第18話:【法廷の悪意、民衆の熱狂】
第18話:【法廷の悪意、民衆の熱狂】
胸の奥を太い杭で穿たれたような激痛が走り、手足の感覚が麻痺していった。パリ高等法院の法廷の外には、冷たい秋雨に打たれながら群がる群衆の生臭い汗と安酒の臭いが立ち込め、敷石の上には見物人たちが捨てた林檎の芯や破れたパンフレットの屑が泥水にまみれて散乱していた。法服貴族たちが居並ぶ証言台に立ったジャンヌ・ド・ヴァロアは、わざと粗末な黒い毛織りのショールをまとい、薄汚れたハンカチで乾いた目元を押さえながら、王妃が夜ごとにトリアノンの暗がりで男たちと逢瀬を重ね、その口封じと贅沢のために首飾りを騙し取らせたのだと、あらかじめ用意していた嘘を涙声で並べ立てていた。裁判の様子を書き留めていた司法官のピエールは、羽ペンの先をインク壺の底に強く押し当て、耳朶を打つ出鱈目な証言とそれに歓声を上げる傍聴席の熱狂に恐れおののいた。
「静粛に! ここは神聖なる法廷であるぞ! ……おい見ろ、外の広場の民衆がジャンヌの言葉を一言漏らさず書き取って、街中で号外を配り始めているぞ!」
日頃の生活苦で鬱屈した魂を慰める格好の生贄を見つけ出した残忍な歓喜が、群衆の叫びとなって地響きのように宮廷の窓を揺るがした。法廷を取り囲む民衆は、長雨で傷んだ麦の不作による飢えと重税への怒りをすべて王妃への罵声へと変換し、誰かが掲げた「赤字夫人を断頭台へ」という下品な落書きの旗の下で足を踏み鳴らしていた。屋台の焼き栗売りから漂う焦げ臭い煙と、馬糞の混ざった泥飛沫が飛び交う中、日雇い人足のジャンは、買い求めたばかりの濡れた中傷小冊子を頭上に掲げて仲間たちと杯を合わせた。日頃の鬱憤を晴らすためなら真実などどうでもよく、ただ贅沢なオーストリア女が落ちぶれる様を肴にして騒ぎ立てたいだけの浅ましい興奮が、貧民街の広場を熱病のように焼き尽くしていた。ジャンは欠けた歯を見せて下品に笑い、仲間の肩を小突いた。
「聞いたかよ! あの傲慢な王妃が、夜の庭で宝石と引き換えに男を侍らせてたってよ! 俺たちが硬い黒パンを水で流し込んでる間に、あの女は首飾りをバラバラにして愛人に配ってたんだ! ジャンヌ夫人の言う通りだ、あの泥棒猫を引きずり下ろせ!」
全身の血が凍りついたように冷たくなり、喉から言葉が消え失せていた。ヴェルサイユ宮殿の王妃の寝室の丸テーブルの上には、昼食の残りである冷めきったポトフが油の白い膜を張ったまま手つかずに置かれており、窓辺のガラス瓶に挿されたリンドウの紫色の花びらは、すっかり縮れて埃をかぶっていた。宮廷の門を突破して投げ込まれた数知れぬ悪意の投書には、汚物のような言葉でアントワネットを呪う文句がびっしりと並んでおり、その紙片の端には濡れた泥がこびりついていた。生成りの部屋着を着たアントワネットは、震える右手の人差し指で右の耳たぶを強くつまむ癖を幾度も繰り返しながら、窓の外の遠いパリの空をただぼんやりと見つめた。
「……どうして……どうして誰も、私の言葉を聞いてくださらないの……。私は一度も、あの女に会ったことすらないのに……街の人たちは、私をそんなにも憎んでいたのね……」
無力な自分への苛立ちと妻の痛々しい姿への苦しみが、胸の真ん中を黒い炎で焼き尽くしていた。寝室の片隅には、昨夜ルイが作業机から持ち込んできた小さな鉄のやすりと真鍮の鍵の部品が転がっており、床の絨毯には子どもたちが散らかした干し草の屑と、アントワネットが落とした銀の指貫が置き去りにされていた。自らが正義を信じて命じた公開裁判が、かえって反王室派の貴族や憎悪に狂う大衆に王妃を公開処刑するための演壇を与えてしまったのだという自らの致命的な判断ミスを思い知るたび、ルイ十六世は爪が手のひらに食い込むほど拳を固く握りしめた。ルイは静かに歩み寄り、冷え切った妻の肩を後ろから包み込むように抱き寄せた。
「すまない、アントワネット……。余が愚かだった。裁判で正しさを明かせると過信し、お前をこんな残酷な泥沼に引きずり込んでしまった……余の浅はかな判断が、お前を傷つけたんだ」
夫の上着から漂う懐かしい鉄粉と汗の匂いに触れた瞬間、張り詰めていた心の堤防が決壊した。部屋の隅に置かれた置き時計がカチカチと乾いた音で夜の十時を告げ、開け放たれた暖炉の火がパチリと爆ぜて、炭の灰を床の敷物へと散らした。かつて婚姻から七年ものあいだ互いに言葉も交わせず、冷たい寝所の端と端で孤独に震えていたあの日々の記憶が蘇り、しかし今こうして自分を抱きしめてくれている夫の腕の温もりが、嵐の海の中で唯一の錨のように思えた。アントワネットはルイの燕尾服の胸元に顔を埋め、涙で濡れた頬を擦り寄せながらかすれた声を絞り出した。
「いいえ……いいえ、あなた。あなたが悪いのではありませんわ。……ただ、恐ろしいのです。あの子たちが大きくなった時、母親が泥棒だと後ろ指を指されるのではないかと思うと……私、息をすることすら苦しくて……」
守るべき家族の体温を腕の中に確かめた時、胸の底から静かで揺るぎない覚悟が湧き上がってきた。寝室の窓ガラスを叩く雨脚は次第に弱まり、卓上の冷えたポトフの脇では、長男が昼間に残していった木彫りの小さな小鳥が、親鳥の羽の下に身を寄せるように置かれていた。かつて七年の苦悩を乗り越えてようやく夫婦となり、親となった二人が、今さら世間の根拠のない悪意ごときに引き裂かれてたまるかという決意が、ルイの全身を芯から温め直していった。ルイは右の耳たぶを親指でぎゅっとつまみ、妻の背中を大きな掌で優しく叩いた。
「大丈夫だ、アントワネット。世間がどれほど嘘に酔い、余たちを罵倒しようとも、余がお前を信じている。あの子たちにも、お前が誰よりも気高く優しい母であると余が教え続ける。……かつて七年間の暗闇を二人で耐え抜いたのだ、この嵐も、手を取り合って耐え抜こう。余はお前を決して見捨てはしない」




