マイルーム公開
「せっかくだしリーゼの部屋も見せてよ。」
一通りフィリアの部屋を見せてもらった後に、フィリアがそんな提案をした。私の部屋はフィリアの部屋とは違って特に面白いものはないんだけど。
「うん、それは良いけど私の部屋を見てもあんまり面白くないと思うよ?」
「そんなの見てみないと分からないじゃん。それにボクの部屋は見せたんだからリーゼの部屋も見ないと公平性を欠くからね。」
そんな訳で二人で私の部屋へと場所を移した。とは言っても隣の部屋だからほんの一瞬で移動は終わる。
「お邪魔しまーす。どれどれリーゼの部屋はどんな……」
意気揚々と入室したフィリアが部屋を目にすると、ゆっくりと動きを停止させた。風船の様に声が萎んでいく。
「確認なんだけどリーゼは引っ越し終わったんだよね?」
「うん、終わってるけどそれがどうしたの?」
さっき終わったって言ったんだけど、どうしたのかな?
「あーごめん、そうだよね。いやーあまりにも贅沢に空間を使っているからボクの勘違いかと思ってさ。」
「贅沢だなんて、私は持ち物が少ないだけだよ。」
確かにフィリアの部屋と比べたら空白になっているスペースは多いけど。
そしてフィリアはゆっくりと深呼吸をしてから口を開いた。
「いや少ないとかいうレベルじゃなくない?!だってほぼ最初から変わってないというか、むしろ少ないっていうけどリーゼの私物どこにあるの?」
言われてみれば確かに言わなければ分からないかもしれない。本当に少なかったのですぐに閉まってしまったのだ。
「えーとね、ココに私服が少しだけあるよ。」
そう言ってクローゼットを開く。そこには制服ではない服が……二着程。
「これだけ?」
「これだけ。」
瞬きもせずに絶句するフィリア。
「これでどうやって暮らすの……?」
そして思わずといった具合に口から溢れる言葉。
「リーゼ、取り敢えず今度服買いに行こうか。」
「うーん、でも今まで何とかなってきたし大丈夫だよ?それに懐事情も寂しいし。」
私の家は食べるものには苦労していなかったけど、だからといって金銭的に余裕があるわけではなかった。
「取り敢えずボクが出してあげるよ、後はここバイトおっけーだから一緒に探そう。」
ちょっとくたびれた表情でフィリアは告げる。なお、リーゼがあまりにも無欲故にしばらくは一向に私物が増える気配が無かったため、リーゼの部屋に度々フィリアが勝手に家具などを増やしていくことになるのだった。
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翌日、制服に着替えて食堂で朝食を食べていると、フィリアがやってきた。
「おはよう、フィリア。」
「おはよー。」
挨拶を交わし、隣に座って一緒にご飯を食べる。フィリアは少し朝が弱いらしく、まだ眠そうな目を擦りながらゆっくりと朝食を口に運んでいる。しばらくすると、フィリアは何かに気づいた様に少しだけ驚いた表情を浮かべた。
「あれ、リーゼその銀十字って……」
私の胸ポケットには昨日ティフォエウス様から貰った生徒会室に自由に出入りできる銀十字が付けられている。昨日貰って持っていたのだけど、結構小さいから着けずに持っているとなくしてしまいそうだし、着けておいた。ティフォエウス様も身につけておいて欲しいと言っていたから、しまい込んでおくのも失礼だろうしね。
「昨日ティフォエウス様からもらったの。なんかこれをつけてれば生徒会室に自由に出入りできるらしくて。」
「あーまあそれはそうだろうけど……まあいっか。」
それを聞いたフィリアは何かを言いたげな雰囲気を出したが、結局続きは言わずに食事に戻ってしまった。
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校舎に向かい、張り出されていた各々のクラスの教室に向かう。クラス分けは、ある程度家柄や出身国の影響を受けるらしいけど本当の所は分からない。
そしてやはりと言うべきか、私とフィリアは同じクラスだった。
「昨日は入学式だけだったし、今日からが本当の学園生活スタートだよね。どんな人達がいるのかな、ちょっと緊張してきたかも。」
隣を歩くフィリアに話しかけると、フィリアは少し悩んでから答えた。
「うーん、まあざっと見た感じ身分的には上から下まで満遍なくいる感じだったね、たぶんナイトヴェール家の派閥で固められている感じだし、あんまり面倒くさい人は居ないんじゃない?」
「ナイトヴェール家ってことはイシス様も一緒なんだ、嬉しいな。あわよくばサインとか貰えちゃったりして!」
クラス分けの表から自分の名前を見つけるのに精一杯で、クラスメイトの名前をほとんど見ていなかったけど、イシス様と一緒なんて新生活早々に吉報だ。
勿論失礼なことは出来ないけど、ちょっとくらい同じクラスになれた役得を期待したってバチは当たらないだろう。
「そうだね、ナイトヴェール家の令嬢は身分問わず柔らかい対応をするから頼めば貰えるんじゃない?あ、そうそうサインと言えば、この前とある伯爵家に忍び込んだ時に裏取引の現場を目撃してね、そこで…」
「やめて、それは嬉しいけど、その聞くだけで文字通り寿命が縮みそうな話を白昼堂々聞かせないで。」
嬉々として貴族の裏事情を話すフィリアから目を背けながら教室に向かうのだった。
フィリア「いやまさかあそこまで素寒貧な部屋だとは思わなかったよ…入る部屋間違えたのかと思った。」




