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鳳凰の宿り樹 〜千年修行で妖狐になった狐は自由気ままな神鳥を守りたい〜  作者: カノウマキ


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3/3

悪夢

私はある日家族を失った。


急用で遣いに出ている合間の出来事だった。


私が戻った時家は激しく燃えていて、おそらく賊に立ち向かっただろう父と母は武器を手に血の海に沈んででいる。事件の全貌は族長だった父からその権力を手にいれたいと画策した者達によって謀殺されたのだった。


どこにでもよくある話だろう。でも私にはあまりに衝撃的で信じられない、信じたくない現実だった。


私が何も知らずに家路に着くと、遠くから焦げ臭い匂い、熱風が襲って来た。あの先は自分の邸宅の方面だと思うと同時に嫌な予感がして胸騒ぎを何とか抑えて駆けて行く。時代に聞こえる争うような声と剣撃。


「……っ!?」


屋敷が燃えている。家に仕えていた者が其処ここに斃れている。私は目を見開き震えた。

一体何が起きている?頭が混乱して息が上手く出来ない。その時だった。


「……ェン!!逃げろ!!」


はっと声のした方を見る。そこには片手を斬り落とされ、それでも剣を手に必死に戦うたった一人の兄の姿があった。複数人を相手にかなり劣勢だ。なのに私の事を気にかけ逃がそうとしている姿を放っておける訳がない。今も失った左手側から攻撃を仕掛ける者がいる。


「兄さん!!危な…」


自分の剣を抜いて兄を守ろうとした瞬間、後ろから刺された。腹の辺りから切先がのぞいている。一瞬何が起きたか分からず呆然と血が流れるのを見て、一気に福袋に激痛が走り崩れ落ちた。


「……はあっ、ぐう…ッ」


兄の叫びが聞こえる。危ない、気が逸れて背中がガラ空きになっている。


「兄…」


ザシュッ!という音と共に兄の顔が見えなくなった。

賊に斬られた首が落ちて転がる。首を失い鮮血と共に倒れ込む身体。私は目の前の光景に堪らず絶叫した。


「いやああああああああああああああ!!!!」





洞窟の中。

叫び声を上げながら目を開け小柄な身体がガバッと身を起こした。鼓動は早打ち、酷く息が乱れている。


「……はあっ、はあ…っ」


必死に息を整えながら咄嗟に自分の腹部に目を落とす。


「…………」


何てことはない。血に染まってもなければ痛くもない。

はーっと深く安堵のため息をついて項垂れると、冷や汗をかいていた事に気づいて額を袖で拭った。



洞窟の中で眠っていた彼女は細くて小柄、長い銀髪を後ろで束ねている。少し中性的な雰囲気で少年のような身体に纏う白い衣、青紫の帯の男装がよく似合っている。特に三白眼気味の大きめな紫紺の瞳が印象的である。


「…(フォン)?」


彼女は近くに相棒が寝転がっていたはずの場所がもぬけの殻になっているのに気づいて名を呼んだ。


「食べ物でも調達してるのかな…?」


洞窟から出て伸びをすると森の中を歩いていく。

キョロキョロと左右を見ながら姿が見えないか探す。


「おーい、フォン?」


返事は無い。替わりに果実の甘い匂いに鼻がクン、と反応する。彼女は進行方向を右側に変え更に進みつつ、ついでにまた呼びかけた。


「逆張り奔放無神経鳥ぃー?いるー?」


相棒の性格なのだろうか。もはや悪口のような呼びかけをしながら彼女は桃の木を見つけて歩み寄ると、不意に背後から声を掛けられた。


「…オイ、阿樹(アシュ)。誰が逆張り奔放無神経鳥だって?」


口元は笑っているのに目は笑っていない。口元もピクピクと引き攣っている。そこに立っていたのは真紅の髪と瞳の端正な顔立ちの鳳凰族、天界出身の青年、(フォン)


「これでもお前の恩人なんだからな。ちょっとは敬え毒舌狐ッ」


手には焼いた魚を刺した棒を二つ持っている。魚獲りと調理まで済ませて洞窟に戻るところだったようだ。阿樹(アシュ)と呼ばれた彼女は桃を二つもぎ取ると彼に向かって言った。


「もちろん感謝してる。でも千年以上経ってるのにまだ言うかな。しかも自分から。カッコわる…」


阿樹(アシュ)は憎まれ口を叩いた。(フォン)が半分死んだ魚のような目でつぶやく。


「お前…急所を確実についてくるよな。ああ、俺に良心があったばかりにこんな可愛くない狐を助けてしまったああ…」


そんな(フォン)の芝居掛かった言葉に半ば呆れたように阿樹(アシュ)が返す。


「いやどうせ興味半分、良心半分だろ」


ピクリと(フォン)の身体が動いた。どうやら否定しきれないらしい。日当たりの良い場所を探し歩き出した彼女の後を追いつつ口を開く。


「いやだってさ?雪と一緒に狐が降って来たら好奇心湧くだろ?しかも手負い。良心が放っておかないって」


背中で「ハイハイ」と返事しながら阿樹(アシュ)は空を見上げた。




そう、彼が言うにはどうやら自分は空から降って来たらしい。どうやら、というのは私にはそれ以前の記憶が一切無いからだった。


















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