↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能に縛られた世界の『無能』でも、『運』が良ければ成り上がれるはずだ  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
1章 無能の少年と古い箱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/66

孤児院 5

ーーーーーー

※グンセ視点


 ——ムノが孤児院に向けて出発した数分後のグンセの店。


「チィ……ッ!」


 俺は怒りに任せて、カウンターを殴りつける。


 このままだと最悪ムノは殺される。

 だが、俺にも群瀬組の奴らを守るという役割が有る。


 もしここで俺が動いたら組同士の抗争が始まり、組の奴らも無事では済まねえだろう。——それならいっそ栗生組を俺が潰すか?


 いや、それならそれで別な組が手を出してくるに違いねえ。

 クソッ雁字搦めじゃねえか。


「若、何を悩んでいるんですか?」


 そこに現れたのはスーツを着こなした、白髪に白髭の一見執事のような佇まいの男。


「……シル爺か」


「全く。悩んでいるなんて若らしくない。若い頃は好きなようにやっていたじゃないですか」


「だが、今は俺にも立場が有る。下を危険に晒すわけにはいかねえ」


「……はあ。そんな若を見たら、下の者たちはガッカリするでしょうな」


「……何が言いてえ」


「あなたを慕って群瀬組に入った者達は、若が後先考えずにやって来た姿を慕っていたというのに。それで危険が及ぶ?そんな事を我々が気にするとでも?そんなもの、皆で笑いながら蹴散らしてやりますよ」


「……」


「あの少年の放っておけない感じは、若の若い頃にそっくりですなあ。あの振り回されてた頃が懐かしい」


 はあ……俺も歳を取ったもんだな。まさかこんな悩むまでもねえ事で、その後の安全面だけ考えて悩んじまうとは。


 好きなようにやって、もしダメならその時に悩めば良い。DHだった頃からそうやって這い上がって来たじゃねえか。



 ——おい、テメェは金剛石のグンセだろ?




「……若」


「ああ。ちょっくらアイツを迎えに行って来るわ」


 そう言うとシル爺はフッと笑う。


「若、お帰りをお待ちしております」

 

 ——嬉しそうなシル爺を横目に、俺は店を飛び出した。


ーーーーーー


※ムノ視点



「グンセさん…」


「……話は後だ。先にコイツらの処理だな」


「いや、そこじゃ無くて」


「何だ?」


「……何で上半身裸なんですか?」


 グンセさんの格好は、上半身裸に下はスーツのスラックス。


「……いいたい事はわかるが、これが俺の戦闘服なんだよ。黙ってろ」


 グンセさんが構成員達に目を向けると、構成員達に響めきが起きる。

 


「おい……アレって…」

「まさか……」



「さあて、久々だし——暴れるぜ?」


 グンセさんはそう言うと、マジックポーチから黄色い大槌を取り出す。


「あれは——」


 その大槌は僕が古い箱から引いた、"神槌ミョルニル"。

 要求筋力が80以上で、僕が漬け物石にもならないと不要扱いしたものだ。


「グンセさんまさか……それ使えるんですか?」


「おう。ギリギリだけどな」


「DHだったのは聞いたけど、まさかそんなに強かったなんて」


「昔の話だ。これでも前と比べりゃ弱くなってる。さ、テメェは脇で休んどけ」

 

 そう言うとミョルニルを片手で持ち、まるでただの棒のようにグルグルと回して見せる。



「やっぱりそうだ!コイツ"金剛石のグンセ"だぞ!!」

「グンセだと!?群瀬組の組長が何しに来やがった!」

「おい…グンセって言ったら、元ミスリルランクDHじゃねぇか!!」


 グンセさんの姿に構成員達が騒ぎ始める。


 あれ?もしかして、二つ名がある位有名なのだろうか?


