湯川 凛音
突如、四葉達の高校に転校してきた少女、湯川。
四葉は、そんな彼女を避けたかった…。
今、俺の前に立っている少女、湯川 凛音は俺が前にいた学校から転校してこのクラスに転入した。
実は、彼女の存在を…俺は前々から知っていた。そして彼女の方も…。
第3話:湯川 凛音
「あれ?握手しようよぉー。」
無垢な笑顔で手を差し出す彼女…それは虚像だ。
「どうした虔太?」
「名前、虔太君って言うんだぁ、良い名前だね!」
もちろん、彼女は前々から俺の名前を知っている。そして、俺の過去も…。
「済まない永瀬、先に帰るよ。」
「えっ?!ちょ、ちょっと待てよぉ!」
俺は、この場に長く居るのが苦しくなって鞄を持って急いで教室を出た。申し訳ないと思ったが、永瀬を振り切る為に全速力で走って家に帰った。
翌日、俺は母親に体調不良を訴えて学校を休んだ。体調不良は真っ赤な嘘だったが、母親は昔から心配症だったので信じてくれた。
時計の針は、午前9時半を差していた。突然、机に置いてあった携帯が振動した。
「メール…永瀬からか。」
携帯を開け、内容を確認した。
(大丈夫か?今日の授業、ちゃんとお前の分のノート取っとくから早く元気になれよ!)
永瀬の優しい心遣いが、とても嬉しく感じた。
内容は、まだ続いているようだった…。
(あ、一応報告しとくけどさ、朝の5分休憩中に湯川さんに“四葉君のメルアド知ってる?”って聞かれたから教えちまった、勝手でわりぃな。)
(ポトリ…)
…俺は、その場で硬直した。
「う…嘘だろ…」
その時、また携帯が振動した。永瀬じゃない…俺の登録してないメルアドだ。
「ま…まさかな…」
俺は内容を確認し、フリーズした。
(ヤッホー!具合の方は大丈夫ぅ?
さっき、永瀬君から四葉君のメルアドを勝手に聞き出しちゃってゴメンね。でも昨日、いきなり四葉君が帰っちゃって…四葉君たちと、もっと仲良くなりたかったからさ。それじゃあ、お大事にぃ。
P.S.あの事…私、絶対許さないから。
湯川 凛音)