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ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』  作者: ヨシムラ


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13 馬鹿が馬鹿を呼ぶ・馬鹿達の共鳴

A級迷宮・地下2階層──。


地下3階層へと続く階段が、その輪郭を闇の向こうに滲ませる、ほんの直前。

そこで黒装束に身を包んだ中年太りの男──B級3位パーティ所属の追跡者・榛原は、まるで膝から糸を抜かれた人形のように、その場に正座していた。


首は今にも折れそうなほど前へ垂れ下がり、肩は小刻みに、絶え間なく震えている。

黒布に覆われているにもかかわらず、魂の灯が今にも消えかけているのが、気配としてはっきり分かるほどだった。


怠惰。

食欲。

慢性的なストレス。


それらを雑に縫い合わせたような体型は、まさに“中間管理職”という言葉を象徴するかのような、丸みを帯びた完成形となっている。

膨れた頬、だぶついた顎の下からは汗が滲み出し、ぽたり、ぽたりと砂地へ落ちては、じゅわりと吸い込まれていく。

耳を澄ませば、水滴が乾いた大地に染み込む音すら聞こえてきそうだった。


球体に片足を突っ込んだかのようなそのフォルムを眺めていると──

いや、眺めずとも自然と浮かぶ。


……こんな体型で、本当に斥候が務まるのか。


疑念は、ごく自然に。

そして強く、強く胸の内に浮かび上がってしまうのだった。


勇者と強斥候の2人は、まるで洞窟の奥で珍種の魔獣でも発見したかのような顔つきで、興味津々にその追跡者を覗き込んでいる。


「こいつが追跡者(はいばら)か……。さすがに、少しは鍛え直した方がいいんじゃねぇか」


「なんというか……威厳ってより……援助交際とかしてそうな、こじらせた中年感あるっすね」


……相変わらずの言い草である。

世の中には、“本当のことを言っているだけだ”と無自覚に胸を張る者もいる。

とはいうものの、その言葉が悪質かどうかは、真実か否かではない。

“傷つけてやろう”という意図が混じっているかどうか、それに尽きる。


もっとも。

この2人に注意したところで、どうせ砂に吸われる独り言程度の意味しか持たないのだろう。


勇者と強斥候は、追跡者の扱いについて、まるで落とし物の処分でも決めるかのように、気安く相談を続けていた。


「追跡者をどうするよ。ここで解放したら、また仕掛けてくる可能性あるよな?」


「そうっすね……両手両足縛っといて、そこらに転がしとくとか……普通にアリじゃないっすか」


「いいじゃねぇか。飲まず食わずでスリムになるだろ。追跡者にも俺たちにもwin-win」


「いや、その前に魔物に食われると思うんすけど?」


「でも脂多めで不味そうだし、魔物側からお断りされるかもな」


冗談の体裁を取ってはいるものの──

その言葉の端々には、冗談にしては濃すぎる殺気が混じっている。


魔物の餌など、論外だ。

迷宮内における冒険者同士のKILL行為は厳禁。

たとえ間接的であっても、それは同族殺しに等しい愚行となる。


ふと横を見ると、美人賢者と視線が交錯した。

彼女もまた、追跡者をどう扱うべきか、判断を迷っている様子だった。


私は一度、ゆっくりと息を整え、静かに口を開く。


「結論から申し上げます──追跡者は解放して構いません。『ロックオン』で補足済みですので、どこへ逃げても捕捉可能です」


美人賢者に向けたつもりの言葉だった。

しかし、最初に反応したのは──

膝を震わせ、地面に縫い付けられたように座り込んでいた、追跡者本人だった。


B級相当の実力者。

とはいうものの、彼には分かってしまったのだろう。