「出来の悪い息子に代わって、親父が相手してやるよ。……ほら、ザコども掛かってこい」


 構成員達に向かって手招きして挑発する。


「……ッ!てめぇら行くぞ!群瀬組の組長やれるチャンスなんてねぇ!!歌舞伎町を俺らのシマにするぞ!」


 幹部と思われる構成員が叫ぶと、それに合わせて構成員達が相槌を打つ。

 そしてそのままグンセさんに向かって一斉に襲いかかって来る。


「ハッ!この感じ良いじゃねえか!!」


 グンセさんは構成員達を迎え撃つ。





 ——そこからは一方的な戦いだった。


 グンセさんはミョルニルの一振りで数人を吹き飛ばし、その振った風圧で更に奥の構成員達を薙ぎ倒す。


 稀に魔法や銃の弾が飛んで来るが、グンセさんはそれを避けるそぶりすら見せずに受ける。


 だが、その身体には傷一つ付くことはない。


「……それで金剛石か」


 ステータスで金剛石のように硬くなった皮膚は、並の攻撃では傷一つ付けられない。恐らくだが、その例えで金剛石なんて二つ名が付いたのだろう。


 グンセさんはミョルニルで次と構成員達をなぎ倒していき、その数は減ってはいるが構成員達の包囲はまだ残ったままだ。


「テメェら、ウジャウジャと羽虫みてえだな……めんどくせえ。アレやるか」


 次の瞬間——グンセさんが持つミョルニルが雷が纏い始める。


「"ヘイトチェイン"」

 

 グンセさんが何らかのスキルを呟くと、取り囲んでいた全ての構成員達の身体に大きな黒い鎖が巻かれていく。


「集まれザコども!!」


 グンセさんがその鎖を力任せに引くと、その力に負けた構成員達が近づくように飛んでくる。


「オラァッ!!いけ!!」


 ミョルニルに纏う雷が一層強くなる。


「"トールハンマー"!!」


 そして構成員達が引き寄せられ、集まったタイミングを狙い——グンセさんはそこに雷を纏ったミョルニルを大振りに振り下ろす。


 ——その瞬間、大きな雷音が周囲に轟く。


 ミョルニルが地面に触れた瞬間、地面を雷が伝い、鎖に繋がれた構成員達全てを巻き込んでいく。


「「「ギャァァァッ!!」」」


 地面から立ち昇る、構成員達を貫く雷の槍。そして雷の鳴る轟音と構成員達の悲鳴。


 ——そして雷が止んだ時には、あれだけ居た構成員達は誰一人立っておらず、そこにはグンセさんと倒れた構成員達の姿しか無かった。


「……ちょっとピリッと来たな」


 グンセさんはそう言うとミョルニルを肩に担ぎ、僕の方へと近づき僕の前で止まる。



「どうだ?カッコ良かったか?」


「いや……うーんと。うん。雷親父って言葉がピッタリだった」


 嘘を言ってもどうせバレるし。


「ハッハッハ。テメェにも雷落としてやろうか?」


「嫌ですよ。静電気でピリッと来るの嫌いなんです」


「俺の雷と静電気と一緒にするんじゃねえよ……





「おいグンセ!!」


 そこで長い髪の男が会話に割って入ってくる。


「よう。栗生。久しぶりじゃねぇか」


「……ふざけんじゃねぇ。うちの組の邪魔しといて、覚悟は出来てんだろうな?」


「覚悟なんてもんは、10年前に捨ててきたぜ?今は安定を求めるただのオッサンになっちまった。歳は取りたくないもんだぜ」


「ふざけやがって……!!クソッ!おい、ガロック!元ミスリルランクって言っても過去の話だ!てめぇなら勝てんだろ!やれ!」


「……」


 ガロックと呼ばれた巨体の男が、何も言わずに近づきグンセさんと対峙する。


「おうおう。中々強そうな奴じゃねぇか?テメェのランクは何だ?」


「……ゴールドランクだ。だが、今のDHランクを昔と同じと思うんじゃねぇ」


「テメェでゴールドなら、昔の俺ならオリハルコンだな。あーあーDHランクも落ちたもんだぜ」


「その口、黙らせてやる……ッ!!」


 ガロックは、その巨体からは想像できない速度でグンセさんに迫る。


 グンセさんはそれを見るが……微動だにしない。


 そして——ガロックの右拳がグンセさんの額に直撃した。



「何だと……?何でビクともしねぇ?」


「何言ってんだ?俺は"金剛石のグンセ"だぞ?んな弱っちいパンチが効くわけねぇだろうが」


「でもてめぇは大槌のアタッカーじゃ……ッ!!」


「はぁ……何もしらねぇんだな?勉強不足だぜガロックちゃんよ…」


 そう呟きながら、グンセさんはミョルニルを目で追えないような速度で振るう。


「な……ッ!?」


 ガロックはそれに反応できず……ミョルニルが胴に直撃し、そのまま後方へと吹き飛ばされていく。


 ガロックの巨体は地面に落ちても転がっていき…数十メートル先の所で止まる。


 そして、そのままガロックが起き上がる事はなかった。


「俺はタンクだ。……良く覚えとけ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。