念願のマイルーム
その後も大浴場やレストルームなど色々な施設を案内された。どの施設も見たことないくらい豪華で、これからここで暮らすと思うと楽しみで仕方がない。
そして最後は待ちに待った自分たちの部屋、念願のマイルームだ。
驚くべき事にこの学園では一人一人に個室が与えられる。自分だけの部屋なんて入学前からずっと楽しみで仕方なかった。
一人ずつ鍵を貰って、今日は解散となった。
部屋番号は入学式の席順と対応しているのか、私が一番奥の角部屋で隣はフィリアだ。接しやすいフィリアが隣で安心した気持ちが半分、残り半分は何かしらまたトラブルに巻き込まれそうで心配が半分。
部屋の中は最低限の家具は既に置いてあったので、自身の荷物を片付けたら引っ越し完了。
自分の荷物と言っても私は殆ど私物が無いからすぐに終わった。でもこの学園の寮なら手ぶらで来てもある程度暮らしていけるくらい充実しているから心配無し。
引っ張っ作業も終わってしまって特にすることが無いので、先程紹介されたレストルームに来てみた。ここには軽食と飲み物が常備されているから、暇つぶしには十分だ。
本当は信じられない沢山の本が保管されていて、それが読み放題という天国みたいな場所、図書館にもいきたかったんだけど今は怪盗騒ぎで寮から出られないので仕方ない。
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パクパクと茶菓子を食べながらまったりとした時間を過ごしていると、レストルームにフィリアがやってきた。向かいのソファに座り話しかけてくる。
「おつかれ〜、リーゼは引っ越し終わったの?」
「うん、私は殆ど持ってきた物も無いからすぐだったよ。」
そう言いながらフィリアも一緒に茶菓子を摘む。
モグモグと茶菓子を食べるフィリアはその小柄な身体も相まって、なんだか小動物みたいで可愛かった。
「フィリアは結構持ち込んだ物が多かったの?何となく身軽なイメージがあったんだけど。」
別に私と同じ貧乏には見えないけど、身軽というかフットワークが軽いというか最低限の荷物しか持ってこないみたいなイメージがある。
「身軽なのは確かにそうだけど持ち込んだものもそれなりにあるね。気になるならボクの部屋見に来る?」
普段は持ち歩かないけど持ち物自体は多いってことかな。それはそうと是非部屋は見てみたい。ほかの人の部屋を見るってちょっとワクワクしちゃう。
「え、いいの?是非見てみたいけど。」
「ホントは秘密なんだけどリーゼは怪盗仲間だから特別だよ。」
見せてくれるのは嬉しいけど、いつの間にか身に覚えのない仲間にされていることに関しては異議申し立てたい。
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「お客さん一号ごあんなーい。」
フィリアが扉を開けるとそこには暗めの色で統一された空間が広がっていた。所々に銀色の飾りが用いられていてそれが良いアクセントになっている。
「凄い!やり方次第でこんなに部屋の雰囲気が変わるんだね。暗めの雰囲気も相まって夜の世界みたいでキレイ。」
「気に入ってくれたならよかったよ、実はもっと夜っぽくできるんだよね、ホラ。」
そう言ってフィリアは壁をスライドさせると…スライドさせると?!
え、なんか壁の一部が扉みたいに開いたんですけど?
「ちょ、ちょっと何それ?何で壁が開いたの?もしかして私の部屋にもあるの?そのスペース。」
そこに収納されていた物を弄りだしたフィリアに聞くと首を傾げて答えた。
「いや、これはボクが作っただけだからリーゼの部屋にはないと思うよ。……あれ?これどうやって動かすんだっけな。」
作ったって…まだ寮のルール全部は読んでないけど部屋に隠し扉みたいなの作っていいのかな。
いや例え良くても今日来たばっかの部屋にこの短時間で隠し扉は作れない気がするけど。
「作ったって言うけどその、いいの?ルール的に。」
「寮のルールは比較的緩いけど流石に部屋の改造はダメだと思うなー、まあでもバレなきゃ大丈夫だよ……う〜んココをこうして、こうかな?」
じゃあなんで作ったの?そしてどんどん周りに言えない秘密を勝手に私に共有しないで欲しい。
あ、もしかして怪盗関連の物を隠すために仕方なく作ったのかな?いやまあそれでもアレだけど。
「因みに作った理由はテンションが上がるからだね!隠し扉なんてロマンがあるでしょ?……これでよし。」
めっちゃしょうもない理由だった!
ロマン?え、それだけ?それだけで勝手に寮に隠し扉作っちゃったの?
混乱する私をよそにフィリアは作業を終えたらしい。
「準備完了!おまたせ、それでは天井をご覧ください。」
言われるがままに天井を見上げるとフィリアがカウントダウンを始めた。
3……2……1
カウントがゼロになると同時に部屋の明かりが消えて、パッと天井が無数の小さな光が浮かび上がる。
白い小さな光は天井を覆い、それは壁にも現れていた。暗い部屋に灯るその光はまるで夜空に浮かぶ星々のようで、一瞬にしてフィリアの部屋は星空の中に浮かぶ船になった。
室内で見る天の光に感動していると、星空が動き始めた。ゆっくりと星が回り、その軌跡は星があった時と変わらずに輝いている。やがて星の軌跡で天が覆われると、何処までも続いていると錯覚してしまう光の渦になった。
再び部屋が暗闇に包まれると、今度は流れ星が見えた。ひとつ、ふたつ、みっつと段々と数を増やしていき、ついには天を埋め尽くす流星群となる。これがもし、私たちの暮らす王都の上で見れたなら、王都の民は奇跡の日だと歓喜するに違いない。それを独占しているこの瞬間が余計に特別に感じた。
星々による演目が終わると部屋に明るさが戻った。しかし先ほど見た感動の余韻は今も胸の中を満たしている。あまりの美しさに感嘆の声すら出なかった。
「どう?中々良いでしょ。これは前見つけたお宝でね、その昔、空を自分の物にしようとした王に命じられて作られた品物らしいよ。この部屋にぴったりでしょ?」
得意げな顔でフィリアは自慢してくるが、何も否定する気はない。
「良いなんてもんじゃないよ。すっごく感動した!こんな綺麗な星空が部屋のなかで見られるなんて…いや、例え外だとしてもきっと何処にもないよ!ありがとう!」
「気に入って貰えて良かったよ、まあそんなに気に入ったならまた見に来ればいいよ、部屋は隣なんだし。」
ハイテンションで感動を伝えるリーゼに、フィリアは珍しく照れながら返答した。仮想の現実だとしても、二人の出会いの日を星空が祝福していたことに違いはない。
フィリア「やっぱり隠し扉はロマンだよね、他にも色々あるけど全部お披露目できるかな?」




