291話 「再会」③(前半カナメ・後半グレード視点)
◆(カナメ視点)
テーブルの上に広げられた3段の重箱弁当5セットをみて、私は満足げに眺めてから完成を告げる。
「よーし。お弁当完成!」
風呂敷で1セットずつ包み、それをアイテムボックスに入れていく。
「トーさん二人の喧嘩まだ終わんない?」
「まだ続くな…絞めてこようか?」
「―――このままあの二人は放置で良いんじゃないかな?セルジュくんに乗せてもらって、お兄ちゃんの所に行こう」
トーさんが火龍と黒龍の暴れまわる様子を見て、頷いた。
「そうだな。しばらくココ(闇沼)に放置しよう」
「良いんですか?」
「良いのか?」
クレイ嬢と猫くんから同時に声がかかったが、私もトーさんもニッコリ笑い
「「放置で」」
そう言って4人で闇沼から火口の中に戻った。
足が着くなりパシャリと水を撥ねた。足首近くまで水につかって居る事に困惑する。
「え?」
少し前までこの空間は熱気が満ちた暑苦しい場所だったのに、数時間離れたら水が溜まって居るなんて…おかしい。
それに蒸気が出ていると言う事はやはり火龍が居なくても火口には間違いなく地熱が溜まっている。
…困惑して辺りを見回していると、背後から猫くんが叫んだ。
「精霊王!何をやって居るんですか!」
精霊王?今猫くんが精霊王って…どこに?
再度きょろきょろと辺りを見回すと、
足元に溜まっていた水が、ゆっくりと目の前でせり上がり形を成していく。
人型に形を成した存在は威厳のある男性の姿で立っていた。
『――なぜ、猫田…おまえがここに…』
猫くんの存在に驚いた精霊王は、私たちの背後からクレイ嬢が飛び出し抱き着いた事に目を見張った。
「カイナール様!」
『クレイ…我が愛し子…』
クレイ嬢を見た途端、抱きしめ頬ずりする姿に、精霊王のクレイ嬢に対する愛情が見えてくる。
「カイナール様こんな所では、お身体に障ります」
蒸気が上がっている場所を見て不安げにそう言うと、精霊王は大きな手でクレイ嬢の頭を撫でる。
精霊王は眉を寄せて、ポツリと言葉を落とした。
『友の安否を確認しに来たのだ…
何の痕跡も無く消えてしまって――
あり得ぬ消え方に途方に暮れておった所じゃ』
しゅんとする精霊王。
私達は皆、顔を見合わせた。
「友って、もしかして火龍ですか?」
私の言葉に、パッと顔を上げこちらに反応する精霊王に、私たちは顔を見合わせて、微笑んだ。
「火龍は今、昔の知り合いと遊んでいるんだ。」
『いや、それでも存在が消えることは――』
「別の空間に居るから。安心しろ。後で会わせてやるから。
ここは水の精霊のあんたには酷な場所だろう?早めに元の場所に帰りな」
「私達も湖に向かう途中だったんです」
『此処は…まったく違う場所だが…』
「細かい事は気にしない!さあ湖に行こう!」
『細かくないと思うのじゃが…そう言えば先ほど湖で浄化を使う者に会ったぞ』
「ミホだな」
「ミホちゃんですわね」
「あいつらもう着いてるのか。急いでいくか」
トーさんはそう言うと、闇沼からセルジュ君を出して、首を撫でた。
それを見て精霊王は口をあんぐりと開けて驚いていた。
『今どこからそのドラゴンは出てきた?』
「カイナール様。後で詳しく説明します」
『どういう事じゃ?』
トーさんは困惑する精霊王を完全に視界の外に置き、セルジュくんにお願いし始めた。
「セルジュ頼むな」
グギャァァァァッァー!
セルジュ君の大きなお返事で私たちは動き始めた。
困惑して固まる精霊王を置き去りにして――――。
そしてそのセルジュの声に反応して動き出した存在がいる事を―――誰も知らない。
―――――
◆(グレード視点)
ドドドドドドド
森に響く複数の音。
「何の音?」
「騎馬かな…こっちに向かってる?」
ドドドドドド
「今度は何事ですかね…」
「お姉ちゃん…」
「大丈夫。大丈夫だよ」
大きな音に不安がる子供達を、イルがぎゅっと抱きしめていると、森から湖に入る出入り口から騎馬が十騎も入って来た。
神獣のターちゃんが先ほど、呼ばれたとかで飛び立ってくれてよかった。
騎士達にみられると騒ぎになりそうだ。
俺がイルたちの前に立つと、その中に見知った顔が居た。
なんで騎士達とこっちに来てるんだ?
俺は戸惑いながらその人物たちを見ていると、ミホと山田さんから声が上がった。
「ガルーダさん!ササさん!」
元気に手を振る二人の視線の先の人物を見て、イルも困惑している。
「え?なんでお二人が…」
その声に俺はニヤリと笑った。
「お前を迎えに来るのに手を貸してもらったんだ」
その言葉を咀嚼して、気づいたのか「まさか…」と呟く
「お前が一番会いたい奴らにも、もうすぐ会えるぞ」
俺の意図が伝わったのかイルは本当に嬉しいのか、頬を染めて満面の笑顔になった。
やめろ。お前、男だろ。なんでそんな可愛い顔してんだよ!
俺が内心慌てていると、すぐそばに美しい顔が。
「イル君。相変わらず可愛いね~」
そう言ってイルを子供事抱きしめるササさんも、男と思えないくらい綺麗だ…。
俺の姉様たちが見たら卒倒するレベルの顔してて男とかもったいねーな。
「お久しぶりです。ササさん。ガルーダさん」
「あいつらより俺らの方が早く着いたか」
こちらにガルーダさんもきて、キョロキョロと辺りを見回し嘆息する。
「そうですね。俺らも寄り道してからこっち来たんですけど、まだ見てないです」
「さっきのあの白い光は嬢ちゃんか?」
「そーっす。ミホです。本人もあんなに光ると思ってなかったみたいでびっくりして固まってましたよ」
「マジか…また無自覚な奴が現れたな。なぁササ。」
ガルーダさんがササさんに声を掛けるが返事が無く、視線を向けるとブツブツと呟きながらイルを上から下まで確認しているササさんがそこに居た。
「んーー今の君の背丈だと、スカート短いよね。なにか良いもの無いかな?
これとか…いやでも…これも良い。でも細い腰は強調したいし…コレ!これいいよね!!」
ゴソゴソと自分のマジックバックをあさりだしたササさんは、嬉しそうにタイトな黒いズボンと、ボリュームのある赤いシャツ。黒いコルセットタイプのベルトを出してきた。
「あ…あの…ササさん?」
「お着替えしよーね」
キラキラと目を輝かせにじり寄るササさんにイルは声にならない悲鳴を上げてから、視界が遮られる場所にササさんと一緒に向かった。
ドナドナされるイルを見ながら、ガルーダさんに文句を言うと
「止めてくださいよ」
「いや、ワンピース一枚だったのが、寒そうだったんだろ。
あいつは身内と認めるとべたべたに甘いからな」
とてもいい話の様に語るガルーダさんに、俺は目線を向けて、
「いや、それなら…男物の服で良くないですか?」
「それはほら……」
俺の突っ込みを受けて、ガルーダさんは、目を泳がせながら一言。
「ササの趣味だ」
趣味なんか――――いぃぃぃ!!
絶対止まらない奴じゃんそれ。
すまん俺じゃ止められん。
イル!
心の中で応援しておくわ。
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