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第53話 発見

~~~ 寺 ~~~~~~~

風雷 「お主ら2人とも麻疹に掛かっておる

    ではないか。大丈夫なのか?」

寺院1「貴様に心配されることでない。

    邪魔だ。帰れ!」


寺院2「なんだその猫は?

    建屋に(けもの)を入れるな。」


風雷の肩にいる猫のことを指している。


風雷 「私の相棒である。

    野良猫といっしょにされては困る。」

寺院1「ここは高貴な者だけが立ち入れる場所。

    その猫に変な病気を持ち来られては困る。」

風雷 「ハハハ。面白いことをぬかすではないか。

    お主らの方が病原体であろう。」


寺院3「騒がしいぞ。」


さらにもう1人、別の医者が現れた。

こ奴も麻疹に侵されてる。

この寺には麻疹患者はいないはずだったのでは?

状況が変わったとでもいうのか。

風雷の正面に3人の医者が並び、行く手を阻む。


寺院3は風雷の顔を見て豹変する。

風雷はこ奴らのだれ1人として見覚えはないが、

3人からは知られてるようだ。


寺院3「ここは貴様のような(やから)が容易く

    入れる領域でない。消え失せよ!」

風雷 「何が領域だ。ここは寺だろう。

    ご先祖様が眠っておる。

    誰でも利用できるはずだが。」


寺院3「今や仮の医療施設として我々

    長寿院(ちょうじゅいん)が管理している。

    もはや寺ではない。理解されたかな?」

加藤 「そこにおられるのは誰じゃ?」


我々の騒ぎを聞き、姿は見えぬが正面の部屋から

声を発してきた者が出て来た。

正面の部屋は、(ふすま)1枚で(へだ)たれてるだけだ。

我々の声が筒抜けだったのはいたしかたない。


寺院3「加藤様、お騒がせして申し訳ない。

    野蛮な(やから)を追い返そうとしておるところでして。」

加藤 「聞きな地味な声だ。

    扉を開け、その者の顔を確認させよ。」


加藤様は相当な偉い方と見受けられる。

寺院の連中も逆らえないご様子のようだ。

言われるがまま、(ふすま)を開ける。


頭のところ刀を置き、布団に横たわる1人の老人が

姿を現した。どうやら侍のようだ。

その老人は肩に猫を乗せた人物を見て

目を大きく見開く。


加藤 「なんと風雷殿ではありませぬか!」

風雷 「よう爺さん。ここでくたばっておられたか。」

寺院3「何と無礼な!」


その老人の顔には赤い斑点が見える。


風雷 「お主も麻疹にやられたか。」

加藤 「頼む診てはくれぬか。」


寺院3「進言ですが、この者は偽医者であります。

    治る病も悪化してしまいます。」

加藤 「(わわ)け者めが!無礼なのはお主らじゃ。」


加藤 「もうよい。下がれ。」

寺院3「我々は進言しましたぞ。では。」


寺院3「偽医者めが。死んだのではないのか?」

小言を言いながら、3人の医者は言われるがまま、

この場を去る。


寺院の姿が消えたのを確認し、加藤ご老体は

風雷へ話掛ける。


加藤「不覚にも流行り病に掛かってしもうた。」

風雷「恥じることではない。

   麻疹は人にうつるのが強い病だ。

   避ける方が難しい。」

加藤「誠か?」


風雷「なぜこの寺へ?」

加藤「家族にうつしてはいかんと考え家を出た。」


風雷「そのご決断は半分正しい。」

加藤「半分とは?」


風雷「病に対する知識があれば家族と同居しても

   問題はない。」


加藤「じゃが、麻疹という病は妖怪の仕業と聞く。

   知識があったところで対処はないのでは?」

風雷「ハハハ。妖怪?

   ここでもそんな馬鹿げたことをぬかしておるか。

   麻疹は、ただの風邪だ。」


加藤「風邪?それは違うと拙者(せっしゃ)でも分かるぞ。

   見るがいい!」


老人は(そで)をめくり、赤い斑点のある腕を見せる。


加藤「このような恐ろしい模様が肌に浮き出てるのだぞ。

   風邪であるまい。

   しかも、多くの民が命尽きとるではないか。」

風雷「落ち着け。風邪にも種類がある。

   喉が痛かったり。咳が止まらなかったり。

   息苦しかったりと。

   今回は、肌に赤い斑点が出て来るというものだ。」


加藤「では妖怪の仕業というのは?」

風雷「寺院連中の言い訳だ。

   治療できぬ病は、全て妖怪の仕業なのだろう。」


加藤「では、この病は治せるのか?」

風雷「無論。ただし、簡単には治らん。」


このあと風雷は、各地で説明してきた麻疹に関する情報を

こと細かく説明したのであった。


加藤「理解した。風雷殿のことは信頼しとる。

   言う通りにするつもりだ。」

風雷「この薬を飲め。」


風雷は、薬と竹の水筒を渡す。

加藤はためらいなく薬を飲む。

そして、風雷と相談し自宅へ帰ることを決意。

籠屋を呼び風雷が同行する形で帰宅したのである。

その際、加藤の妻からは大変感謝された。


加藤が住む地区は、侍の家系が多い。

近所のほとんどが庭のある屋敷だ。

麻疹に怯え恐怖してる者も沢山いると聞く。

風雷は、加藤の妻にも麻疹の知識を教え、

近所へ伝えるようお願いした。

何かあれば薬を製造している今川家に来るよう伝え、

風雷はその場を去って行った。


寺での他の客については、寺院どもが頑なに拒否し

患者を診ることができなかった。

最初の治療場である今川家へ戻ることにした。


~~~ 吉原 ~~~~~~~

風雷が居る隔離された地域は、人が出歩かず廃墟の

ような町であるのに対し、ここは人で密集し、

昼間っからにぎわう華やかな場所であった。

そう吉原である。


その華やか所でも1本裏通りへ行くと、人通りの

少ない寂しい場所が存在する。

そこに、刀を所持した4人の浪人どもが何やら

ヒソヒソ話しをして固まっている。


忍び1「我の方は、駄目であった。おそらく違う。」

忍び2「雇い主がいる者を見つけられんかった。」

忍び3「私も全てハズレだ。」

忍び4「私もだ。」


彼らは浪人に(ふん)した忍びである。

殿の勅命によって吉原周辺で活動を行っいたのである。

活動は、各人が単独で、吉原内の浪人どもに声を掛け、

仕事を斡旋(あっせん)してくれるよう頼み込みで

回るというもの。

目的は、(みかど)すなわち井口を見つけ出すことであった。

そして、決められた時刻にこの場所へ集合したと

いう訳である。


忍び1「見つけられぬか。」

忍び2「思ったよりも簡単にはいかんな。」


そこへもう一人の浪人が現れた。

忍びは5人で活動しており、最後の1人が

遅れて登場してきたのである。


忍び5「済まぬ遅れた。」

忍び1「良い。お主の状況はどうであった?」


忍び5「見つけた。間違いない。」

忍び1「誠か!」


忍び5「帝には直接会えんかったが、

    武田家の長男を見かけた。」

忍び1「経頼(つねより)だな。」


忍び5「左様だ。場所はここから近い。」

忍び1「それでその後どうしたのだ?」


忍び5「明日、仲間を連れて戻って来ると伝えて来た。」

忍び1「出来(でか)したぞ。まず殿に一報だ。」

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