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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第3章:魔物達の街

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第42話:クロネ加入。そして見られた

本日五本目です。

「……で」


 シロを撫でながら待っていると。


 少し離れたところで話していたシフォンちゃんたちが、こっちへ戻ってきた。


「決まった?」


「うん」


 シフォンちゃんが頷く。


 その隣では、ハルカちゃんも。


 アカネちゃんも。


 エリスちゃんも。


 ライラちゃんも。


 モモカちゃんも。


 セレナちゃんも。


 みんな、特に反対しているようには見えない。


 ミオちゃんだけは。


「入る?」


 クロネちゃんに向かって、もう聞いていた。


「入る」


「早い早い」


 シフォンちゃんが苦笑する。


「まだ説明あるからね?」


「うん」


「クロネ」


 シフォンちゃんが少しだけ真面目な顔になる。


「私たちとしては、加入してもらうのは賛成」


「分かった」


「まだ終わってないよ」


「うん」


 クロネちゃんはシロの頭を撫でながら、ちゃんと聞いている。


「うちは少人数で、基本的にはかなり自由」


「知ってる」


「個人で動くのも別にいいし、毎回全員で何かする必要もない」


「うん」


「ただし」


 シフォンちゃんが指を一本立てる。


「最低限のルールは守ってね」


「例えば?」


「クラン名を使って勝手な揉め事を起こさない」


「起こさない」


「無断で他クランに喧嘩売らない」


「売らない」


「強い相手見つけても、クラン全体を巻き込むようなことはしない」


「……」


「今ちょっと考えたね?」


「考えてない」


「考えたよね?」


「考えてない」


 《草》


 《絶対考えた》


 《クロネに一番必要な注意》


「あと」


 シフォンちゃんがミオちゃんも見る。


「二人で勝手に危ない場所に突っ込まない」


「たぶん」


「たぶん」


「そこは『はい』って言って!」


 二人揃って同じ返事だった。


 《この二人危険すぎる》


 《戦闘狂コンビ完成》


 《シフォン頑張れ》


「……まあ」


 シフォンちゃんがため息をつく。


「そこは今後ちゃんと覚えてもらうとして」


「うん」


「クロネの実力は知ってるし、性格もある程度は分かってる」


「そう?」


「前から何度も会ってるからね」


 ハルカちゃんが笑う。


「前に誘った時は断られたけど」


「その時はいらなかった」


「今は?」


「いる」


「理由は?」


「転移」


「やっぱりそこなんだ……」


 《加入理由:交通手段》


 《ブレない》


 《暁ノ華嵐をファストトラベル扱い》


「でも」


 クロネちゃんが少しだけ続ける。


「ここにはまた来たい」


「……」


 シフォンちゃんの表情が少し柔らかくなる。


「なら」


「うん?」


「歓迎するよ」


「分かった」


「もう少し喜んでもいいんだよ?」


「嬉しい」


「顔に出ないなあ」


「そう?」


「かなり」


 そして。


 シフォンちゃんがメニューを操作する。


 少しして。


 クロネちゃんの目の前に、何かが表示されたみたいだった。


「来た」


「加入申請ね」


「押す」


「どうぞ」


 クロネちゃんが。


 迷わず。


 ぽち。


 《プレイヤー『クロネ』がクラン《暁ノ華嵐》に加入しました》


「おおー!」


 私は思わず拍手する。


「クロネちゃん、《暁ノ華嵐》になった!」


「なった」


「おめでとう!」


「ありがとう」


 《マジで入ったwww》


 《クロネ加入!?》


 《日本鯖のトップクラスがさらに増えた》


 《暁ノ華嵐やばくない?》


 《少人数クランの戦力じゃない》


 《なお加入理由》


 《転移》


 《魔の森への交通手段》


 《ひどいw》


「それだけじゃない」


 クロネちゃんがコメントを見る。


「お?」


 《他にもあるのか》


 《古龍》


 《コハク》


 《シロ》


「全部」


 《草》


 《十分気に入ってるじゃねえか》


「ユズも」


「私も!?」


「うん」


「やった!」


 嬉しい。


 なんだか。


 クロネちゃんがここを気に入ってくれたのが、すごく嬉しい。


「じゃあこれからいっぱい来れるね!」


「うん」


「シロもいっぱい触れるよ!」


「……うん」


「今ちょっと嬉しそうだった!」


「気のせい」


「絶対違う!」


「気のせい」


「むー!」


 その横で。


 ミオちゃんがクロネちゃんに手を差し出した。


「よろしく」


「よろしく」


 二人が握手する。


「これで一緒に動きやすい」


「うん」


