表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/64

第29話 監視

~~~ 商店街 ~~~~~~~

店主「よう旦那!これ持ってけ!」

風雷「これはオヤジ。

   ここを通る度に団子を渡してたら店が潰れすぞ。」


店主「若僧(わかぞう)がいらん心配すんな。」

風雷「そうか。」


風雷は診察周りを一通り終え、診療所へと帰宅途中

であった。

団子屋の前を通りかかると、店主は風雷を呼び止め、

団子を持って行けと手を差し伸べたのである。


風雷「ここの団子はうまい。では有難く頂戴(ちょうだい)する。」

店主「お!言うじゃねぇかぁ。

   おだててもこれ以上は有料だぞ。」

風雷「はは、食い切れんから遠慮する。」


沙樹(さき)が亡くなって半月が経つ。

町は沙樹が居た頃とたいして変わりはない。

風雷もまた、彼女がいたころと変わらないよいう

意識して行動していた。

風雷が出歩くと、沙樹が隣にいたことを知ってか、

町のみんながこうして声を掛けてくれる。

人付き合いが苦手な風雷にとっては何とも有難い

ことだ。


風雷「忙しそうだから先を急ぐ。」

店主「分かってるなら手伝え!こんちくしょ。」


風雷「私も忙しいのだよ。」

店主「そうかい。」


風雷は、団子を受け取り帰宅へと足を進めた。

その風雷を遠くから監視する者がいた。

その者はどこにでもいる普通の青年の姿をして

いて、一般市民に溶け込んでいた。


~~~ 診療所 ~~~~~~~

風雷は診療所へ戻ると、休むこともなく薬作りを

始める。

最近患者が増え、薬の減りが激しい。

薬作りと診察周りで日々が過ぎ去ってる感じだ。


すり鉢を使って薬草を粉末状にしてると、

居間で丸くなって寝ている猫の姿が目に入る。

沙樹が居たら猫を膝に乗せて頭をなでてる

だろうなと、つい想像してしまう。


優紀乃(ゆきの)の時にはなかった感情である。

この地は、優紀乃を探すための単なる通り道に

過ぎなかったはずだ。

なのに沙樹に出会って長く滞在してる。

こんなことになるとは予想だにしていなかった。

そして、沙樹が亡くなった現在もここに居続けている。

それだけ沙樹の存在が大きかったのだろうと

改めて風雷は自覚するのであった。


~~~ 診療所:外 ~~~~~~~

そのころ、診療所から少し離れたところで

風雷を監視する者が居た。

先ほど商店街で監視していた者と同一人物だ。

どうも1日中尾行しているようである。

そこに別の男が現れた。


(じん)「どうだ。不穏な動きはあったか?」

(あきら)「いや特に。

  診察に回りと山に山菜を取りに行く

  以外なにもしてない。」


仁「それは本当に診察なのか?」

明「周囲に聞き込みをしたが間違いない。」


仁「ごろつきと接触するとか。

  金の羽振(はぶ)りがいいとかもないと?」

明「ありませんね。」

仁「となると。黒なのか?

  困った。行き詰ったな。」


彼らは、畠山藩に仕える忍びである。

使命は相馬家残虐の犯人を捜すこと。

そこで目をつけられたのが風雷である。


相馬家での残虐は、桐生領主の報復であると

畠山藩では考えている。

となると桐生家の者かその関係者が犯人の

可能性が高い。

そのような理由から、調査をしたところ

風雷と生口(いぐち)の名が浮上した。

この2人は事件発生時刻に目撃者がいない。

逆を言うと相馬家に居た可能性が高い

ということになる。


風雷に至っては、事件当日に沙樹を追いかけて

向かったと聞く。

沙樹の殺害現場から相馬の屋敷は近い。

沙樹が殺害され、そのまま屋敷へ向かったと

考えるのは自然な流れだ。


だが犯人は1人ではないと考えている。

屋敷には、刀を持った家臣や用心棒が大勢いた。

そして戦った形跡がある。

となると、少なくとも10人は仲間がいた

ものと推測している。


役人が風雷を捕らえて尋問するのが簡単だろう。

通常はそれが一般的だ。

だが、今回に限っては自決でもされたら困るのだ。


というもの相馬の屋敷から四半期分の年貢が

1銭たりともなく消えていたからだ。

推定2千両あったものと見込んでいる。

そして、領主の殺害は重罪だ。


そこで忍びが使われ今に至る。

年貢を奪い返し、殺害集団を一掃したいと

いうのが狙いだ。


仁をリーダーとした4名の忍びが投入され、

1人は風雷に貼り付けさせ、残り3名が

生口の行方を追っている。


現在の調査状況はというと(かんば)しくない。

風雷はごろつきとの関係はなさそうだし、

大金を使ってる形跡もない。

生口はというと既にお尋ね者とされ、全国で

指名手配されているものの目撃情報すら

得られてない。


仁「引き続き監視を続けよ。」

明「御意。」


2人が会話する側の垣根に黒猫がトコトコと

通り抜ける。

そう風雷の飼い猫、(もも)だ。

なぜか、ここにで散歩していた。


~~~ 診療所:内 ~~~~~~~

朋 「にゃあ~」


風雷は鳴き声がする方へと振り向く。

朋が外から家の中へと入って来た

ところであった。


風雷「いつのまに外、出てたんだ?

   まぁ、部屋に居ても退屈だろう。

   どこか遊び行ってたか。」


唐突に朋からの思念伝達が送られてきた。

相手は猫だ。

なんのことやらサッパリわからない。

斜め前の路地の場所に意識が持っていかれる。

だが何となく猫の思いを察した。

その場所で遊んでいたか、縄張り争いを

したとでも伝えたかったのだろう。


風雷は格子戸を開け、その場所を確認すると

人が半身を隠してこちらを直視しているのを

目撃する。

風雷はとっさの判断で、急いで戸を閉め、

向こうに気付かれぬよう格子戸を少し開ける。

路地を再度確認すると、やはりこの診療所を

見ている者がいる。


何者だ?と思いつつも気にはとめていなかった。

だが、作業をしばらく続け、合間合間に

確認するも、男はその場所から離れず

こちらを監視し続けている。


流石にこれはおかしいと風雷は感じる。

自分の命を狙っているのか、それともここに

来る誰かを待っているのかはわからないが、

この事を事前に知れたのは大きい。


いつ戦闘が起きてもいいよう準備することに

した。


風雷「おいで!」


猫を呼びつけると、猫は風雷の胸元へと

飛び込んできた。

それをキャッチし、両手で猫を抱える。


風雷「相棒。お前が居てくれてよかった。」


風雷は改めて猫に感謝する。

自分は危機管理が散漫になって平和ボケしてた

ことに気付かされた。

この地でも危険はあるのだ。

特に領主殺害から知らず知らずのうちに、

周辺の治安が悪化してる可能性だってある。


これを機に、猫に周辺を監視させることを

思いつく。

動物の危険察知能力は高い。

今回の件もそうだ。

寝込みに襲われる際も事前に察知して教えて

くれるだろう。


心強い相棒だとは感じていたが、改めて、

猫が居てくれたことに感謝するのであった。


そして、猫へ思念伝達で、危機を感じたら

共有してくれと伝える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