“自分は、到底敵わない”。


さらに言えば──

“私は、まだ本気を出していない”。ということを。


次の瞬間。

榛原の顔色は蒼白を通り越し、まるで蜃気楼のように生気を失っていく。

汗は滝のように噴き出し、透明な線を描きながら、砂地へと沈んでいった。


「せ、聖女様……俺を補足してる、その……射程って……どれぐらいなんですか……?」


「射程ですか? 『月の加護』がある夜なら──地上世界全域となります」


「地上世界……全域……? そ、それって……どこにいても、俺を……狙撃できるってことですか……?」


「はい。私の気分次第で、いつでも、どこからでも、あなたを仕留められます」


追跡者のブクブクとした身体が、意志とは無関係に、ぶるぶると震えを増していく。

さすがに、ここまで怯えられると、こちらとしても困ってしまう。


誰かに見られれば、私が“言葉責めを楽しむ女王様”と誤解されかねない。


そう思った矢先。

背後から、勇者と強斥候のひそひそ声が漏れ聞こえてきた。


「“いつでもどこでも”って、なんかキャッチーだな。CMみたい」


「でも三華月様だと……CMってより……普通にSMの女王様っすよね」


「確かに。追跡者の奴も、三華月の無駄に可愛い外見に騙されたんだろうな」


「分かるっす。鬼可愛い聖女で“鬼聖女”。略すと最強っす」


……知らぬ間に称号が増殖していく現象。

いったい、どういう仕組みなのだろうか。


そして最終的に──

追跡者は、絞り出すような震える声で、こう申し出てきた。


「ロックオンを解除するまで……同行させてください……!」


それは命乞いとも、忠誠ともつかない。

両者の狭間に落ち込んだ、しぼんだ声色だった。


とはいうものの。

彼が同行を望むのは、あまりにも当然だ。

逃げても地上世界全域が射程なのだから、距離を空ける方が、よほど恐ろしいに違いない。


こうして。

丸々とした球体斥候は、しばらくの間、私たち一行に同行することとなったのだった。


————


地下3階層へ足を踏み入れた瞬間。

そこに広がっていたのは、洞窟とは到底思えぬ荒野だった。


天井高はおよそ20メートル。

その遥かな高みへ埋め込まれた無数の石板群が、どんよりと濁った光を大地へと降り注いでいる。


光と呼ぶには冷たく。

闇と呼ぶには、わずかに明るすぎる。


その中間色が、地形全体に“死の薄膜”でも張り付けたかのような、不気味な陰影を生み出していた。


足下の大地は岩のように硬く、踏み込むたびにゴッ、ゴッと靴底へ鈍い反響が返ってくる。

点在する痩せ細った木々は、咆哮めいた風に揺さぶられ、生気という色を完全に失っていた。

肌を撫でる風には、かすかな腐臭が混じり、吸い込むたび喉の奥がひりつく。


恐怖心を煽る空気──

とはいうものの、その原因は、““骸骨軍団””であった。


荒野の向こう。

乾いた大地が緩やかに盛り上がった丘の、その頂点。


そこに――銀色の全身装備をまとったアンデッドナイトたちが、寸分の乱れもなく整列していた。

鎧の隙間から覗くのは、空虚な眼窩。

骸骨の騎士たちは一切の音を立てず、ただ、こちらを凝視している。


視線が絡んだ瞬間だった。

背骨の奥を、ひやりとした細い氷柱で貫かれたかのような悪寒が走る。

ぞくり、と内臓が裏返る感覚。


ただの死者ではない。

これは――“生前の戦闘本能だけが研ぎ澄まされたまま残った戦士”。

そうとしか形容できない圧が、空気そのものを押し潰していた。


追跡者は、その姿を認識した瞬間、びくりと全身を強張らせる。

喉がひくりと鳴り、呼吸が浅く、震えた。


アンデッドナイト。

単体でB級相当。


高い機動力。

鉄壁と呼ぶにふさわしい防御力。

完全に破壊されるまで、絶対に止まらない執拗な戦闘性能。


