第九話:謁見
オルコット子爵への挨拶が終わった。
あの後、世間話を続けたのだが、プレゼントで用意したドライフルーツの話を持ち出して食べてもらった。
オルコット夫妻はとても気に入ってくれて、予備で持ってきていたものを買ってくれた。
一ビン金貨五枚に設定していたのだが、五個も売れて嬉しい限りだ。
ちなみに、日本円に換算すると――
銅貨 十円
大銅貨 百円
銀貨 千円
金貨 一万円
白金貨 十万円
――このようになる。
このお金は商会設立の資金にしようと考えている。
領地に帰ったら楽しみだなぁ……。
―――――
屋敷に帰ると、すぐに俺たちはお爺様から呼び出された。
リビングに集まると、お爺様が口を開く。
「お前たちがオルコット子爵のところに行っている間、王城から使者が来た。例の魔物の大氾濫のことだ」
ほぅ、王城からの使者ねぇ。
もしかして、何か褒美でも貰えるのだろうか。
「意外と早く来ましたね。俺はお披露目会の後に呼び出されるものと思っていました」
「儂もそう思っておった。が、あちらは予想以上に事態を重く見ておるのだろう。何せ、王領内で起きた出来事だからな」
父上の言葉に頷いて同意するお爺様。
事態を重く見ているということは、解決した俺らの功績が大きくなるということ。
金か名誉かは知らんが、褒美は期待していいかもしれない。
「それでお爺様。いつ王城に向かえばいいのですか?」
「明日の昼だ。馬車は向こうが用意することになっている」
結構早いな。
王族に会えるかは分からないが、一足先に王城見学を楽しむとするか。
―――――
今、俺は王城にある、応接室のソファーに座っていた。
隣にはケイリー、正面には父上がいる。
この部屋に通されてからニ十分くらい経ったが、未だ案内がこない。
「父上、今回は謁見するんですよね?」
「ああ、そのようだ。おそらく褒美が出ることになるだろう」
「それは楽しみですね」
今欲しいものは金かな。
商会設立の資金をもっと欲しい。
特に人材確保のための金だ。俺は奴隷の購入を考えている。
奴隷は魔道具によって裏切ることができない。
そこが最も素晴らしいポイントだ。
もちろん、奴隷だからといって酷い扱いはしない。我が社は世界最高のホワイト起業を目指している。
そんなことを考えていると、ノックがしてメイド服の人が入ってきた。
「お待たせいたしました。謁見の準備ができましたので、ご案内いたします」
メイドの案内で応接室を出ると、廊下を進み、大きな扉の前に着いた。
左右に立つ騎士が両開きの扉を開くと、俺たちは前に進む。
左右には法衣貴族と思われる人たちが並んでいる。よく見ると、エドも並んでいた。
……あの人、爵位貰っていたのか。
少し驚いていると、所定の位置に着いたので、片膝をつき頭を下げる。
「面を上げよ」
陛下からお声がかかった。
俺たちは言われた通りに頭を上げる。
一段高いところにある玉座に陛下が座り、その横に鋭い目つきをしたおじいちゃんが立っていた。
陛下は、金髪で三十代後半くらいの男だ。豪華な服を着て王冠を身に着けている。
鋭い目つきのおじいちゃんは、話に聞いていたリーグリット宰相だろう。
まるで、鷹のような眼をしている。
「この度、王領南東に位置するへイスの街が魔物の大氾濫に襲われた」
宰相の言葉に、左右に並ぶ貴族たちがざわめく。
「その時、へイスの街に滞在していたアトラス辺境伯家の一行が率先して動き、へイスの街を守り切った」
貴族たちのざわめきは止まない。
……特にエドが騒いでいる。
「ここにいる三名。その中でも特にアトラス辺境伯の息子、ジンが素晴らしい働きをした。五千の魔物の内、三千を一人で倒し切るという偉業を成し遂げた。そこで褒章を与える」
宰相が陛下に視線を向けると陛下は頷く。
「ジン・アトラスよ。五千の軍勢からへイスの街を無傷で守り切ったそなたの功績は素晴らしいものだ。よって、ジン・アトラスに白金貨五十枚と男爵位を授ける」
貴族たちのざわめきが一層大きくなった。
エドに至っては大きく拍手までしている。恥ずかしいからやめてほしいものだ。
「ありがたく頂戴いたします」
本当にありがたい。これでかなりの資金が貯まった。金稼ぎのことを考えると思わずニヤニヤしてしまいそうになる。
もちろん爵位もありがたいものだ。
