今、ハチミツはどうでもいいわーっ!!
正気に戻ったアンクルを囲み皆で話す。
「ところでお嬢ちゃん達は二人でここまでやってきたのか?」
「私とヒマリはカルネっていう人と一緒に来たの。いつも魔女さんとの連絡役をしてる人みたいなんだけど、お爺さん達も知ってる?」
「ほう、カルネと一緒じゃったのか? もちろん知っておるぞい。で、カルネはどうしたんじゃ?」
「それが……暴れてる熊さんに吊橋の下に投げ落とされてしまったの」
「何と! それは大変なことになっとるようじゃて」
この説明にアンクルは下を向き、低い鳴き声でうなだれる。
「ググーッ……」
「ひょっひょっ。アンクル、落ち込むのも無理はないが仕方ないんじゃて。さっきの様子では身体の制御など効かんかったじゃろて? 今回はお主も被害者じゃて」
続いてヒマリが尋ねる。
「お爺ちゃん達はカルネを知ってるんだね?」
「うむ、よく知っておるぞい。ヤツも森と動物達を大切にする優しい若者じゃ。しかしカルネのことも心配じゃの。あの崖から落ちたとなれば大怪我しとるかもしれんの」
「そうだよね……ボボがうまく助けてくれてたらいいけど、あんなに高いところから落ちちゃったもんね」
「うん? 小さいお嬢ちゃん、ボボとは何じゃて?」
「お婆ちゃん、ボボはね、ヒマリが描いたミノムシの妖精さん! 空を飛べるから落ちていくカルネを助けてくれるようにお願いしたの!」
「ひょっひょっ。それは良かったて。少しでも助けがあったのならカルネも無事かもしれんのじゃて。どれ、ちょっとあの辺の鳥達に聞いてみるんじゃて」
するとプリムは落ちていた木の葉で草笛を吹きながら、左手の人差し指を空に向けてまっすぐ伸ばした。
……ピピィー♪
「ちゅんちゅん」
心地よい草笛の音に数匹の鳥達が集まる。プリムの手元に集まった鳥達は、鳴き声を交わしながらプリムとやりとりをする。
「ちゅん、ちゅん」
「ほいほい」
「ちゅちゅん、ちゅちゅん」
「ふむふむ」
「お爺ちゃん? あれって、お婆ちゃんは鳥さん達と話してるの?」
「そうじゃよ、今、鳥達にカルネを見ておらんか? 話を聞いて状況を確認しておるんじゃ」
「お婆ちゃん、凄いねー。ヒマリも鳥さんとお話したいなぁー」
「ほっほっ。儂らは森の妖精じゃからの。そうじゃの……小さいお嬢ちゃんも四百年くらい生きられたら鳥達の声も聞けるようになるかもしれんの」
「ええぇー? ヒマリ、そんなに長生きできないよー」
「ほっほっ。さて婆さんや、カルネの様子はどうじゃ?」
ポルトミーヌの問いにプリムの表情が曇る。
「爺さんや、大変じゃて」
「うん? どうした婆さん? そんなに深刻な顔をして……」
「ま、まさかっ!? カルネに何かあったんじゃないでしょうねっ!?」
アイカは不安にかられ大声を出す。
「爺さん、落ち着いて聞くんじゃて。ここから北に少し行った所に、ミツバチの巣がたくさんあるそうじゃ。そこに行けばハチミツ飴の材料がたくさん採れるよ……と言っておる!」
「婆さん、それは本当か? ほっほっ。それはいい情報じゃ!」
「グオーッ!」
生活の役に立つ情報にテンションを上げるプリムとポルトミーヌ、そしてそれに便乗してアンクルも両手をあげて喜んでいる。
「……」
しかし一連のやり取りにアイカはプルプルと震え出す。
「ちょっとそれ! 今、ハチミツはどうでもいいわーっ! で、そこの熊! アンタは喜ぶ前にもうちょっと反省してなさい! アンタが楽しそうだと……何かこう、釈然としないのよ!」
「ググゥー」
アイカの気迫にアンクルが萎縮する。
「これこれ、大きいお嬢ちゃん。アンクルに無茶を言ってはいかんて。アンクルも自分の意思で暴れておったわけではないのじゃて」
「それはそうかもしれないけど……てゆか、そんなことより! カルネはどうなったのよ!? 今はハチミツよりカルネのことを聞きなさいよ!!」
「ひょっひょっ。それにしても、大きいお嬢ちゃんはからかうと面白いんじゃて。今のは最後に鳥達が教えてくれた特ダネじゃて」
「えっ!? じゃあ、カルネのことも教えてくれての?」
「勿論じゃて。カルネは無事じゃて。崖の下に落ちても怪我はなかったようじゃて。見たことのない黒い紐のようなものがカルネに巻き付いていて、落下の勢いを抑えてくれていたようじゃて。今、カルネは森の入口付近におるそうじゃて」
「わぁー。良かったね、ママ。ボボがカルネを助けてくれたみたい!」
「そうね、良かったわ。ヒマリ、あなたのおかげよ。ありがとう!」
「ほっほっ。小さいお嬢ちゃんはカルネの命の恩人じゃ。儂らからも礼を言わせてもらうぞい」
「えへへっ」
ポルトミーヌはヒマリの頭を撫で、ヒマリも笑顔で応える。
「さて、カルネの無事も確認できたところで……お嬢ちゃん達、これからどうするんじゃて?」
「えっと……そうね。私たちは魔女さんにお願いして時空ゲートから元の世界に帰してもらいたいの。そのために魔女さんのところに行きたいわ」
「なるほどの。来訪者は魔女っ子の力で時空ゲートから元の世界に帰るのが通例じゃからな。しかし、今の魔女っ子がすんなり話を聞いてくれるかどうか……」
「ええ、それは王様も言ってたわ。でもヒマリの特別な力を見せたら魔女さんも興味を示して話を聞いてくれるかもしれないって。だから私とヒマリはここまで来たの」
「ふむ。少し前ならそうだったかもしれんが、今はちと厳しいかもしれんぞい。何せ側にいたアンクルですら正気を失ってしまう程じゃ」
「そっか……そうよね。でも元の世界に戻りたいし。ねえお爺さん、何かいい方法はない?」
「そう言われてものう……儂らも魔女っ子に会ってみんことには現状も打開策も分からん」
「なら一緒に行きましょうよ。魔女さんの知り合いがいてくれたら何かと心強いし」
「うん、ヒマリもお爺ちゃん達と一緒に行きたーい」
「ひょっひょっ。爺さんや、決まりじゃて。来訪者のご案内、カルネに代わってしばらくは私らでするんじゃて」
「ところでカルネのことはどうするの? ここで待ってる……というのもいいかとは思うけど?」
「カルネのことじゃ。きっと今頃は慌ててこちらに向かっておるじゃろ。魔女っ子の所に向かえばきっとそのうち合流できると思うぞい」
「そう……なら決まりね。魔女さんのところに一緒に行きましょ? お爺さん、お婆さん、よろしくお願いするわ」
「お爺ちゃん、お婆ちゃん、一緒に来てくれるんだね! ありがとう!」
「ふむ、では出発じゃ。アンクルよ、お主は寝床に帰っておれ。しばらくはゆっくり休んでおるんじゃぞ」
「ググーッ」
こうして話はまとまり、アイカとヒマリ、ポルトミーヌとプリムは一緒に魔女パンソーの元へ向かうことになった。