物理主体の冒険者にとっては、最悪の相性。

剣も斧も、叩き潰しても、倒したという実感を与えてくれない。


しかも――

現れたのは1体や2体ではなかった。


ざっ、ざっ、と。

岩影のあちこちから、銀の骸骨騎士たちが次々と歩み出す。

金属の擦れる音すら抑えられた、静かな行進。


数は――

およそ20騎。


追跡者の顔色は、血の気を失うどころではなかった。

白を越え、灰色へ。

死者の色に近づいていく。


その背中を、勇者と強斥候が、なぐさめるように軽くポンポンと叩いた。

……軽すぎるほどに。


だが、その二人の表情には、相変わらず余裕が満ちている。

むしろ楽しげですらあった。


「おい、どうした。顔色が悪いぞ。体調でも崩したのか?」


「もしかして、アンデッドナイトたちにビビってるんすか?」


「当たり前だろ!」


追跡者の声は裏返り、必死に張り上げられる。


「あれは単体でもB級相当だぞ!? 20騎も揃ったら、A級パーティでも討伐はほぼ不可能だ!」


――正論だった。

追跡者の言い分は、極めて正しい。


通常のB級魔物であれば、20体相手でもB級冒険者5人で十分攻略可能だ。

だがアンデッドナイトは別格。


高い機動力と防御力。

破壊されるまで止まらない個体が、規律ある集団戦術を用いる。

A級冒険者でさえ、“危険域”と判断する相手だった。


追跡者が青ざめている一方で、勇者はなぜか勝者の風格を漂わせている。

舌をちち、と鳴らしながら、指を左右に振った。


「アンデッドといえば聖属性だ。つまり、聖女の出番ってわけだな」


「聖属性といえば、勇者もそうっすよ」


「そういえば、俺も聖属性だったな」


「ガハハハハハ!」


乾いた荒野に、不釣り合いな豪快な笑い声が響く。


「無敵の鬼聖女が聖属性って、アンデッド側からすればまさに地獄モードだよな」


「僕たちにできることと言ったら、アンデッドナイトたちが成仏できるように、南無阿弥陀仏って唱えるくらいっすね」


「だな」


「ガハハハハ!」


……この状況で笑える神経。

それが心強いのか、それとも無謀なのか。

判断に迷うところではある。


とはいうものの。

彼らにとっては、“私がいる”という事実こそが、すべてなのだろう。


ただ――

私は、アンデッドへの攻撃にどうしても抵抗がある。


死者を、再び“傷つける”。

その行為を、本能が拒絶しているのだ。


とはいえ、必要とあらば躊躇なく手を下す覚悟がないわけではない。

アンデッドナイトたちは隊列を整え始めている。


が――

彼らは“信仰心の高い聖女”を、攻撃対象から外す。

迷宮に巣食うアンデッド特有の、歪んだ選別。


そんな中。

勇者が威勢よく、しかしどこか無責任な声を張り上げてきた。


「よし、三華月。アンデッドナイト軍団を、片っ端からぶっ殺してくれ!」


「アンデッドはもう死んでますので、ぶっ殺すことは出来ないっすよ」


「違ぇねぇな」


「「ガハハハハ」」


――そこで、私は短く告げた。


「私はアンデッドを狩らないことにしております」


……その瞬間だった。

和気あいあいとしていた空気が、ぱきりと音を立てて凍りつく。


笑っていた二人は、同時に動きを止めた。

見開かれた瞳。

軽口の影は消え、オリオンに入って初めて見る“本気の表情”が浮かんでいる。


戸惑いを隠しきれない声が、荒野に落ちる。


「おい。アンデッドを狩らないって……どういう意味なんだ?」


「そうっすよ……分かってると思いますけど、僕達は三華月様頼りなんすよ……!?」


「どういう意味も何も、私はアンデッドを狩りたくないだけです。あなた達が私頼みなのは重々承知ですが、冒険者なら――たまには自力で奮闘してみてはいかがでしょうか」


空気が、ゆっくりと。

だが確実に、緊張へと変質していく。


