14 錬金術師!! カナメちゃん 此処に爆誕!か?
「これは?何?」
クロトさんが、蓋のついた筒を不思議そうに眺めている。
クロトさんは困惑中。
フフフフフ。そこはしょうがない。
知らないのだから、しょうがない。
「ま~ほ~う~び~ん~」
「魔法瓶……」
「温かいものは温かいまま。
冷たいものは冷たいまま。
数時間、温度を保ってくれるんです」
「すごいな!カナメは天才か!!」
「えへへへ~これみて作りました!!」
私は錬金術の初級本を掲げて見せた。
クロトさんは目が点だ。
「いや、それは、初級の基本のやつで」
「はい。要は作りたいものの素材と、魔力とイメージですよね!!これ、わかりやすい本でした!!魔法瓶って前の世界にあったので、凄くイメージしやすかったんです」
「イメージ……」
「錬金術面白いですね」
私は嬉しくなって本を掲げて見せた。
「面白い……そうか・・・面白いか・・・・」
「はい。とってもワクワクしちゃいました!!この本お借りできますか?」
クロトさんが眩しいものを見るようにこちらを見ていたと思ったら、
「やるよ」と言って、私の頭をワシャワシャ撫でて破顔した。
ワワワワワ !!
キュンってしちゃった。
このキュンは久しぶり。
夢子のパパ以来だ。
疲れたサラリーマンの不意な笑顔にやられてしまう、
若い子の気持ちがわかった気がする。
婆は若くないけど、
クロトさんは罪作りな男だね。
そんなクロトさんは魔法瓶が気になるみたいで、
手に持って上から見たり、下から見たり、蓋を開けたりして見分中。
「試してみても良いか?」
「どうぞどうぞ」
私が返事をすると、クロトさんは小さな水球を手のひらの上に作り出した。
少しすると、そこから湯気が上がり始める。くつくつくつ。
沸騰ーーーすごいよねーーーー
ポット要らず!
そのお湯が蓋を開けた魔法瓶へ移動する。
そして、こぼれることなくゆっくり中に入っていった。
「注ぎ方もイメージしたんですか?」
「そうだな」
返事をしながら蓋を閉めるクロトさん。
蓋を閉めた後、ひっくり返したりして水漏れがないか確認中。
「うぉーーーーーーーーホントすごいな」
私が感動してると、フッとクロトさんが笑い、
「いや、この魔法瓶とやらもすごいぞ。」
フフフ、すごいでしょーーーとドヤッテみると、
「見かけと一緒で、幼い反応が子供らしくて新鮮だ」
「見た目は幼児!!頭脳はお婆!!その名は見習い冒険者カナメです!!」
ピースの隙間から目を出す決めポーズをしてみたら、
お腹を抱えてクロトさんが笑い始めた。
「クッハハハ!!!!ハハハ!!!頭脳は、お婆かwww元気だなぁ!!!」
さっき迄、生気のない目をしていたクロトさん。
笑ってる。
良かった。
良かった。
笑顔のクロトさんを見ると、嬉しくなってしまう。
「でしょーーー!!!身体が若返ったら、気分が上がっちゃって!!」
「良いことじゃないか」
「体が動くうちに多少の無茶はするもんだって言うけど、無理はダメですよ!!疲れて笑えない人生より、今みたいに笑える人生にしてくださいね!!」
クロトさんは私を見て、
「人生の先輩のアドバイスは肝に銘じるよ。心配してくれてありがとうな」
目じりに皺を寄せ笑った。
そんなクロトさんにおねだりをしてみた。
顔の前で手を組んで、
「空いた~時間でぇ~良いのでぇ~私に錬金術を教えてください!!!」
頭を下げ、腕を突き出し、握手会のポーズをしてみた。
「俺もナギと一緒でカナメの師匠か・・・・・悪くない・・・くくく」
突き出した私の手に、握手で返してくれた。
わわわわわ!!!師匠GETだぜ!!!!
クロトさん、スッキリした書類を見て嬉しそうにしながら、残りの書類は1時間もあれば終わると言う事で、
お昼ご飯のお礼にって、晩御飯に連れて行ってくれることにwww
わーーーーい外食ーーーーーー!!!!
マアサさんに夕食要らないことを伝えに帰る事に。
仕事が終わったら、クロトさんが迎えに来てくれるって。わーい。
宿に帰りながら、鼻歌、鼻歌ララララ~
「外食~♪外食~♫うれしいなぁ~ぁ♫お腹いっぱい~食べたいなぁ~」♪
『ウハハ~♪ウハハ~♪ウハハノハァ~♫ウゥゥハッハ~ウハハァハァ~♫』
(即興曲byカナメ&ウハハ)
【冒険者ギルド 受付嬢 テリアサイド】
カナメちゃんが歌を歌いながら、楽しそうに帰っていったのを受付職員がほのぼの見送ったあと、
暫くして、副長がいつもの書類の束よりずいぶん少ない量を持って部屋を出て来た。
目の下の隈は凄いけど、何かすっきりした顔をしている。何か心境の変化でもあったのだろうか?
副長は書類を処理済みBOXに入れた後、
事務方に行き、
「退職届をくれ」と言い、戸惑う事務員から用紙を貰い、その場で書いて提出した。
ざわざわざわざわ
副長は顎に手を当て少し考えたあと、
「この後、医者行って過労の書類もらって、明日提出する。さすがに身体が限界なんでな。部屋も明日の内には片付ける。悪いな」
そう言い残し、退勤時間を書き込んでギルドから出ていった。
ざわざわざわざわざわざわ
いつも倒れそうな副長を皆が心配していたので誰も何も言わず、
いつもの事務処理として退職届を受理し、山のような書類の一角に埋もれるようにそっと入れておいた。
ギルド長の部屋に、急に各部署の長が全員呼ばれて話し合いをしていた時だったので、誰も異議を唱えるものはなく。
一週間後にギルド長が、出勤してない副長に気づいて騒ぎ出したが、
ギルド長は自分が押した決裁印が入った退職届に何も言えなくなっていた。
書類・・・見ずに判を押していた可能性。
その時にはすでに、退職届けの写しがギルド本部に送られていた。もちろん医師の診断書付きで。
元副長が辞めて10日もかからず、本部から新たな副ギルドマスターが来てくれた。
ひょうひょうとしているギルマスにカツを入れてくれる、出来る女性のリオーナさん。
リオーナさん曰く、本部でもコルドナギルド支部は問題になったらしく、
退職した副長の勤務時間の長さ、仕事量の多さ。休みの無さ、過労の診断書、と・・・・元副長のクロトさんには、見舞金と退職金と慰謝料が支払われることになった。
ギルド長含む部署長たちの勤務時間の短さ、仕事量。明らかに、仕事の押し付けがあったため、対象者には降格や減俸処分があり。
今後このような不祥事が無いように、
この支部は本部からの監視運営スタッフが入り、
各部署を健全に回していくべく動き出した。
その後、元副長はカナメちゃんの家族になったと聞き、
皆が喜んだことは言うまでもない。




