少年と不運の少女 7
夜叉神さんは言葉を失い、奥歯を噛み締める。
「僕が嘘を言っていないのは分かったはずです。さあ、どうしますか?」
僕は問うが、相変わらず黙ったままだ。
——そこで、今まで口を噤んでいたヒメさんが口を開く。
「ムノ君……もういいわ。あなたの気持ちは嬉しいけど、そこまでの事をして欲しく無い。だから——「本当に良いんですか?」
僕はヒメさんの言葉を遮る。
「ヒメさん……バイトしてまで頑張ってたみたいじゃないですか。素材で稼げないから、生活費はバイトして、空いた時間や睡眠時間を削ってまでダンジョンに潜って。そこまでしていたDHを、簡単に諦められるんですか?」
「な、何でその事を……!」
「僕は決めました。あなたとパーティーを組み、オリハルコンランクDHを目指す」
「ハッ!オリハルコンランクだと?世界で二人しかいないと言うのに、そんな簡単になれるものか!」
夜叉神さんが割って入る。
「ええ、僕らならなれますよ」
僕の言葉に夜叉神さんは顔をしかめる。
スキルでも使ったのかもしれない。
「で、夜叉神さん。どうしますか?」
「フン。子供がどう足掻こうが、会社を潰せるわけがない。やれるならやってみろ。だが、後で痛い目にあっても知らんぞ?」
「……分かりました」
「どうなるか見ものだな。ま、どうせ何も出来ずに終わるのだろうが」
「後で後悔しても、遅いですよ?」
「そんな脅し等に狼狽る私じゃ無い。分かったなら、さあ出て行け!二度と私の前に顔を出すな!」
「そうします。ヒメさん、もう少しだけ待っていてください。必ず迎えに来ますから」
僕の言葉に、彼女は黙ったまま俯いている。
「——それでは。また会いましょう」
僕は踵を返し、玄関の外へと出る。
——交渉は決裂した。それならば、僕は夜叉神さんを後悔させてやる。そう心に決めながら、僕は帰路へと着く。
ーーーーー
僕はグンセさんの店に戻り、二人で悪巧みの算段を相談していた。
グンセさん曰く、元々こうなる事は分かっていたらしい。夜叉神さんの性格上、折れる事は無いと。
——という事で、グンセさんは快く協力してくれる事となった。
「ま、俺の予想通りだな。ムノが喧嘩売ってくるとこまで想像ついてたぜ」
「僕も一筋縄ではいかないと思いましたけど……。そもそも夜叉神さんを調査した書類、あの内容どうやって調べたんですか?内容が詳細過ぎて怖かったんですけど」
「そりゃ企業秘密だ。ま、現代社会は怖いって事だな」
「それだけで済ましますか……」
現代の闇を垣間見た気がしたが、今はあまり関係ないので次の話題に移る。
「それで、夜叉神さんの会社なんですが」
「ああ、夜叉神の会社は——ジャパン・ハンター・ウェポン。通称JHW。 主な売上はハンター向けの武器や、防具などの装備品販売。ドロップ武具から、職人のクラフト武具まで幅広く展開し、装備売買会社の中で日本のトップ企業だ」
——僕達はそんな大手の会社であるJHWを、泣きついてくるまで叩きのめす。
さあ、僕達なりの戦いを始めよう。




