70話 「愚王」と呼ばれる男 1
オーラシアン王国はのんびりとした風潮の国だ。
魔の森との接する面は多いが、そこは代々の辺境伯達が実直に守り抜いてきてくれている。
海に面している部分はほぼ無いものの、国の中心に大きな川が流れ川からの恩恵も豊富にあり国として大きな災害にも当たらないため温和な人が多いとされている。
それは代々の国王が争いを嫌い、民を大事にして国を動かしてきたからだが、今の王に世代交代してから、中央の貴族は肥え太り、辺境を領地に持つ領主たちは疲弊していった。
それはなぜか
辺境の人間は『質実剛健』の人間が多い。中央の貴族のように雄弁に王を褒め、饒舌に益を得ると言う事が無い。今の王に苦言は呈することはあるが、褒める事をしないもの達は疎まれた。それは王子たちもそうだ。王と一緒でおべっかに弱く、苦言を呈する者は排除してきた。
自分に甘く、甘やかしてくれないと嫌と言う愚者。それが親子そろっている。そう今のこの国の王家は、臣下も認める「愚王」なのだ。
国外では戦争等を起こしている国もある。ただいまこの世界で聖女を結界の綻びが来た折にお告げがあり召喚できる国はオーラシアン王国だけなのだ。
なぜそうなのか聖国が総力を挙げ調べてもわからない事だった。
オーラシアン王国の王族はその事実に胡坐をかいているのだ。この国は他国から襲われないと。
そんな王は珍しい美しい夕日が出る少し前の様な、モモモの果実の様な、そんな美しい毛色の馬をある男から譲り受けた。多少の値は張ったが、その馬の美しさに即座に購入した。凛々しい顔つきで立派な体躯の素晴らしい馬
下男などに世話をさせて傷付けてはいけないと、第一王子 アルドリックに世話を任せた。馬は人見知りなのか、私にはあまり近づいてはくれなかったが、それでも空の見える展望デッキに作られたドーム「天空のサンルーム」と名付けた場所を馬に開放していた。
馬はそこが気に入ったのか、よく第3王子 ルクレチアとそこで過ごしていた。馬によくブラッシングをしてやっているようで感心した。
その馬と亡くなった側妃の髪色はよく似ていたなと思い出した。もしかするとルクレチアは、馬の毛色を見て、亡くなった母親を思い出しているのかもしれない。そう美しかった側妃を久々に思い出した。
残念な事にルクレチアは側妃の髪色ではなく私の金の髪色を引き継いでしまったことが残念だ。側妃の髪色を引き継いでいたのであれば常に側に置きたかったのに……本当に残念だ。
馬は私には懐いてはくれない。なので馬と同じ毛色をしてる人間を傍に置いては話し相手にしている。それは小さな子供だったり、美しい女だったり、男だったり、小物でも服でも髪でもその色を身に着けたものに好感を抱いた。
だが正妃はダメだ。まずその色が似合わぬ。あれは心根が腐って居る。若い頃は私に美しい言葉を吐いてくれていたのに今は毒しか吐かぬ。
王子達もだ、本来なら王太子をそろそろ決めねばならぬが
第1王子 アルドリックは臣下からの評判が悪い。横暴で横柄だと言われている。
第2王子 セフェリノは女癖が悪く、いろいろな家門から抗議が来る始末。
第3王子 ルクレチアは口数が少なく、いつも剣ばかり握っている。
誰に似たのか皆、王族だと言う自覚をもっていなくてはいけない。
そんなある日、国を揺るがす大きな事件があった。
南の辺境の領地で大きな不正が見つかった。
辺境の教会とギルドの支部そして周辺の商店などが結託して、孤児院のまだ成人に満たない子供を勝手に放逐し、搾取し、見目の良いものは売られていたという。特に女子は10にも満たない子供の多くが被害にあっていた。許せぬことだ。人として、辺境の領主は何をやって居たのだ!すぐに辺境領主を王都に呼びつけた。
南の辺境伯 『ロレンシオ・コルドナ』は屈強な男だが今は見るからに疲弊していた。顔には隈が出来、今にも倒れそうな様子だった。
「此度の不祥事はいかが申し開きをするのか」
「深厚なる信頼を寄せておりました商会及び教会が、此度のような失態を演じましたことは、統括の責務を果たせなかった私の不明の致すところで、弁明の余地もございません」
流石辺境伯だ、言い訳一つしないとは、では失態の責任を負わせなければ、
「ただ、一つ王にお聞きしたい。」
「申してみよ」
「我が辺境の地からさらわれた子供の一人、まだ成人もしていない幼子がなぜ王の側近くに居るのかお聞かせ願いたい」
コルドナは目に力を入れてこちらを睨んできた。不敬な!しかしコルドナの言葉の意味が解らない。何を言っておるのだ?
小さな子供?側にいる?
「私の近くに幼子などいないが?誰の事を言っているのだ?宰相そのような子供がわしの側に居るのを見たことがあるか?」
私は宰相に声をかけた。宰相はこちらを見て一度目をつむり謁見の間に響く声で告げた
「コルドナ辺境伯の娘をこちらに案内しろ」
娘?この城にこの男の娘なぞいたか?
近衛兵に連れられ来たのは、いつも話し相手になってくれているピンクの髪の少女だった。黒色の簡素なワンピースを身にまとった少女は膝をついたコルドナ辺境拍を見ると目を大きく見開きぽろぽろと涙をこぼした
「お父様!!」
「アリーシャ!!」
ここが謁見の間と言う事を忘れているかのように少女は辺境伯にかけより抱き着いた。待て待て待て……娘だと…




