第6話 恋路
■登場人物■
風雷⇒主人公。バンパイアであり医者でもある
沙樹⇒ヒロイン。桐生家頭首の娘
~~~ 商店街 ~~~~~~~~~~
風雷は下宿先である桐生庭を目指し商店街の
人混みの中を歩く。
沙樹は風雷の一歩後ろを付き添って歩く。
そんな風雷も沙樹を意識し彼女のスピードに合わせ
ゆっくりと歩く。
彼はバンパイアである。言わずと知れた化け物だ。
だが、こうして人の心を理解し、気遣いや気配り
のできる優しい心を持つ1面がある。
和江「あら沙樹さん。」
沙樹「和江さん。」
米屋の前で沙樹が呼び止められた。
沙樹の呼びかけに、先を行く風雷も立ち止まり振り返る。
見ると、外にある米俵を和江と名のる女性が
店内へ運んでいるでいるようだ。
沙樹「和江さん、1人ですか?」
和江「そうなのよ。私しかいなくて。」
沙樹「大変しょう。お手伝いします。」
米俵は1俵60キロもある。
2人で運ぶにしても細身の沙樹には無理だ。
風雷「これ(米俵)をあそこに置くだけか?」
和江「えぇ。」
風雷「お主らは、大人しくしてろ。」
見かねた風雷は、しょっている薬箱を地べたに置き、
1人で米俵を軽々と持ち上げ店内へと運ぶ。
和江「ちょっと沙樹。いい男だね。
いい名付けかい?」(^_-)
沙樹「違います。」(//∇//)
沙樹「うちの下宿人です。」
風雷は、2つあった米俵を素早く移動させ
あっと言う間に終わらせる。
和江は、腕を組み風雷をガン見する。
風雷「他にもあるのか?」
和江「いやない。すごく助かった。
お前さん、力あるね。うちで働かないかね?」
沙樹「この人、お医者様なんですよ。」(^^;)
和江「えっ!こんなに力持ちで?」(>。<)
沙樹「はい。どんな病気でも治せるんです。」
風雷「いいすぎだ。止めろ!」
和江「うちの旦那が頭痛いって言うで休んでるんだよ。
診ちゃくれないかい?
金は払う。」
沙樹「風雷様、わたくしからもお願いします。」(@_@)
風雷(祈るように見つめられたら断れん。)
風雷「ちょうど道具もある。案内しろ。」
~~~ 米屋 ~~~~~~~~~~
和江「あんた、具合はどうさね?」
旦那「気持ち悪くなってきた。」
旦那と沙樹が目が合い。
沙樹はお辞儀をする。
旦那「これはこれは沙樹殿。
そちらの殿方は?」
和江「お医者様です。
なんでも治せるんだとさ。」
風雷「それは沙樹殿の過大評価によるものだ。」
旦那「医者には既に診てもらっとる。
誰が見ても同じだろ。」
沙樹「旦那様?
こちらの医者は名医なんですよ。
多分、治せると思います。」
風雷「沙樹殿には困ったものだ。」
旦那「医者から買った。
薬はちゃんと飲んどるが。」
風雷「せっかくだ。
その薬で治るかも含めて診てやろう。」
旦那「そうかい。」
風雷はいつもの如く、自分の風変わりな
診察方法を説明し、診察と言うなの
食事を堂々と行う。
風雷「特に身体に異常はない。健康だ。」
旦那「はい?
いやいや、毎日頭が痛いんだが。
吐き気をするようになったし。」
風雷「どんな薬を飲んでる?見せてみろ。」
旦那「これなんだが。」
風雷「一粒もらうぞ。」
風雷は薬を一つ取り、口の中へ放り込み、味わう。
風雷「何の薬草から作ったかは知らんが、
興奮を引き起こす作用を持っている。
逆効果だ。」
旦那「言われてみればだが、この薬を飲んでから
痛みが激しくなったような。」
沙樹「でも風雷様。身体に異常がないとなると
頭痛の原因は何なのでしょう?
頭に虫がいるとかですか?」
旦那「オイオイ、怖い事言うな!」
風雷「ははは。沙樹殿は面白い。
もしかしたら見えない虫なのかもな。」
旦那「それは幽霊の虫ってことかい?
どうしたら取れる?」
和江「お医者様、病気でないんだね。」
風雷「ああ」
和江「なら、うちの人は仮病だったことさね?」
旦那「待たれ!ワシは嘘などつ言とらん。」
風雷「いや、本当に痛いのだろう。」
風雷「日々の苦痛や苦悩による精神的蓄積
が痛みの原因だ。」
旦那「言ってんだ。この医者は!」
風雷「要するに心が疲労して起こる心の病だ。」
旦那「ますます。分からん。
それで、どうして頭が痛くなる?」
風雷「深く考えるな。
薫衣草のお香を嗅げば
痛みは和らぐでろう。
間違ってもその薬は飲むな!」
風雷は、薬箱から薫衣草を練り込んだお香を取り出し
更に乗せ、火をつけると煙がいい香りが漂い出す。
沙樹「お花畑に居るみたい。」
風雷「この臭いを嗅いでいればいいだけだ。」
和江「臭いの薬なんだね?」
風雷「そういうことだ。5日分渡しとく。
毎晩これを嗅いで寝ろ。」
旦那「へい。旦那。」
風雷「睡眠を沢山取って、不安や悩みを持たない
ようにすれば、この薬は不要となる。」
旦那「分かりやした。旦那。」
沙樹「流石は風雷様。心の病気があるのも驚きましたが、
煙の薬が存在するだなんて。」
和江「ほんと、お前さん!
確かに名医と呼ばれるだけのことはある。」
風雷「ちょっと待たれ!
誰にも名医とは呼ばれてなどいない。
あと、治るかもわからんだろう。」
和江「かかり付けの医者は原因も分からんかった。
煙で病気を治すなんて聞いたことも
見た事もない。
あんたは名医さ。」
和江「沙樹ところで下宿しとると?」
沙樹「はい。」
和江「もったいない。
医療所を開設してはどうかね。
私が客を紹介するさ。」
旦那「それはえぇ。来週も診てもらいたいし。」
沙樹「和江さん。それはいい案です。」
この裏の通りに面してる所で
空いてる部屋があります。」
和江「近くに医者が居てくれると助かる。
そこで決まりさね。」
風雷「おいおい。私抜きで勝手に決めるな。」
沙樹のウルウルした涙目が風雷の心をえぐる。
沙樹「次どこか、行く宛てでもあるのですか?」
風雷「いや今のところないが、留まるつもりもない。」
沙樹「じゃあ、決まりですね。
父上にお願いしてみます。」
風雷「沙樹殿にはかなわんな。」
和江「ところで治療代はいくらかね?」
沙樹「結構です。うちが払いますから。」
和江「それは悪いわ。」
沙樹「本当にいいんです。
風雷様をご紹介したかっただけですから。」
風雷「待たれ!沙樹殿の屋敷に下宿してる身。
金など受け取れん。
開業したときに受け取るとしよう。」
風雷が開業を許諾してくれた。
沙樹は満面の笑みを風雷に注ぐ。
和江はそんな2人の顔を見てつぶやく。
和江「あんた、いい男だわ。
気付いとるかい?
沙樹が惚れとるよ。」
沙樹「ちょっと和江さん。
風雷様の前で、お止めてください。」(//∇//)
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