23 豊永 ひまり(2)
私は表情を顔に出すのが苦手な部類に入る人間だ。いつも笑顔を浮かべているが、それを取れば表情が無い顔になる。ただ、それを皆が知らないだけ。皆に勘付かれないように徹底していたからこその結果だ。
豊永 ひまりは小さかった頃、常に真顔であることを親は許してくれなかった。何故笑えないの、と問い詰められたことは何度もあった。
陽だまりであることを強要されていたのだ。
私の中ではもはや一種の呪いのようなものになっている。もちろん、マリアルモンテとなった今も。
笑わないと、笑わないと、笑わないと……と。
だからこそ周りを観察して陽だまりでいる準備と実行をしたわけで。
「……。」
しかし部屋に一人でいる時だけは素の自分を出せる。本当の私は自分だけが知っていればいい。
「もう……誰とも関わらないで生きていけないかな……」
笑うのに疲れ始めた時、そんなことを毎日笑顔の下で考えていた。しかしそんなこと現実的ではない。だから別の解決策を見つけなければならない。しかし……
「もう、疲れたな……」
常に陽だまりであれ、だなんて素の私には無理難題だ。しかし、私はそうでないと生きている価値がないと親から暗に言われている。だからどうにもならないのだ。
陽だまりでいないと。
「陽だまり、今日も癒しだねー。」
「そうですか? それは良かったです。」
この子は桑さん。高校に入ってからの友達で、学校ではだいたいの時間を桑さんと共にいる。この子もちゃんと私のことを陽だまりと呼ぶ。そのことにどれだけ安堵したことか。
そして今日も今日とて笑顔を貼り付けて桑さんと話す。
「ふふ、あ、そうだ、聞いてよ陽だまり! この前話したゲームのことなんだけどさあ!」
「ああ、あの『あなたのサテライト』っていう乙女ゲームのことですよね?」
「そうそう! あれ、攻略対象が五人いるんだけど、月光様ルートしかやってないんだー! ゲームと分かっていても他の攻略対象に愛を呟くなんて出来ないよぉー。」
またゲーム話を語り始めました。こうなったら後十分くらいは続きますね。まあいいですけど。聞いている分には楽しいので。
「月光様ってこんな姿なんだけど、ちょー格好良くない?」
そう言って見せられたイラストに写っていたのは、銀色に輝いた髪を後ろで一つに結び、丸眼鏡を掛けている人物のもので。
さらににこりとも笑わず真顔で写っているその絵を見て、私と通ずるものがあるのではないかと思って気になった。ゲームの中の人物だとは分かっていたが、それでも。
表情を出せないことをそのまま前面に出すか、それを笑顔で隠すかの違いであり、基本的には同じ。
「あ、そうそう! あたしは同担拒否だから!」
「そう、ですか。」
なら見せないで欲しかったな。月光様……ムーンテラルとか言う名前だったかな。先程ちらと見えたその絵を頭で思い出す。
気になったのは気のせいだ、と思い込ませながら。そうでないとこの子に嫌われてしまうから。
「それでねー……」
桑さんの話はまだまだ続く……




