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奴隷の獣人

「ブルルルルル」


 立派な角を慄かせ、草原の強者である三匹のアントラブルは、三人の獲物に突撃を開始する。男が勇敢にも、女を守るために突撃に対して盾となる。

 普通なら男は無残にも吹き飛ばされていただろう。だが、男はまるで闘牛士のようにアントラブルの突撃をいなし、その脚を切りつけ機動力を奪った。

 一匹が倒れ、二匹は仲間を避けるために減速した。そこに、矢が降って来た。女の一人が翼をはためかせ、空を飛び、上空から矢を放ったのだ。

 その矢は風魔法で威力を底上げされていたらしく、額を貫通し、一匹は絶命した。最後の一匹は一矢報いるためか、一番小さな女に狙いを定めた。

 しかし、体が言うことを聞かない。なぜなら、すでに頭と胴は極限まで研ぎ澄まされたウインドスラッシュによって分断されていたからだ。


 最初に転ばせたアントラブルにとどめを刺しつつ話かける。


「プリマも大分様になったな」

「ありがとうございます」


 プリマを冒険者稼業に引き込んで大丈夫なのか心配だったのだが、意外な才能を開花させていた。

 弓の扱いはすぐに上手くなり、今は喜々としてアントラブルの肉を解体している。案外たくましい女だ。


 弓という武器は風魔法と相性がいい。矢の軌道を変えたり、矢に属性を乗せて貫通力を増したり用途が幅広い。普通に魔法を使うよりも速射性、連射性に優れるのも特徴だ。

 さらに、有翼族には飛行という技能がある。文字通り羽で自由自在に飛ぶのだ。これにより地上の相手には不可侵となり、角度を付けて矢を射れば重力によって威力が増す。まさに有翼族にとって弓はベストマッチな武器だろう。

 ちなみに俺は飛べない。種族魔法みたいなものだからできるかなと思ったんだが、羽に魔力を込めると聞いて再現のしようがなかった。俺も飛びたかったんだがなぁ。

 この飛行は燃費がすごく悪いので普通の有翼族は使わないらしいのだが、魔力が有り余っている俺たちには関係のないことだった。なのでプリマには戦闘の度に飛んでもらってる。


 有翼族は魔物の相手をしないと聞いていたので殺すことに戸惑いがあるかと思えば、案外あっさりとしていた。

 プリマ曰く「アステルさんの敵なら容赦しない」とのことだ。これが人間にも適応されると思うとちょっと怖いものがあるが、それだけ愛されているとポジティブに受け取ろう。


「ヘレナの料理はいつも美味しいです」

「ありがとうございます」


 アントラブルの特製ダレの串焼きを頬張りながらプリマが賛辞をあげる。あれから何度か女だけの話し合いが持たれ、嫁達の中は深まったようだ。これは本当に良かった。この二人のウマが合わないともなれば家庭はギスギスしたものになって胃に穴が空いてしまうところだった。

 あまりの急展開だったためそこらを考慮することができなかったのは反省点である。今後に生かすことはないと思うが。


 俺たちは今、アロゲンシア王都を目指し街道を歩いている。観光しようというわけではなく、単にパークス村に帰るのに王都に寄るのが一番近いからだ。

 嫁が二人も出来たと言ったらゼウロスさんは何と言うだろうか。何を言われるにしても一度報告には行かないといけない。


 スライムを踏みつけ、ゴブリンを焼き、アントラブルの肉を頬張って、ついに王都に着いた。

 王都には入場料がかかるようだ。俺はギルドカードがあったので良かったのだが、嫁二人は入場料を取られた。

 こんなことがあったのでまずは二人とも冒険者登録をしようということになり、いの一番でギルドに寄った。

 