辺境伯の子供と男爵位を持つ辺境伯の子供では天と地の差がある。
「また、アトラス伯とケイリー嬢には白金貨十枚を与える」
「ありがたく頂戴いたします」
父上とケイリーは頭を下げて返答した。
「では、これにて謁見を終了とする」
宰相の言葉を最後に、陛下は退出する。
「報奨金は別室にて渡す。外の侍女に案内させるゆえ、ついてゆけ」
宰相に言われた通り俺たち退出すると、外の侍女についていく。
案内された部屋には、すでに褒章金が用意されていた。
「こちらをお持ち帰りください」
侍女に報奨金が入った袋を渡される。
白金貨五十枚だけなので軽い。
しかし、いずれこの白金貨五十枚が千枚とかになるはずだ。
そう思うと、へイスの街で頑張ったかいがあったと思う。
……まあ、魔法を一発撃っただけなんだが。
―――――
ここはウルティア王国の王都ティアニスにある王城。その中でも王の執務室として使われている場所だ。
この部屋の主、第二十五代国王ローグ・ノア・ウルティアはリーグリット宰相と話し合っていた。
「それで? ヴァイスはどう思う?」
「そうですなぁ……いいのではないですか? そもそも陛下の御心は決まっているのでしょう?」
「まぁな。オートリアのバカ息子なんぞにやれるかってんだ」
「あれは酷いものですからなぁ……」
二人は揃ってため息をはいた。
「あれに比べて、アトラスの息子は利口に見えた。あれだけの貴族に見られている中、特に委縮した様子も無かった」
「そうですな。それにあの美貌。他のご令嬢が放ってはおかないでしょう」
「それと魔法もだ。植物を操る魔法だったか。とんでもない規模らしいな。王都の城壁並みにでかい壁を作ったと報告があった」
「……では、決定ですか?」
「決定だな」
ジンの知らないところで、事が動いていた。
―――――
報酬を貰って帰り、屋敷のリビングでくつろいでいると、面白いものを見ることができた。
それは――
「お、お帰りなさいませ……ご主人様」
――ジュリアのメイド姿だった。
ひらひらしたものを着慣れていないのか、しきりに裾を触っている。
「ただいまジュリア。メイド服似合っているよ」
笑いそうになるが、表に出さないようにする。
傷ついて二度と着てくれなそうだからな。
そんなことを考えていると、ズボンの裾を掴まれる。
「……ジン、メイド服好きなの? 着てあげよっか?」
口元が少しムッとしているケイリー。
どうも対抗意識が出たみたいだ。
……しかし、ケイリーって最初に出会った頃は愛人でもいいと言っていたのに、意外と嫉妬深いな。
「じゃあ今度着てくれるかい?」
「ん、わかった。今度見せる」
ケイリーは満足そうな顔をする。
見たいと言われたことが良かったみたいだ。
「ジン。帰っていたのか。おかえり」
「ただいまです。お爺様」
「せっかくだ。王城での話を聞かせてくれ」
「わかりました」
俺は、男爵位を貰ったことや報奨金を貰ったことを話す。
お爺様はうんうんと頷いて満足そうだ。
「その年で男爵位を貰うのは異例だ。よくやったなジン。お前を誇りに思う」
「ありがとうございます。お爺様」
俺は笑顔で頭を下げる。
誇りと言われて嬉しくないはずがない。
「ケイリー嬢も、よくやったな。これからもジンを支えてやってくれ」
「はい。義祖父様」
ケイリーも嬉しそうだ。
「……ところで話は変わるが、ジンは音楽の才があるらしいな。アランから聞いたぞ。何でも新しい楽器まで作ったのだろう?」
「才能があるかはあれですけど、新しい楽器は確かに作りましたよ。それがどうかしましたか?」
お爺様の態度が急によそよそしくなった。
「そのな、あれだ……少し弾いてくれんか?」
なるほど、そういうことか。
でも、ピアノはお披露目会で弾くと決めたからなぁ……。
「……お爺様はお披露目会に出るんですよね?」
「あ、ああ、もちろん出るぞ。基本、全ての貴族が出る決まりだからな」
「新しい楽器はその時に弾く予定なので……その時まで待てませんか?」
「そうか、わかった。お披露目会まで我慢しよう」
お爺様は、後で聴けるとわかったからか表情が晴れた。
申し訳ないと思うけど、今しばらく我慢してください。
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