16 あの奇跡 説明受けて 納得だ
はーい。こんにちは、カナメです。
こちら、奇特にも私のお父さんになってくれたクロトさんでーーす。
パチパチパチパチ
さてさて、ようやく2週間が経ちました。
今日は私の転移について知っているジジイ神(仮)に会いに教会に来ました!!
ミカちゃんに以前聞いていたんです。
神様に会うには、教会に行って神像に祈れば
真っ白な空間に招かれて会えるって。
しかーし!
教会に来た途端、
突然この真っ白空間に拉致されたわけでーーす。
なぜかクロトさんも拉致されて一緒に来てまーーす。
どう言うことかしら?
キョロキョロと白い空間を見回していると、
上からキラリキラリと、光る何かが降ってきた。
そうしてそのキラキラは人の形を成して微笑んだ。
形を成しているだけで、お顔は見えないけれど…この方めっちゃ美人だ!!
『初めまして。私はこの世界の一柱、
女神ユルリリィ。
血の流れ無い平和な世界を望むものです』
私は一礼をして挨拶を返す。
「女神ユルリリィ様、私は麻生 要です」
『麻生様、この度は突然の転移となり、本来なら早急に案内しなくてはならなかったのですが、遅くなってしまい申し訳ありません』
麻生様だと……
ジジイ神(仮)……では、ない?ような?
「では、教えてください。私はどうしてこの世界に転移したのでしょう?」
『転移直前の記憶は?』
「ありません」
女神さまはゆっくり頷くと、私たちの前にテーブルとイスを出してくれた。
席に座るように促され、
私とクロトさんの前には湯気を立てる珈琲、ウハハの前には果実水を出してくれた。
珈琲のスモーキーな香りが広がる。
いい匂い…
珈琲の香りを堪能していると、少しづつ落ち着いてきた。
一口、口に含む。美味しい。
ユルリリィ様がゆっくりと話し始めた。
『少し長い話になります。
この世界には、この世界とは異なる世界から周期的に魂が渡ってきます。
また、この世界から異なる世界に行く魂もあるのです。
そうして、世界を渡ってきた魂は、前世と言われる世界の記憶や特性をほんの少し残して
新たな世界の生物として生まれ、生きて行くのです。
そうすると、各世界に少し新しい風が吹きます。
風が吹くと、この世界が揺れる。
揺れると新たなものがこの世界に生み出されます。
思想も、想いも、発明も、進化も、退化も』
なんか話が壮大?…っと思っていると、女神さまと目が合った。
『麻生 要さんは、その前世の記憶と特性を持った魂でした』
!!!え?そんな記憶とかなかったけど…
私は目を丸くして固まった。
『孫の優さんは小さい頃、生死の境を彷徨いませんでしたか?』
「え?優くん…身体は少し弱かったけど、別に…
いえ…そう言えば。
2歳の時高熱が続いて…原因不明で今夜が峠と言われた事が…
翌日起きたら元気になっていて、後遺症もなく…お医者様は奇跡だって」
『そうです。孫の優さんの本来の寿命では、その夜の峠は越えられなかった。そう、終わりを迎えていたはずなのです。その命を繋いだのは、麻生様、あなたです。
お孫さんのために魂に残っていた特性の力を使い、治癒した。
魔力の無い世界で、本来なら不可能だった。でもあなたは自分の命を魔力に変えた。麻生様の命を削り、成した奇跡だったのです。』
「でも、私はそんな事をした記憶も、方法も知りません。それにその後も普通に生活をしていましたよ?」
『優さんの手を握り祈りませんでしたか?この子が元気になりますように。自分が変わってやりたいと心の底から祈りませんでしたか?』
「は…い…。あの時…あの子の小さな手を握って必死に必死に祈りました…」
ユルリリィ様はコクリと頷いた。
『本来あなたの寿命は97歳でした。
45年分の寿命を対価にし、そして残った寿命が3年』
……死んだのか…そうか、私、死んだのかぁ…
「…そっか…そっか…
あの奇跡は私が起こしたのか……
私、優君を助けれたんだ。良かった。」
クロトさんは私の頭を優しく撫でてくれる。
そんなクロトさんの目を見て、私は微笑んだ。
「うん。教えてくれて、ありがとうございます。ユルリリィ様。」
相変わらずお顔は見えないが、ユルリリィ様は慈愛の籠った表情で私を見ている様に見える。
「孫に囲まれた人生は後ろ髪を引かれるけれど、優君のこれからの人生の代価としてなら、何ら問題ありません。むしろ良かった」
ユルリリィ様は頷き、私に手の平を上に向けた右手を差し出した。
『あなたのその献身に心打たれ、月の神があなたを愛し子としてこの世界に呼び寄せたのです』
女神さまの掌の上に球体の月夜の幻影が映し出される。
幻影はゆっくりと私の頭の上に移動した途端、
キラキラと煌めきを私にふりかけ空気に溶けていった。
キラキラ……?
「え…っと、月の神…私のステータスに介入していた方は月の神様ですか?