 登録が終わった後に今までの魔石を提出する。誰が手に入れたかとかはあまり関係ない。ここらへんギルドは雑だ。

 ギルド的には底辺のランクのいくらあがろうと大勢に影響ないとのことで放置してるんだろう。いちいち出所を確かめるなんてしてられないしな。


 ギルドの職員はみんな【リード】と呼ばれる無属性魔法を習得している。物に宿る情報を読取る魔法だ。これにより、魔石がどの魔物の魔石か鑑定している。

 魔石なんか見た目でどうかなんて分からないからね。これでどの魔物を討伐したか分かるわけだ。


「あの、お客様……この魔石は一体……」


 ギルドのお姉さんが魔石に付いて聞いてくる。魔石の区別なんてできねーよと思ったが見ると黒い魔石。魔人の魔石だった。これは黒いから見れば分かる。


「ゴブリンの魔人の魔石だな」

「魔人ですか……。すいません詳しいことを聞いても?」

「南のほうにある村でゴブリンの集団を指揮してたのが魔人を倒した時に入手したものだ」

「すいません。値段が分からないので少々お待ちください」

「はい」


 どうやら魔人の魔石についての値段は分からないらしい。そりゃそうだよな。いちいち魔人の値段なんて把握してるほうがおかしい。

 しばらくすると偉い人に聞いてきたのか、お姉さんが帰ってきた。


「通常のゴブリンの魔石の十倍の値段で買い取るということでよろしいですか?」

「いいですよ」


 十倍か。まあ、それくらいが妥当なのかな。今ではゴブリンの魔人に対する印象も薄い。なにせ間に色々あり過ぎた……


「合計が出ました。全部で七千六百エルクとなりますが、よろしいですか?」

「はい」

「そしてアステル様、プリマヴェーラ様、ヘレナ様のランクがCに上がりました。ギルドカード更新までしばらくお待ちください」

「分かりました」


 中々高額の報奨金だ。魔石は今までずっと貯めてたからなぁ。

 ランクも一気にCまで上がった。これも同等の理由だろう。ついでにオークキングの魔石もあったせいかと。これで俺たちはいっぱしの冒険者になったわけだ。


「報償金をお確かめください」

「確かに」

「では、ギルドカードを返却します」

「はい」

「またのお越しをお待ちしております」


 用事が済んだのでギルドを出る。ものすごくじろじろ見られた。やはりプリマの翼が目立ったのだろう。有翼族の冒険者なんて聞いたことないからな。しかも美少女。

 当のプリマは視線に慣れているのか気にしたところはなく、しげしげとギルドカードを見ている。

 

 臨時収入も入ったし、旅の疲れを癒やすため、シャワーの魔道具が着いた高級宿に宿泊することにした。二部屋も取ったので出費もかなり痛いが必要経費だ。いつか一部屋でいいと言ってみたいものだ。

 今日は早目の夕食を取り、自由時間にすることにした。プリマとヘレナは部屋でまったりしているらしい。俺は王都を回って見ることにした。


 王都だけあって、今まで見たことのないようなものがいっぱいある。迷宮産の魔具もものすごい値段で流通しているようだ。そのうち迷宮に潜ってみるのもいいかも知れない。

 様々な王都の品を見回りながら一つ興味深いものを発見した。貴族御用達と書かれたソレは俺の目的に極めて合致している。


「お、兄ちゃん。うちの商品は品質保証付きだよ。使えば抱き心地二割増し間違いなしだ」

「ほう」


 プリマの抱き心地が二割り増しともなれば、抱きしめただけで昇天するかも知れん。


「そうだな。セットを貰えるか」

「セットは五百エルクだよ。毎度あり」


 俺が買ったのは石鹸、シャンプー、リンスが一緒になったいわゆるお風呂セットだ。

 この世界ではアワの実というものを潰したものを水に解いて石鹸水みたいなもので体を洗っている。プリマたちはその後に香油で髪を梳いて髪の質を保っているようなのだ。

 石鹸やシャンプーといったものは貴族ぐらいしか使わない高級品だ。しかし、俺も嫁達には綺麗でいてもらいたいので法外な値段だろうが買うことを厭わない。

 失敗した時が怖いので二個いっぺんには買えないが、使ってみて良さそうならば二人にプレゼントしよう。


 路地裏に行ってお風呂セットを【収納】する。しかし、道一本ずれただけで随分と寂れたな。ここれも探検してみるか……

 少し品のない酒場と風俗の店。ここは裏の商店街だ。若い娘の勧誘を柔らかに断って道を進む。


「うちの奴隷はぺっぴん揃いだよー。全員処女だ。そこのお兄さんも一目見ていかないかい?」

「奴隷か……」

 

 そこでは奴隷の路上販売をやっていた。色んな女性が物のように並べられていた。

 俺個人としては奴隷に思うところはない。世界がそういう物を必要としているから商売として成り立っているのだ。

 俺が思うに、地球で奴隷制度が終わった理由は人権などという話ではなく単にリターンに合わないからだ。

 一個人を奴隷とする場合、確実に復讐という脅威に晒され続ける。国としても内乱の芽を抱える。そんなものは願い下げだろう。

 奴隷のように働かせるという言葉がある通り、奴隷は必要とされていたが地球ではそのリスクが問題ありすぎたのだ。だがこっちではどうだろうか?

