↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第1章:神が作ったゲーム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/57

第7話:初めての冒険

 次の日。


「よし!」


 学校から帰ってきた私は、さっそく《エルディア》へログインした。


「おはよー!」


「わふっ!」


「……おはよう、ユズ」


 宿の部屋へ戻ると、シロが嬉しそうに尻尾を振りながら近づいてくる。


 ベッドの上には、人の姿になったユキが座っていた。


「おはよう、二人とも!」


 まずシロの頭を撫でる。


「わふー!」


 それからユキを見る。


「…………」


「……?」


「…………」


「ユズ?」


「いやー」


 やっぱり。


「人の姿のユキも可愛いなって」


「……また?」


「だって可愛いんだもん」


「…………」


 ユキが少しだけ頬を赤くして、ぷいっと顔を逸らした。


 でも。


 ふわふわの尻尾は、嬉しそうに揺れている。


「ふふ」


「……見ないで」


「ごめんごめん」


 昨日分かったことだけど。


 ユキは人の姿になれば、普通に言葉を話せる。


 ただ。


「今日はその姿で行く?」


「…………」


 私が聞くと、ユキは少し考えてから首を横に振った。


「……外は、こっちがいい」


 ぽふんっ。


 淡い光に包まれて。


 次の瞬間には、いつもの銀灰色の猫へ戻っていた。


「にゃ」


「やっぱり猫の姿の方が落ち着く?」


「にゃあ」


 なんとなく、そうらしい。


 人の姿が嫌というわけではなく。


 周りに私しかいない時なら、人の姿で話すのも好きみたいだ。


 でも、人前では猫の方が落ち着くらしい。


「じゃあ、二人とも行こっか!」


「わふっ!」


「にゃ!」


 今日は昨日とは違う。


 ちゃんと冒険者らしいことをするのだ。


 ◇


「い、いらっしゃいませ!」


 冒険者ギルドへ入ると、昨日と同じ受付にルナさんがいた。


「あ、ユズさん!」


「こんにちは!」


「わふ!」


「にゃ」


 ルナさんの視線が、私の足元にいるユキへ向く。


「その猫ちゃんは……?」


「ユキです! 昨日仲間になりました!」


「昨日!?」


「はい!」


「…………」


 ルナさんが一瞬固まった。


「どうしました?」


「い、いえ! なんでもありません!」


 なんだろう。


 まあいいか。


「今日は依頼を受けてみようと思って!」


「初依頼ですね!」


 ルナさんの表情がぱっと明るくなる。


「それでしたら、最初は採取系の依頼がおすすめですよ」


「採取?」


「はい。町の近くで採れる薬草や木の実を集める依頼です。比較的危険が少ないですし、周辺の地理を覚えるのにも向いています」


「なるほど!」


 いくつか説明してもらった中から。


 私は一枚の依頼書を選んだ。


 《依頼:癒し草の採取》

 《推奨ランク:F》

 《目標:癒し草×10》

 《採取地:ミルフィア北東の森》


「十個集めればいいんですね」


「はい。こちらが癒し草の見本です」


 ルナさんが一枚の葉を見せてくれる。


 丸みのある葉。


 薄い青色の筋。


 根元には小さな白い花が咲くらしい。


「これなら分かりそう!」


「森には魔物もいますので、十分気をつけてくださいね」


「分かりました!」


「無理はしないでくださいね?」


「はい!」


 こうして。


 私の冒険者として初めての依頼が始まった。


 ◇


「冒険者っぽい!」


 町を出て森へ向かいながら、私は少し浮かれていた。


「わふ?」


「だって、依頼を受けて森に行くんだよ?」


「にゃ」


「なんか本当に冒険してるって感じしない?」


「わふっ!」


 シロは楽しそうに尻尾を振っている。


 ユキはいつも通り落ち着いていた。


 しばらく歩いて、目的の森へ入る。


「えっと……癒し草、癒し草……」


 ルナさんに教えてもらった特徴を思い出しながら、足元を見ていく。


 丸い葉。


 青い筋。


 白い花。


「…………」


 草。


 草。


 草。


「全部同じに見える……」


「わふ」


「にゃ」


「二人とも分かる?」


 半分冗談のつもりで聞いたのだけど。


「にゃ」


 ユキがすっと歩き出した。


「ん?」


 そのまま草むらへ入っていき。


 一つの植物の前で立ち止まる。


「にゃ」


「これ?」


 しゃがんで確認する。


