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第八話:王都へ 祖父母とオルコット子爵

 ウルティア王国首都、王都ティアニスに到着した。


 貴族は基本、王都に屋敷を持っている。領地持ちの貴族は領地の屋敷と合わせて二軒持っているのが当たり前だ。

 我らアトラス家ももちろん王都に屋敷を持っている。


「あぁ、馬車の旅辛ぇ……。帰りもあれに乗るのかよ……」


 俺はあてがわれた部屋のベッドに寝っ転がっていた。さすがに疲れたため休ませてもらっている。

 道中も大変だったが、屋敷に着いてからも大変だった。

 やっと休めると思っていたところで、屋敷に祖父母が待っているというサプライズがあったのだ。

 魔物の大氾濫(スタンピード)に巻き込まれたことを知っていたようで、めちゃくちゃ心配された。


「まったく、父上も言ってくれればいいのに……」


 そもそも祖父母がいること自体、俺は知らなかった。父上曰く、「驚かしてやろうと思った」とのこと。

 そんな感じで少しおちゃめなところがある。きっと母上もそういうところが気に入っているのだろう。

 そんなことを考えていると、段々と眠くなってきた。

 大きくあくびをして目を閉じると、すぐに意識を手放した。



―――――



 翌日、朝食を食べに一階の食堂へ向かうと祖父母がすでに起きていた。

 どうやら皆はまだ寝ているようだ。


「ジンか。おはよう。よく眠れたか?」

「おはようございますお爺様。ぐっすり眠れましたよ」


 お爺様は厳格そうな人で、名前はウォルト・アトラスという。


「それは良かったわぁ。お披露目会はまだ先だし、ゆっくり休むのよ」

「はい。お婆様。ありがとうございます」


 お婆様は見た目と雰囲気共に優しそうな人で、名前はソフィー・アトラスという。

 席に着くと、使用人がお茶を用意してくれる。

 一口飲んで、一息ついているとお爺様が口を開く。


「ジンよ。道中のことは昨日報告を受けたが……あれは本当のことか?」


 お爺様は真剣な顔で問いかけてくる。

 ふむ、()()とは俺が魔法を使って魔物を殺したことだろうか。


「あなた! あれ、ではジンが理解できないでしょう! 相変わらず言葉足らずなんだから……」


 お婆様は首を振って呆れている。


「むっ、すまんな。あれだ、魔法を使って大半の魔物を倒したと聞いた。これは本当のことか?」

「はい。本当のことですよ。兵士と冒険者の方が魔物を引き付けてくれたので、魔法を使って囲みました」

「そうか……そうか……」


 そう言うと、お爺様は俯いてしまう。

 最初は怒っているのかと思ったが違う。口元がにやけている。

 孫が活躍して嬉しいのだろう。

 見た目に反して、とっても孫好きのようだ。


「そういえば、私も聞きたいことがあるのよ。オルコット子爵の長女と婚約したんですってね。しかもジンからプロポーズしたのでしょう?」

「始めはケイリーが告白してきたんですけど、その後に僕からプロポーズしました」

「キャーっ、素敵っ! よくやったわねジン。私もウォルトからのプロポーズを思い出しちゃうわぁ……」

「ブフォ‼ い、いきなり何を言っておる! 孫の前でそのようなことを言うんじゃない!」


 お爺様は吹き出すと、慌てたように立ち上がる。

 ……お爺様のプロポーズか、気になるなぁ。


「お婆様。僕、その話聞きたいです!」

「あらほんと? じゃあ教えてあげるわねぇ」

「や、やめんか馬鹿者‼ ソフィーーー‼」


 その後、涙目のお爺様を無視して、食堂に全員が揃うまでプロポーズの話が続けられた。



―――――



 楽しい朝食が終わり、俺はケイリーと一緒にリビングでくつろいでいた。

 ジュリアについては、従者になるための教育を受けるとのことで、屋敷のメイド長から指導を受けている最中だ。

 今日、やることがない俺とケイリーは何をして時間をつぶそうか悩んでいた。


「ケイリー。やることないね。どうする?」

「ん、ジンのお爺様とお婆様には挨拶し終わったし、やることないね」


 昨日は疲れていたので、今日の朝、改めて朝食が始まる前にケイリーを紹介した。

 お婆様の喜びようといったら凄まじく、「早くひ孫の顔が見たい」などと言っていた。


 こちとらまだ十歳だぞ。どう考えても早すぎる。

 それにケイリーは立場的に第一夫人にはなれない。まだいない第一夫人との間に子供を作ってからじゃないと作ることができない。

 ……なんか嫌な気分になってきた。とりあえず、ケイリーを抱きしめてこの気分を晴らそう。


