の効果は有る。


 他にも大楯の男性がわざとエラーの前を動き回り、エラーに魔法を使わせる事で僅かな時間が生まれる。勿論他のメンバーやヒメさんが魔法を防ぎ大楯の人は無傷のままだ。


 



 そうして後退し始めてから二十分程度。僕達の後ろには最終地点となるDH教育学校が見え始めた。



「おいおい!もう着いちまうぞ!他のDHの連中はまだなのか!!」


 グンセさんが焦ったのか声を荒げる。


「まだ連絡が来ない!だがこのままグラウンドまで誘導するぞ!」


 レイジさんがDH端末を確認しながら大声で叫ぶ。


 グラウンドに着いてしまったら、最悪僕が斬り込んで足止めでもするしかないか——と思った時だった。



 突然、DH教育学校から爆音が数回聞こえた。


 その後、何かがエラーへと直撃しその身体の一部を歪ませる。エラーの身体を歪ませた何かは推進力を失い地面に転がっていく。


 あれは、砲弾か何かか?まさかそんな物でエラーを倒せる筈が——。


 僕がそう思ったタイミングで、レイジさんが誰かと通話しているのが見えた。そのレイジさんは明らかに怒った様子だ。


「何してんだ!間違って俺達に当たったらどうすんだよ!!」


 レイジさんがやり取りをしといる間にもエラーは何事も無かったかのように前進し始める。


「おい!渡馬さんよ聞いてんのか!俺達DHは使い捨ての駒じゃねえ!あのエラーには効果はねえんだよ!今すぐに攻撃を中止しろ!」


 レイジさんが通話していた相手は、渡馬という人物のようだ。


 確か——日本DHギルドの会長だったかな?


 

 だがレイジさんの言葉を無視し、更に数回の爆音が響く。


「くそッ!!おい!全員グラウンドまで引け!砲撃に巻き込まれるぞ!!」

 

 レイジさんがそういうや否や、前線を維持していたパーティーメンバーとヒメさんが撤退し始める。


 僕達のことは置いておいて、ミスリルのパーティーであるレイジさん達をも巻き込む可能性のある攻撃をするなんて何を考えているんだ?


 まさかこの程度何とかするだろうとか考えているのだろうか?


 大楯の人や僕、グンセさんなら軽い怪我で済むかもしれないが、後衛職やヒメさんに直撃でもしたら大怪我になる可能性が高い。


 そんな攻撃を事前に連絡もせず?



 全員が合流し一つの塊となって撤退を始める。大楯の人とグンセさんが殿となる形。


「このままグラウンドへ——」

 

 先頭を行くレイジさんが、前方の光景を見て言葉を詰まらせ、足を止めた。


「どうしたんですか?」


 二番手に居た僕はレイジさんの後ろから前方を確認する。



 ——そしてその光景に絶句する。



 DH教育学校のグラウンドには、5台の戦車と……軍隊の服を着た百近くの兵士が銃を構えて整列していた。

 

 その銃と、戦車の砲台が向けられているのは——エラーでは無く、明らかに僕達の方向。


 後ろから来た他メンバー達も合流するが、この光景に声が出ず唖然とするばかり。



 レイジさんが呆然とした表情で呟く。

 

「お、おい。何考えてんだよ。何でDHじゃなくて軍隊の奴らが居る?それに何で俺達に銃を向けてんだ?」


 僕にもこの光景が理解出来ない。日本DHギルドはDH達を輸送していて時間が掛かっていたんじゃ無かったのか?それが何でエラー退治の役に立ちそうもない軍隊が?


 

 そして僕達が立ち尽くしている間にもエラーは背後から近づいて来ている。



 レイジさんが兵士達に一歩近づこうとする。


 するとダァンと響く銃声と、レイジさんの足元に突き刺さる銃弾。



「ははっ……マジかよ。頭おかしいんじゃねぇのかコイツら」


 レイジさんが力なく呟く。



「おい渡馬ァッッ!!テメェ何してんのか分かってんだろうなぁ!!」


 突然グンセさんの怒号がグラウンド中に響く。


 そして、校舎の方から放送が聞こえ始めた。


『……ハッハッハ。グンセ、久しぶりだな?お前とは積もる話もあるが、時間が無いから単刀直入に言う……』


 

『そこの黒き英雄……いや、無能のムノ君と言えば良いのか?……今すぐソイツの身柄とユニークレアの聖剣エクスキャリバーをこちらに引き渡せ。そうすれば、他の奴らには手出しはしない』



「なっ……!?」


 その言葉に僕達全員が驚愕する。


 何故このタイミングで?