その神様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
ユルリリィ様はフルフルと頭を振り、
『それは…あなたのステータスに介入していたのは、月の神ではありません』
「違う?え?でも…ユルリリィ様でもないですよね?」
ユルリリィ様はコクリと頷き、
『月の神は寿命を終えるあなたを迎えるべく、月の神の眷属である
星の子達を待機させておりました。あなたは深夜に亡くなる予定だったのです』
『ですが、その半日前にあなたは太陽の使者によって命を終えました』
「…え?私、殺された…?」
『……いえ、貴方は太陽の使者が導く予定の魂の死に巻き込まれました。』
は?…私は考えながら…女神さまに説明をお願いしてみた。
「端的には?」
『え…と…あなたの斜め前を歩いていた女子高生が交通事故にあい、女子高生の持っていたスマホがあなたのこめかみにぶつかり、よろけた所を違う車にぶつかられ亡くなりました。』
私は眉間に皺を寄せ目を瞑り…
よし深呼吸…フゥ…
1……2……3……4……5……6……
目を開け、ユルリリィ様を見て叫ぶ。
「最悪じゃない!!」
ユルリリィ様はコクコクと頷き、同意しながら語る。
『太陽の使者も事態を重く見て、女子高生の魂とあなたの魂を連れて行こうとしたのですが、麻生様はすでに月の神の愛し子になっており…
太陽神の眷属である太陽の使者では対応できず…
昼間は星の子達は力が半分も出せずに、どうにか麻生様のお身体を小さくすることで転移させました。魔力の多いジャルの森までしかお運び出来ず、その後は結界で麻生様を保護しました。
星の子達は、力を使いすぎて消えそうになっている者もいて。
月の神がすぐさま治療にあたりましたが…今は月の神は力を使いすぎ眠っております。しばらくは…そうですね、数年は目覚めないかと。申し訳ありません』
「じゃあ…あのステータスのジジイ神(仮)が2週間待てと伝えてきたのは…」
『………ジジイ神(仮)?
……えぇ……えっと…太陽神の眷属です』
「眷属ってステータス弄れるんですか?」
『神に近しい眷属には、それなりの権限がありますので……
ただ今回の事を受け…昨日、その眷属は降格されました。
2週間とは自分の処罰が下される日までの事だったのではないかと』
私は焦ってユルリリィ様に嘆願する。
「え!!イヤ…あの…悪いことはされてないんです!!
なんというか無茶苦茶だけど…文句は言ってやりたいけれど…
ずっと…私の事、気にしてくれてたみたいで…ウハハとか授けてくれたし。
ステータスオープン
えっと、
ほらココ見てください!!ステータスの備考欄に毎日メッセージが来てて…昨日なんか家族ができて良かったって来たんです…
なんか、毎日見守ってもらって、アドバイスくれてて…心配してくれてて…
これもう友達みたいだなぁーーーって!」
『麻生様』
「もうジジイ神(仮)と、こうしたやり取りできないの寂しいなーーって。
私は、巻き込まれたって言っても、半日なんて誤差の範囲だし…
月の神や星の子達には迷惑かけちゃったけど…やっぱダメですか…?」
『そのメッセージは眷属に頼まれ、私が入れさせていただいたものです』
「はぃ?」
『彼女は昨日処罰が下され、ステータスに関与できる権限が無くなりましたので、彼女に頼まれた私が彼女の言葉を入れさせていただきました。
今後は、そのようなメッセージのやり取りは出来なくなります。
彼女は、今回多大な迷惑をかけた月の神のもとに眷属替えさせられました。太陽神の右腕と言われた優れた能力の者です。今は眠ってしまった月の神の仕事の多くを引き継ぎ、月の神の代理として上手く差配してくれるでしょう』
「………はい」
『大丈夫です。そのうち会えますよ』
「わかりました。楽しみに待っています。ちなみに眷属の方、女性だったんですね。私ジジイ神(仮)って呼んでました」
『では、彼女の事は”ジジ”とでも呼んであげてください。きちんと自己紹介ができたら名前でお呼びください。
”ジジ”と呼ばれることを彼女は存外喜ぶと思いますよ』
「はい!!待っているとお伝えください」
ユルリリィ様は微笑んだように見えた。
「ユルリリィ様!!私、この世界でやらないといけない事とかあったりしますか?」
『この世界を楽しんでください』
「それだけですか?」
『そうです。あなたの家族になられた方も、前世の記憶と特性を持っております。』
私とクロトさんはビックリしてお互いの顔を見合わせる。
「俺が……前世持ち……」
『クロト様は心に大きな蓋をしている様で…ほとんど思い出せていないでしょうが、カナメさんが居れば大丈夫です。
クロト様もカナメ様と一緒にこの世界を楽しんで。
そして愛し子をよろしくお願いいたします』
クロトさんは大きく頷き、
「はい。全力で守ります。」
その言葉を聞くとユルリリィ様はホッとしたような表情になり、にこりと笑ってキラキラしだした。
そして気が付くと、私たちは教会の礼拝堂の椅子に座っていた。
ざわざわざわざわ……
耳に周りの音が戻ってくる。
「カナメ」
クロトさんに呼ばれ、私はニカッと笑った。
「この世界を一緒に楽しみましょう」
私の言葉を聞いたクロトさんも、目尻にシワを寄せ笑った。