 奴隷は行動を隷属の首輪という魔道具でコントロールされる。犯罪者も奴隷にしてしまえば問題など起こせるはずもない。復讐などのリスクは0だ。

 ならどうなるかはご覧の通りだ。いつかは奴隷を物ではなく人として扱えという声があがるかも知れないが、奴隷という制度自体がなくなることはないだろう。


 そんな取り留めのないことを考えていると一人の奴隷が崩れ落ちた。

 その奴隷は薄いボロ布の下に鞭打ちや暴力の痕がまざまざと残っており、随分と手酷く扱われていたことが分かる。

 理由は明白だ。その娘の頭には耳があった。娘は獣人なのだ。ならこの国でどういう扱いをされるかは自明の理だ。


「てめー、なに座ってんだ! 立て! この糞亜人が!」


 亜人というのは人族以外の種族に対する蔑称だ。この国で蔓延している言葉だろう。

 その娘は鞭で叩かれて泣きながら列に並び直す。

 その娘の顔を見る。鈍い銀色のショートヘアに赤い目。狼の獣人だろうか。ヘレナと同じくらい小さいが他の女が不細工に見えるほどの美少女だった。


「なあ、そこの獣人はいくらなんだ?」

「兄ちゃん物好きだねぇ。もしかしていたぶるのが好きな人? こいつは反抗的だし、肉付きも良くない。不良在庫なんだよ。特別に金貨一枚でどうだ?」

「ちなみに他の娘はどのくらいだ?」

「ここにいるのは売れ残りばかりでね、金貨三枚でいいよ。高い娘だと五枚かな。本店に行けばもっと質のいいのがいるけど、どう?」


 こいつらの目は差別に曇っているらしいな。獣人の娘の可愛さが分からないらしい。


「いや、獣人の娘をくれ。金貨一枚でいいんだよな?」

「ええ、もちろんです。お買い上げありがとうございます。では隷属の首輪の書き換えを行いますのでお待ちください」


 主人が獣人の娘を俺の前に連れてくる。


「おい、慈悲深いご主人様が現れたぞ。返品されないようにしゃんとしろ!」

「……」


 娘は虚ろな目で俺を見てくる。主人は舌打ちすると俺と手を繋ぐように言ってきた。

 こんなおっさんの手を繋ぎたくなかったが、仕方なく繋ぎ、権利移譲の魔法を使ってもらう。


「これで譲渡は完了しました。今掛かってる命令は自殺禁止、暴力禁止、逃走禁止です。ではお楽しみください」


 そういって下衆な笑みを浮かべた店主は客引きに戻った。俺と獣人の娘が残される。

 どうしよう。勢いで買ってしまった。プリマたちはどう思うだろうか。まさか獣人は死ねとまで言わないと思うが……


「あの、ご主人様……」


 獣人の娘が俺を見つめている。そうだな。まずは名前からだ。


「名前を教えてくれるか? 俺はアステルという」

「ルナ……といいます」

「ルナか。いい名前だな」

「ありがとうなの」

「なの?」

「あ、いえ、違います。ありがとうございます」


 なにか無理して敬語を話してるみたいだ。


「俺は気にしないから喋りやすいように話していいぞ」

「本当……ですか?」

「嘘じゃない」

「分かったの」

「それでいい」


 さて、これからどうしようか。とりあえず宿に帰るか。

 そう思っていたらくーと可愛い腹の声が聞こえた。どうやらルナは腹が減っているらしい。

 ルナを連れて店売りの串焼きを二本買う。


「ほら食べろ」

「いいの?」

「いいぞ」


 それを聞くとルナははぐはぐと食べだした。途中からは泣きながら食べている。

 俺は理由を聞かず、ただ食べさせた。


「じゃあ、宿に行こうか」


 食べ終わっても泣いているルナの手を取って宿に向かう。

 奴隷を連れて何か宿に言われないかと思ったが普通にスルーしてくれた。