地面の下から冷気が噴き上がるように。

荒野全体に、ひたひたと満ちていく。


アンデッドナイトの集団が、一歩。

ざり、と足音を刻み、また一歩。


その影を背に、勇者と強斥候の顔から、先ほどまでの余裕は完全に消え失せていた。


二人の額に浮かぶ青筋は、怒気そのものが具現化したかのように隆起し、ぶくぶくと脈打つ。

いまにも破裂し、怒りが噴火するのではないか。

そんな危険な熱が、皮膚越しに伝わってくる。


……ただ。

その険しい表情とは裏腹に。

いや、むしろ気迫が鋭すぎるせいか。


二人は、じりじりと美人賢者の背後へと後退していった。

噴火寸前の火山が、地鳴りを蓄えながら圧力を極限まで高めているかのような、不穏で静かな熱が空気に張り付く。


そして――

ついに、堰を切ったように怒気が爆ぜた。


大気を震わせる轟音じみた声量で。

二人の猛抗議が、同時に噴き上がる。


「おいッ! 嫌だからやりたくないって……そんなワガママ、通ると思ってんのか!」


「私抜きってどういうことっすか! 話、ぜんぜん違うじゃないっすか! 僕達、まさか騙されました!?」


「お前、聖女だろ……俺達を見捨てんじゃねぇよ!」


「信仰心がガタ落ちしてもいいんですかーッ!」


「嫌なものは嫌なのです。それに私は褒められて伸びるタイプなので……そういう抗議は、やる気が急降下してしまいますよ」


「そうか。そうか! じゃあ褒めりゃいいんだな!」


「三華月様、可愛い! 最高っ!」


「性格はアレだが……強斥候の言うとおり、見た目だけなら相当な美人だろ!」


「そうっす。見た目だけっすけど!」


「だな。無駄に可愛いのは事実だ!」


「あなた達に褒められても嬉しくありません」


「おいこら! どういうことだ! ちゃんと褒めてやっただろ!」


「ワガママを続けると……いくら優しい僕達でも、さすがにキレますよ!」


低く、しかし確かな怒気を孕んだその言葉と同時に、私はギロリと射抜くような視線を向けた。

視線に貫かれた瞬間、美人賢者の背後に隠れていた二人は、まるで捕食者に睨まれた小動物のようにびくりと跳ね、反射的に肩をすくめ、身を縮こませていく。


正直に言えば、相手をするのは面倒だった。

とはいうものの、わざわざ鉄拳制裁を加えるほどの価値があるかと言われれば、それもまた疑問である。

その微妙な空気を、追跡者は半眼になってぼんやりと眺めていた。


そのときだった。


『パシン』


乾いた音が空気を切り裂く。

美人賢者が鋭く手を打ち鳴らし、透き通った声を荒野に響かせた。


「三華月様に頼りきりなのは、どうかと思います! 私達は仮にも、A級冒険者を目指す者達ではありませんか!」


凛と張り詰めたその言葉が空気を震わせた瞬間、勇者と強斥候の鬼のような形相は、嘘のように和らいでいく。

額に浮かんでいた怒気が、すうっと引いていくのがはっきりと分かる。


……世界で最も尊敬される聖女である私の言葉は平然と聞き流すくせに、美人賢者の一喝には素直に従う。

どう考えても、胸の大きさの差なのではないか……などと、私は内心でぼそりと呟いた。


「確かに……俺達だけでB級相当のアンデッドナイトを20騎ほど、どうにかしなきゃならねぇってことか」


「そうっすね。僕らなら、やれなくはないっす」


勇者(ガリアン)! 強斥候(ふぶきつき)! 私達3人で、アンデッドナイトを蹴散らしましょう!」


美人賢者の気迫を帯びた声が、荒野を渡る風の流れすら切り裂いたように感じられた。

乾いた地面に散る砂粒が、微かに、しかし確かに震えた気がする。


勇者は即座に美人賢者を庇うように一歩踏み出す。

その動きは獣の咆哮にも似た迫力を宿し、大剣を抜き放つと同時に、大楯を前方へ深く突き立てた。

ガン、と地面を叩く重低音が腹に響く。