「あ!」


 ルナさんから見せてもらったものと同じ。


「癒し草だ!」


 採取する。


 《癒し草×1を取得しました》


「すごい、ユキ!」


「にゃあ」


「なんで分かったの?」


「…………」


 ユキが周囲を見回す。


 人はいない。


 すると。


 ぽふんっ。


「わっ」


 猫の姿から、人の姿へ。


「……少しだけ、魔力があるから」


「魔力?」


「……うん」


 ユキが癒し草を見る。


「植物も、生き物も……それぞれ、気配が違う」


「それが分かるの?」


「……なんとなく」


「すごい!」


「…………」


 ユキの猫耳がぴくっと動いた。


 ちょっと嬉しそう。


「じゃあ、ユキがいればすぐ終わりそうだね!」


「……たぶん」


「頼りになる!」


 すると。


「わふ!」


「ん?」


 今度はシロが地面に鼻を近づけた。


 くんくん。


 くんくん。


 そのまま少し先へ歩いていく。


「シロ?」


「わふ!」


 ついていくと。


「あ!」


 そこにも癒し草が生えていた。


「シロも分かるの!?」


「わふっ!」


「匂い?」


「わふ!」


「すごい!」


 私はシロの頭をわしゃわしゃ撫でる。


「シロも頼りになるね!」


「わふー!」


 尻尾がぶんぶん揺れている。


「二人がいたら、十個なんてすぐ――」


「やあ」


「ひゃっ!?」


 突然。


 本当にすぐ近くから声がした。


「え!?」


 慌てて振り返る。


 さっきまで誰もいなかったはずなのに。


 そこには。


 一人の少女が立っていた。


 淡い桃色の、とても長い髪。


 同じ色の不思議な瞳。


 白と淡い桃色、それに黒を合わせた、どこか変わった可愛らしい服。


 森の中に一人で立っているのに。


 なぜか不思議なくらい自然だった。


「…………」


「やぁ」


 少女が笑う。


「ボクはノアだよ」


「ノアちゃん?」


「うん」


 ノアちゃんは私を見て、少し首を傾げた。


「もしかして、君もプレイヤー?」


「そうだよ!」


「やっぱり。ボクもだよ」


「おお!」


 初めて、ちゃんと他のプレイヤーと話したかもしれない。


「私はユズ! よろしくね!」


「ユズだね。よろしく」


「それで――」


 私は隣を見る。


「この子がシロ!」


「わふっ!」


「こっちがユキ!」


「…………」


「……あれ?」


 さっきまで隣にいたはずのユキがいない。


 と思ったら。


「……っ」


 背中側から服を引っ張られた。


「ユキ?」


 振り返ると。


 人の姿になったユキが、私の背中に隠れていた。


「…………」


 私の服をぎゅっと掴んでいる。


 顔だけ少し出して。


 じーっとノアちゃんを見ていた。


「どうしたの?」


「…………」


「大丈夫だよ」


 私はユキの頭を軽く撫でる。


「ノアちゃんも私と同じプレイヤーさんだって」


「…………」


 それでも出てこない。


 むしろ。


 もう少しだけ私の背中へ隠れた。


「…………」


 なるほど。


 ユキって。


「人見知りなんだ……」


「……ユズ」


「あ、ごめん」


 でも。


 背中に隠れてるユキ。


「…………」


 可愛い。


「……また言おうとした?」


「言ってないよ!」


「……顔に出てる」


「そんなぁ」


 ノアちゃんが、そんな私たちを見てくすくす笑う。


「仲良しなんだね」


「うん!」


「よろしくね、ユキちゃん」


「…………」


 ユキは私の背中から、ほんの少しだけ顔を出した。


「ご、ごめんね。人見知りみたいで」


「気にしなくていいよ」


 ノアちゃんは楽しそうに答える。


 それから。


 シロを見る。


「シロくんも、可愛いね」


「でしょ!?」


 私は思わず食いついた。


「真っ白でもふもふなんだよ!」


「わふ!」


「毛もすっごく柔らかいし!」


「わふっ!」


「尻尾もふわふわで!」


「わふー!」


「ほんとに自慢の子なんだね」


「もちろん!」


 ノアちゃんはそんなシロを少し眺めてから。


「あ、そうだ」


「?」


「この近くにダンジョンがあるよ」


「ダンジョン?」


「うん。森の奥にある館みたいなところ」


「へえー」


 ダンジョン。


 昨日、冒険者ギルドでも説明された。


 でも。


 今は依頼の途中。


 また今度でもいいかな。


 そう思っていた。


「そこでね」


「うん?」


