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もふもふ召喚士の自由気ままなVRMMO冒険記 ~可愛い魔物を集めていたら、いつの間にか最強の魔物国家ができていました~  作者: 黒海苔
第1章:神が作ったゲーム

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第8話:白狐の迷い館

 《白狐の迷い館》の中へ足を踏み入れた瞬間。


 ぎぃぃぃ……。


「ひゃっ!?」


 背後で、さっきまで開いていた大きな扉が勝手に閉まった。


「…………」


 振り返る。


 閉まっている。


「……閉じ込められた?」


「わふ?」


「にゃ……」


「だ、大丈夫だよ!」


 私は自分に言い聞かせるように言う。


「ダンジョンなんだから、たぶんこういうものだよ!」


 たぶん。


「それに!」


 私はシロを見る。


「シロの首輪が待ってるから!」


「わふ?」


 本人は相変わらずよく分かっていないみたいだけど。


「絶対似合うからね!」


「わふっ!」


 返事だけは元気だ。


「よーし!」


 私は改めて前を向いた。


 館の中は、外から見たよりずっと広かった。


 長い木造の廊下。


 左右には障子や襖。


 壁には狐のお面や、小さな白狐の置物が並んでいる。


 明かりらしい明かりはないのに。


 ところどころに浮かぶ青白い炎が、ぼんやりと周囲を照らしていた。


「これ、狐火ってやつかな?」


「わふ」


「にゃ」


 近づいてみても熱は感じない。


「不思議……」


 ゲームの中だと分かっていても。


 本当に知らない屋敷へ迷い込んだみたいだ。


「ダンジョンって、洞窟とかだけじゃないんだね」


 なんとなく。


 ダンジョンと聞くと、暗い洞窟とか地下迷宮みたいなものを想像していた。


 でも、ここは完全に古いお屋敷だ。


「まあ、こっちの方が私は好きかも」


 狐だし。


 和風だし。


 なんか可愛い。


「行こっか!」


「わふっ!」


「にゃ!」


 私たちは奥へ進んでいった。


 ◇


「…………」


 少し歩いたところで。


 廊下の突き当たりに、三枚の襖が並んでいた。


 右。


 真ん中。


 左。


 どれもまったく同じ。


「…………どれ?」


「わふ?」


「にゃ」


「分かんないよね」


 三枚とも。


 模様も。


 大きさも。


 取っ手の形まで同じ。


「こういう時は……」


 私は腕を組む。


「直感!」


「わふ?」


「にゃ?」


「真ん中!」


 深い理由はない。


 なんとなく真ん中。


「行こー!」


 襖を開ける。


 その先には。


 また長い廊下。


「普通だね」


 そのまま進んでいく。


 曲がって。


 また歩いて。


 さらに進んで。


「…………あれ?」


 目の前に。


 三枚の襖。


「…………」


 右。


 真ん中。


 左。


「似てるなぁ……」


 さっきと同じような場所。


「でも、こういう造りなのかな?」


 じゃあ今度は。


「右!」


 襖を開ける。


 進む。


 曲がる。


 さらに進む。


「…………」


 三枚の襖。


「…………」


「わふ」


「にゃ」


「また?」


 いや。


 さすがにおかしい。


「同じ場所に戻ってきてる?」


「わふ……」


 シロが地面に鼻を近づける。


 くんくん。


 くんくん。


「シロ?」


 そのまま廊下を少し歩いて。


 床。


 柱。


 壁。


 順番に匂いを嗅いでいく。


「わふ!」


「何か分かった?」


 シロが元気よく尻尾を振る。


 そして。


 私たちが今来た方向を見て。


 また三枚の襖を見る。


「…………」


 契約を通して。


 なんとなく伝わってくる。


 同じ。


「え」


 私は辺りを見回した。


「やっぱりここ、さっきと同じ場所なの!?」


「わふっ!」


「うわぁ……」


 見た目だけじゃ全然分からなかった。


「シロ、匂いで分かったの?」


「わふ!」


「すごい!」


 思わずしゃがみ込んで、シロの頭をわしゃわしゃ撫でる。


「シロ天才!」


「わふー!」


 嬉しそう。


「じゃあ、どの扉なら進めるか分かる?」


「わふ?」


 シロが三枚の襖の前を順番に嗅いでいく。


 右。


 くんくん。


 真ん中。


 くんくん。


 左。


「…………」


 左の襖の前で止まる。


「わふ!」


「こっち?」


「わふっ!」


「じゃあ信じる!」


 左の襖を開ける。


 そのまま進む。


 しばらくすると。


「あ!」


 今までとは違う部屋が見えた。


「進めた!」


「わふっ!」


「シロすごい!」


 また撫でる。


「わふー!」


 もふもふ。


「ダンジョン攻略って、こういう感じなんだね!」


 ちょっと楽しくなってきた。


 ◇


 次の部屋を抜けると。


 今度は左右に分かれた廊下へ出た。


「また二択かぁ」


 右。


 左。


「どっちだろ」


 すると。


 右側の廊下の奥から。


「にゃあ……」


「え?」