 宿に着いた俺はまず服を脱ぐように言った。エロいことするためじゃなく、布が汚らしいからだ。

 恥ずかしそうに服を脱いだルナの肌は鞭打ちや暴力の痕でボロボロだった。あの糞店主に殺意が沸いてくる。


「ルナ、今からすることは内緒だぞ」


 そういって聖魔法で傷を直してやる。ルナは自分の傷が直っていくのを最初は不思議がり、次に泣きながら感謝していた。


「よし、これで傷は全部消えたはずだ」

「ご主人様、ありがとうなの」


 ろくに体も洗えなかったのだろう。ルナの体は汚れていた。


「風呂も入ろうか」

「分かったの」


 高級店ならではのシャワー室に行き、シャワーを浴びる。ちなみに水だ。お湯なんて贅沢品は最高級の宿か貴族とかだ。魔力消費が段違いらしい。

 ルナの髪を流すと黒い水が流れる。随分と汚れっぱなしになっていたみたいだ。


「そうだ。ちょうどいい。アレを使おう」


 試験用に買って来たお風呂セット。言い方は悪いがルナで実験しよう。


「?」

「これは髪の薬だ。こっちにおいで」


 水筒のような筒からとろーっとシャンプーを取り出しルナの髪をしゃかしゃかする。


「あわあわなの」

「よーっし、洗い流せ」

「分かったの」


 ぱしゃーと洗い流すとルナの髪が白銀色に輝く。本当はこんな綺麗な髪をしていたんだな。

 次はリンスを使ってやる。ルナの髪が油分を取り戻しつやつやする。

 

「ん? そういや尻尾を洗い忘れてた。今、洗ってやるからなー」

「ご主人様、ルナの尻尾を洗うの?」

「そうだぞー」

「……ご主人様ならいいの。ルナの尻尾をよろしくお願いします」

「ん?」


 なにか大仰だが、まあいっか。と、ルナの尻尾をシャンプーしてリンスする。

 尻尾はくすぐったいのか艶のある声を出していたが、俺は気づかない振りをした。こんな子供に欲情しては駄目だと自分を律していたからだ。

 そういや、ヘレナも似たような体型じゃないかとふと思ってしまったが、すぐに思い直した。


 最後に石鹸でごしごし背中を洗ってやり――流石に前はやらなかった――ルナのお風呂は完了した。


「次はルナが洗うの」

「そうか、じゃあ頼む」


 ルナの背が低いは低いので俺は座ってご奉仕を受けることにした。小さな手でごしごしを頭を洗ってくれると中々気持ち良かった。そういやお風呂プレイは嫁ともしたことがなかった。

 次に背中を洗ってくれることになった。背を向けて待っていると体全体がむにゅっとやわらかな何かに擦られた。


「えーと、ルナ。何してるの?」

「お姉さんにやり方を教わったの」


 それはいけない泡遊びだ。だれがこんな子供に教えたんだ!


「これはルナみたいな子供がやることじゃないな」

「? ルナはもう大人なの」

「えっ?」

「銀狼族のメスは人に比べると小さいかもなの。でも、もうちゃんと子供も産めるの」


 おーう、ずっと子供だと思ってた。だから風呂とか入れてたのに……


「そうか……ルナは大人だったのか……」


 そう思うと急に丹田が熱くなって来た。これはいけません。理性が崩壊寸前です。


「あの、前もやるの」


 そういってルナの手が肩から胸、そしてへそへと妖しく下りてくる。それを俺は止める術なく――


「アステル様、お背中お流ししま――」


 こっちに集中しててヘレナの気配に全く気づかなかった。これはまずい。


「失礼しました」

「待てヘレナ。これには事情があるんだ」

「いいんです。浮気は男の甲斐性といいますし、他の果実を楽しんでみたかったんですよね」


 ヘレナはハイライトの消えた目でそう言い放つ。なにかとてつもない勘違いをしていらっしゃる!


