狐の狐乗り
「まずはその狐を降ろしてからだ! 死ねッ!」
「ク、クレフス様? これは一体――」
「僕にはフィオ兄さんの考えている事なんて分からないよ……」
「クレフス! お前も手伝え! 調教された事をバラすぞ!」
「い、言ってるから⁉︎ それほとんどバラしてるのと一緒だから⁉︎」
「調教されたんだ……椅子か調教か、悩むなぁ……セリーはどっちがいい?」
「えっ⁉︎ わ、私は……椅子になりながら調教されたい、かな?」
「……セリーって天才だよね」
私もそう思いますよニンクさん……きっとセリーさんには才能があります。
男性経験の無い状態でもこれだけの発想力を持っているのです、一度でも経験を積めば更に飛躍する事でしょう。そして私すら止める事のできない魔性の女へと――
魔性……悪くありませんね? どうですかセリーさん。『【魔性】のセリー』と名乗りませんか? フェリス姉さんには私から伝えておきますよ?
「くっ……悪く思わないでねフィオ兄さん! これも僕の尊厳を守る為なんだ!」
「キリリスさん、どうしますか?」
「そうでありんすね……フィオ坊がもう少し速く動いたら、わちきも落ちない様に抱き着いてしまう――」
「お任せください。【霊獣憑依】を使いましょう」
「あら? ふふ……フィオ坊がもふもふになりんすね」
「……その状態で『フェンリル』を憑依させたら殺す」
ウルはフェンリルを崇めていましたね。しかし、天界にフェンリルを呼ぶとは……面白い冗談です。フェリス姉さんだけ食べて貰えないでしょうか?
まあ今回は瑞獣から引っ張って来ましょう。キリリスさんも居ることですし、同じ狐という事で『九尾狐』はいかがですか? 真っ白でもふもふですよ。
「狐……気に入りんした。見せておくんなし?」
「【霊獣憑依:九尾狐】」
「椅子である為に霊獣を呼ぶのか……頭が痛い」
「ねぇウル? あれやばくないかな? 僕じゃ止められる気がしないんだけど……」
「フィオドール様が……狐になってしまいました」
「あの状態だと獣姦になるのかな……フィオドール様ならいいや」
「あの〜……私、なんで呼ばれたんですか〜?」
「これは失礼しました。緑髪のお嬢さん、私はフィオドール……今は狐をやっています」
「狐の状態なのに喋れるんですね〜? 私はユーリです〜」
「貴女を呼んでいただいたのはっ――観測課のお話をっ――聞く為でしてっ」
「ふわ〜、よく避けられますね〜? 曲芸みたいです〜」
「この程度なんて事はありませんよ。それでお聞きしたいのですがっ――ウル、『伏せ』です」
「うわっ⁉︎」
「クレフスさんは『チンチ――」
「待ってフィオ兄さん! 僕はウルに脅されていただけなんだ! だからその芸はやめて!」
「なるほど……『おすわり』」
「ありがとうっ!」
「ちょ、調教されてます……」
「セリー、『チンチン』の語源知ってる? あれ……いやらしい芸じゃ無いんだよ」
「えっ……そうなの?」
そうなのですか? 私は完全にアレのつもりで芸を仕込んでしまいました。クレフスさんには付いていませんので、違和感はあったのですが……
何にせよ、これで落ち着いて話が聞けますね。語源は後でニンクさんに聞きましょう……いえ、その前にもう一度芸の名前を言って貰えませんか? 語源に関係なく、女性の口から聞く機会の少ない言葉ですので……
「何が聞きたいんですか〜?」
「チン――ではなく、聞きたい事というのは……ふむ?」
業務内容は異世界の観測だと分かりきっていますから、それを聞くのは今更です。
となると彼女……ユーリさん自身について聞きたい事ですか。何から聞きましょう? スリーサイズ……いえ、どんな男性が好みか聞いておくのも悪くありませんね。
《お前は局長補佐だろう……ここは干渉局に不満が無いか聞いておくべきだ》
「では、現状に不満などはありませんか?」
「不満ですか〜? ありませんね〜。たくさん寝れてユーリは満足です〜」
気の合いそうな方ですね? 私も女性と寝る事で満足感を得られますので。
いかがでしょうか? ここは是非、私と一緒に寝てみませんか? きっと普段よりもぐっすり眠れると思いますよ?
《やめろご主人様……まだユーリとやらの階位すら分かっていない。手を出すべきじゃ――》
《あのー、フィオ先輩? 聞こえてますか?》
《おや、リーリアさん……聞こえていますとも。 何かありましたか?》
私は《念話》を拒むことなんてしませんので、わざわざ確認する必要は無いはずですが……ああ、カリンさんの防諜結界で一度防がれていますね。
ですが基本的には全開です。女性からの《念話》は常に受け付けておりますので、夜のお誘いもお待ちしています。
《それが……今『特派』の方から聴取を受けていまして、何か心当たりはありませんか?》
《……ありませんね》
《狐以外にも来ていたのか……》
《そ、そうですよね! すみません……こんな事初めてでしたので!》
《それは良い経験になりましたね? 初めてと言えば……私はいつになったらリーリアさんの――》
《お、おおお邪魔しました! どうぞ! 案内されるの頑張ってください!》
《念話》が切れてしまいましたか……リーリアさんは奥手ですね。
ですが励ましを受けた以上、期待に応えなくてはいけません。頑張って案内されましょう……次はどこですか?
「おっ? 体が動くよ! 良かったぁ……慣れない体勢で辛かったんだ」
「オレはずっとうつ伏せだったから胸が……」
「…………」
「ニンク? ウルさんに失礼な事しちゃダメだよ?」
「お話終わりですか〜? じゃぁユーリは寝ます〜」
「ええ、ありがとうございました。ユーリさん……さて、次はどこへ案内していただけるのでしょう?」
「あ、はい! 次は交渉課なんですけど……そのまま行くんですか?」
このまま行きます。キリリスさんが何も言わないので問題ないのでしょう……極楽です。
ですが……キリリスさん? 私の尻尾を一心不乱に撫でるのは止めていただけないでしょうか? むず痒いと言いますか……端的に言って興奮してしまいますので。
『!?』を『⁉︎』に、『ダッシュ(罫線)』を正しい表記へ変更しました。
今後はこちらの表記で投稿いたします。