 猫の鳴き声。


「猫?」


 思わず右を見る。


「ユキみたいな子がいるのかな?」


「…………」


 でも。


 ユキは動かなかった。


「ユキ?」


「にゃ……」


 むしろ。


 左の廊下をじっと見ている。


「どうしたの?」


「…………」


 ユキが周囲を確認する。


 私たち以外。


 誰もいない。


 すると。


 ぽふんっ。


「わっ」


 猫の姿から。


 いつもの少女の姿へ。


「……あっちは、いない」


「え?」


 ユキが右の廊下を見る。


「でも、今猫の声したよ?」


「……声だけ」


「声だけ?」


「……気配がない」


「…………」


 ユキの猫耳がぴくっと動く。


「……生き物の気配も、魔力もない」


「じゃあ」


 私は右を見る。


「偽物?」


「……たぶん」


「こわっ」


 なんでそんなものがあるの。


 その時。


 また。


「にゃあ……」


 右側から鳴き声。


「…………」


 確かに。


 今度聞くとちょっと不自然な気もする。


「ユキがいなかったら普通に行ってた……」


「……うん」


「危なかったぁ」


 私はユキの頭を撫でる。


「教えてくれてありがとう!」


「……ん」


 少し嬉しそうに目を細める。


「ユキもすごい!」


「……そう?」


「うん!」


 ふわっと。


 尻尾が揺れる。


「…………」


「……なに?」


「いや」


「……?」


「やっぱり可愛いなって」


「……今それ関係ない」


「ごめん」


 でも可愛い。


「じゃあ左行こっか!」


「……うん」


「わふ!」


 左の廊下へ進む。


 すると。


 今度はちゃんと別の場所へ出た。


「ユキも正解!」


「……よかった」


「二人とも頼りになりすぎる!」


 私は上機嫌で奥へ進んでいった。


 ◇


 それから。


 《白狐の迷い館》の本気が始まった。


「…………」


 襖を開ける。


「…………」


 部屋。


 奥の襖を開ける。


「…………」


 同じ部屋。


「え?」


 戻る。


「…………」


 同じ部屋。


「…………」


「わふ」


「……ユズ」


「待って」


 右の襖。


 同じ部屋。


 左の襖。


 同じ部屋。


「全部同じなんだけど!?」


 見た目は。


 畳。


 机。


 花瓶。


 掛け軸。


 全部一緒。


「いや絶対何か違うでしょ!」


 じっくり見る。


「…………」


 分からない。


「ユキ?」


「……少し違う」


「どこ!?」


 ユキが部屋の隅を見る。


「……魔力の流れ」


「…………」


 見えない。


 全然見えない。


「シロは?」


「わふ」


 くんくん。


 シロが襖の前を順番に嗅ぐ。


「わふ!」


「こっち?」


「わふっ!」


「じゃあ行こう!」


 開ける。


 今度は。


「おお!」


 別の廊下。


「すごい!」


 また少し進む。


 すると今度は。


 遠くの曲がり角から。


「…………」


 誰かがこちらを覗いていた。


「え?」


 紫色の長い髪。


 白と黒の服。


「…………私?」


 私に似ている。


 というか。


 ほとんど私だ。


「え、何あれ!?」


 その人影が奥へ消える。


「待って!」


 反射的に追いかけようとして。


「……ユズ」


 腕を掴まれた。


「え?」


 ユキが私を見る。


「……あれも、いない」


「…………」


「……気配がない」


「また偽物!?」


「……うん」


「うわぁ……」


 今のは普通に怖かった。


「これ、私一人だったら絶対追いかけてたよ……」


「わふ」


 シロが私の足元に寄ってくる。


「シロ……」


 もふ。


「癒やされる……」


「わふ?」


「ありがとう」


 意味は分かってなさそうだけど。


 いい。


 可愛いから。


 ◇


「…………」


 さらにしばらく進んで。


 私は立ち止まった。


「わふ?」


「……ユズ?」


「これさ」


 二人を見る。


「人間だけじゃ絶対攻略無理でしょ……」


「…………」


 ユキが少し考える。


「……たぶん、何か方法はあると思う」


「ほんとに?」


「……うん」


「例えば?」


「…………」


「…………」


「……分からない」


「だよね!」


 探索系のスキルとか。


 便利なアイテムとか。


 もしかしたらあるのかもしれない。


 でも。


 そんなものを何も持っていない私には。


「シロとユキがいなかったら、入り口近くでずっとぐるぐるしてたよ」


「わふっ!」


「……役に立てた?」


「もちろん!」


 私は二人をまとめて抱きしめる。


「二人とも最高!」


「わふー!」


「……ユズ、近い」


「ごめん!」


 でも。


 やっぱり召喚士にしてよかった。


 戦わせるだけじゃなくて。


 二人が得意なことを借りながら、一緒に進める。


「こういうのも楽しいね」


「わふ!」


「……うん」


 ◇


 そのあと。


 少し休めそうな和室を見つけた。


「ちょっと休憩しよっか」


「わふ」


「……うん」