「ん、どうしたのジン?」

「んー? なんとなく」


 あぁ~癒されるわぁ。もしかしたら、ケイリーは癒しの魔法が使えるのかもしれないな。


「もうずっとこうしてるか? どうせ明日までやること無いし」

「ん、確かに。……明日、私の家に挨拶しに行くんだよね?」

「そうだよー。娘さんをください! って言いに行くんだよ」

「それ逆じゃない? オルコット家からすれば貰ってくださいって立場だよ」

「へー。そういうものなのか」


 割と緊張していたんだけど、それを聞いて安心した。

 確かに、子爵と辺境伯では立場が違い過ぎる。そもそもオルコット子爵家はアトラス家の傘下だ。娘を婚約者に寄越せと言われて逆らえるわけがない。

 ならば、堂々と娘さんをもらい受けると宣言しよう。



―――――



 オルコット子爵に挨拶をする日を迎えた。

 しっかりと身だしなみを整えて、用意したプレゼントのドライフルーツを持ち、準備万端だ。


「ジン、準備はできたか? そろそろ行くぞ」

「わかりました。今行きます」


 父上に返事をして、外に待機している馬車に乗り込む。

 オルコット家の屋敷に向かうのは、父上と俺、ケイリーの三人だ。

 うちの屋敷から徒歩数分の距離なので、あっさりと到着した。

 門の前にオルコット邸を守る門番がいて、許可を貰い中に入る。

 馬車を降りると、青髪で背が低い男とドワーフの女性が並んで待っていた。恐らく、ケイリーの父親と母親だろう。


「お久しぶりでございますアトラス卿。お越しいただき、ありがとうございます」

「ああ、久しぶりだなオルコット卿。今日は息子とケイリー嬢のことで会いに来た。それと、息子が用意したプレゼントがある。あとで受け取ってくれ」

「ええ、承知しています。プレゼントは有難く頂戴いたします。……立ち話もなんですし、どうぞこちらへ」


 プレゼント気に入ってもらえるといいんだけど……。

 そんなことを考えながら、オルコット子爵の先導で応接間に通される。

 俺たちがソファーに座ると、オルコット夫妻が対面に座った。

 すぐに、使用人が皆の前にお茶を用意する。


「では、紹介しよう。俺の息子、ジンだ。今年で十歳になる」

「お初にお目にかかります。アトラス辺境伯家アランの息子、ジンです」


 努めて明るい声で話しかけた。

 第一印象は大事だからな。


「これはご丁寧にありがとうございます。私は、ロイド・オルコット。ケイリーの父です」

「私は、アイヴィー・オルコット。ケイリーの母です」


 二人は頭を下げる。

 自己紹介が終わると、いきなり本題には入らず、世間話が始まった。

 話題は道中で巻き込まれた魔物の大氾濫(スタンピード)のことだ。

 五千の魔物を応援が来る前に倒し切ってしまったと聞くと、ひどく驚いていた。

 また、五千の内の半分以上は俺の魔法で倒したことを話すと、目を見開いて言葉を失っていた。

 顔色がコロコロ変わって面白かったため大変満足だ。


「さて、本題の婚約について話そうか」


 父上が言うと、皆が真剣な顔になる。


「私たちとしては、今回の婚約は大歓迎です。むしろ貰ってもらいたい。恋愛や婚約に興味を示さなかったケイリーが嫁に、それも辺境伯家に行ってくれるというのであれば、こちらも嬉しい限りです」


 本当にケイリーの言った通りになった。

 まあ、お互いに利益のある婚約だ。オルコット家としてはアトラス家に影響力を持てる。アトラス家としては傘下の貴族と結束を強めることができる。

 ……それよりも、ケイリーが恋愛に興味ないって絶対に嘘だろ。初対面で告白されたぞ、俺。


「俺もケイリー嬢とジンの婚約は歓迎だ。一応聞いておくが、二人はどうなんだ?」


 父上にそう聞かれて、俺とケイリーは視線を交わす。

 俺たちは頷いて答える。


「もちろん歓迎です。僕はケイリーのことが好きです! 大切にすることを誓います!」

「わ、私もジンのことが好き! ずっと一緒にいるって誓う!」


 そう宣言すると、父上とオルコット夫妻は目を丸くする。

 父上が笑い出した。


「ハッハッハ! いやー、二人の愛が強くて驚いた!」

「フフッ、そうですね。そこまで愛してもらっているなら安心して嫁に出せます。ジン殿、ケイリーをよろしくお願いします」

「はい。任せてください」


 オルコット夫妻への挨拶と婚約話は成功に終わった。

 俺は改めてケイリーを幸せにすると心に誓う。


頑張れば、夜投稿できます


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