 それに何で僕がムノで、剣が聖剣だと知っている?

 

 

『君が誰かを知っていて驚いたか?私は何故か勘が鋭くてねぇ。疑問に思って調べてみたら、ムノという人物に行き着いた。そして歌舞伎町ダンジョンの履歴を調べてみたら、まさか偽造免許とはねぇ。偽造したのはグンセか?それなら一緒にいる事も理解出来るが』


 渡馬は一呼吸置いてから話を続ける。


『そして、これはれっきとした犯罪行為だ。私は日本DHギルド会長として、君の身柄と聖剣を確保する』




 偽造免許については、バレない訳が無いとは思っていた。


 だが、何故今のタイミングで?——いや、他の手が届きにくい、今のタイミングだからこそなのか。



「……なあ。グンセの旦那。今の話は本当か?」


「……」


 レイジさんの問いにグンセさんは押し黙る。


 代わりに僕が話始める。


「本当です。僕は無能のムノで、偽造DH免許を使ってダンジョンに潜り、そしてこの剣はユニークレアの聖剣だ」


 僕は剣を掲げる。


「……」


 レイジさんは考え素振りをして黙る。


『ほう?それが聖剣か?名前の割に意外と地味なもんだな。ほら、すぐ後ろにエラーが迫ってきているぞ?時間が無いぞ、どうする?安心しろ聖剣は私が有効活用してやる。それでエラーも退治してやるさ』


 やはり渡馬は聖剣が目当てでこんな馬鹿な行動に出たのか。それは今のエラーの被害を抑えるよりも大事な事なのか?



 すぐ後ろにエラーの足音が迫る。


 けれど今は時間が惜しい。それなら。



「……グンセさん。後、任せます」



 僕はそう言い残すと聖剣を腰に差し、両手を上げて兵達に歩を進める。


『ハッそれで良い。物わかりの良い子で素晴らしい。——フン。どこぞの抵抗して死んだ馬鹿とは大違いだな』



 その直後、僕の後方でカツンと何かが落ちる音がする。


 


「おいムノ。悪い、抑えらんねえ。嬢ちゃん連れて逃げろ」




 振り返ると鬼のような形相をしたグンセさんがいた。


 いつもしていたサングラスは投げ捨てられ、その目は狂気じみた目をしている。


「グンセ……さん?」


 その纏った雰囲気は明らかに異常で、僕は震えてしまいそうになる。



「……今の言葉、あのクソ野郎に後悔させてやる」


 そんなグンセさんの前に、レイジさんが焦った様子で立ち塞がる。


「グンセの旦那。頼むから抑えてくれ。エラーが片付いたら渡馬は俺が必ず——」


「退け」


 グンセさんは乱暴にレイジさんの肩を退ける。


 レイジさんも前衛のミスリルランクだと言うのに、グンセさんは簡単に突き飛ばした。


 ……グンセさんの譲れない何か、に渡馬の言葉が触れたのだろうか。グンセさんは完全に冷静さを失っている。




 だが、僕もこのままじゃ終われない。


 拘束されて、聖剣を取り上げられて、僕が居ると聖剣が使えないと分かれば殺されるだろうか?

 

 一時的に捕まって何とか逃げ出すつもりだったが、グンセさんがこの様子なら無理だ。


 ——それなら、僕もグンセさんに付き合ってみようか。


 

「ヒメさんごめん、守れないから逃げてね。レイジさん……出来れば彼女を守ってあげてください」


 

 僕は腰に差した聖剣を抜き、グンセさんの隣に駆け寄る。




『な、何を馬鹿な事を!!おい!もう良い!その二人を殺せ!』




 流石にこの状況は大抵の事を許せる僕でも許容し切れない。


 はあ。ほんの少し前に誓ったばかりなのに。


 まさかここまで早く撤回する事になるとは。



 

 渡馬も、それに従う兵隊達も、全員……"暴力"で制圧させて貰う。


 今回はJHWの時とは違う。



 人への配慮など、無い。

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