 私は畳の上に座る。


 シロがすぐ隣に来る。


 ユキも私の反対側に座った。


「はぁー……」


 思ったより頭を使う。


「ダンジョンって戦う場所だと思ってた」


「……戦わないね」


「ね」


 今のところ。


 敵らしい敵は一匹も出ていない。


「でも」


 私はシロを見る。


「首輪はあるんだよね」


「わふ?」


「どんなのかなぁ」


 首元を見る。


 真っ白。


 ふわふわ。


「白かな?」


「……白だと毛に埋もれる」


「確かに」


「じゃあ黒?」


「……似合いそう」


「金色も可愛いかも!」


「わふ?」


 シロ本人は。


 まだ首輪というものを理解しているか怪しい。


「楽しみだね!」


「わふっ!」


 返事はいい。


 可愛い。


「……本当に、それだけでここまで来たんだね」


 ユキがぽつりと言う。


「もちろん!」


「…………」


「だってシロに似合う首輪だよ?」


「……うん」


「気になるでしょ?」


「……ユズらしい」


「そう?」


「……うん」


 なんとなく。


 褒められた気がする。


「えへへ」


「……褒めてないかも」


「えっ」


 その時。


「あれ?」


 部屋の奥。


 そこに。


 大きな白狐の像が置かれていることに気づいた。


「狐だ」


 近づいてみる。


 像の下には。


 何か文字が刻まれている。


「えっと……」


『眼に映るものを信ずるな』


「ふむ」


 その下。


『耳に届くものを信ずるな』


「…………」


 さらに。


『真なるものは、縁の先にあり』


「…………」


 私は少し考える。


「どういう意味?」


「……分からない」


「だよね」


「わふ」


「シロも分かんないよね」


「わふっ!」


 なんか元気。


「まあ」


 私は立ち上がる。


「進めば分かるでしょ!」


「……たぶん」


「よし!」


 休憩終わり。


 ◇


 そこから先は。


 少しずつ館の雰囲気が変わっていった。


「なんか……豪華になってない?」


「わふ」


「……うん」


 廊下に置かれた灯籠。


 壁に飾られた狐の絵。


 赤。


 白。


 金。


 それまでよりも。


 明らかに装飾が増えている。


 そして。


 描かれている狐も。


「尻尾、多くない?」


 一枚の絵を見る。


 白い狐。


 その後ろに。


 何本もの尻尾。


「…………」


 数える。


「一、二、三……」


 多い。


「九本?」


「……たぶん」


「九尾の狐ってやつかな?」


 なんか。


 強そう。


 でも。


「もふもふそう」


「……そこ?」


「だって九本だよ?」


「…………」


 尻尾九本。


 一本でも可愛いのに。


「九倍……?」


「……違うと思う」


「そっか」


 残念。


 そんなことを話しながら進んでいると。


 やがて。


「…………」


 大きな扉の前にたどり着いた。


 今までの襖とは違う。


 赤と白と金。


 細かな装飾。


 中央には。


 九本の尻尾を広げた白狐の紋章。


「…………」


「これ」


 私は扉を見上げる。


「絶対何かいるやつだよね」


「わふ……」


「…………」


 ユキの猫耳がぴくっと動いた。


「ユキ?」


「……いる」


「え?」


「……向こう」


 扉の向こうを見つめる。


「……すごく強い気配」


「…………」


 すごく強い。


 つまり。


「ボス?」


「……たぶん」


「おお……」


 初ボス。


「…………」


 私は扉に描かれた白狐を見る。


「狐なんだよね」


「……たぶん」


「…………」


 ちょっと期待してしまう。


「可愛い子だったりしないかな」


「……ユズ」


「だって白狐だよ!?」


「……強い気配って言った」


「強くて可愛い可能性もある!」


「…………」


 ユキが何も言わなくなった。


「よし」


 私は扉に手をかける。


「会ってみれば分かるよね!」


「わふ!」


「……うん」


 ゆっくり。


 扉を開ける。


 ぎぃぃぃ……。


 その先。


 広い。


 暗い。


 大きな広間。


「…………」


 一歩。


 中へ入る。


 すると。


 ぼっ。


 青白い炎が灯った。


 ぼっ。


 もう一つ。


 ぼっ。


 また一つ。


 広間の左右。


 狐火が。


 一つずつ。


 順番に灯っていく。


「…………」


 その光が。


 最奥まで届いた時。


「……わぁ」


 そこに。


 巨大な白い影があった。


 雪のように白い毛。


 巨大な身体。


 赤く浮かぶ模様。


 そして。


 ゆっくりと広がる。


 一本。


 二本。


 三本。


 四本。


 五本。


 六本。


 七本。


 八本。


 九本。


 巨大な九本の尾。


「…………」


 その白狐が。


 ゆっくりと。


 こちらへ顔を向けた。

挿絵(By みてみん)

↑九尾の狐の立ち絵


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