「実は奴隷市場でだな――」

「奴隷ですか。男の人の欲望ですね。でも言ってくだされば私はどんなことでしましたのに。いや、隷属しているのがいいんですよね。今からちょっと奴隷になって来ます」

「まてまて、違うんだ。話を聞いてくれ!」


 どうにかヘレナを説得し、一度部屋に戻ってあったことを話す。

 ちなみにルナの服はなかったので全部ヘレナから借りた。


「えーと結局、アステル様はどうして奴隷を買ったんですか?」

「ありゃ、そういえばどうしてだろう」


 ルナが不当な値段が売られていると知ったら我慢ならなくて買ってしまったのだ。こういうのを衝動買いと言うのだろうか。


「ルナはご主人様に尽くすの。だから捨てないで欲しいの」


 ルナが自分が捨てられると思ったのか必死にアピールしてくる。

 さらふわになったルナの髪を撫でながら優しく諭す。


「大丈夫だよ。ルナはもう俺の物だ。手放す気はないから」

「ご主人様!」


 ルナは感極まったのか抱きついて来る。


「はあ、分かりました。プリマさんも読んで家族会議をしましょう」

「……はい」


 容赦のない裁判が始まった。


「つまり被告人に性的な意思はなかったと」

「はい」

「本当になかったんですか?」

「……可愛い娘だとは思いましたが」

「判決:有罪」

「ちょっと待ってくれプリマ」

「駄目です。待ちません。どうして私たちに断りもなく女の子を連れてくるのですか! 酷い裏切りですよね、ヘレナ!」

「私はアステル様に従うだけです。いきなりと言えばプリマさんもいきなりだったので」

「うっ……」


 プリマが怯んだ。ここだ、勝機は今しかない。


「二人ともすまなかった。許してくれ」


 俺は勝機を見い出し土下座した。

 えっ? 謝るしかないだろ。


「ルナさん、ルナさんはどうなんですか。奴隷から解放してあげるのでアステルさんに従う必要はありませんよ」


 勝手に解放宣言された。まあ、いいけどさ。どうせ解放するつもりだったし。


「ご主人様にはもう尻尾を捧げたの」

「尻尾?」

「銀狼族の掟で一生に一人の伴侶に尻尾を託すの。ご主人様が洗ってくれたの」


 ルナが愛おしげに尻尾を撫でながら言葉を紡ぐ。

 まじで? そんな掟知らなかったよ。異文化コミュニケーションって難しいわぁ。


「ちなみにその掟、破ることは?」

「銀狼族にとって掟を破ることは死ぬことと同義なの。ご主人様に捨てられたら死ぬの」


 そんなに重い掟なのかよ。洗う前に言って欲しかった。


「アステルさんは知ってて洗ったんですか?」

「ああ、ルナのことは責任取るつもりだ」


 俺は嘘を吐いた。だって知らないで洗ったとか言ったらルナが傷つくでしょ。

 現にルナはキラキラした目で俺を見ている。幻想を壊しちゃいけない。


「はあ、分かりました。アステルさんの思うようにしてください。惚れた弱みです。でも次があったら本気で怒りますからね!」

「迷惑をかけるな、プリマ」

「ほんとですよ。じゃあ、ルナさん。ちょっと耳をもふもふしていいですか?」

「尻尾以外ならいいの」

「きゃー、ふわふわで可愛い」

「私にも触らせてください!」


 ルナは一瞬で我が家のマスコットになった。

 我が家に差別意識がなくて良かった……


「ご主人様、お願いがあるの」

「ん?」

「えっちする前に両親の許可が欲しいの。でもご主人様が駄目っていうなら諦めるの」

「それは掟か?」

「掟じゃないの。ルナの我儘」


 ルナが真剣な表情でそう言う。我儘なら叶えてやりたい。


「そうか……両親のいる場所は分かってるのか?」

「レグルス王国の山の中なの。行けば分かるの」

「獣人の国か。よし行こうか」

「いいの?」


 ルナの耳がぴんと立ち、尻尾が揺れる。反応が直に分かるのは可愛いな。


「もちろんだ。獣人の国にも行ってみたいしな。案内を頼む」

「任されたの!」


 パークス村に帰るのは遅くなるが、ルナの里帰りと行きましょうか。 

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