「今度どこか行く?」


「強いのいる場所」


「行く」


「待って!」


 シフォンちゃんの声が飛んだ。


「さっき危ないところ勝手に行かないって話したばっかりだから!」


「まだ決めてない」


「今決めようとしてたよね!?」


「候補」


「候補もダメ!」


 《加入一分で問題児二人が動き始めた》


 《シフォンの胃が》


「大丈夫?」


 私が聞くと。


「たぶん大丈夫じゃない」


「えっ」


「冗談」


「よかった!」


「半分くらいね」


「半分!?」


 クランって。


 大変なんだなあ。



 ◇



「それで」


 クロネちゃんがメニューを見ながら言う。


「転移」


「そこ確認するんだ」


 エリスちゃんが呆れたように笑う。


「入った理由だから」


「正直なのはいいことだと思う」


「これ?」


「そう」


 シフォンちゃんが説明する。


「クランハウスとか、登録されてるクラン拠点への移動に使える」


「便利」


「加入して最初の感想がそれなの?」


「うん」


 《目的達成w》


 《加入五分でファストトラベル確認》


 《クロネらしい》


「これなら毎回森走らなくていい」


「そうだね」


「楽」


「昨日の苦労は何だったの?」


「来るため」


「いや、それはそうなんだけど……」


「でも」


 クロネちゃんが少し考える。


「道分かったから、一回くらいなら楽しかった」


「一回くらいなんだ」


「毎回は嫌」


「そこは普通なんだね」


「普通」


「いや、普通の人は一回目もできないから」


 ライラちゃんが冷静に言った。


「そう?」


「そう」


「クロネちゃん!」


「何?」


「今度は転移で来るの?」


「うん」


「じゃあいっぱい来れるね!」


「来る」


「やった!」


 《ユズ様めっちゃ嬉しそう》


 《クロネ定住しそう》


「定住はしない」


 《即否定》


「お客さんでもいいよ!」


「うん」


 私はそれで十分だった。



 ◇



 しばらくして。


 今日の配信も終わる時間になった。


「じゃあ今日はここまでかな」


 シフォンちゃんが配信に向かって手を振る。


「クロネ正式加入っていう、かなり大きいこともあったし」


 《かなり大きい》


 《日本鯖ざわつくぞ》


 《総合スレもう荒れてそう》


 《加入理由は書くなよ》


 《いや絶対広まるw》


「書いてもいい」


 クロネちゃんが言う。


 《本人公認》


 《交通手段目当て加入、確定》


 《伝説になる》


「クロネ、もう少し気にして?」


「別に」


「だよね……」


 シフォンちゃんが苦笑する。


「それじゃあ、今日はここまで!」


「ばいばーい!」


 私も手を振る。


 《おつ!》


 《ユズ様おつ》


 《クロネ加入おめ》


 《また来襲してくれ》


「来襲はしない」


 《今度は転移だもんな》


「うん」


 《便利w》


 そんな感じで。


 配信は終わった。


 コメントが消える。


「クロネちゃん、今日は帰るの?」


「うん。一回戻る」


「もう?」


「装備とか、補充したいものあるから」


「そっか」


「また来る」


「ほんと?」


「うん」


「じゃあまたシロもふってね!」


「……うん」


 ちょっとだけ間があった。


「今の間なに?」


「何でもない」


「絶対もふりたいんでしょ!」


「違う」


「ほんと?」


「たぶん」


「たぶんになった!」


 コハクが隣で笑う。


「くくっ。もう隠す気もないではないか」


「隠してない」


「では好きなのじゃな?」


「そこまでは言ってない」


「面倒な奴じゃのう」


「コハクもまた遊ぶ」


「気が向いたらじゃ」


「それでいい」


「……本当に遠慮がないのう」


 なんだかんだ。


 やっぱり二人、仲良い。


「じゃあ私は先にログアウトするね!」


「うん」


「またね、クロネちゃん!」


「またね」


「みんなも!」


 みんなに手を振る。


「おやすみー!」


 私はログアウトした。



 ◇



 それから、少しして。


 ユズがいなくなったあと。


 クロネは一人で街の中を歩いていた。


「…………」


 クランハウスへの転移は、いつでも使える。


 だから。


 本当ならもう帰ってもいい。


 なのに。


 少しだけ。


 街を見てから帰ろうと思った。


 特に理由はない。


 たぶん。


「……」


 道を曲がる。


 その先。


 小さな魔物たちが何匹か集まっていた。


 丸い身体の小型スライム。


 長い耳を持つ兎型の魔物。


 ふわふわした尻尾の小さな獣。


 小鳥のような魔物までいる。


「…………」


 クロネが止まる。


 一匹。


 小さな兎型の魔物が。


 ぴょこ。


 ぴょこ。


 こちらへ近づいてきた。


「……」


 足元で止まる。


 見上げる。


「…………」


