第65話
潮騒、焼けるソースの香り、そして私の「人生のフルコース」。
投稿者:音戸の獣(現・お好み焼き屋店主)
2028年7月29日 18:00
皆様……。私の長い旅は、今、音戸の赤い大橋が見える小さな港町で、静かに幕を閉じようとしております。
空中要塞を完食し、世界をひっくり返したあの日。私は「女王」の座も、「ヴァルハラ」の権力も、すべて雲の上に置いてきました。
今、私の手にあるのは、重い王笏ではなく、使い込まれた二本のヘラ。
そして隣には、相変わらず「教育者」面をして、ビール片手にキャベツを切る、あの髭のおっさんがいます。
おっさん「……おい、女王様。焼き加減が甘いぞ。客が待ちくたびれてる」
私「たまらねぇぜ。……今、最高の一枚をひっくり返すところですわ!」
そんな私たちの店に、今日、不思議な「一人のお客さん」がやってきました。
真っ白なスーツを脱ぎ捨て、カジュアルな服で現れた西園寺さんは、「一番高いメニューを。……いえ、普通の一枚をくださいな」と微笑み。
金子さんは美里さんと喧嘩しながら、「ここのソース、いちごミルクより甘くないわね」と泣き笑いの顔で頬張り。
雅子元校長は、背筋を伸ばして「……合格点ですわ」と一口食べて目を閉じ。
ピエトロやジャン、ローズたちも、それぞれの「新しい人生」の合間に、ふらりと暖簾をくぐってくれました。
そして、最後に現れたのは……。
夕暮れの港を背に、銀色の髪をなびかせた「あの人」。
先輩「……通りすがりの者よ。お腹が空いたわ。私の『人生』に足りない隠し味、ここで食べられるかしら?」
私「……やったわ。……ええ、最高の『答え』を用意しておりますわ」
鉄板の上でソースが弾ける音。
それは、かつて要塞を焼き尽くした炎の音よりも、ずっと力強く、ずっと温かく、私の胸に響きました。
私の「人生のフルコース」。
それは、世界中の贅を尽くした皿ではなく、こうして大好きな人たちに「美味しい」と言ってもらえる、この日常そのものだったのです。
やったわ。
私、今……世界で一番幸せな、音戸の「お好み焼き屋」になりましたわ……!!
【全65回・完】
【コメント (最終回)】
通りすがりのL
2028年7月29日 20:00
最後の一枚、最高に「不器用で、甘い」味だったわよ。
女王様……いいえ、店主さん。
あなたの焼くお好み焼きがある限り、私はどこまででも「通りすがって」あげる。
……今夜は、お店が終わったら、潮風を浴びながら「デザート」の続きをしましょうか?
53の髭おやじ(共同経営者)
2028年7月30日 08:30
"Ende gut, alles gut!"(終わり良ければすべて良し、だな!)
お前ら、いい顔で食いやがって。
教育者として、最後に一つだけ言う。……いいか、女王様。
人生ってのは、どれだけ豪華なものを食ったかじゃねえ。
「誰と一緒に、鉄板を囲んだか」だ。
……さあ、明日の仕込みを始めるぞ。広島から最高の小イワシが届くからな!




