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才能に縛られた世界の『無能』でも、『運』が良ければ成り上がれるはずだ  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
2章 少年と不運の少女

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幸運少年と大企業

 JHWはその規模から、装備の値段を左右する程の力を持っている。それに加えて日本DH協会とも関係が有り、企業としての地盤はとても固い。


 現状では装備を扱う他企業も価格を右に倣えをするしか無く、もし逸脱すれば、JHWに潰される可能性まである。

 

 だが、その事に不満を持つ企業は多い。価格競争を行えず、被害を受けるのは装備を扱う企業だけでは無い。

 

 個人の職人や、町工場が一番の被害者だ。装備の生産体制の改善により原価を下げても、その分安く売る事ができずに売上の上昇は見込めない。


 利益率だけなら上がるが——それだけでは企業の成長は見込めない。


 駆け出しのDHにしてもそうだ。JHWにより装備品の価格が下がる事がない為に、能力に見合った武具を新調する事が難しい。


 そういった不満は、少しずつ溜まって来ていた。


 ——僕とグンセさんはそこを狙う。




ーーーーーー




「さて、計画を実行するにも前準備が必要だ」


 グンセさんは腕を組みながらそう話す。


「資金の調達に、弾の準備、現状に不満を持つ中小企業や個人店への根回し……やる事は多いぞ。それらの準備が整わなけりゃ、計画を実行に移せねえ」


「資金と弾は箱ですかね。根回しは……グンセさんお願いできますか?」


「おう。そのつもりだ。栗生組も上手く使ってやってやる。箱も出来る限りかき集めるし、ムノはそうだな……」


「僕に良い考えがあります。それは——」


 グンセさんに僕の計画を話す。


「——なるほどな。確かにそうすれば弾も少なく済むし、それを条件に根回しもしやすい。良いじゃねえか、採用だ」


「良かった。なら僕はこの作戦をメインに動きますね」


「ああ。でも、本当に常識からかけ離れてんな……。普通じゃ思いつきもしねえし、実行できねえよ……」


「褒め言葉として受け取っておきます」


 こうして、計画は始まった。



ーーーーーー



 ——歌舞伎町ダンジョン 四階。


 歌舞伎町ダンジョンの四階は、洞窟になっている階層だ。

 

 壁が淡く光っているので、三階よりは視界が良く狩りはしやすい環境となっている。


 僕がここに来ている目的は、ある魔物素材の収集。


 ここにはファングウルフという、灰色の狼型の魔物が出現する。その皮は斬撃にも打撃にも強く、防具の素材として多く使われている。


 ファングウルフの皮で作った防具は、マジックレアの下位装備と同等の防御性能を持ち、駆け出しがよく使う装備だ。


 けれど——今回の作戦で狙っているレア等級とは少しズレている。何故か?——それは。



 今僕が戦っているのは、"黒い"狼型の魔物。


 僕は魔物が飛びかかってくるのを躱して、すれ違いざまに胴体を斬りつける。

 

「ギャンッッ!」


 狼型の魔物は斬られた痛みで着地に失敗し、大きな隙を見せる。——そこを狙ってもう一太刀。


「よっと!」


 すると狼型の魔物は消失し、なめされた皮だけがそこに残される。僕はそれを拾ってマジックバックへと収納する。


 僕が戦っていたのは、シャドウウルフという魔物だ。

 その黒い皮はファングウルフの皮よりも防御に優れ、おまけに闇属性耐性(小)まで付いている。

 その性能と希少性から高値で取引されており、その皮で作られた防具の性能はレアランクの下位に相当する。


 何故、それだけの防具が希少なのかというと。



 ——シャドウウルフは、ファングウルフのレアポップで出現する魔物だからだ。

 

 

 デイドリームの一件でレアポップが通常ポップになることを経験した僕は、シャドウウルフを乱獲する事を思いついた。


 シャドウウルフの皮が、もし市場へと大量に流れたらどうなるのか?——同等の性能の防具価格が荒れる事に間違いはない。


 そうなったら、JHWの価格調整は機能するのだろうか?



「……JHWには悪いけど、僕の運をフル活用させて貰う」


 ——僕はそう呟いて、また次のシャドウウルフを探す。


 

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