41 実はこの世界には魔王が居たって知ってた?
残念ながら、此処からは少しばかりお兄ちゃんとは別行動になる。と言っても数時間だけだけど。
お兄ちゃんと前ストーティオン伯爵夫妻は爵位を屑な父親から取り戻すため、法務に携わる役人と今後の手続きに向かった。
部屋に残ったのは聖女様、エドモンドさんと、護衛の二人。
大きい体格の護衛のお兄さんは熊の獣人の大和さん(聖女様がつけたらしい)
小柄で細身の体格、釣り目のお姉さんは長いピンクの髪を高くひとまとめにしている、リリシーズさん魔法剣士さんかっこいい。
この二人は信頼がおけるので、安心して前の世界の話もしてねと聖女様は笑ってくれた。トーさんも頷いている。
そして、聖女様から一番最初に話題に上がったのは『厄災の魔王』だった。
「あの小説。”華白の聖女”には、魔王が存在するでしょ。」
「はい。イケメン魔王」
『魔王』に対してイケメン発言にその場にいるみんながびっくりした顔をした。トーさんは苦笑してる。
「フフフ確かに描写はイケメンだったわね。私17歳でこの世界に呼ばれて、20年この世界に居るけど、居ないのよ。魔王」
エドモンドさんが不思議そうに言葉をはさむ
「良いことではないの?」
聖女様は人差し指を前に出しチッチチと指を左右に振った。
「魔王が居ないのになぜ私が召喚されたかって話」
「私が召喚された頃、確かに魔族の動きは活発化していたらしいけど、それも小説のような事もなく、収まった。
私小説の思い出せるところ全部書き出していったの。そうしたら、魔王の正体って結局闇魔法使いが、闇落ちして闇の精霊に飲み込まれて最終的に魔王!!ってことなのよ。で!!今闇魔法自体を操れる人間が減っていて、闇魔法を自在に使う人間は限られているの。王国内に3人。
一人は宮廷魔法師の長老80歳超えてるの。年齢的に除外
一人は所在不明の女性よ。性別的に除外」
「最後の一人が黒烏の暗殺者」
「俺か?闇落ちしてねーし、精霊に食われてもないぞ?」
トーさんは話を聞きながら首をかしげている。私は聖女様を見て思案しながら話しだした。
「魔王が目撃されるのは聖女召喚から大体2年後でしたよね」
「そう。そうなの。その頃の烏さんて小学生か、中学生くらいでしょ。さすがに魔王は無理があるでしょ。」
「その頃だったら狼さんの相棒のササさんがトーさんを構い倒していたのでは?闇落ちとかするかな?」
「小説の存在を知っている私が召喚されて、すぐにこの国の貴族や王族に嫌気がさして逃げ出したのよね。町でも大暴れしたしなぁ~いろいろ運命変えちゃったかしら?
小説では王城で発信していた聖女の異世界情報を
商業ギルドに登録して、職人ギルドとの連携もしてガンガンお金稼いでいったわ!!」
この人…やる場所は違うけど結局はチート全開だわ。
トーさんがイケメン魔王?私はトーさんをジーと見ながら考える。もじゃもじゃメガネのトーさんがイケメン?イケメン????
「やっぱ人違いでは?」
「カナメお前何に納得したんだ?何かイラっとした。」
「どうしてトーさんはもじゃもじゃなの?」
トーさんは呆れた顔をしながら、もじゃもじゃってなんだよっとぶつくさ言いながら教えてくれた
「ここにガキの頃の傷跡があって、結構目立つんだ。ササが気にするから隠してたらなんかこんな感じが定着した。」
「定着って、無頓着なのトーさんらしい。」
「俺もイルくらいの頃は普通に髪が長かったしこうアミアミと長いロープのような髪をしていた。」
「三つ編みかしら?」
「あーそうだな、三つ編み男って因縁つけられたことあったな」
うわぁーーー子供って言うけどトーさんなんかその頃からチートっぽい
ガタッ!!
突然聖女様が立ち上がってトーさんに駆け寄って
「烏さん……お顔の傷を見せてください!!もしかして額から目じりにあるのではなくて?」
トーさんは聖女様の行動の意味に困惑しつつも女子供に見せるようなもんじゃないんだが…とためらいながらも髪を上げ傷を見せてくれた
それは額から左目の上の部分まで大きく刃物でつけられた様な傷の部分はいまだに盛り上がり、いびつな姿を残したかなり古い傷跡だった。
私も、聖女様も無言で傷を見ていた。トーさんはいたたまれなくて出していた傷をそそくさと隠した。
「クロト?あなた辺境の街のクロトじゃないの?」
「そうだが?」
「私!!私!!三つ編み男にかばわれていた、サト!!」
「サト?」
「そう!!その傷、女の子助けて負った傷でしょ!!助けられたの わ・た・し!!」
部屋に居る全員が「え?」ッという顔で固まった。
「うそうそうそーーーー!!烏とクロト見た目別人じゃん!!背も随分伸びちゃって!!」
笑いながらトーさんの背中をパシパシ叩いた
「うわぁ、うるせぇーし!!笑いながら叩くの止めろって昔も言っただろう!!」
「あーーーその感じ!!そうクロトってそんな感じだった!!大きな猫を今までかぶっていたのね(笑)」
「猫って、お前の方がはるかにデカい猫しょっていただろ!!」
二人の話し方から昔の知り合いと言う事は確かなようだけど、部屋の誰もが思っているであろうことをエドモンドさんが聞いた。
「二人の関係はえ…っと”助けた人と助けられた人”で良いのかな?」
二人は考えながら目線を合わせ苦笑しながら
「昔のパーティー仲間?」
聖女様の言葉を聞いて皆は口をあんぐり開けて固まった。
「クエストで1回だけ臨時で俺が入っただけだ」
「なによーーーその言い方!!!」
トーさんは呆れながら頭をガシガシ掻いた。そして周りを見渡して……
大きなため息をついた。