その横で、強斥候は猫科の獣を思わせる低い姿勢に沈み込み、刃を逆手に構えたまま、鋭い視線で敵の隙を虎視眈々と探っている。


対峙するアンデッドナイト達は、カラ…カラ…と骨が擦れ合う不気味な軋みを響かせながら、寸分の狂いもなく紡錘陣形を組み上げていく。

攻撃力を一点に収束させ、捨て身の突撃で突破を狙う陣形。

つまり、美人賢者を最優先で狩る算段なのだろう。


勇者は一瞬でその意図を読み取り、矢継ぎ早に指示を飛ばした。


強斥候(ふぶきつき)、左へ回り込んで撹乱しろ!」


「了解!」


「俺は向きを変えた奴らの側面を叩く。三華月、美人賢者(アメリア)の護りを頼む!」


「承知!」


美人賢者(アメリア)! 『身体強化』を俺達に頼む!」


「任せて!」


掛け声と同時に、強斥候が矢のように飛び出す。

ザッ、と地を蹴る音が遅れて響いた。


その刹那、アンデッドナイト達の進路がわずかに乱れる。

ほんの一瞬、呼吸一つ分の隙。


そこへ――勇者が閃光のように割り込み、大剣を横一文字に振り抜いた。


ズバァン、と空気を裂く剣閃。

聖属性を纏った刃は、アンデッドの不浄な甲冑を紙のように断ち割り、黒い瘴気が熱砂の上へ噴き散った。


とはいうものの、囲まれれば不利になるのは火を見るより明らかである。

しかも時間制限という厄介な縛りまであるのだから尚更だ。

初見の相手というものの、勇者と強斥候だけでは、どうしても「あと一手足りない」印象が拭えなかった。


ぼんやりと戦況を眺めていた追跡者の尻に、私は軽く蹴りを入れていた。


「気を抜いてる暇はないでしょ!」


軽く、のつもりだった。

だったのだが――追跡者は岩地をゴロゴロと派手に転がり、砂埃を巻き上げながら吹き飛んでいった。


力加減を誤ったのは否めない。

とはいえ、受け身を取りながら転がっているあたり、さすが追跡者というべきか。

いやむしろ、球体に近い体型ゆえに回転速度が増しているだけなのでは……と思った矢先、盛り上がった岩にゴン、と激突した。


血を滲ませながらも、ふらりと立ち上がるその瞳には、はっきりと怒りの火が宿っていた。


「なんなんですか急に! 殺す気ですか! ほんと、やめてくださいよ!」


追跡者(あなた)も戦力です。働いて下さい! アンデッドナイトの迎撃。頑張ったら『ロックオン』を外してあげましょう」


「マジっすか……命懸けでやります!」


――――


時間はかかったものの、勇者・強斥候・追跡者の3名は、ついにアンデッドナイトをすべて殲滅した。

戦いの終盤には、いつの間にか呼吸が噛み合い、不思議な連帯感すら漂っていた。


『類は友を呼ぶ』とはよく言ったものだ。

いや、今回は『馬鹿が馬鹿を呼ぶ』の方が正確かもしれないが。


「お前たちの連携、見事だったな」


「お前も負けてなかったぞ。結構やるじゃないか」


追跡者(はいばら)さんがいてくれたおかげで、本当に助かりました!」


強斥候が囮となって敵の注意を引き、勇者が個別に撃破しやすいよう、追跡者が絶妙な距離で立ち回る。

その背後で、美人賢者は補助スキルを惜しみなく重ね、戦況を着実に底上げしていた。


美人賢者にも攻撃魔法はある。

あるものの、アンデッドナイトの異様な機動力を前にしては命中率が著しく下がる。

補助に徹した判断は、むしろ最適解だったと言えるだろう。


戦いを終えた3人は、なぜか揃ってドヤ顔になり、ずいっと私へ詰め寄ってきていた。


「三華月、ここから先はちゃんと働いてくれるんだろうな! 甘えるんじゃねぇぞ!」


「働かざる者は食うべからずって諺、知ってますよね? ちゃんと覚悟は決めてますよね?」


「フッ、俺のこと、結構できる男だって思っただろ! 期待は裏切らないぜ!」


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