35 ショート
ラルside
イオの助言通りにぐりぐりと眉間の皺を伸ばしてみるが、効果はあるだろうか。指を離してイオの反応を見る。
「だいぶいいんじゃない?」
「そうか。」
「それを維持しなさいよ?」
「……分かった。」
眉間に皺を寄せずに、皺を寄せずに……
「うん、それだけでも変わるわねー。普段よりほんの少しだけ話しかけやすいかも。」
「そうか。後は何をすれば?」
私一人では他に何をすればいいか皆目見当もつかないからな。イオの答えを黙って待つ。
「そうねぇ……あ、話し掛けられたら『ああ……』とか『いや……』とか『別に……』とかで話を終わらせないでもう一言は付け加えること!」
ビシッと人差し指を立ててそう断言するイオ。
「もう一言……?」
もう一言とは何ぞ。
「そう。一言で話を終わらせないで、話を繋げる努力をするべし。」
「話を繋げる……」
「まあ、今のように『会話する』のを意識しなさいってこと。」
「今のように……」
……ああ駄目だ、ぷすぷすと情報過多で頭がショートしているような気がする。人と関わることがこんなにも難しいなど……聞いていない。
「あらあら、大丈夫~? また眉間に皺が寄ってるわよ?」
「うーむ……?」
会話、会話、会話……
「まあ、最初のうちは婚約者ちゃんとの会話で練習すればいいんじゃない?」
「しかしそれだと本末転倒では……」
マリーに頼ってもらうための相談だったのに……。
「何事も練習が必要よ。で、練習するにはラルちゃんが話しやすい相手であった方がいいし、話しやすい相手って言うのは婚約者ちゃんだろうし。きっとあの婚約者ちゃんは笑顔で快諾してくれるわよ。」
「そうだろうか……」
まあ、イオが言うならそうなのかもしれない。言うことを素直に聞いておこう。
「そうよ。それかいっそのこと全て話しちゃえば? 『マリーに頼ってもらえるように人嫌いを直そうと思う。だから練習に付き合って欲しい』って。」
イオのその発言にカッと顔が熱くなる。
「そそそそんなこと出来るか! マリーのための行動なのに、マリーに言ってしまったら格好つかないだろう!」
ああ、ぐるぐると頭が回るような気分だ。思考がまとまらない。
「へぇ……ラルちゃん、婚約者ちゃんのこと本当に大切なのね。言動の節々から『大好き~』ってのが伝わるわ。」
「……そうなのか?」
「そうなのかって……あんたねぇ……」
はぁー、と溜息をつかれた。……一体なんだと言うんだ? 人嫌いの私にはよく分からん。