 クロネは少しだけ周囲を見る。


 誰もいない。


 しゃがむ。


「……何?」


 兎型の魔物が。


 頭を差し出すように近づいてきた。


「……」


 手を伸ばす。


 撫でる。


「……やわらかい」


 その声は。


 いつもより少しだけ小さかった。


「……」


 もう一匹。


 小さな獣が寄ってくる。


 撫でる。


「……小さい」


 さらに。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 気づけば。


 クロネの周りには、小型の魔物が集まっていた。


 一匹は膝の上。


 一匹は横。


 一匹は足元。


「…………」


 クロネは。


 そのまま。


 無言で撫で続けていた。


「……かわ――」


「楽しそう」


「っ!?」


 クロネの身体が。


 ぴたりと止まる。


 ゆっくり。


 後ろを見る。


「……ミオ」


「うん」


 少し離れたところ。


 ミオが立っていた。


「いつからいた」


「結構前」


「……どこから」


「最初にしゃがんだあたり」


「ほぼ最初から」


「うん」


「…………」


 クロネが。


 膝の上の小型魔物を見る。


 魔物も見上げる。


「…………」


 ミオを見る。


「違う」


「何が?」


「これは」


「うん」


 少し考える。


「住民との交流」


「なるほど」


「クランに入ったから」


「うん」


「住民と仲良くする必要ある」


「そうだね」


「だから」


「うん」


「別に可愛いと思ってるわけじゃない」


「まだ何も言ってない」


「…………」


 クロネが黙った。


「シロも好き」


「違う」


「昨日ずっと撫でてた」


「たまたま」


「今日も撫でてた」


「たまたま」


「今」


 ミオがクロネの膝を見る。


「三匹いる」


「……住民交流」


「そう」


「そう」


「うん」


「…………」


「かわいいもの好きなんだ」


「違う」


「そう?」


「違う」


「分かった」


「絶対分かってない」


「分かったよ」


「顔が分かってない」


「顔変わってない」


「それが怪しい」


「難しい」


 ミオは少しだけ首を傾げる。


 クロネは。


 周りの小型魔物たちを見る。


「……誰にも言わないで」


「なんで?」


「面倒だから」


「何が?」


「いろいろ」


「ユズなら喜ぶと思う」


「言わなくていい」


「シロいっぱい連れてきそう」


「……」


 クロネが少し想像する。


「それは」


「うん」


「……ちょっと困る」


「ちょっと?」


「かなり」


「本当?」


「たぶん」


「たぶん」


「……」


 また。


 同じ返しをされる。


「誰にも言わない」


 ミオが言った。


「本当に?」


「たぶん」


「たぶん?」


「ユズには言うかも」


「ダメ」


「なんで?」


「……面倒」


「またそれ」


「本当に面倒」


「そう」


「絶対言わないで」


「考える」


「考えないで」


 ミオは少しだけ。


 本当に少しだけ。


 口元を緩めた。


「楽しそう」


「違う」


「住民交流?」


「そう」


「分かった」


「今度こそ?」


「うん」


「……」


 クロネは。


 まだ少し疑っているようだった。


 それでも。


 膝の上の小型魔物を最後に一度だけ撫でて。


「じゃあ帰る」


「うん」


 立ち上がる。


 小さな魔物たちが、少し名残惜しそうに足元へ集まる。


「……また」


 クロネが。


 ほんの少しだけ。


 声を落とす。


「来るから」


 小型魔物たちが鳴いた。


 ミオは何も言わなかった。


 クロネがクランメニューを開く。


「……便利」


「転移?」


「うん」


「加入してよかった?」


「よかった」


「住民交流もできる」


「それは関係ない」


「そう?」


「そう」


「じゃあ」


 ミオが言う。


「また小さい魔物と遊びに来ればいい」


「……」


「住民交流」


「そうだった」


「絶対楽しんでる」


「何が?」


「もういい」


 クロネが転移を選ぶ。


 光が身体を包む。


「またね」


「うん」


 そのまま。


 クロネの姿が消えた。


「…………」


 残されたミオは。


 少しだけ。


 小型魔物たちを見る。


 一匹が。


 今度はミオの足元へ寄ってくる。


「……」


 しゃがむ。


 撫でる。


「……やわらかい」


 誰もいない街の一角で。


 しばらく。


 ミオも。


 その場から動かなかった。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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