「シロくんに似合いそうな首輪が手に入るよ」


「…………」


 首輪。


「シロに?」


「うん」


「似合いそうな?」


「うん」


「…………」


 私はゆっくりシロを見る。


「わふ?」


 雪みたいに真っ白な毛。


 ふわふわの首元。


 そこに。


 可愛い首輪。


「…………」


 絶対似合う。


「行く!!」


「わふ!?」


「……ユズ」


「行こう、シロ!」


「わふ?」


「首輪だよ! 絶対似合うよ!」


「……依頼」


 背中から、ユキの小さな声。


「え?」


「……癒し草」


「…………」


 手元を見る。


 《癒し草×2》


「…………」


 あと八個。


「…………」


 癒し草。


 首輪。


 癒し草。


 シロの首輪。


「…………」


「あとでいいよね!」


「……いいの?」


「だってシロに似合う首輪があるんだよ!?」


「…………」


 ユキがじーっと私を見る。


「依頼はあとでもできるし!」


「……ダンジョンも、あとで行けると思う」


「でも今知っちゃったから気になる!」


「…………」


「行きたい!」


「……うん」


 ユキが小さくため息をつく。


「知ってた」


「やった!」


 ノアちゃんは横で楽しそうに笑っていた。


「ノアちゃん、場所教えて!」


「いいよ」


 ノアちゃんが森の奥を指差す。


「このまま向こうへ進んでいけば、分かると思う」


「ありがとう!」


「ただ」


「?」


「ちょっと変わったダンジョンだから、気をつけてね」


「分かった!」


 たぶん!


「ノアちゃんは行かないの?」


「ボクは今回はやめておくよ」


「そっか」


 少し残念。


「じゃあ、また会えたら一緒に遊ぼうね!」


「うん」


 ノアちゃんが手を振る。


「またね、ユズ」


「うん! またね、ノアちゃん!」


 私も手を振り返した。


 そのまま。


 シロとユキを連れて、教えてもらった方向へ歩き始める。


 後ろを振り返ることはなかった。


 ◇


 ノアちゃんに教えてもらった方向へ進むこと、しばらく。


 ユキはいつの間にか、いつもの猫の姿へ戻っていた。


「なんか静かになってきたね」


「わふ……」


「にゃ」


 森の雰囲気が、少しずつ変わっていた。


 さっきまで聞こえていた鳥の声。


 虫の鳴き声。


 風に揺れる葉っぱの音。


 それが。


 少しずつ少なくなっている。


「本当にこっちで合ってるよね?」


「わふ」


「にゃ」


 まあ、ノアちゃんがこっちって言ってたし。


 大丈夫でしょ。


 さらに進むと。


「あ」


 木々の間に、古びた石灯籠が見えた。


「こんなところに?」


 その先。


 苔の生えた石畳が森の奥へ続いている。


「なんかそれっぽい!」


 石畳を進む。


 そして。


「わぁ……」


 森の中に。


 一軒の大きな館が建っていた。


 どこか古い和風の造り。


 白い壁。


 黒い屋根。


 長い軒。


 門の左右には、白狐を模した石像。


 周囲には石灯籠が並んでいる。


 長い間誰も使っていないようにも見えるのに。


 建物そのものは、不思議なくらい綺麗だった。


「ここがダンジョンかな?」


「わふ」


「にゃ」


 門の横に立っている石碑を見る。


 そこには。


 《白狐の迷い館》


 と刻まれていた。


「白狐の迷い館……」


 私は読み上げる。


「迷い館って」


 少し考える。


「絶対迷うやつじゃない?」


「にゃ……」


 ユキも少し不安そう。


「でも大丈夫!」


 私はシロを見る。


「首輪が待ってるから!」


「わふ?」


 本人はまだよく分かっていないみたいだけど。


「絶対似合うよ!」


 私は大きな門へ近づいた。


「シロ!」


「わふ!」


「ユキ!」


「にゃ!」


「初ダンジョン、行ってみよー!」


 大きな扉へ手をかける。


 ぎぃぃぃ……。


 重たい音を立てて。


 《白狐の迷い館》の扉が、ゆっくりと開いていく。


 その先は薄暗く。


 長い廊下の奥は、ほとんど見えない。


「…………」


 ちょっと怖い。


 でも。


「首輪!」


「わふっ!」


「にゃあ」


 私はシロとユキと一緒に。


 初めてのダンジョンへ足を踏み入れた。

挿絵(By みてみん)

↑ノアちゃんの立ち絵


面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。